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英語のマジか!?ホント

scientist(科学者)は1830年代生まれの新語。不採用案は「自然をつつく人」

scientist(科学者)は1830年代生まれの新語。不採用案は「自然をつつく人」

読む前に予想してみよう!

英語の scientist(科学者)という単語は、1500年代からある古い言葉だ

研究カード(どんな研究?)
対象
1830〜40年代の英国の雑誌・学術書
規模
1834年の書評・1840年の著書ほか
研究の種類
歴史言語学・科学史(文献調査)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

scientist は1830年代に英国の学者ヒューウェルが artist にならって作った新語。1834年の雑誌では「あまり受けなかった」と書かれ、「自然をつつく人」のような訳語まで話に出ていた。

ひとことで言うと「科学者」の英語 scientist は、190年ほど前に作られた新しい言葉!

もくじ
  1. scientist の語源は?
  2. 「科学をする人たち」を何と呼ぶ?
  3. artist があるなら scientist
  4. 1840年、今度は自分の名前で
  5. どんでん返し:「科学者がいなかった」わけではない
  6. まとめ

scientist(サイエンティスト)は「科学者」。理科の授業でも、ニュースでもよく見る基本の英単語です。

ところがこの単語、生まれたのは1830年代。1834年、いまから190年ほど前の雑誌に「こういう言葉を作ってはどうか」という案として登場した新語でした。

しかも最初は評判が悪く、ほかの候補として nature-poker(自然をつつく人) や nature-peeper(自然をのぞく人) まで話に出ていたのです。

01scientist の語源は?

Dictionary.com(ランダムハウス辞典)によると、scientist の初めての記録は1825〜35年。ラテン語の scientia(知識、学問。英語の science のもと)に、「〜する人」を表す -ist がついた語です。

その「生まれたころ」のようすが、雑誌の記事に残っています。1834年に出たイギリスの雑誌『クォータリー・レビュー』に載った、ある本の書評です。

02「科学をする人たち」を何と呼ぶ?

書評の筆者は、まず当時の悩みを書いています。

科学はどんどん細かい分野に分かれ、数学者、化学者、博物学者(生き物や鉱物を調べる人)が、それぞれ別々に研究するようになっていました。そんな分野どうしを結びつけることを目的の一つにしていたのが、英国科学振興協会です。ところが、この協会が3年続けて(1831〜33年)ヨーク、オックスフォード、ケンブリッジで夏の会合を開いたとき、集まった人たちが自分たちをまとめて何と呼べばいいのか、ぴったりの言葉がなかったのです。

書評には、出ては消えた候補が並んでいます。

  • philosophers(哲学者):意味が広すぎるし、偉そうすぎる。詩人のコールリッジが反対した
  • savans(学者たち):少しうぬぼれた感じがするうえ、英語ではなくフランス語
  • scientist:「ある独創的な紳士」が提案。でも、あまり受け入れられなかった
  • ドイツの学者たちの呼び名 natur-forscher(自然を探る人) を英語に訳す案:うまい訳が見つからない。意味をなぞると nature-poker(自然をつつく人)や nature-peeper(自然をのぞく人)のような品のない言葉になり、憤然と退けられた

nature-peeper が採用されていたら、いまごろ科学者は英語で「自然のぞき屋」と呼ばれていたかもしれません。

03artist があるなら scientist

scientist を提案した「独創的な紳士」は、こう説明したと書評は伝えています。

  • artist(芸術家)にならえば、scientist が作れる
  • 語尾の -ist は、sciolist、economist、atheist のように、もう自由に使われている

ここで例に出た sciolist は、アメリカの辞書 AHD によると「うわべだけの知識で学者ぶる人」、atheist は「無神論者」です。お手本の中に、ほめ言葉とは言えない語がまじっていたわけです。

そして、この「独創的な紳士」は、ヒューウェル本人だと考えられています。スタンフォード大学の哲学百科事典は、ヒューウェルが1833年、詩人コールリッジの問いかけに答えて scientist を作ったと説明しています。書評の筆者もヒューウェルだとすれば、彼は自分の案を「ある紳士の案」として紹介し、「あまり受けなかった」と自分で書いていたことになります。

科学を研究する人たちが集まったのに、自分たちをまとめて呼ぶ言葉がなかった。そこで生まれたのが scientist
科学を研究する人たちが集まったのに、自分たちをまとめて呼ぶ言葉がなかった。そこで生まれたのが scientist

041840年、今度は自分の名前で

ヒューウェルはあきらめませんでした。1840年の著書『帰納的諸科学の哲学』の中で、今度ははっきり自分の名前で提案しています。

「We need very much a name to describe a cultivator of science in general. I should incline to call him a Scientist.」(科学全般にたずさわる人を表す名前が、どうしても必要だ。私なら Scientist と呼びたい)

続けて彼は、こんなたとえを書いています。

  • Artist といえば、音楽家、画家、詩人のこと
  • 同じように Scientist といえば、数学者、物理学者、博物学者のこと

いろいろな分野の人をまとめて呼ぶ「傘」のような言葉。それが scientist のねらいでした。

ヒューウェルは、新しい言葉を作るのが得意な人でもありました。スタンフォード大学の哲学百科事典によると、物理学者・化学者のファラデーのために anode(アノード)・cathode(カソード)・ion(イオン) という言葉を考えたのもヒューウェルです。いまの化学の教科書に出てくる言葉の中にも、彼の作品があるのです。

05どんでん返し:「科学者がいなかった」わけではない

ここで注意したいのは、scientist という単語がなかった=科学者がいなかった、ではないということです。

スタンフォード大学の哲学百科事典によると、それまで英語では natural philosopher(自然哲学者) や man of science(科学に通じた人) という言い方が使われていました。足りなかったのは、天文学者も化学者も博物学者もまとめて呼べる「一語」だったのです。

もう一つ、physicist(物理学者)にも注意が必要です。1840年の本でヒューウェルは「物理学をする人を physician(医者)とは呼べないので、physicist と呼ぶことにした」という意味のことを書いています。これだけ読むと彼の新語のようですが、Dictionary.com によると、physicist の初めての記録は1710〜20年。ヒューウェルより100年以上前から、この語は記録に残っていたことになります。

そして scientist も、すぐに受け入れられたわけではありません。1834年の書評そのものが「あまり受け入れられなかった」と書いています。6年後の1840年になっても、ヒューウェルは「こういう名前がどうしても必要だ」と、提案の形で書いていました。

06まとめ

scientist は、1834年に雑誌の書評で紹介され、1840年にヒューウェルが自分の名前で改めて提案した新語です。artist にならって作られましたが、最初はあまり歓迎されず、nature-poker(自然をつつく人)のような案まで出ていました。

毎日のように使う「科学者」という英単語にも、190年ほど前の「名前さがし」の物語があります。次に scientist という語を見たら、artist と並べて覚えてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn the early 1830s, the British Association for the Advancement of Science brought together experts in many… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In the early 1830s, the British Association for the Advancement of Science brought together experts in many fields, such as mathematics, chemistry, and the study of plants and rocks. But there was no single English word for all of them. "Philosophers" sounded too grand, and the poet Samuel Taylor Coleridge was against it.

The French word "savants" was not English. In 1834, a magazine review, believed to be by the scholar William Whewell, reported a new idea, "scientist," made in the same way as "artist." It was not popular at first. In 1840, Whewell suggested the word again, this time in his own book and under his own name.

109 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1830年代のはじめ、英国科学振興協会は、数学、化学、植物や岩石の研究など、多くの分野の専門家を集めた。しかし、その全員をまとめて呼ぶ英語の一語がなかった。「philosophers(哲学者)」は大げさに聞こえたし、詩人のサミュエル・テイラー・コールリッジはそれに反対した。

フランス語の「savants(学者たち)」は英語ではなかった。1834年、学者のウィリアム・ヒューウェルが書いたとされる雑誌の書評は、「artist」と同じやり方で作った「scientist」という新しい案を紹介した。それは最初は人気がなかった。1840年、ヒューウェルはこの語を、今度は自分の本の中で、自分の名前を出して、もう一度提案した。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. Why was "savants" not a good choice, according to the passage?

Q3. What does the last sentence suggest about the 1834 review?

重要単語

  • scientistA2
    名詞科学者My sister wants to be a scientist when she grows up. 1830年代に artist にならって作られた語。発音は /ˈsaɪəntɪst/。
  • artistA2
    名詞芸術家、画家The artist painted the river at sunset. scientist のお手本になった語。-ist は「〜する人」。
  • physicistB2
    名詞物理学者The physicist explained how light travels. physician(医者)と混同しないこと。physics(物理学)+-ist。
  • physicianB2
    名詞医者(とくに内科医)You should see a physician about that cough. とくに北米英語。イギリス英語では doctor や GP がふつう。
  • coinC1
    動詞(新しい語を)作り出すWhewell coined the word "scientist" in the 1830s. 名詞は「硬貨」。coin a word「新語を作る」。
  • reviewB1
    名詞書評、批評He wrote a long review of her new book. book review「書評」。動詞では「見直す、復習する」。
  • literalB2
    形容詞文字どおりのA literal translation can sound strange. literal translation「直訳」。副詞 literally は「文字どおりに」。
英語の scientist(科学者)は1830年代生まれの新語。artist にならったが、1834年の雑誌には「あまり受けなかった」とある。nature-poker(自然をつつく人)、nature-peeper(自然をのぞく人)という訳語まで話に出て、退けられた。

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出典・参考文献(6件)タップで表示
  1. 無署名(筆者は Whewell, W. とされる)(1834) On the Connexion of the Physical Sciences. By Mrs. Somerville(書評), Quarterly Review 51: 54–(59–60ページ)archive.org
  2. Whewell, W. (1840) The Philosophy of the Inductive Sciences, Founded upon Their History, Vol. 1, p. cxiiiarchive.org
  3. Snyder, L. J.「William Whewell」, Stanford Encyclopedia of Philosophy(2022年改訂)plato.stanford.edu
  4. Ghasemi et al. (2023) Scientific Publishing in Biomedicine: A Brief History of Scientific Journals, International Journal of Endocrinology and Metabolism 21(1)doi.org
  5. Dictionary.com(Random House Unabridged Dictionary)「scientist」「physicist」(Origin)dictionary.com
  6. The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「sciolism(sciolist)」「atheism(atheist)」ahdictionary.com

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