「3ヶ月」の「ヶ」はカタカナではなく漢字。中国語「一个月」の「个」と同じ字

読む前に予想してみよう!
「3ヶ月」の「ヶ」は、カタカナの「ケ」を小さく書いたものだ
『日本国語大辞典』によると、この「ケ」は漢字「个」の変形。「个」は「箇」の略字で、カタカナの「ケ」(「介」から)とは起源がちがう。
- 対象
- 国語辞典・漢字字典・中日辞典と国の公用文の手引
- 規模
- 国語辞典2種・百科事典1種・漢字字典1種・中日辞典1種・文化審議会建議1件
- 研究の種類
- 辞書の記述の比較
- 確かさ
- ★★★★☆
「3ヶ月」の「ヶ」は、カタカナの「ケ」ではなく漢字「个」が変形したもの。「个」は「箇」の仲間の字で、だから「か」と読む。中国語では今も「一个月」=1か月。
ひとことで言うと「3ヶ月」の「ヶ」は、じつは漢字。だから「け」ではなく「か」と読む!
「3ヶ月」「5ヶ所」「関ヶ原」。
毎日のように見る、この小さな「ヶ」。カタカナの「ケ」を小さく書いたもの、と思っていませんか?
小学館の『日本国語大辞典』は、こう書いています。「ケ」は一般には片仮名と理解されているが、じつは漢字「个」の変形。そして「个」は「箇」の略字だ、と。
カタカナに見えて、正体は漢字。しかもこの「个」、中国語では今も「一个月(1か月)」のように毎日使われている字です。
01「ヶ」の正体は、漢字の「个」
「3ヶ月」の「ヶ」がどこから来たのか、辞書の説明を順に見てみましょう。
『日本国語大辞典』の「か【箇・個・个】」の項目によると、「箇所」「箇条」「箇年・ケ年」「箇月・か月」などの形で、「三箇所」「五箇条」のように数のあとにつけて、物を数えるのに使う語です。そのうえで、「ケ」「カ」は小さく「ヶ」「ヵ」のように書くこともある、と説明しています。
『デジタル大辞泉』も同じ立場です。「箇」の略した形の「个」を「ケ」と略したことから、「三ヶ月」のようにも書くようになった。この「ケ(ヶ)」は、カタカナの「ケ」と形は同じになっているが、起源は異なる、としています。
では、カタカナの「ケ」はどこから来たのか。『日本大百科全書』などによると、カタカナの「ケ」は漢字「介」の初めの3画からできた文字です。
つまり、同じ形の「ケ」が2種類あるのです。「介」から生まれたカタカナの「ケ」と、「个」から生まれた数える「ケ」。形がそっくりになったため、字の形では区別がつかなくなりました(日本国語大辞典「け」)。
02だから「ケ」なのに「か」と読む
「3ヶ月」は、ふつう「さんかげつ」と読みます。
カタカナなら「け」と読むはずなのに、なぜ「か」なのか。答えは、もとの漢字にあります。「箇」の音読みは「カ」。「ヶ」は「箇」の代わりの字なので、「か」と読むのが当たり前なのです。
『デジタル大辞泉』は、「箇」を使った言葉として「箇所」「箇条」のほか、「三箇日(さんがにち)」も挙げています。正月の「三が日」は、漢字で書くと「三箇日」です。
『日本国語大辞典』の「け」の項目には、こんな説明もあります。カタカナの「ケ」を「一コ」の「箇」の代わりに使うことがあり、近ごろは「一ケ・二ケ」を「イッケ・ニケ」と読むようにもなった、というのです。「一ケ」を「いっこ」ではなく、カタカナどおり「いっけ」と読む言い方も出てきた、ということです。

03中国語では今も「个」が現役
『日本国語大辞典』は、「个」は「箇」の略字で、中国では古くから用いられたと書いています。
その「个」は、今の中国語でもふつうに使われています。小学館の『中日辞典』によると、「个(gè)」は最も広く使われる量詞(物を数えるときに数字のあとにつける語。日本語の「個」「本」「枚」のようなもの)です。辞典の例には、こんなものが並んでいます。
- 一个苹果:リンゴ1個
- 一个学校:一つの学校
- 一个月:1か月
日本語の「1ヶ月」と中国語の「一个月」。日本の「ヶ」は、中国語でも使われる「个」が形を変えたものなのです。
ちなみに英語には、こうした数える語がありません。three months(3か月)、five places(5か所)のように、数字をそのまま名詞につけます。
04「霞ヶ関」の「ヶ」は「が」と読む
ここまでの「ヶ」は「か」と読むものでした。でも、地名には「が」と読む「ヶ」がたくさんあります。「霞ヶ関」「八ヶ岳」「関ヶ原」などです。
『日本国語大辞典』の「け」の項目によると、「君ケ代」「越ケ谷」「八ケ岳」のように、「ケ」を助詞の「が」(「の」と同じように、前の言葉が後ろの言葉を説明することを示す古い使い方)に当てることがあります。そして、これは「三ケ日(さんがにち)」などの「ケ」を借りて使ったものだ、と説明しています。
「三ケ日」は「さんがにち」と読みます。数える「ケ」を「が」と読む言葉があり、その「ケ」が助詞の「が」を書くのにも使われた、というわけです。
05どんでん返し:「个」の生まれは、辞書によって説明がちがう
「ヶ」が漢字「个」から来た、という点は、今回調べた国語辞典で一致していました。ところが、その「个」がどうやって生まれたかになると、説明が分かれます。
- 『日本国語大辞典』:「个」は「箇」の略字(「箇」が先で、「个」はそれを略したもの)
- 『デジタル大辞泉』:古くは「竹」の半分をとって「个」と書いて物を数え、のちに「箇」に変えた(「个」が先)
- 漢字学者・白川静の『字通』:「个」は柱で支えたひさしの形をかたどった字で、個・箇の別の形として数える語にも使う。「竹」の葉とは考えにくい字形だ、としている
「箇」が先か「个」が先か、そもそも「竹」と関係があるのか。どれが正しいかは、今回調べた資料では決められませんでした。
もう一つ、パソコンやスマホの中での扱いもあります。文字コードの国際規格「Unicode」の表では、「ヶ」は KATAKANA LETTER SMALL KE(カタカナの小さいケ) として登録されています。辞書の上では漢字の仲間でも、コンピューターの上ではカタカナとして扱われているのです。
06まとめ
「3ヶ月」の「ヶ」は、カタカナの「ケ」ではなく、漢字「个」が変形したもの。だから「け」ではなく「か」と読みます。中国語の「一个月」の「个」と同じ字です。
ただし、その「个」自体の生まれは辞書ごとに説明がちがい、コンピューターの上ではカタカナ扱い。毎日見る小さな「ヶ」1文字の中に、漢字とカタカナ、日本と中国の歴史が重なっています。
よくある質問
「3ヶ月」の「ヶ」は何と読みますか?
「か」と読みます。「3ヶ月」はふつう「さんかげつ」です。「ヶ」は物を数える漢字「箇」の代わりの字で、「箇」の音読みが「カ」だからです。
「ヶ」はカタカナですか?
いいえ、もとは漢字です。『日本国語大辞典』は、「ケ」は一般には片仮名と理解されているが、じつは漢字「个」の変形だと書いています。カタカナの「ケ」は漢字「介」の初めの3画からできた文字で、生まれがちがいます。
「ヶ」は何の漢字の代わりですか?
物を数える漢字「箇」の代わりの字です。『デジタル大辞泉』によると、「箇」を略した形の「个」を、さらに「ケ」と略したところから「三ヶ月」のようにも書くようになりました。正月の「三が日」も、漢字で書くと「三箇日」です。
「个」は中国語でも使われていますか?
はい。小学館の『中日辞典』によると、「个(gè)」は最も広く使われる量詞(物を数えるときに数字のあとにつける語)です。「一个月」は「1か月」、「一个苹果」は「リンゴ1個」という意味です。
「3ヶ月」と「3か月」、どちらで書けばよいですか?
国の公用文では「3か月」と書きます。文化審議会の「公用文作成の考え方」(2022年)は、横書きで算用数字を使うときは「3か所」「7か月」と書き、「3ヶ所」「7カ月」のような書き方はしないとしています。縦書きで漢数字なら「三箇所」「七箇月」です。
「霞ヶ関」の「ヶ」はなぜ「が」と読むのですか?
「ケ」を助詞の「が」に当てて書いているからです。『日本国語大辞典』によると、「君ケ代」「越ケ谷」「八ケ岳」のように「ケ」を助詞の「が」に当てることがあり、これは「三ケ日(さんがにち)」などの「ケ」を借りて使ったものです。
「个」はどうやって生まれた字ですか?
辞書によって説明がちがいます。『日本国語大辞典』は「箇」の略字、『デジタル大辞泉』は古くは「竹」の半分をとって「个」と書き、のちに「箇」に変えたとし、白川静の『字通』は柱で支えたひさしの形をかたどった字としています。
パソコンやスマホでは「ヶ」はカタカナですか?
はい、カタカナとして扱われています。文字コードの国際規格 Unicode の表では、「ヶ」は KATAKANA LETTER SMALL KE(カタカナの小さいケ)として登録されています。辞書の上では漢字の仲間でも、コンピューターの上ではカタカナです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerLook at a Japanese notice or calendar and you will often see a little "ke," as in "3ヶ月" (three months).
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Japanese, "three months" is often written "3ヶ月." The little sign in the middle looks like the katakana letter "ke." But Japanese dictionaries say it is not katakana. It comes from the Chinese character 个, a short form of 箇.
We read 箇 as "ka," so people say "san-kagetsu." The real katakana "ke" comes from a different character, 介. Chinese still uses 个 today. "One month" in Chinese is 一个月.
70 words ・ CEFR A2
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日本語では、「3か月」はよく「3ヶ月」と書かれます。真ん中の小さな記号は、カタカナの「ケ」のように見えます。でも、日本の辞書によると、これはカタカナではありません。「箇」を短く書いた漢字「个」から来ています。
「箇」は「か」と読むので、「さんかげつ」と言うのです。本物のカタカナの「ケ」は、別の漢字「介」から来ています。中国語では今も「个」を使います。中国語で「1か月」は「一个月」です。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
「3ヶ月」の小さな「ヶ」がどこから来たか、という話なので B。
Q2. How do people read "3ヶ月"?
so people say "san-kagetsu" とあるので C。
Q3. In the passage, "a short form" means ...
a short form of 箇 は「箇を短く書いた形(略字)」という意味なので A。
Look at a Japanese notice or calendar and you will often see a little "ke," as in "3ヶ月" (three months). Most people think it is katakana.
According to the Nihon Kokugo Daijiten, a large Japanese dictionary, it is really a changed form of the Chinese character 个, a short way of writing 箇, which is used for counting. That explains why it is read "ka" and not "ke."
The katakana "ke" has a different origin. It was made from the first three strokes of another character, 介. Over time the two shapes became the same. In Chinese, 个 is still the most common word for counting things. A Chinese-Japanese dictionary gives the example 一个月, meaning "one month."
117 words ・ CEFR B1
和訳を見る
日本のお知らせやカレンダーを見ると、「3ヶ月」のように小さな「ヶ」をよく見かける。ほとんどの人はそれをカタカナだと思っている。
大きな国語辞典『日本国語大辞典』によると、これは本当は、物を数えるのに使う「箇」を短く書いた漢字「个」が形を変えたものだ。だから「け」ではなく「か」と読むのである。
カタカナの「ケ」は生まれがちがう。別の漢字「介」の最初の3画から作られた。時がたつうちに、二つの形は同じになった。中国語では、「个」は今も物を数える最もふつうの語だ。中日辞典は「1か月」という意味の「一个月」を例に挙げている。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, why is "ヶ" in "3ヶ月" read "ka"?
「个」は「箇」を短く書いたもので、That explains why it is read "ka" とあるので B。
Q2. Where does the katakana letter "ke" come from?
It was made from the first three strokes of another character, 介. とあるので C。
Q3. What can we guess from the passage?
「ヶ」のもとは「个」で、中国語でも「个」を今も使っている(一个月)とあるので、もとの字は日中で共通だと分かる。A。
The little "ke" in "3ヶ月" (three months) looks like katakana, but two major Japanese dictionaries say it is something else. It comes from 个, a shortened form of the counting character 箇, and that is why it is read "ka." The katakana letter "ke" was built from part of a different character, 介, and the two shapes only came to look the same later.
Computers follow the shape, though. The Unicode standard lists the sign as a katakana letter. The same 个 is still used in modern Chinese, where it is the most widely used counting word, as in 一个月 (one month). Place names work differently. In names such as Yatsugatake, the "ke" is read "ga" and stands for an old particle that works much like "no."
One dictionary traces this use to words like "sanganichi," the first three days of the New Year. Dictionaries also tell different stories about 个 itself. One calls it a shortened 箇, another says it was half of the character for bamboo, and a third sees a drawing of eaves held up by posts. For official writing, a 2022 government guide asks for "3か月" in hiragana instead of "3ヶ月."
195 words ・ CEFR B2
和訳を見る
「3ヶ月」の小さな「ヶ」はカタカナに見えるが、日本の二つの大きな辞書は別物だとしている。ものを数える漢字「箇」を略した「个」から来ていて、だから「か」と読む。カタカナの「ケ」は別の漢字「介」の一部から作られ、二つの形は後になって同じに見えるようになっただけだ。
ただし、コンピューターは形のほうに従っている。文字の国際規格Unicodeは、この記号をカタカナの文字として登録している。同じ「个」は現代の中国語でも使われていて、「一个月」(1か月)のように、最も広く使われる数える語になっている。地名では、また別の使い方がある。「八ヶ岳」のような名前では「ヶ」を「が」と読み、「の」とよく似た働きをする古い助詞を表している。
ある辞書は、この使い方を「三ケ日(さんがにち)」、つまり正月の最初の3日間のような語からの流用だとしている。辞書は「个」そのものについても別々の話をしている。ある辞書は「箇」の略字だと言い、別の辞書は「竹」の字の半分だったと言い、三つ目は柱で支えたひさしをかたどった字だと見ている。公の文書については、2022年の国の手引が「3ヶ月」ではなく、ひらがなの「3か月」と書くよう求めている。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main idea of the passage?
「ヶ」は漢字「个」から来ているが、地名の読み・辞書の説の違い・Unicodeでの扱いなど話に続きがある、という内容なので B。
Q2. How is the "ke" read in place names such as Yatsugatake?
the "ke" is read "ga" とあるので C。
Q3. What does the writer suggest about the origin of 个?
Dictionaries also tell different stories about 个 itself とあり、略字説・竹の半分説・ひさしの形説が並んでいるので C。
重要単語
- counterB2名詞助数詞(「〜個」「〜か月」のように数につける語)Japanese uses a counter after numbers, but English usually does not.
count(数える)+-er。言語学では classifier とも言う。英語では a piece of cake のような形が少し近い。 - abbreviationB2名詞略語、省略形"Dr." is an abbreviation of "Doctor."
動詞は abbreviate(省略する)。brief(短い)と同じ語源。 - characterB1名詞文字(とくに漢字)This Chinese character has only three strokes.
「性格」「登場人物」の意味も。漢字は Chinese character。stroke は「画」。 - originB1名詞起源、生まれThe two letters look the same, but they have different origins.
形容詞 original(もとの)、動詞 originate(始まる)。the origin of ~「~の起源」。 - look alikeB1句よく似ているThe two signs look alike, so people often mix them up.
主語は複数。The twins look alike. 名詞の lookalike は「そっくりさん」。 - particleC1名詞(文法の)助詞、不変化詞In Japanese, the particle "ga" often marks the subject.
もとは「小さなかけら、粒子」。物理では particle は「粒子」。 - officialB1形容詞公式の、公のOfficial documents write "3か月" in hiragana.
office(役所)+-ial。officially(正式に)。
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「3ヶ月」の「ヶ」はカタカナじゃない。『日本国語大辞典』によると、漢字「个」の変形。「个」は「箇」の略字なので「か」と読む。中国語では今も「一个月」が「1か月」。カタカナの「ケ」は「介」から来ていて、生まれがちがう。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉「箇」「か【箇・個・个】」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉・日本大百科全書(ニッポニカ)「け」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- 普及版 字通「个」(白川静、平凡社、コトバンク掲載)kotobank.jp
- 中日辞典 第3版「个」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- 文化審議会 (2022)「公用文作成の考え方(建議)」(文化庁)bunka.go.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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