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MOON MYTHS & LEGENDS

満月の夜は事件や救急が増える? lunatic(月→狂気)の語源も

「今夜は満月だから、救急がいそがしくなるぞ」――病院や警察で働く人の間で、そんな会話が交わされることがあるそうです。英語の lunatic という言葉にも「月」がかくれています。月と人の心の関係は、昔から多くの人が気にしてきたテーマなのです。

まずは結論

科学の答え:関係は見つかっていない

37の研究をまとめて分析した1985年の研究や、救急外来・精神科の救急を調べた研究では、満月と事件・救急の数の間にはっきりした関係は見つかっていません。

このページは、言い伝えを大切にしている人を否定するためのものではありません。どうして生まれたのか、研究で何が分かっているのかを紹介します。最後に判断するのは、あなたです。

言い伝えの中身

「満月の夜は、けんかや事件が増える」「救急車の出動が多くなる」「心の調子をくずす人が増える」――こうした話は、日本でも世界でも聞かれます。

英語の lunatic(ルナティック)は、「正気でない人」を表す古い言葉で、その中には「月」を表すラテン語 luna(ルナ)が入っています。

どうして生まれた?

古代ギリシャやローマの時代から、ヨーロッパでは「月の満ち欠けが人の心を変える」と考えられていました。月に影響された、という意味のラテン語 lunaticus が、フランス語を通って英語の lunatic になりました。

街灯のない時代、明るい満月の夜は、人びとが外を出歩きやすい夜でした。人が多く出歩けば、そのぶんいろいろなできごとも起こりやすかったのかもしれません。

また、「満月の夜にいそがしかった」という記憶は残りやすく、そうでない夜のことは忘れられやすいものです。だれにでもあるこの心のくせ(確証バイアス)も、言い伝えが強く信じられる理由のひとつと考えられています。

世界ではどう?

英語には、月に関係する「心」の言葉がほかにもあります。moonstruck(ムーンストラック)は「月に打たれた」という意味で、いまは「恋にうっとりした」「ぼうっとした」という意味でよく使われます。

日本語には、月を見て心を動かされる「月に浮かれる」のような表現はありますが、月が人をくるわせるという考え方は、ヨーロッパほど強くはありませんでした。

科学で分かっていること

The Moon and Orientale basin from Orion
画像:NASA

この言い伝えは、たくさんの研究者が確かめてきました。

1985年、アメリカとカナダの心理学者ロットンさんとケリーさんは、月と人の行動(事件、精神科への入院、相談の電話など)を調べた37の研究をまとめて分析しました(メタ分析)。その結果、月の満ち欠けと人の行動の間に、はっきりした関係は見つかりませんでした。

1996年には、アメリカの救急外来の患者数を調べた研究が発表されました。題名は「満月と救急外来の患者数:言い伝えを掘りおこす」。満月の夜に患者が増えるという関係は見られませんでした。

2005年には、アメリカのメイヨー・クリニックの医師たちが、満月の夜の精神科救急の受診を調べましたが、満月の夜に増えるという結果は出ませんでした。2015年の論文も、病院への入院数に月の影響の証拠はない、としています。

このように、大きなデータで調べると、満月と事件・救急の数の関係は見つかっていません。それでも「満月はいそがしい」と感じる人が多いのは、記憶のくせが関係していると考えられています。

参考にした研究・資料

Rotton J & Kelly IW(1985)Psychological Bulletin 97巻

月と人の行動についての37の研究をまとめたメタ分析。月の満ち欠けとの関係は見られず。

論文・資料を見る ↗
Thompson DA & Adams SL(1996)American Journal of Emergency Medicine 14巻

「The full moon and ED patient volumes: unearthing a myth」。満月と救急外来の患者数に関係は見られず。

論文・資料を見る ↗
Kung S & Mrazek DA(2005)Psychiatric Services 56巻

メイヨー・クリニックの精神科救急の受診数を調べ、満月の夜に増えるという結果は出なかった。

論文・資料を見る ↗
Margot JL(2015)Nursing Research 64巻

入院数や出生数に月の影響の証拠はない、という見直しの論文。

論文・資料を見る ↗

英語では?

lunatic

ラテン語 luna(月)から。古い言葉で「正気でない人」。いまは病気の人を指して使うと、とても失礼な言葉とされます。日常では「むちゃな人」くらいの意味で使われます

Only a lunatic would drive that fast!あんなにスピードを出すなんて、むちゃくちゃだ!

lunar

月の

A lunar eclipse will happen next month.来月、月食が起こります。

moonstruck

(恋に)うっとりした、ぼうっとした

He looked moonstruck when he saw her.彼女を見て、彼はうっとりしていた。

over the moon

大喜びで(月を飛びこえるほどうれしい)

I was over the moon when I passed the test.テストに合格して、大喜びだった。

よくある質問

満月の夜は、本当に事件や救急が増えるの?

37の研究をまとめた1985年の分析や、救急外来・精神科救急を調べた研究では、満月と事件・救急の数の間にはっきりした関係は見つかっていません。

それなのに、なぜ「満月は増える」と感じるの?

満月の夜にいそがしかった記憶は強く残り、そうでない夜は忘れやすいという、だれにでもある心のくせ(確証バイアス)が関係していると考えられています。

lunatic はどうして「月」なの?

昔のヨーロッパでは、月の満ち欠けが人の心を変えると考えられていたからです。ラテン語の luna(月)から生まれた言葉です。いまは病気の人を指して使うと失礼な言葉なので、注意しましょう。

参考にした資料

研究の数字は、それぞれの論文の要旨・公式資料にもとづいています。新しい研究で分かることが変わる場合もあります。

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