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日本語のマジか!?ホント

「おもむろに」を“不意に”の意味だと思う20代は70.1%。「やおら」も本当は“ゆっくり”

「おもむろに」を“不意に”の意味だと思う20代は70.1%。「やおら」も本当は“ゆっくり”

読む前に予想してみよう!

「彼はやおら立ち上がった」の「やおら」は「急に、いきなり」という意味だ

研究カード(どんな研究?)
対象
全国の16歳以上の男女
規模
1,943人(2007年)・1,942人(2015年)・2,022人(2018年)
研究の種類
全国世論調査(個別面接)+辞書の記述
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「やおら」も「おもむろに」も本来は「ゆっくり」。文化庁の調査では「やおら」を「急に」と答えた人が43.7%で、本来の意味を選んだ人より多かった。また「おもむろに」は20代の70.1%が「不意に」を選んだ。

ひとことで言うと「やおら立ち上がる」は「ゆっくり立つ」こと。「急に」じゃないんだって!

もくじ
  1. 「やおら」は“急に”と答えた人が多かった
  2. 「おもむろに」は年代で真っ二つ
  3. 1000年前から「そっと、静かに」
  4. 英語では slowly と suddenly
  5. どんでん返し:11年後、「急に」と答える人は減っていた
  6. まとめ

「彼はやおら立ち上がった」

小説などで見かけるこの一文。あなたの頭の中で、彼はどんな動きをしましたか? ガタッと勢いよく? それとも、ゆっくりと?

正解は「ゆっくりと」です。ところが文化庁の調査では、「急に、いきなり」と答えた人が43.7%。本来の意味「ゆっくりと」を選んだ人(40.5%)より多かったのです。そっくりな言葉の「おもむろに」にいたっては、20代の70.1%が「不意に」の意味だと答えています。

01「やおら」は“急に”と答えた人が多かった

本来の意味を選んだ人と、そうでない意味を選んだ人が、どちらも4割台で並びました。わずかに「急に」を選んだ人のほうが多かったのです。

地域によっても差があります。「ゆっくりと」は北陸で60.0%、九州で55.2%と高く、「急に」を大きく上回りました。一方、関東では「急に」が51.2%で、「ゆっくりと」は35.8%でした。2018年の調査でも、九州(48.2%)は中国(48.4%)とならんで、「ゆっくりと」がほかの地域より高めでした。

02「おもむろに」は年代で真っ二つ

「やおら」の仲間に「おもむろに」があります。デジタル大辞泉は「おもむろに」を「落ち着いて、ゆっくりと行動するさま」と説明し、「やおら」の説明にも「おもむろに」と書いています。つまり二つは、ほぼ同じ意味の言葉です。

全体では本来の意味を選んだ人がわずかに多い。でも年代別に見ると、16〜19歳から40代までは「不意に」を選んだ人が6割台から7割。60代から上では「ゆっくりと」が多数でした。20代と70歳以上では、「不意に」を選んだ人の割合が10倍以上ちがいます。

同じ文章を読んでも、20代の読者と70代の読者では、頭に浮かぶ場面が正反対になっているかもしれないのです。

「おもむろに」を「不意に」の意味だと答えた人は、20代で70.1%、70歳以上で6.9%(文化庁、2015年)
「おもむろに」を「不意に」の意味だと答えた人は、20代で70.1%、70歳以上で6.9%(文化庁、2015年)

031000年前から「そっと、静かに」

「やおら」はとても古い言葉です。

精選版 日本国語大辞典によると、「やおら」は「静かに身を動かすさま」「徐々に事を行うさま」をあらわし、最初の例は平安時代の『宇津保物語』(970〜999年ごろ)です。デジタル大辞泉には、『源氏物語』で姫君が硯(すずり)を「やおら」引き寄せる場面が「静かに。そっと」の例として載っています。

日本国語大辞典には、こんな注があります。「やおら」は「やわら(柔)」と同じところから来た言葉だとすれば、昔のかなづかいは「やほら」だった可能性もある、と書かれています。あくまで可能性ですが、もしそうなら「やおら」は「やわらかく」に近い感覚の言葉だったことになります。

「おもむろに」の漢字は「徐に」。「徐行」の「徐」です。辞書によると、徐行は「速力を落としてゆっくりと進むこと」。漢字を思い出せば、「おもむろに」が「ゆっくり」だと分かります。

04英語では slowly と suddenly

英語にすると、二つの意味のちがいははっきりします。

  • 本来の意味:He slowly stood up.(彼はやおら立ち上がった)
  • 本来ではない意味:He suddenly stood up.(彼は急に立ち上がった)

オックスフォードの学習辞典では、sudden は「すばやく、予想外に起こる」こと。All of a sudden(突然)という熟語もあります。「やおら」や「おもむろに」は、このどちらとも反対の、落ち着いた、ゆっくりした動きをあらわす言葉です。英語の calmly(落ち着いて)も使って、He stood up slowly and calmly. と訳すと近い感じになります。

05どんでん返し:11年後、「急に」と答える人は減っていた

では、「やおら」の取りちがえは広がり続けているのでしょうか。

2018年3月の調査(平成29年度、答えた人は2,022人)で、同じ例文がもう一度使われました。結果は「ゆっくりと」39.8%、「急に、いきなり」30.9%。「急に」を選んだ人は13ポイント減り、本来の意味を選んだ人のほうが多くなりました。

ただし、本来の意味を選んだ人が増えたわけではありません(40.5%→39.8%)。増えたのは「分からない」で、14.4%から23.5%になりました。「急に」が減った分は、「ゆっくり」ではなく「よく分からない」のほうへ回ったように見える数字です。

もう一つ注意したいのは、たずね方のちがいです。2007年は「どの意味で使っているか」、2018年は「どちらの意味だと思うか」でした。答えた人も別の人たちなので、同じ人が考えを変えたわけではありません。

年代別では、60代は「ゆっくりと」が48.3%と高い一方、16〜19歳は「急に」と「ゆっくりと」が39.8%で同じ、20代と30代は「急に」を選んだ人がわずかに多い結果でした。「やおら」という言葉にふれる機会そのものが、減っているのかもしれません。ただしこれは推測で、調査ではそこまで確かめていません。

06まとめ

「やおら」も「おもむろに」も、本来は「ゆっくりと」。それでも「やおら」は一時「急に」と答えた人のほうが多くなり、「おもむろに」は20代の7割が「不意に」と答えていました。

平安時代から「静かに、そっと」の意味で使われてきた言葉ですが、いまは読む人の年代によって、思い浮かべる動きが正反対になることがあります。小説で出会ったら「徐行の徐」を思い出して、ゆっくり立ち上がる人物を思い浮かべてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf a character in a Japanese novel stands up "yaora," how does he move? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

If a character in a Japanese novel stands up "yaora," how does he move? The traditional meaning is "slowly and calmly." But in a 2007 survey by the Agency for Cultural Affairs, 43.7 percent of people chose "suddenly," and only 40.5 percent chose "slowly." The answers also varied by region. In Hokuriku, 60 percent chose "slowly," but in Kanto, more than half chose "suddenly."

A similar word, "omomuro ni," shows a big gap between age groups. In 2015, 70.1 percent of people in their twenties thought it meant "suddenly," while only 6.9 percent of people aged 70 or over did. A young reader and an older reader may picture the same scene in opposite ways.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本の小説の登場人物が「やおら」立ち上がったら、その人はどう動くのだろうか。本来の意味は「ゆっくりと落ち着いて」だ。しかし文化庁が2007年に行った調査では、43.7%の人が「急に」を選び、「ゆっくりと」を選んだのは40.5%だけだった。答えは地域によってもちがっていた。北陸では60%が「ゆっくりと」を選んだが、関東では半数以上が「急に」を選んだ。

似た言葉の「おもむろに」には、年代の間に大きな差が見られる。2015年、20代の70.1%がこの言葉を「急に」という意味だと考えていたのに対し、70歳以上ではわずか6.9%だった。若い読者と年配の読者は、同じ場面を正反対に思い描いているかもしれない。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. Which region had the highest rate for "slowly" in the passage?

Q3. What does the writer suggest in the last sentence?

重要単語

  • slowlyA1
    副詞ゆっくりとHe slowly stood up and walked to the window. slow(遅い)+-ly。「やおら」「おもむろに」の本来の意味に近い。
  • suddenlyA2
    副詞急に、不意にSuddenly, the lights went out. 形容詞は sudden。「やおら」「おもむろに」の本来ではない意味がこれ。
  • all of a suddenB1
    熟語突然、いきなりAll of a sudden, it started to rain. suddenly と同じ意味の会話的な言い方。文頭に置くことが多い。
  • calmlyB1
    副詞落ち着いてShe calmly opened the letter. calm の l は発音しない(カーム)。stay calm「落ち着いている」。
  • adverbB1
    名詞副詞"Slowly" is an adverb. ad-(〜に加えて)+verb(動詞)。動詞に意味をそえる語、という成り立ち。
  • misreadB2
    動詞読みちがえる、誤解するMany readers misread the word. mis-(誤って)+read。過去形・過去分詞も misread(発音はミスレッド)。
  • respondentC1
    名詞(調査の)回答者Almost a quarter of the respondents said "I don't know." respond(答える)+-ent(人)。調査・統計の英文でよく出る。

動画でもっと知る

「やおら立ち上がる」「おもむろに口を開く」は、どちらも本来「ゆっくり」。でも文化庁の調査では「やおら」を「急に」と答えた人が43.7%。「おもむろに」を「不意に」と答えた人は20代で70.1%、70歳以上では6.9%だった。

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出典・参考文献(7件)タップで表示
  1. 文化庁 (2007) 平成18年度「国語に関する世論調査」報告書(93・98ページ)bunka.go.jp
  2. 文化庁 (2018) 平成29年度「国語に関する世論調査」報告書(72・74ページ)bunka.go.jp
  3. 文化庁 (2015) 平成26年度「国語に関する世論調査」の結果の概要(18ページ)bunka.go.jp
  4. 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉「やおら」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  5. デジタル大辞泉「徐に」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  6. デジタル大辞泉「徐行」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  7. 文化庁 (2015) 平成26年度「国語に関する世論調査」報告書(82ページ)bunka.go.jp

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