「うがった見方」は“ひねくれた見方”じゃない。本来は“本質をつく見方”、選んだ人は32.7%

読む前に予想してみよう!
「うがった見方」は、辞書では「疑ってかかる、ひねくれた見方」という意味だ
辞書の意味は「物事の本質をうまく的確に言い表す」見方。文化庁の2023年度調査では、60.7%が「疑って掛かるような見方」を選んだ。
- 対象
- 全国16歳以上(文化庁「国語に関する世論調査」)
- 規模
- 3,559人(2023年度)
- 研究の種類
- 全国世論調査(郵送法)+辞書・百科事典の記述
- 確かさ
- ★★★★☆
「うがった見方」は辞書では「物事の本質をうまく言い表す」ほめ言葉。文化庁の調査では60.7%が「疑って掛かるような見方」を選び、本来の意味を選んだ人は32.7%だった。
ひとことで言うと「うがった見方」は、じつは「するどい!」というほめ言葉なんだって!
もくじ
「それは、ずいぶんうがった見方だね」。
こう言われたら、「ひねくれた見方をするね」と皮肉られた気がしませんか? じつは辞書の意味では、これは「物事の本質をうまくついているね」というほめ言葉です。
文化庁の「国語に関する世論調査」では、本来の意味とされる「物事の本質を捉えた見方をする」を選んだ人は32.7%。「疑って掛かるような見方をする」を選んだ人は60.7%で、およそ2倍でした。
016割が「疑ってかかる見方」と答えた
若い人だけの話ではありません。どの年代でも「疑ってかかる見方」のほうが多く選ばれていました。
02「穿つ」は、穴をあけること
「うがった」は、動詞の「穿つ(うがつ)」から来ています。
『精選版 日本国語大辞典』(小学館)が最初に挙げる意味は「穴を掘る」で、720年の『日本書紀』に例があります。続いて「穴をあける。貫き通す」という意味があり、こちらは935年ごろの『土左日記』に例があります。
『デジタル大辞泉』は、この意味の例として「雨垂れが石を穿つ」「トンネルを穿つ」を挙げています。小さな雨だれでも、長い時間をかけて石に穴をあけてしまう、あの「穿つ」です。
そして辞書には、もう一つ大事な意味が載っています。
- デジタル大辞泉:人情の機微に巧みに触れる。物事の本質をうまく的確に言い表す。例「穿った見方」「彼の指摘は真相を穿っている」
- 日本国語大辞典:隠れた事情や細かい事実、また、世態や人情の機微を指摘する
「人情の機微」は、人の気持ちの細かな動きのこと。「世態」は世の中のありさまです。
「穴をあけて奥まで通す」という元の意味を思いうかべると、分かりやすくなります。「うがった見方」は、ものごとの表面に穴をあけて、その奥にある本当の姿を見ぬくような見方のことなのです。

03江戸の「うがち」は、人の“穴”をつく笑いだった
「穿つ」の名詞形「うがち」は、江戸時代の文学で大事な技法の名前にもなりました。
『世界大百科事典』(平凡社)の中野三敏さんの解説によると、江戸では、ふつうの人が気づかない世の中の現象や、人のくせ・欠点を「あな(穴)」と呼びました。その「穴」を指摘してみせる書き方が「うがち」です。1750年前後から目立つようになり、洒落本・滑稽本・黄表紙といった江戸の読み物の中心的な手法になったといいます。
ただし、目的は笑いでした。人がびっくりするような意外さや大げさな表現で、ものごとを裏側や横から見せて、おかしみを出したのです。
「うがった」の根っこには、「みんなが気づかない“穴”を見つける」という発想があったわけです。
04英語の penetrate も「貫く」から「見ぬく」へ
英語にも、「穿つ」とそっくりな単語があります。penetrate(ペネトレイト)です。
オックスフォードの学習辞典によると、penetrate のおもな意味は次の二つです。
- 何かの中に入る、通りぬける:The light could not penetrate through the thick curtains.(光は厚いカーテンを通らなかった)
- 分かりにくいことや隠れたことを理解する、見つけ出す:Science can penetrate many of nature's mysteries.(科学は自然のなぞの多くを解き明かせる)
形容詞の penetrating にも「物事をすばやく、完全に理解したことを示す」という意味があり、a penetrating question(核心をつく質問)のように使います。これはまさに「うがった質問」です。
一方、「ひねくれた見方」を英語で言うなら a cynical view です。cynical は「人は自分のためにしか動かない、と考える」という意味。「うがった」とはまったく別の言葉です。
05どんでん返し:本来の意味も“増えて”いた
ここで数字を見直してみましょう。2011年度と2023年度をくらべると、本来の意味(ア)を選んだ人は26.4%から32.7%に、(イ)を選んだ人も48.2%から60.7%に、どちらも増えています。
からくりは「分からない」にあります。2011年度は調査員が面接してたずねる方法で、「分からない」と答えた人が20.3%いました。2023年度は郵送の調査で、表に「分からない」の欄はありません(無回答は1.5%)。文化庁も、2019年度以前の結果は方法が違うので、参考として示す数字(参考値)にとどまり、比較には注意が必要だとしています。「本来の意味を知る人が減った」とも「増えた」とも、この数字だけでは言えないのです。
もう一つ。辞書には「穿ち過ぎ」ということばもあります。デジタル大辞泉の説明は「物事の本質や人情の機微をとらえようと執着するあまり、逆に真実からかけ離れてしまうこと」。本質を見ぬこうとしすぎると、かえって的外れになる、というわけです。
江戸の「うがち」が人の欠点をつく笑いだったことや、「穿ち過ぎ」ということばがあることを考えると、「うがった」に少しひねった、意地の悪い響きを感じる人がいても不思議はないのかもしれません。ただし、今回調べた辞書(デジタル大辞泉・日本国語大辞典)には、「疑ってかかる見方」という意味は載っていません。
06まとめ
「うがった見方」の「穿つ」は、雨だれが石に穴をあけるように、表面の奥まで通すこと。本来は「本質をつく、するどい見方」というほめ言葉です。
ただ、今は6割の人が「疑ってかかる見方」と受け取ります。ほめたつもりが皮肉に聞こえることもあるので、大事な場面では「するどいですね」と言いかえるのが安全です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf someone says you have an "ugatta mikata," you might feel hurt.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
"Ugatta mikata" is a Japanese phrase about how someone sees things. Many people think it means a doubtful, negative view. But in dictionaries, it has a good meaning. It means you can see the real point of something.
The verb "ugatsu" means "to make a hole." Over many years, rain dripping from a roof can make a hole in a stone. In a 2024 survey, only 32.7 percent of people chose the dictionary meaning.
74 words ・ CEFR A2
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「うがった見方」は、人のものの見方を表す日本語の言い方です。多くの人は、それが疑い深くて否定的な見方のことだと思っています。でも辞書では、良い意味の言葉です。物事の本当の要点が見えるという意味です。
動詞の「うがつ」は「穴をあける」という意味です。長い年月をかければ、屋根から落ちる雨だれが石に穴をあけることもあります。2024年の調査では、辞書の意味を選んだ人は32.7%だけでした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「うがった見方」の辞書の意味と、多くの人の受け取り方の違いの話なので B。
Q2. What does the verb "ugatsu" mean?
The verb "ugatsu" means "to make a hole." とあるので A。
Q3. In the passage, "doubtful" is closest in meaning to ...
doubtful は「疑っている」。negative, doubtful view は「疑い深い見方」なので B。
If someone says you have an "ugatta mikata," you might feel hurt. Most Japanese people now take the phrase to mean a suspicious way of looking at things. In a survey by the Agency for Cultural Affairs, 60.7 percent chose that meaning. Only 32.7 percent chose the meaning found in dictionaries, which is a view that gets to the heart of the matter.
The phrase comes from the verb "ugatsu," which means to make a hole or to go through something. Later, the verb also came to mean pointing out hidden facts. So, in its original sense, the phrase is praise. The survey was carried out by mail in early 2024, and 3,559 people answered.
115 words ・ CEFR B1
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もし誰かに「うがった見方をするね」と言われたら、傷つくかもしれない。今では、ほとんどの日本人がこの言い方を、物事を疑ってかかる見方という意味に受け取っている。文化庁の調査では、60.7%がその意味を選んだ。辞書に載っている意味、つまり物事の核心をつく見方を選んだのは、32.7%だけだった。
この言い方は、穴をあける、または何かを突き通すという意味の動詞「うがつ」から来ている。のちに、この動詞は隠れた事実を指摘するという意味も持つようになった。だから、本来の意味では、この言い方はほめ言葉なのだ。調査は2024年の初めに郵送で行われ、3,559人が回答した。
4択リーディングクイズ
Q1. Why might someone feel hurt by the phrase "ugatta mikata"?
Most Japanese people now take the phrase to mean a suspicious way of looking at things. とあるので B。
Q2. How many people answered the survey?
3,559 people answered とあるので D。
Q3. What does the writer suggest about the original meaning?
in its original sense, the phrase is praise とあるので C。
The Japanese verb "ugatsu" first meant to dig or to bore through something, and one dictionary gives the example of dripping rain wearing a hole in a stone. Over time it gained the sense of pointing out hidden facts or the finer points of human feeling.
So in dictionary terms, an "ugatta mikata" is a view that cuts to the core. Most people now read it the other way. In a 2024 survey by the Agency for Cultural Affairs, 60.7 percent chose "a suspicious view" and 32.7 percent chose the dictionary meaning. Every age group leaned toward the suspicious reading. Oddly, both figures were higher than in the 2011 survey. That earlier survey was done face to face and offered a "don't know" answer, which 20.3 percent picked.
The 2024 survey was sent by mail, so the agency treats the old numbers only as a rough reference. A negative tone may have older roots. In Edo-period comic writing, "ugachi" meant poking fun at hidden flaws in people and society. English has a close match in "penetrate," which means both to go through something and to understand something hidden.
188 words ・ CEFR B2
和訳を見る
日本語の動詞「うがつ」は、最初は何かを掘る、穴をあけて通すという意味で、ある辞書は、雨垂れが石に穴をあける例を挙げている。やがてこの語は、隠れた事実や人情の細かいところを指摘する、という意味も持つようになった。
だから辞書の上では、「うがった見方」は核心をつく見方のことだ。今では、ほとんどの人がこれを逆に読む。2024年の文化庁の調査では、60.7%が「疑ってかかる見方」を、32.7%が辞書の意味を選んだ。どの年齢層も、疑ってかかる意味のほうに傾いていた。おかしなことに、二つの数字はどちらも2011年の調査より高かった。以前の調査は面接で行われ、「分からない」という答えがあり、20.3%がそれを選んでいた。
2024年の調査は郵送だったので、文化庁は以前の数字を「参考値」としてあつかっている。否定的な響きには、もっと古い根があるのかもしれない。江戸時代のこっけいな読み物では、「うがち」は人や世の中の隠れた欠点を茶化すことを意味していた。英語には「penetrate」というよく似た語があり、何かを通りぬけることと、隠れたことを理解することの両方を意味する。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
辞書では「核心をつく見方」なのに、多くの人が逆に読んでいるという話なので B。
Q2. Why were both figures higher in 2024 than in 2011?
That earlier survey ... offered a "don't know" answer, which 20.3 percent picked. とあり、2024年の郵送調査にはその選択肢がなかったので C。
Q3. What can be inferred from the sentence about Edo-period comic writing?
A negative tone may have older roots. のあとに、江戸の「うがち」が隠れた欠点を茶化すことだったと述べているので B。
重要単語
- penetrateC1動詞貫く、しみ通る;(隠れたことを)見抜くNobody could penetrate the mystery of the old house.
「穿つ」とそっくりで、物理的に貫く意味と、なぞを見抜く意味の両方がある。形容詞 penetrating は「核心をつく」。 - insightfulB2形容詞物事をよく見抜いた、洞察に富んだThank you for your insightful comment.
insight(洞察)+-ful。ほめ言葉として使う。「うがった(本来の意味)」に近い。 - cynicalB2形容詞人の善意を信じない、ひねくれたHe has a cynical view of politics.
「人は自分のためにしか動かない」と考える態度。今の多くの人が受け取る「うがった」の意味に近い。 - suspiciousB1形容詞疑い深い、怪しんでいるMy cat is suspicious of new people.
be suspicious of ~「~を疑っている」。「怪しい」の意味もある(a suspicious man)。 - read intoB2句動詞(言葉などに)実際以上の意味を読みとるDon't read too much into his short reply.
read too much into ~ で「~を深読みしすぎる」。日本語の「穿ち過ぎ」に近い。 - pointA2名詞要点、核心Your question gets right to the point.
get to the point「本題に入る」、miss the point「要点をはずす」。
公式・一次情報をチェック
- 「国語に関する世論調査」の結果(文化庁)bunka.go.jp
- penetrate(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- 穿ち過ぎ(デジタル大辞泉/コトバンク)kotobank.jp
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「それはうがった見方だね」は、本来ほめ言葉。「穿つ」は穴をあけること。うがった見方は、物事の本質まで突き通す見方のこと。でも文化庁の調査では60.7%が「疑って掛かるような見方」を選び、本来の意味を選んだ人は32.7%だった。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- 文化庁 (2024) 令和5年度「国語に関する世論調査」の結果の概要(問15)bunka.go.jp
- 精選版 日本国語大辞典「穿つ」・デジタル大辞泉「穿つ」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- 中野三敏「うがち」改訂新版 世界大百科事典(平凡社)・日本大百科全書(小学館)ほか(コトバンク掲載)kotobank.jp
- penetrating(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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