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日本語のマジか!?ホント

「独壇場」は“書き間違い”から生まれた言葉だった。もとは「独擅場(どくせんじょう)」

「独壇場」は“書き間違い”から生まれた言葉だった。もとは「独擅場(どくせんじょう)」

読む前に予想してみよう!

「独壇場」は、もともと「独擅場」の「擅」を「壇」と書き誤ってできた言葉である

研究カード(どんな研究?)
対象
辞書の記述と用例
規模
精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉・常用漢字表
研究の種類
辞書・公的資料の文献調査
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「独壇場」は、もとは「独擅場(どくせんじょう)」。「擅」を形の似た「壇」と書き誤ってできた語だと、日本国語大辞典もデジタル大辞泉も説明している。

ひとことで言うと「独壇場」は、漢字の書きまちがいから生まれた言葉なんだって!

もくじ
  1. 「独壇場」の本来の形は「独擅場」
  2. 「擅」は“ほしいまま”という字
  3. もとの形が1908年、書き誤った形が1914年
  4. 「擅」は常用漢字に入っていない
  5. 「土壇場」とはまったく別の言葉
  6. 仲間:本来とちがう読みが定着した言葉
  7. どんでん返し:「間違い」と言い切るのも間違い
  8. まとめ

「決勝はあの選手の独壇場だった」

スポーツ中継やニュースでよく聞く「独壇場(どくだんじょう)」。ひとりだけが活躍して、ほかの人を寄せつけない場面のことです。

ところがこの言葉、もとは漢字の書き間違いから生まれたものです。本来の形は「独擅場」。読みは「どくせんじょう」です。『日本国語大辞典』も『デジタル大辞泉』も、そうはっきり書いています。

01「独壇場」の本来の形は「独擅場」

2つの字を並べてみましょう。

  • 独擅場(どくせんじょう)……てへん(扌)の「擅」
  • 独壇場(どくだんじょう)……つちへん(土)の「壇」

右側の部分がまったく同じです。違うのは、へんが「扌」か「土」かだけ。

小学館の『精選版 日本国語大辞典』によると、「独擅場」の意味は「その人だけが思いのままにふるまうことができ、他人の追随を許さない場所・場面。ひとり舞台」。そして「独壇場」については、「擅」を「壇」に誤り、「ひとり舞台」の意味にひかれてできた語だと説明しています。

『デジタル大辞泉』も、「独壇場」の見出しに《「擅」を「壇」と書き誤って生じた語》と書いています。辞書が、言葉の生まれを「書き誤り」とはっきり言い切っているのです。

02「擅」は“ほしいまま”という字

では、もとの「擅」はどんな字なのでしょう。

『デジタル大辞泉』の漢字項目では、「擅」の音は「セン」、訓は「ほしいまま」。意味は「独り占めにする。かって気ままにする」です。熟語の例として「擅断(せんだん)」と「独擅場」が挙がっています。

つまり「独擅場」は、

  • 独(ひとりで)
  • 擅(ほしいままにふるまう)
  • 場(場所)

という、意味のよく通る組み立てでした。平凡社の『字通』も、「擅」の意味として「ほしいまま」「ひとりしめる」を挙げています。

いっぽう「壇」は、「壇上」「花壇」「文壇」の壇。「壇上」のように、一段高くなった場所を表す字です。「ひとり舞台」という意味には、むしろ「壇」のほうがぴったりに見えます。字の形が似ているうえに、意味もそれらしい。だから書き誤りが広まりやすかったのでしょう。

03もとの形が1908年、書き誤った形が1914年

『日本国語大辞典』は、それぞれの語のいちばん古い用例も載せています。

辞書の用例で見るかぎり、もとの形と書き誤った形の差は、わずか6年です。「独壇場」は、昭和や平成の若者が生んだ誤用ではありません。大正のはじめ(1914年)には、もう活字になっていたのです。

ただし、これは辞書が見つけて載せた例です。本当にいちばん古い例がこの年だとは限りません。

「擅」と「壇」は右側がまったく同じで、へんだけが違う。日本国語大辞典は「擅」を「壇」に誤ったことから「独壇場」が生まれたとしている
「擅」と「壇」は右側がまったく同じで、へんだけが違う。日本国語大辞典は「擅」を「壇」に誤ったことから「独壇場」が生まれたとしている

04「擅」は常用漢字に入っていない

文化庁が示す「常用漢字表」(2010年の内閣告示)を見ると、「壇」は入っていますが、「擅」は入っていません。

「壇」の欄には、音読み「ダン」の例として「壇上、花壇、文壇」、もう一つの音「タン」の例として「土壇場」が挙がっています。

「擅」は常用漢字ではないので、ふだん目にする機会の少ない字です。見慣れない字なので、形の似た「壇」と取りちがえやすいのも無理はありません。

05「土壇場」とはまったく別の言葉

もう一つまぎらわしいのが「土壇場(どたんば)」です。

『デジタル大辞泉』によると、土壇場はもともと近世に首切りの刑を行うために築いた土の壇のこと。そこから「決断をせまられる最後の場面」の意味になりました。『日本国語大辞典』は、首斬り場の意味の例として1772年の咄本(はなしぼん。笑い話を集めた本)を挙げています。

「独壇場」と「土壇場」は、字面も響きも似ていますが、成り立ちはまったく別です。

  • 独壇場:ひとりだけが活躍する場(もとは「独擅場」)
  • 土壇場:最後のぎりぎりの場面(もとは刑場)

06仲間:本来とちがう読みが定着した言葉

「本来の形でないほうが定着した」という点では、ほかにも仲間がいます。こちらは字ではなく、読み方が変わった例です。

  • 消耗:本来の読みは「しょうこう」。『日本国語大辞典』は、「しょうもう」の「もう」は「耗」の慣用音(本来の音ではないが、広く使われて定着した読み)だと説明しています。夏目漱石の『それから』(1909年)では、「消耗」に「セウカウ(しょうこう)」とふりがながついています。常用漢字表も、「耗」の「モウ」は慣用音だと注記しています
  • 攪拌:本来の読みは「こうはん」。『日本国語大辞典』によると、「攪」の音はもともとコウやキョウで、「カク」は字の右側(覺=覚)から類推して生まれた慣用音です

漱石が「しょうこう」とふりがなをつけた言葉を、いまは常用漢字表も「しょうもう」と読ませているわけです。

07どんでん返し:「間違い」と言い切るのも間違い

ここまで読むと、「独壇場は誤字なんだから、独擅場と書くべきだ」と言いたくなるかもしれません。

でも、『デジタル大辞泉』は「独壇場」を見出し語に立て、「『独擅場』に同じ」と説明しています。『日本国語大辞典』も、1914年の用例つきで「独壇場」を載せています。生まれは書き誤りでも、100年以上使われてきた今は、辞書に載った言葉なのです。

「消耗」を「しょうもう」と読む人に「本当はしょうこうだ」と注意する人は、まずいないでしょう。「独壇場」も同じです。成り立ちを知っておくのはおもしろいことですが、人の言葉づかいをとがめる材料にするものではありません。

08まとめ

「独壇場」は、もとは「独擅場(どくせんじょう)」。「ほしいまま」を意味する「擅」を、形の似た「壇」と書き誤ったことから生まれました。辞書の用例では、もとの形が1908年、書き誤った形が1914年に出てきます。

いまでは「独壇場」も辞書に載った立派な言葉です。だれかの「独壇場」を見たら、その裏にある“もう一つの字”のことを思い出してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf a Japanese sports report says a game was one player's "dokudanjo," it means that player was in total… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

If a Japanese sports report says a game was one player's "dokudanjo," it means that player was in total control. The word started as a writing mistake. Two large Japanese dictionaries say the original form was "dokusenjo." Its middle character has the same right side as the character for "stage," and only the left part is different.

The original character means "to do as you like," but the "stage" character seemed to fit the idea of a one-person show. According to one of the dictionaries, the original word appears in a book from 1908, and the mistaken form was printed by 1914. Today the original character is not even on Japan's official list of kanji for everyday use.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本のスポーツの記事が、ある試合をひとりの選手の「独壇場」だったと言えば、その選手が完全に試合を支配していたという意味だ。この言葉は書き間違いから始まった。2つの大きな日本語の辞書が、もとの形は「独擅場」だったとしている。真ん中の字は「舞台」を表す字と右側が同じで、左の部分だけが違う。

もとの字は「思いのままにする」という意味だが、「舞台」の字のほうが「ひとり舞台」という考えに合っているように見えた。辞書の1つによると、もとの言葉は1908年の本に出てきて、誤った形も1914年までには活字になっていた。今では、もとの字は日本の常用漢字表にさえ入っていない。

4択リーディングクイズ

Q1. What is different between the two characters?

Q2. Why did the mistaken character seem natural?

Q3. What can we guess about the original character today?

重要単語

  • one-man showB2
    名詞ひとり舞台、ひとりで仕切る仕事The final was a one-man show. Oxford の学習辞典の one-man の項に a one-man show の例がある。「独壇場」の英訳に使いやすい。
  • in your elementC1
    熟語得意な場で生き生きしてShe's in her element on stage. your は主語に合わせて my / his / her などに変える。反対は out of your element(場違いで落ち着かない)。
  • dominateB2
    動詞圧倒する、支配するOur team dominated the second half. スポーツで「独壇場だった」は dominate を使うと自然。名詞は domination。
  • competeB1
    動詞競う、張り合うNobody could compete with her in the last race. compete with/against 〜「〜と競う」。名詞は competition(競争、大会)。
  • mistakeA2
    名詞間違いThis word began as a mistake. make a mistake「間違える」。by mistake は「うっかり、間違えて」。
  • characterB1
    名詞文字(漢字など);登場人物;性格These two characters look almost the same. 漢字は Chinese character とも言う。文脈で「文字」か「人物」かを判断する。
「独壇場(どくだんじょう)」は、もとは「独擅場(どくせんじょう)」。てへんの「擅」(ほしいまま)を、形の似た「壇」と書き誤ってできた語だと辞書にある。日本国語大辞典の最初の用例は、もとの形が1908年、書き誤った形が1914年。

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出典・参考文献(7件)タップで表示
  1. 精選版 日本国語大辞典「独擅場」・デジタル大辞泉「独擅場」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  2. 精選版 日本国語大辞典「独壇場」・デジタル大辞泉「独壇場」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  3. デジタル大辞泉「擅」[漢字項目]・普及版 字通「擅」(コトバンク掲載)kotobank.jp
  4. 精選版 日本国語大辞典「土壇場」・デジタル大辞泉「土壇場」(コトバンク掲載)kotobank.jp
  5. 精選版 日本国語大辞典「消耗」・デジタル大辞泉「消耗」(コトバンク掲載)kotobank.jp
  6. 精選版 日本国語大辞典「攪拌」(コトバンク掲載)kotobank.jp
  7. 文化庁 常用漢字表(平成22年11月30日内閣告示)bunka.go.jp

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