「たぬき」は大阪では油揚げのそば、京都ではあんかけ。辞典に載る地域差

読む前に予想してみよう!
大阪で「きつね」と言えば、ふつうは油揚げをのせたうどんのことだ
講談社『世界の料理がわかる辞典』によると、大阪では甘辛く煮た油揚げを入れたかけうどんを「きつね」、同じ油揚げを入れたかけそばを「たぬき」と言う。
- 対象
- 国語辞典・料理辞典の記述
- 規模
- 辞書4種(日本国語大辞典・デジタル大辞泉・世界の料理がわかる辞典・American Heritage Dictionary)
- 研究の種類
- 辞書・用例の調査
- 確かさ
- ★★★☆☆
辞書の「たぬきそば」は揚げ玉入り。でも料理辞典によると、大阪の「たぬき」は甘辛い油揚げをのせたそば、京都は刻んだ油揚げにくずあんをかけたもの。天かすをなぜ「たぬき」と呼ぶのかは2つの説がある。
ひとことで言うと「たぬき」をたのむと、町によってちがう料理が出てくるんだって!
もくじ
「たぬきそば」といえば、天かす(揚げ玉)ののったそば。国語辞典にも、そう書いてあります。
では、大阪で「たぬき」と頼んだら? 講談社の『世界の料理がわかる辞典』によると、大阪の「たぬき」は甘辛く煮た油揚げをのせたそば。ほかの地域でいう「きつねそば」です。
そして京都の「たぬき」は、刻んだ油揚げにくずあんをかけたもの。同じ「たぬき」という名前が、大阪と京都とそれ以外で、それぞれ別の料理を指すのです。
01「たぬきそば」の本来の意味は? 辞書では揚げ玉入り
まず、国語辞典の説明を見てみましょう。
小学館の『日本国語大辞典』は、「たぬきそば」を、かけそばの上に揚げ玉と葱(ねぎ)や鳴門巻(なるとまき)などを載せたもの、と説明しています。「たぬきうどん」も同じで、かけうどんに揚げ玉です。『デジタル大辞泉』も、刻みねぎと揚げ玉をのせたかけそば、としています。
ここまでは、多くの人が思い浮かべる「たぬき」そのものです。ところが『デジタル大辞泉』には、短い補足がついています。
地域によっては、油揚げをのせたものや、あんかけにしたものを指すこともある、というのです。どの地域なのかは、大辞泉には書かれていません。それを具体的に書いているのが、講談社の料理辞典です。
02大阪の「たぬき」と「きつね」は、麺で分ける
つまり大阪では、のせる物は同じ油揚げで、うどんなら「きつね」、そばなら「たぬき」と呼び分けるわけです。辞書どおりの呼び方では、油揚げなら「きつね」、天かすなら「たぬき」と、のせる物で呼び分けます。名前を決める基準が、そもそも違っているのです。
ただし、これは辞典の説明です。実際の呼び方やメニューは店によって違います。

03「きつね」はなぜ油揚げ?
「きつね」の由来は、辞書の説明がそろっています。
『日本国語大辞典』も料理辞典も、油揚げは狐の好物と言われるところから「きつね」と呼ぶ、と説明しています。『日本国語大辞典』では、「きつね」だけで油揚げそのものを指す意味も載っています。
『日本国語大辞典』が「きつねうどん」の使われた例として挙げるもののうち、いちばん古いのは、大阪生まれの作家・藤沢桓夫の『大阪の話』(1934年)です。辞典に引かれているのは、この一文です。
「あとできつねうどん奢ったるよってにな」(藤沢桓夫『大阪の話』、日本国語大辞典に引かれた例による)
大阪の言葉で「あとで、きつねうどんをおごってあげるからね」という意味です。
関西には「けつね」という言い方もあります。『デジタル大辞泉』は「けつね」を、主に関西で「きつね」のこと、とし、例に「狐うどん」を挙げています。『日本国語大辞典』によると、狐を上方(京都・大阪)で「けつね」と言うことは、1650年の『かた言』という本にすでに書かれています。
04「たぬき」の由来は2説ある
では、なぜ天かすが「たぬき」なのでしょう。料理辞典は2つの説を並べています。
- 「たねぬき」説:揚げ玉だけで、天ぷらの中身(たね)が入っていない。「たね抜き」がなまって「たぬき」になった
- 化かされた説:たぬきに化かされたような料理、という意味
どちらが正しいかは、辞典も決めていません。狐もたぬきも、昔話で人を化かす動物です。『デジタル大辞泉』の「狐」の項目にも、人を化かすといわれる、と書かれています。
英語では、udon はアメリカの辞書『American Heritage Dictionary』にも載っている英単語で、「小麦粉で作った太い日本の麺。ふつうはスープに入れて出す」と説明されています。きつねやたぬきは、中身で説明すると通じます。
- Kitsune udon is udon topped with sweet fried tofu.(きつねうどんは、甘い油揚げをのせたうどんです)
- Tanuki soba usually has tenkasu, little bits of fried batter.(たぬきそばには、ふつう天かすという揚げた衣のかけらが入っています)
- In Osaka, if you order "tanuki," you may get soba with fried tofu.(大阪で「たぬき」を頼むと、油揚げののったそばが出てくるかもしれません)
05どんでん返し:根拠は料理辞典1冊、店ごとに違う
大阪や京都の「たぬき」の中身をはっきり書いているのは、今回調べた辞書の中では講談社の料理辞典だけでした。『デジタル大辞泉』も地域差があることは認めていますが、地域の名前までは書いていません。
実際のメニューは店によって違い、大阪や京都のどの店でも辞典のとおりとは限りません。この記事は「辞典には、大阪ではこう呼ぶと書かれている」という話として読んでください。
また、「たぬき」の語源も2説が並んだままです。なぜ大阪や京都で別の料理を「たぬき」と呼ぶようになったのかも、今回調べた辞書には書かれていませんでした。
06まとめ
きつねとたぬきを、辞書どおりの呼び方では「のせる物」で、大阪では「麺の種類」で呼び分けます。京都では「たぬき」がとろりとしたあんかけになります。毎日のように食べる麺の名前でも、町が変われば指す料理が変わります。
旅先で「たぬき」を頼むときは、出てくる料理を楽しみに待つくらいの気持ちでいるのがよさそうです。
よくある質問
大阪の「たぬき」はどんな料理ですか?
講談社『世界の料理がわかる辞典』によると、甘辛く煮た油揚げをのせたかけそばです。ほかの地域でいう「きつねそば」にあたります。ただし実際の呼び方やメニューは店によって違います。
大阪の「きつね」と「たぬき」の違いは何ですか?
麺の種類で呼び分けます。同じ料理辞典によると、大阪では甘辛く煮た油揚げをのせたうどんが「きつね」、そばが「たぬき」です。のせる物で呼び分ける辞書どおりの呼び方とは、基準が違います。
京都の「たぬき」はどんな料理ですか?
刻んだ油揚げを入れ、くずあんをかけたかけそば(かけうどん)です(講談社『世界の料理がわかる辞典』)。とろりとしたあんかけになっています。
「たぬきそば」とは本来どんなそばですか?
かけそばに揚げ玉(天かす)とねぎなどをのせたものです。『日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』ともそう説明しています。大辞泉は、地域によっては油揚げやあんかけのものを指すこともある、と補足しています。
天かすをなぜ「たぬき」と呼ぶのですか?
料理辞典は2つの説を並べています。天ぷらの中身(たね)が入っていない「たね抜き」がなまったという説と、たぬきに化かされたような料理だからという説です。どちらが正しいかは決まっていません。
油揚げをなぜ「きつね」と呼ぶのですか?
油揚げは狐の好物と言われるところから、と『日本国語大辞典』も料理辞典も説明しています。『日本国語大辞典』が挙げる「きつねうどん」の使われた例のうち、いちばん古いのは藤沢桓夫『大阪の話』(1934年)です。
関西の「けつね」とは何ですか?
主に関西で「きつね」のことです(デジタル大辞泉)。『日本国語大辞典』によると、狐を上方(京都・大阪)で「けつね」と言うことは、1650年の『かた言』という本にすでに書かれています。
きつねうどんは英語でどう説明しますか?
中身で説明すると通じます。Kitsune udon is udon topped with sweet fried tofu.(きつねうどんは、甘い油揚げをのせたうどんです)のように言えます。udon はアメリカの辞書にも載っている英単語です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you order "tanuki" at a noodle shop, what will you get?
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Japan, "tanuki soba" usually means soba noodles in hot soup with tenkasu on top. Tenkasu are little bits of fried batter.
But a food dictionary says the name means something different in Osaka. There, "tanuki" is soba with a piece of sweet fried tofu. In Kyoto, it is noodles with chopped fried tofu and a thick sauce. So the same word can bring you a different bowl.
68 words ・ CEFR A2
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日本では、「たぬきそば」はふつう、天かすをのせた温かいそばのことです。天かすは、揚げた衣の小さなかけらです。
でも、ある料理辞典によると、大阪ではこの名前は別のものを指します。大阪では、「たぬき」は甘い油揚げをのせたそばです。京都では、刻んだ油揚げにとろみのあるあんをかけた麺です。だから、同じ言葉で違うどんぶりが出てくることがあるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
the same word can bring you a different bowl とあり、同じ名前が町によって別の料理を指す話なので B。
Q2. What is "tanuki" in Osaka, according to the food dictionary?
There, "tanuki" is soba with a piece of sweet fried tofu とあるので B。
Q3. In the passage, what are "bits" in "little bits of fried batter"?
bit は「小さなかけら」。little bits で「小さなかけら」なので B。
If you order "tanuki" at a noodle shop, what will you get? Japanese dictionaries describe tanuki soba as soba in hot broth topped with tenkasu, crunchy bits of fried batter, and green onion. A Kodansha food dictionary adds that the word works differently in the Kansai area. In Kyoto, tanuki is noodles with chopped fried tofu and a thick starchy sauce.
In Osaka, the type of noodle decides the name. Udon with sweet fried tofu is "kitsune," and soba with the same tofu is "tanuki." The fox name is easy to explain, because foxes are said to love fried tofu. For "tanuki," the dictionary gives two possible origins and does not choose between them.
114 words ・ CEFR B1
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麺の店で「たぬき」を注文したら、何が出てくるだろう。日本の辞書は、たぬきそばを、天かす(揚げた衣のカリカリしたかけら)とねぎをのせた温かいそばと説明している。講談社の料理辞典は、関西ではこの言葉の使い方が違うと書き加えている。京都では、たぬきは刻んだ油揚げにとろみのあるくずあんをかけた麺だ。大阪では、麺の種類で名前が決まる。
甘い油揚げをのせたうどんが「きつね」、同じ油揚げをのせたそばが「たぬき」だ。きつねの名前は説明しやすい。きつねは油揚げが大好物だと言われているからだ。「たぬき」については、辞典は2つの由来の説を挙げ、どちらとも決めていない。
4択リーディングクイズ
Q1. How do people in Osaka decide between "kitsune" and "tanuki"?
In Osaka, the type of noodle decides the name とあるので B。
Q2. Why is the dish with fried tofu called "kitsune"?
foxes are said to love fried tofu とあるので A。
Q3. What does the passage suggest about the name "tanuki"?
the dictionary gives two possible origins and does not choose between them とあり、由来は決まっていないので C。
Order "tanuki" in two different cities, and you may not get the same meal. Standard Japanese dictionaries describe tanuki soba as soba in hot broth with tenkasu, small bits of fried batter, and green onion. The Digital Daijisen adds a short note that in some areas the name refers to a dish with fried tofu or one with a thick sauce, though it does not say where.
A Kodansha food dictionary fills in the details. In Kyoto, tanuki is noodles with chopped fried tofu under a starchy kuzu sauce. In Osaka, sweet fried tofu on udon is "kitsune," while the same tofu on soba is "tanuki." The fox name comes from the idea that foxes love fried tofu, and the earliest example of "kitsune udon" in a major dictionary is from a 1934 work by the Osaka writer Takeo Fujisawa.
"Tanuki" is less clear. One idea is that it comes from "tane-nuki," meaning tempura without the main ingredient. Another links it to the raccoon dog's reputation for tricking people. Keep in mind that the city-by-city details rest on a single food dictionary, and real menus vary from shop to shop.
190 words ・ CEFR B2
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2つの別々の町で「たぬき」を注文すると、同じ料理が出てくるとは限らない。標準的な国語辞典は、たぬきそばを、天かす(揚げた衣の小さなかけら)とねぎをのせた温かいそばと説明している。『デジタル大辞泉』は、地域によっては油揚げをのせたものや、あんかけにしたものを指すという短い補足を加えているが、どこの地域かは書いていない。
講談社の料理辞典がその詳細を補っている。京都では、たぬきは刻んだ油揚げの上にくずあんをかけた麺だ。大阪では、甘い油揚げをのせたうどんが「きつね」で、同じ油揚げをのせたそばが「たぬき」になる。きつねという名前は、きつねは油揚げが好きだとされることから来ており、主要な辞典に載る「きつねうどん」の最も古い用例は、大阪の作家・藤沢桓夫の1934年の作品である。
「たぬき」ははっきりしない。一つの説は、天ぷらの中身がないことを意味する「たねぬき」から来たというものだ。もう一つは、人を化かすというタヌキの評判と結びつける説だ。ただし、町ごとの詳しい違いは料理辞典1冊だけに基づいており、実際のメニューは店によって違うことを覚えておきたい。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
地域による「たぬき」「きつね」の違いと名前の由来を説明しているので A。
Q2. What does the Digital Daijisen NOT say, according to the passage?
though it does not say where とあり、地域名は書いていないので C。
Q3. Why does the writer say "real menus vary from shop to shop"?
the city-by-city details rest on a single food dictionary と続き、根拠が限られていて店によって違うと注意しているので B。
重要単語
- brothB2名詞だし、スープUdon is usually served in a hot broth.
肉・魚・野菜を煮出した汁。chicken broth「鶏がらスープ」。soup より「だし」に近い。 - toppingB1名詞(料理の上に)のせる具What topping do you want on your soba?
top(上にのせる)+-ing。ピザの具も toppings。 - fried tofuB1名詞油揚げ、揚げ豆腐Kitsune udon comes with a big piece of sweet fried tofu.
油揚げは deep-fried tofu とも言う。tofu は英語でも「トウフ」に近い発音。 - batterB2名詞(天ぷらなどの)衣、生地Tenkasu are small bits of fried batter.
小麦粉・卵・水などを混ぜた液状の生地。パンケーキの生地も batter。 - orderA2動詞注文するI ordered tanuki soba and got something different.
名詞で「注文」。Can I take your order?「ご注文は?」は店員の決まり文句。 - originB1名詞起源、由来Nobody knows the true origin of the name.
形容詞は original。the origin of a word「語源」。 - regionalB2形容詞地域の、地方のThe same name can mean different regional dishes.
region(地域)の形容詞。regional dialect「地方の方言」。
公式・一次情報をチェック
- udon(The American Heritage Dictionary of the English Language)ahdictionary.com
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「たぬき」と頼むと何が出てくる? 辞書では揚げ玉入りのそば。でも料理辞典によると、大阪では甘辛い油揚げをのせたそば、京都では刻んだ油揚げにくずあんをかけたもの。同じ関西でも中身が違う。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉・世界の料理がわかる辞典「狸蕎麦」(コトバンク掲載)kotobank.jp
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉・世界の料理がわかる辞典「狸饂飩」(コトバンク掲載)kotobank.jp
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉・世界の料理がわかる辞典「狐蕎麦」(コトバンク掲載)kotobank.jp
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉・世界の料理がわかる辞典「狐饂飩」(コトバンク掲載)kotobank.jp
- デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典「狐」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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