「サイダー」を英語で頼むと、お酒が出てくるかも。cider の本来の意味は「りんご酒」だった

読む前に予想してみよう!
英語の cider は、日本のサイダーと同じ、透明で甘い炭酸ジュースのことだ
オックスフォードの学習辞典では、cider は(特にイギリス英語で)りんご果汁から作るお酒。アメリカではアルコールなしのりんごジュースも指す。
- 対象
- 英語・日本語の辞書と百科事典
- 規模
- 辞書・事典 8種
- 研究の種類
- 辞書の語義・語源の比較
- 確かさ
- ★★★★☆
英語の cider は、イギリスではふつう「りんごのお酒」。日本のサイダーは、明治にりんご風味の炭酸飲料に付いた名前が残ったもの。アメリカでは、アルコールなしのりんごジュースも cider と呼ぶ。
ひとことで言うと英語の「サイダー」は、もともと、りんごから作るお酒のことなんだって!
夏の旅行で、イギリスのパブに入ったとします。のどがかわいたので、「サイダーください」のつもりで Cider, please. と頼みました。
出てくるのは、透明で甘い炭酸ジュース……ではないかもしれません。イギリスで cider といえば、ふつうは「りんごから作るお酒」だからです。
日本のサイダーと英語の cider は、名前は同じでも中身が違います。どうしてこうなったのでしょう。
01辞書で確かめる:cider は「りんご酒」
まず、英語の辞書を見てみましょう。
つまり、英語の cider は「りんご」の飲み物です。オックスフォードの辞典にも American Heritage Dictionary にも、透明な炭酸の清涼飲料という意味は載っていません。
ちなみに、フランス語では同じりんご酒を cidre(シードル) と言います。日本でもシードルという名前で売られているので、見たことがある人もいるかもしれません。『世界大百科事典』(平凡社)によると、アルコール分はふつう4〜7%ほどです。
02なぜ日本では炭酸ジュースに?
では、日本の「サイダー」はどこから来たのでしょう。
『世界大百科事典』によると、日本では明治の初めから、りんご系の香料を使った炭酸飲料を「シャンペン・サイダー」と呼んでいました。講談社の『飲み物がわかる辞典』にも、サイダーは当初リンゴの香料を使っていた、とあります。
つまり、最初のサイダーは、ちゃんとりんごの香りがしていたのです。『百科事典マイペディア』(平凡社)も、りんご酒の風味をまねたものが売り出されたのが始まりだ、と説明しています。りんご酒に似せた炭酸飲料だったから cider の名前がついた、と考えられます。
『日本国語大辞典』が挙げる「サイダー」の古い例は、1909年の翻訳作品『いたづら小僧日記』(佐々木邦 訳)です。アイスクリームやサンドイッチと並んで「サイダ」が出てきます。
『世界大百科事典』によると、その後、横浜の秋元巳之助が「金線サイダー」を売り出し、1907年には三ツ矢サイダーが発売されます。そして今のサイダーは、かんきつ類、特にレモン系の香料を使ったものになっています。サイダーは、いまでは俳句の夏の季語にもなっています(デジタル大辞泉・日本国語大辞典)。
りんごの味はなくなったのに、名前だけが「りんご酒」のまま残った。これが日本のサイダーです。

03ラムネも英語から来ていた
もう一つ、夏の飲み物の名前を見てみましょう。ガラス玉の入ったびんでおなじみのラムネです。
デジタル大辞泉と日本国語大辞典によると、ラムネは英語の lemonade(レモネード)がなまった言葉です。日本国語大辞典は、1870〜76年の仮名垣魯文『西洋道中膝栗毛』に「ラムネ」が出てくる例を挙げています。
『世界大百科事典』によると、ほぼ同じ中身の炭酸飲料のうち、玉入りのガラスびんに詰めたものを「ラムネ」、王冠でふたをしたものを「サイダー」と呼ぶようになりました。ニッポニカも、サイダーとラムネは大差がなく、サイダーもレモネードの一種と考えてよい、と書いています。
ここで、もう一つの「マジか!?」があります。オックスフォードの学習辞典によると、イギリス英語の lemonade は「レモン味の甘い炭酸飲料」です。つまりイギリスで日本のサイダーに近いものを頼むなら、cider ではなく lemonade なのです。
04さかのぼると「酔わせる飲み物」
cider という単語そのものは、どこから来たのでしょう。
アメリカの『American Heritage Dictionary』によると、英語の cider は中英語(中世の英語)の sidre から来ています。さらにさかのぼると、古いフランス語を経て、後期ラテン語の sīcera「人を酔わせる飲み物」、ギリシャ語の sikera に行き着きます。このギリシャ語は、セム語系(ヘブライ語やアラビア語のなかま)の言葉から入ったとされています。
もとは「りんご」でさえなく、「酔わせるもの」。cider は、生まれたときからお酒の言葉だったのです。
05どんでん返し:アメリカでは「お酒じゃない cider」も
「英語の cider はお酒」と覚えると、今度はアメリカで戸惑うかもしれません。
オックスフォードの辞典では、北アメリカ英語の cider(apple cider)はアルコールを含まないりんごの飲み物です。お酒のほうは、わざわざ hard cider と呼び分けます。American Heritage Dictionary も、1つ目の意味に「発酵させていない果汁、特にりんごの果汁」を挙げ、お酒のほうは2つ目の意味にしています。
つまり、
- イギリスで cider → ふつうはりんご酒
- アメリカで cider → アルコールなしのりんごジュースのことが多い。お酒は hard cider
「cider を頼むと必ずお酒が出てくる」とまでは言えません。どちらにしても、日本の透明なサイダーが出てくることはなさそうです。
06まとめ
英語の cider は、イギリスではふつうりんご酒、アメリカではりんごジュースのことも多い言葉です。日本のサイダーは、明治時代にりんご風味の炭酸飲料に付いた名前が、味がレモン系に変わったあとも残ったものでした。
海外で日本のサイダーが飲みたくなったら、アメリカでは soda、イギリスでは lemonade。名前の「ずれ」を知っておくと、旅先のメニューも読みやすくなります。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerOrder a cider in a British pub, and you will probably get an alcoholic drink made from apples.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
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In Japan, "saidā" is a clear, sweet drink with bubbles. But the English word "cider" means something different. In Britain, cider is usually a drink made from apples, and it has alcohol in it. In the United States, cider is often apple juice with no alcohol.
So how did Japan get the name? In the Meiji era, some Japanese soft drinks had an apple flavor. The flavor changed later, but the name stayed.
73 words ・ CEFR A2
和訳を見る
日本では、「サイダー」は透明で甘い、泡の出る飲み物です。でも、英語の cider は違うものを指します。イギリスでは、cider はふつうりんごから作る飲み物で、アルコールが入っています。アメリカでは、cider はアルコールの入っていないりんごジュースであることが多いです。
では、日本はどうやってこの名前を手に入れたのでしょう。明治時代、日本の清涼飲料の中にはりんご味のものがありました。味はのちに変わりましたが、名前は残りました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
日本・イギリス・アメリカで cider の指すものが違う話なので B。
Q2. In Britain, what is cider usually?
In Britain, cider is usually a drink made from apples, and it has alcohol in it とあるので C。
Q3. What does "flavor" mean in the passage?
some Japanese soft drinks had an apple flavor(りんごの味がした)の flavor は「味・風味」なので A。
Order a cider in a British pub, and you will probably get an alcoholic drink made from apples. That can surprise Japanese visitors, because in Japan "saidā" means a clear, sweet soft drink.
The Japanese name really does come from English. In the early Meiji era, fizzy drinks with an apple flavor were sold as "champagne cider." Later the flavor changed to citrus, mostly lemon, but the name stayed.
So if you want something like Japanese saidā in the US, ask for a soda. In Britain, ask for a lemonade. There, the word means a sweet, fizzy drink that tastes of lemon. Another Japanese summer drink, ramune, got its name from this same English word, "lemonade."
116 words ・ CEFR B1
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イギリスのパブで cider を注文すると、たぶん、りんごから作ったお酒が出てくる。日本では「サイダー」は透明で甘い清涼飲料のことなので、日本からの旅行者は驚くかもしれない。
日本語の名前は、たしかに英語から来ている。明治の初めごろ、りんご風味の炭酸飲料が「シャンペン・サイダー」として売られていた。のちに味はかんきつ系、主にレモンに変わったが、名前は残った。
だから、アメリカで日本のサイダーのようなものが飲みたければ、soda を頼むといい。イギリスなら lemonade を頼もう。そこでは、この語はレモン味の甘い炭酸飲料を意味する。日本のもう一つの夏の飲み物、ラムネは、この同じ英語「lemonade」から名前がついた。
4択リーディングクイズ
Q1. Why might Japanese visitors be surprised in a British pub?
you will probably get an alcoholic drink made from apples. That can surprise Japanese visitors とあるので B。
Q2. Where did the name "ramune" come from?
ramune, got its name from this same English word, "lemonade" とあるので A。
Q3. Which statement would the writer most likely agree with?
最初はりんご風味で cider の名がつき、味がレモン系に変わっても名前が残ったとあるので、りんご味のころは名前と中身が合っていたと言える。C。
Ask for a cider in a British pub and you will probably be handed a glass of alcohol. In British English, the word usually means a drink made by fermenting apple juice. In the United States, it often means something else.
Many Americans use "cider" for apple juice with no alcohol, and they say "hard cider" when they want the alcoholic kind. Japanese "saidā," a clear and sweet carbonated soft drink, matches neither. The name arrived in the early Meiji era, when fizzy drinks made with apple flavoring were sold as "champagne cider."
Over time, makers moved to citrus flavors, mostly lemon, but nobody changed the name. The English word itself has a long history. According to the American Heritage Dictionary, "cider" came into English through French from the Late Latin "sicera," an intoxicating drink, which in turn came from Greek.
Some details of the Japanese story are less certain. Reference books disagree on when Kinsen Saidā, an early brand from Yokohama, first went on sale. One gives 1899, and two others give 1887. If you want something close to Japanese saidā in Britain, order a lemonade.
187 words ・ CEFR B2
和訳を見る
イギリスのパブで cider を頼むと、たぶんお酒のグラスを手渡される。イギリス英語では、この語はふつう、りんご果汁を発酵させて作る飲み物を意味する。アメリカでは、別のものを指すことが多い。
多くのアメリカ人は、アルコールの入っていないりんごジュースを cider と呼び、お酒のほうがほしいときは「hard cider」と言う。透明で甘い炭酸の清涼飲料である日本の「サイダー」は、どちらにも当てはまらない。この名前は明治の初めごろ、りんごの香料で作った炭酸飲料が「シャンペン・サイダー」として売られていたときにやって来た。
時がたつにつれて、作り手はかんきつ系、主にレモンの味に切りかえたが、名前を変える人はいなかった。英語の単語そのものにも長い歴史がある。『American Heritage Dictionary』によると、cider はフランス語を経て、後期ラテン語の sicera(人を酔わせる飲み物)から英語に入った。そしてその sicera はギリシャ語から来ている。
日本側の話には、はっきりしない点もある。横浜の初期のブランド「金線サイダー」がいつ発売されたかについて、事典の記述は食い違っている。1つは1899年、ほかの2つは1887年としている。イギリスで日本のサイダーに近いものがほしいなら、lemonade を注文しよう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
イギリス・アメリカ・日本で cider が指すものの違いと、日本での名前の由来が中心なので B。
Q2. According to the passage, what do many Americans call the alcoholic kind of cider?
they say "hard cider" when they want the alcoholic kind とあるので C。
Q3. Why does the writer mention Kinsen Saidā?
Reference books disagree on when Kinsen Saidā ... first went on sale とあり、日本側の年が定まっていない例として挙げているので A。
重要単語
- ciderB2名詞(英)りんご酒、(米)りんごジュースIn England, cider is an alcoholic drink made from apples.
発音は「サイダー」。アメリカでお酒のほうを言うときは hard cider。 - sodaA2名詞(米)甘い炭酸飲料Do you want a soda with your lunch?
soda pop や pop とも言う。イギリスでは soda はふつう「炭酸水(soda water)」の意味。 - lemonadeB1名詞(英)レモン味の甘い炭酸飲料、(米)レモン果汁と砂糖と水の飲み物In Britain, lemonade is usually fizzy.
日本語の「ラムネ」はこの語がなまったもの。 - fizzyB1形容詞炭酸の、泡の出るI don't like fizzy drinks very much.
carbonated(炭酸入りの)も同じような意味で使う。fizzy drink「炭酸飲料」。 - alcoholicB1形容詞アルコールを含むIs this drink alcoholic?
名詞で「アルコール依存症の人」の意味もある。non-alcoholic は「ノンアルコールの」。 - flavorA2名詞味、風味What's your favorite ice cream flavor?
イギリスつづりは flavour。flavored water「風味つきの水」。 - fermentC1動詞発酵させる、発酵するApple juice turns into cider when it ferments.
名詞形は fermentation。ワイン・しょうゆ・納豆の話でも出る。
公式・一次情報をチェック
- cider(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- cider(Oxford Advanced American Dictionary)oxfordlearnersdictionaries.com
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英語の cider は、イギリスではふつう「りんごのお酒」のこと。日本の透明な炭酸のサイダーとは別物です。日本では明治時代、りんご風味の炭酸飲料にこの名前が付き、味がレモン系に変わっても名前だけ残りました。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典・日本大百科全書(ニッポニカ)・改訂新版 世界大百科事典・百科事典マイペディア・飲み物がわかる辞典「サイダー」(コトバンク掲載)kotobank.jp
- デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典・改訂新版 世界大百科事典「シードル」(コトバンク掲載)kotobank.jp
- デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典「ラムネ」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- Oxford Advanced Learner's Dictionary / Oxford Advanced American Dictionary, "cider" "hard cider" "lemonade" "soda"(Oxford University Press)oxfordlearnersdictionaries.com
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed., "cider"(HarperCollins)ahdictionary.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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