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英語のマジか!?ウソ

土砂降りを「ネコと犬が降る」と言う英語、由来は今も謎。“屋根から落ちた”説はウソ

土砂降りを「ネコと犬が降る」と言う英語、由来は今も謎。“屋根から落ちた”説はウソ

読む前に予想してみよう!

「raining cats and dogs」は、昔わら屋根で寝ていた犬やネコが大雨ですべり落ちたことから生まれた

研究カード(どんな研究?)
対象
17〜18世紀の詩・劇の原文、図書館・語源学者の解説
規模
1592〜2024年の文献
研究の種類
語源調査(文献)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

「土砂降り」の raining cats and dogs。わら屋根の犬猫が雨ですべり落ちた説は、アメリカ議会図書館が「誤り」と判定。由来の答えは「分からない」。似た言い回しの最古の例は1651年の詩。

ひとことで言うと「ネコと犬がふる」は土砂降りのこと。でも、なぜそう言うのかはだれにも分からない!

もくじ
  1. 「わら屋根から落ちた」説はなぜウソ?
  2. 記録に残るいちばん古い例は1651年の詩。しかも「屋根」が犬猫を防いでいた
  3. 北欧神話説も、ギリシャ語説もハズレ
  4. 最大の手がかりは、1592年の「犬ボルト」と「猫ボルト」
  5. 世界の土砂降り:ひも、ロープ、やり、篠竹
  6. どんでん返し:70年近く議論しても決着しなかった
  7. まとめ

「It's raining cats and dogs!」

英語で「土砂降りだ!」という意味の、有名な言い回しです。直訳すると「ネコと犬が降っている」。

なぜネコと犬なのか。ネットでよく見かけるのは「昔のわら屋根で寝ていた犬やネコが、大雨ですべり落ちてきたから」という説明です。でもこれ、アメリカ議会図書館が「誤った説(A false theory)」と書いています。そして由来についての図書館の答えは、ひとこと「We don't know.(分かりません)」でした。

01「わら屋根から落ちた」説はなぜウソ?

アメリカ議会図書館(Library of Congress)は、科学の質問に司書が答える「Everyday Mysteries」というページで、この表現を取り上げています(2019年公開、2024年更新)。

わら屋根説についての判定は、はっきりしています。

  • きちんと手入れされたわらぶき屋根は、もともと水をはじき、雨が流れ落ちるように斜めに作られている
  • 動物が屋根からすべり落ちるには、屋根の外側で寝ていなければならない
  • 嵐のときに、わざわざ屋根の外側で雨宿りする動物はまずいない

02記録に残るいちばん古い例は1651年の詩。しかも「屋根」が犬猫を防いでいた

では、この表現はいつからあるのでしょう。議会図書館によると、似た言い回しが最初に記録に出てくるのは、イギリス(ウェールズ)の詩人ヘンリー・ヴォーンが1651年に出した詩集『Olor Iscanus』です。

原文を開いてみると、これは借りたマント(cloak)の悪口を言う、ふざけた詩でした。ごわごわで分厚いそのマントは、市の日の行商人が売り物を守る屋根にちょうどいい、と言うのです。何から守るのか。

Their wares from dogs and cats rained in shower.(にわか雨のように降ってくる犬やネコから、売り物を守る)

いちばん古い例では、屋根が、空から降る犬とネコを防ぐ側にいました。わら屋根から動物が落ちてくる話とは、向きが反対です。

いちばん古い例(1651年)は、借りたマントを「降ってくる犬やネコを防ぐ屋根になる」とからかう詩だった
いちばん古い例(1651年)は、借りたマントを「降ってくる犬やネコを防ぐ屋根になる」とからかう詩だった

03北欧神話説も、ギリシャ語説もハズレ

由来の説は、ほかにもたくさんあります。オックスフォード大学出版局のブログで、ミネソタ大学の語源学者アナトリー・リバーマンが、ひとつずつ検討しています(2007年)。

  • 北欧神話説:嵐の神オーディンが犬やオオカミを連れ、魔女の黒ネコが雨のしるし……という説。リバーマンは、北欧神話のオーディンは嵐の神ではない、ネコはオーディンとも魔女とも関係がない、などを理由に、この英語の表現を北欧の言い伝えにさかのぼらせることはできない、と強く否定している
  • ギリシャ語説:「予想に反して」という意味のギリシャ語 kata doxa がなまった、という説。ギリシャ語の言い回しが英語の天気の話にどうやって入ったのか、道筋が示せないとして退けている

ただし議会図書館のページは、北欧神話説や、古い英単語 catadupe(滝)がなまったという説を「よく知られた説」として紹介しています。専門家の間でも、扱い方に差があるわけです。

04最大の手がかりは、1592年の「犬ボルト」と「猫ボルト」

リバーマンが「由来の手がかりはこれだけ」と書いたのは、1918年に学術誌『Notes and Queries』に載った、N・E・トークという人の短い投稿です。

トークが注目したのは、1592年にガブリエル・ハーヴェイという文人が書いた、次の一文でした。

Instead of thunderboltes shooteth nothing but dogboltes or catboltes.(雷を落とすかわりに、犬ボルトか猫ボルトばかり撃ってくる)

dogbolt(犬ボルト)とcatbolt(猫ボルト)は、動物ではありません。トークによると、どちらも方言に残っていた留め具の名前で、dogbolt は戸や門を閉めておく鉄のかんぬき、catbolt は材木どうしを留めるボルトのことでした。ハーヴェイの文は、これを thunderbolt(雷)と並べています。

リバーマンはここから、もとは「catbolt や dogbolt や pitchfork(干し草用の大きなフォーク)が降ってくる」のような、とがった重い物が降ってくる言い回しだったのではないか、と考えました。英語には実際に「It's raining pitchforks」という言い方もあります。議会図書館は、これを激しい雨が棒のように見えることを表す言い方として紹介しています。

05世界の土砂降り:ひも、ロープ、やり、篠竹

激しい雨を「細長い物が降ってくる」と言うのは、英語だけではありません。辞書で確かめると、

  • ドイツ語:Es regnet Bindfäden.(ひもが降っている)=くだけた言い方で、強い雨が降り続くこと(Duden)
  • フランス語:Il pleut des cordes.(ロープが降っている)、Il pleut des hallebardes.(ほこやりが降っている)=どちらも、くだけた言い方で大雨(Larousse)
  • 英語:It's raining pitchforks.(干し草フォークが降っている)、It's raining stair-rods.(階段のじゅうたん押さえの棒が降っている)(議会図書館)
  • 日本語:篠突く雨(しのつくあめ)=篠竹(細い竹)を束ねて突きおろすように、激しく降る雨(デジタル大辞泉・日本国語大辞典)

ひも、ロープ、やり、竹。大雨の雨すじを長い棒やひもに見立てる言い方は、言葉がちがっても、よく似ています。リバーマンも2013年の別の記事(rain という単語の語源の話)で、ドイツ語の「ひもが降る」にふれ、強い雨では水の筋がロープのように空中に立って見える、と書いています。

ドイツ語は「ひも」、フランス語は「ロープ」、日本語は「篠竹」。大雨を細長い物にたとえる言葉は、あちこちにある
ドイツ語は「ひも」、フランス語は「ロープ」、日本語は「篠竹」。大雨を細長い物にたとえる言葉は、あちこちにある

06どんでん返し:70年近く議論しても決着しなかった

この表現の由来は、昔から英語好きの人たちを悩ませてきました。学術誌『Notes and Queries』には、1857年から1926年までに、この表現をめぐる投稿が少なくとも17本載っています(文献データベース Crossref で、題名に raining cats and dogs などを含む投稿を数えた)。70年近く議論しても、答えは出ませんでした。

そして、リバーマンが推す「ボルト説」も、証拠がそろったわけではありません。1592年のハーヴェイの文には「雨」が出てきませんし、1651年のヴォーンの詩にはボルトではなく、はっきり「犬とネコ」が降っています。リバーマン自身も、自分の考えを「もしこの復元に少しでも正しいところがあれば」という言い方で、控えめに出しています。

確かなのは、「わら屋根説」は誤りで、本当の由来は今も分かっていないということです。

07まとめ

「It's raining cats and dogs」の由来は、実はだれにも分かっていません。有名な「わら屋根から犬猫が落ちた」説は、アメリカ議会図書館が誤りと判定しています。いちばん古い1651年の詩では、屋根はむしろ降ってくる犬猫を防ぐ側でした。

由来が分からなくても、使い方はかんたんです。土砂降りの日は It's pouring!。友だちとふざけて言うなら It's raining cats and dogs!。日本語の「篠突く雨」と並べて覚えておくと、話のネタにもなります。

この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"It's raining cats and dogs" means that it is raining very hard. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

"It's raining cats and dogs" means that it is raining very hard. A popular story says that cats and dogs once slept on straw roofs and slid down when heavy rain came. The Library of Congress calls this a false theory. A well-kept straw roof keeps water out, and an animal would have to sleep on the outside of the roof to slide off.

The earliest known phrase like it comes from a 1651 poem by Henry Vaughan. In the poem, he jokes that a heavy cloak could work as a roof against "dogs and cats rained in shower." Jonathan Swift used the phrase in 1738, and his book probably made it popular.

113 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「It's raining cats and dogs」は、とても激しく雨が降っているという意味だ。よく知られた話では、ネコや犬がかつてわら屋根の上で寝ていて、大雨が来るとすべり落ちたという。議会図書館はこれを誤った説と呼んでいる。手入れされたわら屋根は水を通さないし、動物がすべり落ちるには屋根の外側で寝ていなければならない。

似た言い回しのいちばん古い例は、ヘンリー・ヴォーンの1651年の詩にある。その詩で彼は、重いマントが「にわか雨のように降ってくる犬やネコ」を防ぐ屋根になる、と冗談を言っている。ジョナサン・スウィフトは1738年にこの言い回しを使い、彼の本がおそらくこれを広めた。

4択リーディングクイズ

Q1. Why does the Library of Congress reject the straw roof story?

Q2. What is in the 1651 poem by Henry Vaughan?

Q3. What can we guess about Jonathan Swift's role?

重要単語

  • idiomB2
    名詞慣用句、決まった言い回し"Raining cats and dogs" is a famous idiom about rain. 単語ひとつずつの意味からは全体の意味が分からない言い回し。形容詞は idiomatic(慣用的な、自然な)。
  • downpourC1
    名詞土砂降りWe got caught in a sudden downpour on the way home. down(下へ)と pour(注ぐ)からできた語。get caught in a downpour「土砂降りにあう」。
  • pourB1
    動詞(雨が)激しく降る;注ぐIt's pouring outside, so take an umbrella. It's pouring. だけで「土砂降りだ」。英 pour with rain、米 pour rain。発音は「ポー」で、poor と同じに聞こえることが多い。
  • originB1
    名詞起源、由来The origin of the phrase is still unknown. the origin of ~「~の由来」。形容詞 original、動詞 originate。
  • thatchedC1
    形容詞わらぶきのThey stayed in an old cottage with a thatched roof. thatch は「(屋根をふく)わら、かや」。a thatched roof「わらぶき屋根」。
  • theoryB1
    名詞説、理論There are many theories, but none of them is proven. a false theory「誤った説」。複数形 theories。
  • etymologistC1
    名詞語源学者The etymologist said the story had no evidence behind it. etymology(語源、語源学)+-ist(人)。insect の学者 entomologist と混同しやすい。
英語で土砂降りを「It's raining cats and dogs(ネコと犬が降っている)」と言う。「わら屋根で寝ていた犬猫が雨ですべり落ちたから」という話は、アメリカ議会図書館が「誤り」と判定。由来についての図書館の答えは「分かりません」。似た言い回しの最古の例は1651年の詩。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. Library of Congress (2019, updated 2024) What Is the Origin of the Phrase "it's raining cats and dogs?", Everyday Mysteriesloc.gov
  2. Liberman (2007) Raining cats and dogs, OUPblog(オックスフォード大学出版局)blog.oup.com
  3. Vaughan (1651) Upon a Cloak lent him by Mr. J. Ridsley(Olor Iscanus 所収、E. K. Chambers 編 Poems of Henry Vaughan, Silurist, Vol. II, Project Gutenberg)gutenberg.org
  4. Swift (1738) Polite Conversation in Three Dialogues(Project Gutenberg)gutenberg.org
  5. Schafer (ed.) Richard Brome, The City Wit(Richard Brome Online)dhi.ac.uk
  6. Toke (1918) "Rain Cats and Dogs.", Notes and Queries s12-IVdoi.org

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