「buffalo」を8回並べただけで、正しい英文になる。1語で地名・動物・動詞の3役

読む前に予想してみよう!
「Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo.」は、英語として文法的に正しい文だ
buffalo には地名・動物・「いじめる」という動詞の3つの使い方がある。「バッファロー市のバイソンにいじめられたバッファロー市のバイソンが、バッファロー市のバイソンをいじめる」という意味になる。
- 対象
- 言語学者・計算機科学者の記録と辞書
- 規模
- 1967〜2015年の文献・書簡
- 研究の種類
- 文献調査・文法の分析
- 確かさ
- ★★★☆☆
Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo. は文法的に正しい英文。buffalo が地名・バイソン・「いじめる」の3役をこなす。1972年に考えたという研究者の記録があるが、1967年の本にもすでに buffalo を4つ並べた文があった。
ひとことで言うと「バッファロー」を8回言うだけで、ちゃんと意味のある英語の文になるんだって!
まずは、この英文を読んでみてください。
Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo.
キーボードが壊れたわけではありません。これは文法的に正しい英文です。しかもちゃんと意味があって、日本語にすると「バッファロー市のバイソンにいじめられている、バッファロー市のバイソンが、バッファロー市のバイソンをいじめる」。
カギは、buffalo という単語が1人で3役をこなせることにあります。
01buffalo には3つの顔がある
アメリカの辞書『American Heritage Dictionary(AHD)』で buffalo を引くと、3つの使い方が出てきます。
- Buffalo(地名):ニューヨーク州西部、エリー湖のほとりの都市バッファロー
- buffalo(名詞):スイギュウやアメリカバイソンなどの大きなウシのなかま。複数形は buffaloes のほかに、形を変えない buffalo も使える
- buffalo(動詞):「(権威などを見せつけて)おどす」「まごつかせる、だます」。Dictionary.com では口語の用法とされている
この記事では、ラパポート(後で登場する研究者)が1992年に言語学者のメーリングリストに書いた説明(to bully around)にならって、動詞の buffalo を「いじめる」と訳します。
複数形が buffalo のままでよく、動詞にもなる。この2つがそろったことで、「buffalo だけの文」が作れるようになりました。
028語を分解すると
文の骨組みは、じつはとても単純です。
- [Buffalo buffalo]=バッファロー市のバイソンたちは(主語)
- [(that) Buffalo buffalo buffalo]=バッファロー市のバイソンたちがいじめる(ところの)(主語を説明する部分。that が省略されている)
- [buffalo]=いじめる(文の動詞)
- [Buffalo buffalo]=バッファロー市のバイソンたちを(目的語)
英語では、The cake (that) my mom made のように、名詞を説明する that を省けます。同じ形の文に、Mice cats chase eat cheese.(ネコが追いかけるネズミはチーズを食べる)があります。この文の単語を全部 buffalo に置きかえたのが、問題の8語です。
038語の版は、言語学の一般向けの本に載った
8語の版は、心理学者・言語学者のスティーブン・ピンカー(Steven Pinker)の一般向けの本に登場します。
ラパポートのページによると、ピンカーは1994年の著書『The Language Instinct(邦題『言語を生みだす本能』)』の209〜210ページで、この8語の文を紹介しました。ただし、考えた人として挙げたのはラパポートではなく、ピンカー自身の学生でした。
ラパポートがメールで、自分は1972年に考えていたと知らせると、ピンカーからは、その学生も自分で思いついたのだと思う、という返事が来ました。ピンカーの言うとおりなら、同じ仕掛けの文を、別々の人が別々に考え出していたことになります。

04どんでん返し:本当の“生みの親”は分からない
では、ラパポートが元祖かというと、話はそう簡単ではありません。
ラパポートのページには、その後に届いた指摘がいくつも記録されています。
- マサチューセッツ工科大学(MIT)で、コンピューターによる言語の分析を研究するロバート・バーウィック(Robert Berwick)教授は、ラパポートへのメールで「10歳くらいのころ、どこかで読んだ。1972年より前なのは確か」と書いている。バーウィックらは1987年の専門書で buffalo の文を分析し、Police police police police police. という仲間の文も挙げている
- 読者からの手紙によると、言葉遊びの作家ドミトリ・ボルグマン(Dmitri Borgmann)の1967年の本『Beyond Language』に、BUFFALO BUFFALO BUFFALO BUFFALO. という4語の文がすでに出ている。言葉遊びの専門誌『Word Ways』の2005年の記事も、この本の「同じ音をくり返す文」の問題に buffalo を4つ並べた文があると書いている。ただし、こちらは「A が B を〜する」という単純な形で、that を省いた8語の文とは組み立てが違う
ラパポート自身も、少なくとも2人の英語話者が別々に同じ文を見つけたことになる、とメールに書いています。英語を話す人なら、遊んでいるうちにたどり着いてしまう文なのかもしれません。最初にだれが考えたのかは、今も分かっていません。
05何個でも伸ばせる、意味も1つじゃない
この文は、まだまだ長くできます。ラパポートのページによると、1980年代のはじめに、バッファロー校の大学院生たちが「名詞を説明する部分の中に、さらに説明を入れていけば(入れ子にすれば)、いくらでも伸ばせる」と気づきました。
意味も1つに決まりません。5語の版は「ネコが追いかけるネズミは…」型のほかに、「バッファロー市のバイソンが、バッファロー市のバイソンをいじめる」とも読めます。MIT の人工知能研究所で、金曜の飲み会の案内として所内に送られた冗談のメール(ページに転載)では、buffalo を200個並べると、読み方は約1.2×10の26乗通り。書いた本人があとから、地名の Buffalo を目的語に使う読み方を数え忘れていたと認めている、あくまで遊びの数字です。
日本語にも「すもももももももものうち」(すももも桃も桃のうち)という早口言葉があります。同じ音が続くのに意味が通る、という点では buffalo の文のいとこのようなものです。
06まとめ
buffalo を8回並べただけの文が正しい英文になるのは、buffalo が地名・動物・動詞の1人3役をこなし、英語では名詞を説明する that を省けるからでした。考えた人は1972年の大学院生……と思いきや、もっと前から似た文があり、本当の生みの親は分かっていません。
英語の先生に会ったら、ぜひ「Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo. って、どういう意味ですか?」と聞いてみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1972, William Rapaport was a graduate student in philosophy at Indiana University.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Look at this sentence. "Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo." It is real English. Here the word "buffalo" has three jobs. Buffalo is a city in New York. A buffalo is a large animal, and the plural can also be "buffalo."
And as a verb, "to buffalo" means to scare or confuse someone. So the sentence means that animals from Buffalo that other animals from Buffalo bully also bully animals from Buffalo.
74 words ・ CEFR A2
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この文を見てください。「Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo.」これは本物の英語です。ここでは buffalo という単語が3つの仕事をしています。Buffalo はニューヨーク州の都市です。buffalo は大きな動物でもあり、複数形も buffalo のままでかまいません。そして動詞の to buffalo は、だれかをおどしたり、まごつかせたりすることです。
つまり、この文の意味はこうです。「ほかのバッファロー市の動物にいじめられているバッファロー市の動物も、バッファロー市の動物をいじめる」
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
buffalo だけでできた文が本物の英語だ、という話なので B。
Q2. How many jobs does the word "buffalo" have in the sentence?
Here the word "buffalo" has three jobs とあるので C。8は文の語数。
Q3. In the passage, what does "bully" mean?
動詞の buffalo は to scare or confuse someone と説明されていて、その意味で bully が使われているので B。
In 1972, William Rapaport was a graduate student in philosophy at Indiana University. His teacher showed the class an odd sentence, "Dogs dogs dog dog dogs," which follows the same pattern as "Mice cats chase eat cheese." The students wanted a nicer word, one without the plural -s. Rapaport chose "buffalo," which works as a city name, an animal, and a verb meaning "to bully."
His five-word sentence, "Buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo," became a favorite in his classes. In 1994, the psychologist Steven Pinker put an eight-word version in a popular book about language. He named one of his own students as its creator. When Rapaport wrote to him, Pinker replied that he believed the student had come up with it on her own.
125 words ・ CEFR B1
和訳を見る
1972年、ウィリアム・ラパポートはインディアナ大学の哲学の大学院生だった。先生はクラスに「Dogs dogs dog dog dogs」という変わった文を見せた。これは「Mice cats chase eat cheese(ネコが追いかけるネズミはチーズを食べる)」と同じ形の文だ。学生たちは、複数形の -s がつかない、もっといい単語がほしかった。ラパポートが選んだのは buffalo。
都市の名前にも、動物にも、「いじめる」という意味の動詞にもなる語だ。彼の5語の文「Buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo」は、彼の授業のお気に入りになった。1994年、心理学者スティーブン・ピンカーは、言語についての人気の本に8語の版をのせた。彼は考えた人として、自分の学生の名前を挙げた。ラパポートがメールを送ると、ピンカーは、その学生も自分で思いついたのだと思う、と返事をした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ラパポートが文を考え、ピンカーが本で紹介した経緯の話なので A。
Q2. Why did the students look for a new word?
The students wanted a nicer word, one without the plural -s とあるので C。
Q3. What does Pinker's reply suggest?
学生も自分で思いついたとピンカーが考えていることから、別々の人が同じ文を発明した可能性がある、と分かるので B。
Rapaport has a page on the University at Buffalo website about the history of the sentence. He says he built the five-word version in 1972 and was using it in class by 1976.
But other claims kept arriving. Steven Pinker had credited a student of his own. Robert Berwick of MIT wrote that he had read a buffalo sentence as a boy of about ten, so before 1972, and his 1987 book with two colleagues also discusses "Police police police police police." A reader then pointed to a 1967 book of word puzzles by Dmitri Borgmann that already had four buffaloes in a row.
So the trick seems to be something English speakers keep finding on their own, and nobody can say who was first. The sentence also has no fixed length or single meaning. By nesting one description inside another, you can stretch it as far as you like. In a joke email to his lab, one MIT researcher worked out that 200 buffaloes could be read in about a hundred million billion billion ways. Later he admitted that his count had left some readings out.
187 words ・ CEFR B2
和訳を見る
ラパポートは、ニューヨーク州立大学バッファロー校のウェブサイトに、この文の歴史をまとめたページを持っている。彼によれば、自分は1972年に5語の版を作り、1976年には授業で使っていた。
しかし、ほかの人の主張が次々と届いた。スティーブン・ピンカーは自分の学生の手柄としていた。マサチューセッツ工科大学のロバート・バーウィックは、10歳くらいの子どものころ、つまり1972年より前に buffalo の文を読んだと書いてきた。そして彼が2人の同僚と書いた1987年の本でも「Police police police police police」が取り上げられている。さらにある読者は、ドミトリ・ボルグマンの1967年の言葉パズルの本に、buffalo が4つ並んだ文がすでにあると指摘した。
つまりこの仕掛けは、英語を話す人がそれぞれ自分で見つけてしまうもののようで、だれが最初かはだれにも言えない。この文には決まった長さも、1つだけの意味もない。説明の部分を入れ子にしていけば、好きなだけ伸ばせる。マサチューセッツ工科大学のある研究者は、研究所あての冗談のメールで、buffalo を200個並べると約1億×10億×10億通りに読める、と計算してみせた。のちに彼は、その数え方では漏れている読み方があったと認めている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
だれが最初か分からないこと、長さも意味も決まっていないことが中心なので B。
Q2. Which is the earliest record mentioned in the passage?
ボルグマンの本は1967年で、ラパポートの1972年、バーウィックの本の1987年より前なので C。
Q3. How does the writer treat the number of possible readings for 200 buffaloes?
a joke email とあり、のちに his count had left some readings out と認めているので B。
重要単語
- buffaloC1動詞(口語)おどす;まごつかせるI was buffaloed by the last question on the test.
受け身で使うことが多い。名詞の buffalo(スイギュウ・バイソン)は複数形が buffalo / buffaloes / buffalos のどれでもよい。 - bisonB2名詞バイソン、野牛Bison once lived all over the plains of North America.
単数も複数も bison。アメリカでは buffalo とも呼ぶが、もともと buffalo はスイギュウなどを指した。 - grammaticalB2形容詞文法的に正しいThe sentence sounds strange, but it is grammatical.
grammar(文法)の形容詞。反対は ungrammatical。「自然な」とは別の話で、文法的でも不自然な文はある。 - relative clauseB2名詞関係詞節In "the book that I read," "that I read" is a relative clause.
目的格の that / which / who は省略できる。buffalo の文はこの省略がカギ。 - ambiguousB2形容詞あいまいな、二通り以上に取れるThe sign was ambiguous, so we took the wrong road.
頭の ambi- はラテン語で「周りに・両側に」。名詞は ambiguity。入試の英文でよく見る。 - dogC1動詞しつこくつきまとう、(不運などが)ついて回るBad luck dogged the team all season.
動物名が動詞になる例。Dogs dogs dog dog dogs. はこの動詞を使った文。 - bullyB1動詞・名詞いじめる;いじめっ子Nobody has the right to bully other people.
be bullied「いじめられる」。動詞の buffalo の説明によく使われる語。
公式・一次情報をチェック
- LINGUIST List 3.175(1992年、ラパポートの投稿)linguistlist.org
- buffalo(Dictionary.com)dictionary.com
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「Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo.」は打ち間違いではなく、文法的に正しい英文。buffalo は地名(ニューヨーク州バッファロー)、動物(バイソン)、動詞(いじめる)の1人3役。意味は「バッファローのバイソンにいじめられたバッファローのバイソンが、バッファローのバイソンをいじめる」。
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出典・参考文献(9件)タップで表示
- Rapaport (2006–2015) A History of the Sentence "Buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo.", ニューヨーク州立大学バッファロー校cse.buffalo.edu
- Rapaport (1992) Re: Parsing Challenges, LINGUIST List 3.175linguistlist.org
- Pinker, S. (1994) The Language Instinct. New York: William Morrow(該当ページの本文を Internet Archive の全文検索で確認)archive.org
- Borgmann, D. A. (1967) Beyond Language: Adventures in Word and Thought. New York: Charles Scribner's Sons(Problem 84 "Repetitive Homonymy" と解答を Internet Archive の全文検索で確認)archive.org
- Barton, G. E., Jr., Berwick, R. C. & Ristad, E. S. (1987) Computational Complexity and Natural Language. Cambridge, MA: MIT Press(buffalo と police の文を Internet Archive の全文検索で確認)archive.org
- Eckler, A. R., Jr. (2005) The Borgmann Apocrypha. Word Ways 38(4): 258–260digitalcommons.butler.edu
- American Heritage Dictionary, 5th ed.「buffalo」(Word History つき)ahdictionary.com
- Dictionary.com「buffalo」dictionary.com
- American Heritage Dictionary, 5th ed.「dog」「police」(動詞)ahdictionary.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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