「ジム」の語源は“はだか”。英語の naked や、カレーの「ナン」とも親戚だった

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「ジム(gym)」の語源をたどると、「はだか」という意味の古代ギリシャ語に行き着く
gymnasium は gumnazein(裸で運動する)から、さらに gumnos(はだか)から来た(American Heritage Dictionary)。
- 対象
- 古代ギリシャ語・ラテン語の文献と英語辞典
- 規模
- 紀元前5世紀〜紀元2世紀の記録
- 研究の種類
- 語源調査(文献)
- 確かさ
- ★★★★☆
gym(ジム)のもとは古代ギリシャ語 gumnos(はだか)。選手は本当に裸で運動した。辞書によると、英語の naked・nude、そしてナンも、“はだか”を表す同じ古いことばにさかのぼる。
ひとことで言うとジムの語源は「はだか」。昔のギリシャでは、本当に裸で運動していたんだって!
もくじ
駅前のフィットネスジム、公園のジャングルジム、体操の英語 gymnastics。
この gym の語源をたどると、古代ギリシャ語の gumnos(グムノス)=「はだか」 に行き着きます。
gym は gymnasium(体育館・運動場)の略。そして gymnasium のもとの動詞 gumnazein の意味は、「裸で運動する」。比喩ではありません。古代ギリシャの選手は、本当に何も着ないで走り、レスリングをしていました。
01gymnasium =「裸で運動する場所」
アメリカの辞書『American Heritage Dictionary』(以下 AHD)の語源欄は、こうたどっています。
- gymnasium ← ラテン語 gymnasium(学校)← ギリシャ語 gumnasion ← gumnazein「裸で運動する」← gumnos「はだか」
- gymnast(体操選手)← ギリシャ語 gumnastēs「プロの運動選手のトレーナー」
- gym は gymnasium の略。オックスフォードの学習辞典によると、19世紀後半からの言い方
つまり I'm going to the gym. は、語源どおりに訳すと「ちょっと“裸の運動場”に行ってくる」です。
02古代オリンピックは「全裸」がふつうだった
ギリシャの書き手たち自身が、このことを書き残しています。
紀元前5世紀の歴史家トゥキュディデスは『戦史』の第1巻で、スパルタ人が初めて人前で服を脱ぎ、体に油を塗って運動したと書きました。オリンピアの競技でも、以前は選手が腰に帯を巻いていたが、それをやめたのは「ほんの数年前のことだ」とも書いています。そして、ギリシャ以外の民族、とくにアジアの一部では、今でもボクシングやレスリングで帯を巻く、と付け加えています。
哲学者プラトンも『国家』の中で、ソクラテスにこう語らせています。少し前まではギリシャ人も、男が裸を見られるのは恥ずかしくて笑いものになることだと考えていた。いまも多くの外国人はそう考えている。体育場での運動はクレタ人、次いでスパルタ人から始まり、当時の口の悪い人たちには、それを笑いの種にすることもできた、と。
裸で競うことは、ギリシャ人にとって「自分たちらしさ」の一つだったわけです。
03母親が男装して忍びこんだ事件
紀元2世紀の旅行作家パウサニアスは、オリンピアにまつわるこんな話も伝えています。
オリンピアの競技を女性が見に来てはいけない日が決められていて、見つかった女性は近くのテュパイオン山の崖から突き落とす、という掟まであったといいます(ただしパウサニアスは別の巻で、未婚の娘は見物を禁じられていなかったとも書いています)。
ところが一人だけ、見つかった女性がいました。カリパテイラという未亡人です(ペレニケという名前だとする人もいる、とパウサニアスは書いています)。彼女はトレーナーそっくりに変装して、息子を競技に連れてきました。息子ペイシロドスは優勝。彼女は、トレーナーを閉じこめておく囲いを飛び越えたとき、体があらわになってしまいます。
彼女は罰を受けずに帰されました。父も兄弟も息子も、みなオリンピアの優勝者だったからです。その代わりに、新しい決まりができました。これからはトレーナーも、服を脱いでから会場に入ること。

04どんでん返し:最初に脱いだのは誰? 記録が食い違う
では、裸で競技するようになったきっかけは何だったのでしょう。ここは古代の書き手どうしで話が合いません。
- パウサニアス:メガラのオルシッポス。ほかの選手がみな帯を巻くなか、裸で走って勝った。パウサニアス自身は「裸のほうが走りやすいと気づいて、わざと帯を落としたのだろう」と推測している(英訳の注は紀元前720年とする)
- ディオニュシオス:スパルタ人のアカントス。第15回のオリンピア祭(紀元前776年の第1回から数えると前720年)で、最初に裸で走った
- トゥキュディデス:帯をやめたのは、自分の時代から見て「ほんの数年前」
パウサニアスやディオニュシオスの話なら紀元前8世紀、トゥキュディデスの書き方なら紀元前5世紀ごろ。数百年の差があります。どれが正しいのか、古代の記録からは決められません。裸になった理由も、はっきりとは分かっていないのです。
05裸の運動場は「学校」にもなった
古代ギリシャの gymnasium は、体をきたえるだけの場所ではありませんでした。哲学者が教える場所にもなりました。
- academy(アカデミー):哲学者の伝記を書いたディオゲネス・ラエルティオスによると、プラトンが暮らし教えた「アカデメイア」は、アテネの城壁の外の木立にある体育場だった
- lyceum(ライシーアム):AHD によると、アリストテレスが教えたアテネ近くの木立の名前で、そこには運動の練習場があった。フランス語の lycée(リセ)=高校はここから
- Gymnasium(ギムナジウム):AHD の gymnasium の2番目の意味は「ドイツなど中央ヨーロッパの国の、大学進学向けの中等学校」
アメリカでは gym は体育館。ドイツでは Gymnasium は進学校。同じ“裸の運動場”から、国によって行き先が分かれました。
06naked・nude・ナンも「はだか」の親戚
AHD の付録「インド・ヨーロッパ語の語根」には、nogw-(はだか)という、何千年も前の祖先の言葉が載っています。そこから枝分かれした英語が、これです。
- naked(裸の):古英語 nacod から
- nude(ヌード):ラテン語 nūdus(裸の)から。denude(はぎ取る)も同じ
- gymnasium・gymnast:ギリシャ語 gumnos から。AHD は、ギリシャ語では音の順番が入れ替わった、と注をつけている
- naan(ナン):インド北西部の平たいパン。古代ペルシャ語の *nagna-(裸の)から。AHD は「おそらく、灰をかぶせて焼くほかのパンとちがい、かまどの中で“むき出しのまま”焼いたから」と説明している
ジムで汗を流したあとにカレーとナンを食べたら、語源の上では「はだか」と「はだか」の組み合わせです。ただしナンの説明には AHD 自身が「おそらく」とつけています。
07まとめ
gym は「裸で運動する場所」、naked と nude はその遠い親戚、ナンも同じ一族(ただし“はだか”と名づけた理由には「おそらく」がつきます)。古代ギリシャでは、選手が服を脱ぐのがふつうで、トレーナーまで脱ぐ決まりができました。
今度ジムに行ったら、gym の中に gumnos(はだか) が隠れていることを、一緒に行く友だちに教えてあげてください。もちろん、服は着たままで。
よくある質問
ジム(gym)の語源は何ですか?
古代ギリシャ語の gumnos(はだか)です。gym は gymnasium の略で、gymnasium のもとの動詞 gumnazein は「裸で運動する」という意味でした(American Heritage Dictionary)。
gymnasium はもともとどういう意味ですか?
語源の上では「裸で運動する場所」です。ギリシャ語 gumnasion から、ラテン語 gymnasium(学校)を経て英語に入りました。gym という略し方は、オックスフォードの学習辞典によると19世紀後半からです。
古代ギリシャの選手は本当に裸で運動したのですか?
はい。紀元前5世紀の歴史家トゥキュディデスは、スパルタ人が初めて人前で服を脱ぎ、体に油を塗って運動したと書いています。オリンピアでも、以前は選手が腰に帯を巻いていたのをやめた、と記録しています。
なぜ裸で競技するようになったのですか?
はっきりとは分かっていません。 パウサニアスは、メガラのオルシッポスが「裸のほうが走りやすいと気づいて、わざと帯を落としたのだろう」と推測しています。ただ、最初に脱いだ人や時期は、古代の書き手どうしで食い違っています。
トレーナーまで裸になった決まりとは何ですか?
パウサニアスが伝える話です。カリパテイラという未亡人がトレーナーそっくりに変装して息子を競技に連れてきて、見つかりました。そのあと「これからはトレーナーも、服を脱いでから会場に入ること」という決まりができたといいます。
gym と naked や nude は関係がありますか?
あります。AHD の付録「インド・ヨーロッパ語の語根」によると、naked・nude・gymnasium は、どれも nogw-(はだか)という何千年も前の祖先の言葉から枝分かれした英語です。
カレーと食べる「ナン」も「はだか」と関係があるのですか?
AHD は、ナン(naan)は「裸の」を意味する古代ペルシャ語から来たとしています。名前の理由は「おそらく、灰をかぶせて焼くほかのパンとちがい、かまどの中で“むき出しのまま”焼いたから」と、「おそらく」つきの説明です。
ドイツの「ギムナジウム」も同じ言葉ですか?
はい。AHD は gymnasium の2番目の意味を「ドイツなど中央ヨーロッパの国の、大学進学向けの中等学校」としています。古代ギリシャの体育場は、哲学者が教える場所にもなりました。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe word "gym" is short for "gymnasium," which comes from a Greek verb meaning "to exercise naked." Ancient…
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The word "gym" is short for "gymnasium," which comes from a Greek verb meaning "to exercise naked." Ancient writers say Greek athletes really did train and compete without clothes, and the American Heritage Dictionary traces "naked," "nude," and even "naan" back to the same old root.
和訳を見る
「gym」は「gymnasium」の略で、この語は「裸で運動する」という意味のギリシャ語の動詞から来ている。古代の書き手たちは、ギリシャの運動選手が本当に服を着ずに練習し、競技したと書いている。『American Heritage Dictionary』は「naked」「nude」、さらには「naan(ナン)」まで、同じ古い語根にさかのぼるとしている。
重要単語
- gymnasium名詞・ジムネイジアム体育館;(ドイツなどの)大学進学向けの中等学校Our school gymnasium is used for basketball and volleyball.
- naked形容詞・ネイキッド裸の、むき出しのYou can't see these stars with the naked eye.
- athlete名詞・アスリート運動選手Greek athletes rubbed oil on their skin when they trained.
- root名詞・ルート(語の)語根、もとになる形"Naked" and "nude" come from the same root.
- disguise動詞・ディスガイズ変装させる、変装するShe disguised herself as a trainer and took her son to the games.
- seed名詞・シード種Pine trees carry their seeds on open cone scales.
公式・一次情報をチェック
- The Academy is a gymnasium outside the walls(ディオゲネス・ラエルティオス『哲学者列伝』3.7, Perseus Digital Library)perseus.tufts.edu
- gym(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
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「ジム」の語源は古代ギリシャ語の gumnos=“はだか”。gymnasium は「裸で運動する場所」。英語の naked・nude も、カレーと食べる「ナン」も、辞書では“はだか”を表す同じ古いことばにさかのぼる親戚。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- American Heritage Dictionary, 5th ed.「gymnasium」「gymnosperm」「gymnosophist」「naked」「nude」「naan」「lyceum」「lycée」ahdictionary.com
- American Heritage Dictionary, Appendix I: Indo-European Roots「nogw-(Naked)」ahdictionary.com
- Thucydides, History of the Peloponnesian War 1.6(Crawley 訳)/Plato, Republic 452c–d(Shorey 訳), Perseus Digital Library(タフツ大学)perseus.tufts.edu
- Pausanias, Description of Greece 1.44.1・5.6.7–8(Jones 訳), Perseus Digital Libraryperseus.tufts.edu
- Dionysius of Halicarnassus, Roman Antiquities 7.72(Cary 訳, LacusCurtius・シカゴ大学)penelope.uchicago.edu
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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