言い伝えの中身
「満月の日は陣痛が始まりやすい」「満月の前後は分娩室がいそがしい」という話は、日本だけでなく世界の多くの国で語られています。
海の潮が月に引っぱられるように、おなかの赤ちゃんやお母さんの体も月に引っぱられるのでは、という説明がそえられることもあります。
どうして生まれた?
月の満ち欠けの周期は約29.5日。人の体のリズムにも近い長さで、昔から月と出産は結びつけて考えられてきました。日本語にも、出産予定の月を表す「臨月」のように、「月」を使う言葉があります。
昔のこよみは、月の満ち欠けで日を数えていました。月はくらしの時計そのものだったので、命の誕生と月を結びつけるのは、とても自然なことでした。
また、人はいつもとちがう印象的なできごとを、よく覚えています。「満月の夜にいそがしかった」という記憶は残りやすく、そうでない夜は忘れられやすいもの。これは心理学で「確証バイアス」とよばれる、だれにでもある心のくせです。
世界ではどう?
ヨーロッパやアメリカでも、「full moon(満月)にはお産が増える」という話は病院でよく聞かれる、と研究論文の中でも紹介されています。
月と命を結びつける考え方は世界中にあり、月の女神が出産を守るという神話も、いろいろな地域に伝わっています。
科学で分かっていること

この言い伝えを確かめるため、世界中でたくさんの出産の記録が調べられてきました。
アメリカ・ノースカロライナ州の5年分、約56万件の出産を調べた研究では、月の満ち欠けの8つの時期の間で、出生数にも、出産の方法にも、出産時のトラブルにも、はっきりした差は見られませんでした。
ドイツ南西部の約400万件(407万1669件)の出産を調べた研究でも、月のリズムと出生数の関係は見つかっていません。アメリカの天文学者が、入院や出産についての研究を見直した2015年の論文も、「月の影響の証拠は見られない」と結論しています。
潮の満ち引きは、何千kmもの広さがある海だから起こる現象です。人の体くらいの大きさでは、月の引力の差はとても小さく、体に「潮」が起こることはありません。
なお、実際の出生数の記録では、月の満ち欠けよりも「平日か、休日か」で差が出ることが知られています。予定して行う出産が、病院の体制が整った平日に多いためです。
参考にした研究・資料
ノースカロライナ州 1997〜2001年の出生 564,039件(62回の月のサイクル)。出生数・出産方法・合併症に月の時期による差なし。
論文・資料を見る ↗ドイツ南西部の出生 4,071,669件をスペクトル解析。月の周期との関係は見られず。
論文・資料を見る ↗英語では?
出産予定日
My sister's due date is next week.姉の出産予定日は来週です。
出産する
She gave birth to a healthy baby.彼女は元気な赤ちゃんを出産した。
月の満ち欠けの周期(約29.5日)
A lunar cycle is about 29.5 days long.月の満ち欠けの周期は約29.5日です。
昔から伝わる言い伝え(科学的な根拠がはっきりしないもの)
Is that just an old wives' tale?それって、ただの言い伝え?
よくある質問
満月の日は本当に出産が増えるの?
アメリカで約56万件、ドイツで約400万件の出産を調べた研究などで、月の満ち欠けによる出生数の差は見つかっていません。満月の日に出産が増えるという科学的な証拠は、いまのところありません。
どうして「満月に出産が増える」と言われるの?
月の満ち欠けの周期が人の体のリズムに近いこと、昔は月でこよみを数えていたこと、そして満月の夜のいそがしかった記憶が強く残りやすいことなどが、理由として考えられます。
月の引力が、おなかの赤ちゃんに影響することはある?
潮の満ち引きは、何千kmもの広さがある海だから起こります。人の体くらいの大きさでは月の引力の差はとても小さく、体に影響するほどの力ははたらきません。
出産の日を月で予想できる?
月の満ち欠けで出産日を予想することはできません。体調や出産の時期については、かかりつけの医師や助産師に相談してください。
参考にした資料
研究の数字は、それぞれの論文の要旨・公式資料にもとづいています。新しい研究で分かることが変わる場合もあります。
