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「マジックテープ」は日本の会社の商品名。英語では Velcro、発明のヒントはゴボウの実

「マジックテープ」は日本の会社の商品名。英語では Velcro、発明のヒントはゴボウの実

読む前に予想してみよう!

マジックテープ(面ファスナー)は、NASA が宇宙開発のために発明した

研究カード(どんな研究?)
対象
面ファスナーの発明と名前
規模
公式資料・国際機関・辞書・百科事典
研究の種類
文献調査(公式資料と辞書の照合)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

マジックテープはクラレの登録商標。英語では Velcro か hook and loop。Velcro はフランス語の velours(ビロード)+crochet(かぎ)で、ヒントは犬の毛についたゴボウの実だった。

ひとことで言うとマジックテープは、ゴボウの実が服にくっつくしくみをまねして作られたんだって!

もくじ
  1. 「マジックテープ」は英語で何と言う?
  2. Velcro の語源は「ビロード」と「かぎ」
  3. そのゴボウ、根を野菜として食べる国はほとんどない
  4. おまけ1:ベロアもベルベットも「もじゃもじゃの毛」から
  5. おまけ2:「かぎ」の crochet は、音楽とスポーツにもいる
  6. どんでん返し1:ベルクロ社は「Velcro と言わないで」と頼んでいる
  7. どんでん返し2:NASA の発明ではない。そして「実」の種類も資料で分かれる
  8. まとめ

靴やかばんでおなじみの「マジックテープ」。ベリッとはがして、ギュッと押すとくっつく、あのテープです。

じつはこの「マジックテープ」、日本の会社クラレの商品名(登録商標)です。クラレ自身も英語のサイトでは、製品の一般名を hook and loop fastener と書いています。英語でいちばん知られた呼び名は Velcro(ベルクロ。英語の発音は「ヴェルクロウ」に近い)。

その Velcro という名前は、フランス語の velours(ビロード) と crochet(かぎ) を組み合わせて作った名前。そして発明のヒントは、スイスの技師の犬の毛にくっついたゴボウの実でした。

01「マジックテープ」は英語で何と言う?

クラレファスニングの公式サイトによると、

  • 〈マジックテープ®〉は株式会社クラレの面ファスナーの登録商標
  • 日本では1960年、クラレが最初に生産・販売を始めた。名前は、2本の布がピタリとくっつき、自由に着けたりはずしたりできる「魔法のテープ」という意味
  • 名前が全国に広まったきっかけは、1964年に開業した東海道新幹線で、座席の頭の部分にかけるカバー(ヘッドレストカバー)の留め具に使われたこと

一般の名前(どの会社の製品にも使える呼び名)は、日本語では「面ファスナー」。英語では hook and loop(フック・アンド・ループ) です。かぎ(hook)と輪(loop)でくっつくから、この名前です。

  • My shoes close with hook and loop.(ぼくの靴は面ファスナーで留めるタイプだよ)

02Velcro の語源は「ビロード」と「かぎ」

英語の Velcro も、じつは面ファスナーを最初に作った会社、ベルクロ社(Velcro)の商標です。名前の由来は、同社の公式サイトと、国連の専門機関である世界知的所有権機関(WIPO)の解説で確かめられます。

ゴボウの実は、山を歩くと服にくっつく、いわゆる「ひっつき虫」です。ベルクロ社によると、ド・メストラルは払い落として終わりにせず、「なぜこんなにしっかりくっつくのか」と考えたのでした。

03そのゴボウ、根を野菜として食べる国はほとんどない

日本人にとってゴボウは、きんぴらや豚汁に入れる野菜です。ところが『日本大百科全書』によると、ゴボウ(学名 Arctium lappa)は「いまは日本独特の野菜で、外国では食用とされていない」。『改訂新版 世界大百科事典』も「日本人以外はほとんど利用しない」と書いています。ただし、小学館の『食の医学館』は、ゴボウを食用にしているのは「韓国とわが国だけ」としています。

アメリカの辞書 AHD は burdock を「ゴボウ属の植物。根は食べられ、花を包むトゲのある部分(苞=ほう)がいが(burs)になる」と説明します。ヨーロッパの森で犬にくっついて困らせた「いが」と、日本の食卓のゴボウは、同じ仲間の植物なのです。

ゴボウの実のトゲの先は小さなかぎになっていて、布の輪や動物の毛に引っかかる。面ファスナーはこれをまねた
ゴボウの実のトゲの先は小さなかぎになっていて、布の輪や動物の毛に引っかかる。面ファスナーはこれをまねた

04おまけ1:ベロアもベルベットも「もじゃもじゃの毛」から

Velcro の vel にあたる velours は、フランス語で「ビロード」。AHD によると、英語の velour(ベロア) はこの velours から、velvet(ベルベット) も同じく、ラテン語の villus(もじゃもじゃの毛) にさかのぼります。

日本語の「ビロード」は、ブリタニカ国際大百科事典などによると、ポルトガル語の veludo かスペイン語の velludo がなまった言葉で、ベルベットと同じ布です。16世紀ごろ、ポルトガルやスペインの南蛮船が日本に持ちこみました。

Velcro の vel、ベロア、ベルベット、そしてビロード。カタカナにすると別々に見えますが、どれも毛足の長い布を指す言葉につながっています。

05おまけ2:「かぎ」の crochet は、音楽とスポーツにもいる

Velcro の cro の crochet は、英語でもそのまま crochet(クロウシェイ、かぎ針編み) として使います。オックスフォードの学習辞典によると、語源はフランス語で「小さなかぎ」。

この「小さなかぎ」は、意外な場所にもいます。

  • crotchet(クロチット):イギリス英語で「四分音符」。オックスフォードの学習辞典によると、中英語では「かぎ」の意味だった。アメリカ英語では quarter note
  • croquet(クロッケー):木づちで球を打って小さな門をくぐらせる芝生の球技。AHD はフランス語の方言の「ホッケーのスティック」、さらに「羊飼いの杖」から来たとしている。オックスフォードの学習辞典は「たぶん crochet(かぎ)の方言形」と、少し慎重な書き方

かぎ針編み、四分音符、そして(たぶん)クロッケー。どれも「かぎ」から名前をもらった言葉です。

06どんでん返し1:ベルクロ社は「Velcro と言わないで」と頼んでいる

英語圏では、面ファスナーなら何でも velcro と呼ぶ人が多くいます。これに困っているのが、当のベルクロ社です。

同社は2017年9月、「Velcro と言わないで、hook and loop と言って」と、弁護士に扮した合唱団が歌うミュージックビデオを公開しました。同社の説明では、VELCRO® は自社製品にだけ使える登録商標で、名詞や動詞として使ってはいけない。ほかの会社の製品は hook and loop などと呼んでほしい、というのです。商品名が一般の言葉になってしまうと、商標として守れなくなるおそれがあるからです。

日本の「マジックテープ」と、英語の「Velcro」。両方とも、会社の商標が一般の言葉のように広まった、よく似た例です。

07どんでん返し2:NASA の発明ではない。そして「実」の種類も資料で分かれる

「面ファスナーは NASA が宇宙用に発明した」という話を聞いたことがあるかもしれません。でも NASA 自身が、技術の民間活用を紹介するサイト(Spinoff)の「よくある質問」で、ちがうと答えています。Velcro は1940年代にスイスの技師が発明したもので、アポロ計画で宇宙飛行士の道具を固定するのに多く使われたため、NASA と結びつけられた、と説明しています。

もう1つ。日本の『ブリタニカ国際大百科事典』(小項目事典)は、ド・メストラルがヒントを得たのを「オナモミの実」、発明を「1948年」と書いています。オナモミも、服にくっつく代表的な「ひっつき虫」です。一方、ベルクロ社と WIPO はどちらも「ゴボウ(burdock)の実」「1941年」の狩り、としています。この記事では発明者の会社と WIPO の説明にしたがいましたが、資料によって書き方が分かれていることは覚えておいてください。

08まとめ

「マジックテープ」はクラレの商品名で、英語なら Velcro か hook and loop。Velcro は velours(ビロード)+crochet(かぎ)で、ヒントは犬の毛にくっついたゴボウの実でした。

ヨーロッパでは、ゴボウは犬や服にくっつく「いが」の植物。日本では、根をきんぴらにして食べる野菜。同じ植物から、世界中で使われる留め具の発明と、日本の食卓のおかずが生まれたのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerJapanese people often call hook-and-loop fasteners "Magic Tape," but the name is a registered trademark of… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Japanese people often call hook-and-loop fasteners "Magic Tape," but the name is a registered trademark of the company Kuraray, which started making them in Japan in 1960. English speakers often say "Velcro." That word was made up by George de Mestral, a Swiss engineer. In 1941, he came back from a hunting trip and found burdock burrs stuck to his pants and his dog's fur.

Under a microscope, he saw that each burr was covered with tiny hooks that caught on loops of thread. He copied the idea with one strip of hooks and one strip of loops. Then he named it after the French words "velours" (velvet) and "crochet" (hook).

111 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本人は面ファスナーをよく「マジックテープ」と呼ぶが、この名前は、1960年に日本で面ファスナーを作り始めたクラレという会社の登録商標だ。英語を話す人たちはよく「Velcro」と言う。この言葉は、スイスの技師ジョルジュ・ド・メストラルが作ったものだ。1941年、彼は狩りから帰ってきて、ズボンと犬の毛にゴボウの実がくっついているのに気づいた。

顕微鏡で見ると、どの実も、糸の輪に引っかかる小さなかぎで覆われていた。彼はこのしくみを、かぎの帯と輪の帯の2本でまねた。そして、フランス語の velours(ビロード)と crochet(かぎ)にちなんで名前をつけた。

4択リーディングクイズ

Q1. According to the passage, who owns the name "Magic Tape"?

Q2. What did de Mestral use to look closely at the burrs?

Q3. What can be inferred about the invention?

重要単語

  • hook and loopB2
    名詞面ファスナーMy shoes close with hook and loop instead of laces. hook(かぎ)と loop(輪)でくっつくことから。名詞の前では hook-and-loop fastener のようにハイフンでつなぐ。
  • burrC1
    名詞(植物の)トゲのある実、いが、ひっつき虫The dog came home covered in burrs. bur とも書く。burdock(ゴボウ)の bur もこの語。
  • burdockC1
    名詞ゴボウ(の仲間)Burdock burrs stick to almost anything. AHD では bur(いが)+dock(ギシギシなどの草)。日本の食用ゴボウは edible burdock とも。
  • fastenerB2
    名詞留め具This bag has a magnetic fastener. fasten(留める)+-er。t は発音しない(ファスナー)。日本語の「ファスナー(チャック)」は英語では zipper が一般的。
  • trademarkB2
    名詞商標"Magic Tape" is a trademark in Japan. registered trademark で「登録商標」。記号は ®。
  • crochetC1
    名詞・動詞かぎ針編み;かぎ針で編むMy aunt crocheted this hat for me. 発音は「クロウシェイ」で最後の t は読まない。フランス語で「小さなかぎ」。
  • microscopeB1
    名詞顕微鏡Under a microscope, the burr was full of tiny hooks. micro-(小さい)+-scope(見る道具)。telescope(望遠鏡)も同じ -scope。
  • clingB2
    動詞しがみつく、くっつくWet sand clings to your feet. 過去形・過去分詞は clung。cling to ~ で「~にくっついて離れない」。

動画でもっと知る

「マジックテープ」はクラレの登録商標。英語でよく使われるのは Velcro(ベルクロ)。名前はフランス語の velours(ビロード)+crochet(かぎ)。発明のヒントは、スイスの技師の犬の毛にくっついたゴボウの実。そのゴボウの根を野菜として食べる国は、百科事典によると日本のほかにはほとんどない。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Velcro Companies (2026) How George de Mestral Invented the VELCRO® Brand Fastenervelcro.com
  2. WIPO(世界知的所有権機関)From a Mountain Walk to 2,100 Patents: The Velcro IP Storywipo.int
  3. クラレファスニング「〈マジックテープ®〉と呼べるのはクラレだけ」magictape.kuraray.com
  4. American Heritage Dictionary「velour」「velvet」「crochet」「crotchet」「croquet」「burdock」ahdictionary.com
  5. 改訂新版 世界大百科事典・日本大百科全書「ゴボウ」「ビロード」、ブリタニカ国際大百科事典「面ファスナー」(コトバンク)kotobank.jp

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