pea と cherry は“複数形と勘違い”で s が消えた単語。昔は1粒でも pease

読む前に予想してみよう!
英語の pea(豆)は、昔は1粒でも pease と呼ばれていた
中英語では pease が1粒の豆。最後の音が複数形の s とまちがえられて取られ、17世紀半ばに pea が生まれた(Oxford Learner's Dictionaries ほか)。
- 対象
- 中英語・古英語の語形
- 規模
- 辞書の語源欄(英米の辞書3点+古英語辞典)
- 研究の種類
- 歴史言語学(辞書・文献にもとづく)
- 確かさ
- ★★★★☆
豆の pea は、もとは1粒でも pease。最後の音を「複数形の s」と勘違いされて削られた。cherry も古いフランス語 cherise の s が消えた形。
ひとことで言うと豆の pea は昔、1粒でも pease。s を複数形とまちがえて取っちゃった!
もくじ
豆1粒は、英語で a pea。2粒なら two peas。中学校で習うとおりです。
ところが昔の英語では、豆1粒でも a pease(ピーズ) でした。最後の s の音は、複数形の s ではなかったのです。
それなのに、英語を話す人たちは「s の音で終わっているから、これは複数形だろう」と考えて、その音を取ってしまいました。こうして生まれたのが pea。pea は、文法の勘違いから生まれた単語なのです。そして、さくらんぼの cherry も同じ道をたどっています。
01pea の語源は? もとは pease だった
pea の語源を、英米の辞書で確かめてみましょう。
- イギリスの Oxford Learner's Dictionaries:17世紀半ば、pease を複数形と解釈して、そこから逆に作った語
- アメリカの『アメリカン・ヘリテージ英語辞典(AHD)』:中英語の pease からの逆成。pease が複数形とまちがえられた
- Dictionary.com(ランダムハウス辞典):初めての記録は1660〜70年。pease を複数形と受け取ったことからの逆成
3つの辞書が、そろって同じことを言っています。
ここで出てくる「逆成(back-formation)」は、すでにある語の語尾を取ったり変えたりして、新しい語を作ることです。Oxford Learner's Dictionaries は、commentator(実況する人)から commentate(実況する)ができた例を挙げています。pea の場合は、pease の最後の音を取って pea を作ったわけです。
02古い pease は今も料理名に残っている
いまの英語にも、昔の pease はちゃんと残っています。
AHD は pease を「古い言葉で、pea のこと」として載せています。そして Oxford Learner's Dictionaries には、pease pudding(ピーズ・プディング) というイギリス英語の料理名があります。乾燥させたエンドウ豆を水につけてから、やわらかくなるまで煮たもので、ふつうはハムや豚肉と一緒に出す料理です。
「豆のプディング」の豆の部分が、いまでも pea ではなく pease。料理の名前の中に、s を取られる前の形が生き残っているのです。
03cherry は古いフランス語の cherise だった
さくらんぼの cherry も、同じしくみで生まれました。
Oxford Learner's Dictionaries によると、cherry は中英語の時代に、フランス北部の古いフランス語 cherise から入ってきた語です。もとをたどると、ギリシャ語の kerasos(さくらんぼの木、さくらんぼ)に行きつきます。
そして Oxford は、cherise が複数形と解釈されたので、最後の s が失われたと説明しています。わざわざ「pea と比べよ」と書き添えているほどです。
いまのフランス語でも、さくらんぼは cerise(フランスの辞書ラルースによる)。cherise は、昔のフランス北部やイングランドで使われたフランス語の形で、AHD は cerise の「異形」(形が少し違うだけの、同じ語)としています。英語は、その最後の s の音を落としたわけです。

04仲間は sherry、marquee、そして kudo
同じように「最後の s は複数形だろう」と思われて削られた単語は、ほかにもあります。
- sherry(シェリー酒):もとは sherris。スペインの町ヘレス(昔の名前は Xeres)のワインのことで、sherris が複数形と解釈されて sherry になった(Oxford・16世紀後半)
- marquee(大型テント):フランス語の marquise から。最後の「ズ」の音が英語の複数形の語尾と受け取られたらしい(AHD)。いまは劇場の入り口の、看板のついたひさしの意味でも使う
- kudo(ほめ言葉):ギリシャ語から来た kudos(称賛、名声) はもともと単数。それなのに複数形のように扱われ、「1つのほめ言葉」の意味で kudo が生まれた。初めての記録は1925〜30年(Dictionary.com)
kudo については、AHD が kudos の使い方の解説で、kudo の誕生は pea や cherry と同じ型だとはっきり書いています。英語の中で、今もこの「勘違い」が起きているのです。
05日本語の「グリンピース」は複数形のまま
では日本語はどうでしょう。
『日本国語大辞典』によると、日本語の「グリンピース」は英語の green peas から来た言葉で、1930年の『新時代用語辞典』に例があります。『デジタル大辞泉』では「グリーンピース」とも言うとしています。
英語は pease の最後の音を「複数形の s」と思って取りましたが、日本語は green peas の s まで丸ごと取り入れました。日本語の「ピース」の「ス」は、まさに英語の複数形の s なのです。
06どんでん返し:cherry の道すじは辞書によって違う
pea については、3つの辞書の説明がほぼそろっています。ところが cherry は、どこから来たのかの説明が辞書によって分かれます。
- Oxford・AHD:中英語の時代に、フランス北部のフランス語 cherise(AHD は「アングロ・ノルマン語の cherise」。中世のイングランドで使われたフランス語)から入った
- Dictionary.com:古英語の ciris- を複数形と受け取ったことからの逆成
古英語の辞書を引くと、古英語にはすでに ciris-(さくらんぼの〜。ラテン語の cerasus から)や、cirse(さくらんぼ)という語がありました。英語の中にあった古い形と、フランス語から新しく入った形のどちらが cherry の直接の祖先なのか。辞書の説明は一つではありません。
ただし、「s の音で終わる語が複数形と思われて、その音が消えた」という点は、3つの辞書すべてが認めています。
また、「勘違い」といっても、pea や cherry はいまでは正しい英語そのものです。一方で kudo は、まだ改まった場ではまちがいとされることが多い語です。勘違いから生まれた語も、長い時間がたつと正しい英語になることがある。pea は、とっくにそこまでたどり着いた単語です。kudo がそこまで行けるかどうかは、これからの話です。
07まとめ
pea は、1粒でも pease と呼んでいた豆の名前から、「複数形の s」と勘違いされた音を取って、17世紀半ばに生まれた単語です。cherry も古いフランス語 cherise の s が消えた形で、sherry や marquee、20世紀に記録が始まる kudo も同じ型です。
英語の話し手は、「s で終わる=複数形」というルールを、もともと複数形ではない語にまで当てはめてきました。次に a pea と言うときは、消えた s のことを思い出してみてください。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn Middle English, a single pea was called a "pease," and the plural was "pease" or "peasen." The sound at…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Today, we say "a pea" for one and "peas" for two or more. But long ago, one was "a pease."
The "s" sound at the end was not a plural. It was part of the word. People thought it was a plural, so they took it away. That is how "pea" was born.
"Cherry" has a similar story. It comes from an old French word, "cherise." English speakers dropped the "s" sound because they thought it meant "more than one."
80 words ・ CEFR A2
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今日では、1粒なら「a pea」、2粒以上なら「peas」と言います。でも昔は、1粒が「a pease」でした。
最後の「s」の音は複数形ではありませんでした。語の一部だったのです。人々はそれを複数形だと思ったので、取ってしまいました。こうして「pea」という語が生まれました。
「cherry」にも似た話があります。cherry は古いフランス語の「cherise」から来ています。英語を話す人たちは、その「s」の音が「2つ以上」を意味すると思ったので、落としてしまったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
pea と cherry が、最後の s の音を複数形とまちがえられて失った話なので B。
Q2. Long ago, what was one pea called?
long ago, one was "a pease" とあるので A。
Q3. In the passage, what does "plural" mean?
最後の文で、s の音が "more than one"(2つ以上)を意味すると思った、と説明しているので C。
In Middle English, a single pea was called a "pease," and the plural was "pease" or "peasen." The sound at the end belonged to the word itself. But to many speakers, a word ending in that sound seemed to be a plural, so they started saying "pea" for just one. Dictionaries date this new form to the mid-1600s.
Linguists call a word made this way a back-formation. The word "cherry" was formed in a similar way from "cherise," an old French word for the fruit. The old form has not completely disappeared. In Britain, people still eat "pease pudding," a dish of dried peas boiled until soft and usually served with ham or pork.
114 words ・ CEFR B1
和訳を見る
中英語では、1粒の豆は「pease」と呼ばれ、複数形は「pease」または「peasen」だった。最後の音は語そのものの一部だった。しかし多くの話し手にとって、その音で終わる語は複数形のように思えたので、1粒だけのときに「pea」と言い始めた。辞書は、この新しい形を1600年代半ばのものとしている。
言語学者は、このようにしてできた語を逆成語と呼ぶ。「cherry」という語も、その果物を表す古いフランス語「cherise」から同じようにしてできた。古い形は完全には消えていない。イギリスでは今でも「pease pudding」という、乾燥したエンドウ豆をやわらかくなるまで煮た料理が食べられており、ふつうはハムや豚肉と一緒に出される。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
pea と cherry がどのようにできた語かを説明しているので A。
Q2. When, according to dictionaries, did the word "pea" appear?
Dictionaries date this new form to the mid-1600s とあるので B。
Q3. Why does the writer mention "pease pudding"?
The old form has not completely disappeared の直後に例として挙げているので C。
English speakers tend to hear a word ending in an "s" sound as a plural, and over the centuries that habit has reshaped several words. In Middle English, one pea was a "pease." Speakers took the final sound for a plural ending and dropped it, and "pea" appeared in the mid-1600s.
"Cherry" lost the final "s" of the Old French "cherise" in the same way, and "sherry" was cut from "sherris," a name for wine from the Spanish town now called Jerez. The process is still going on. "Kudos," a Greek word for praise, is singular, but many writers treat it as a plural, and for about a hundred years some have used "kudo" for a single compliment.
The American Heritage Dictionary points out that this follows the pattern of "pea" and "cherry," though "kudo" is often seen as an error in formal writing. Dictionaries do not fully agree on where "cherry" came from. Some trace it to French, while one points to an Old English form. They all agree, though, that the lost "s" was mistaken for a plural. Japanese went the other way and borrowed "green peas," plural "s" and all, as "gurinpisu."
195 words ・ CEFR B2
和訳を見る
英語の話し手は、「s」の音で終わる語を複数形だと受け取りがちで、何世紀ものあいだに、その習慣がいくつかの語の形を変えてきた。中英語では、豆1粒は「pease」だった。話し手は最後の音を複数形の語尾と受け取って落とし、1600年代半ばに「pea」が現れた。
「cherry」も同じようにして古いフランス語「cherise」の最後の「s」を失い、「sherry」は、いまはヘレスと呼ばれるスペインの町のワインの名「sherris」を切ってできた。この流れは今も続いている。ギリシャ語で称賛を表す「kudos」は単数だが、多くの書き手がそれを複数形として扱い、この100年ほどは、1つのほめ言葉を表すのに「kudo」を使う人もいる。『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』は、これは「pea」や「cherry」と同じ型だと指摘している。
ただし「kudo」は、改まった文章ではまちがいと見なされることが多い。「cherry」がどこから来たかについては、辞書の意見は完全には一致していない。フランス語にさかのぼらせる辞書もあれば、古英語の形を挙げる辞書もある。それでも、消えた「s」が複数形とまちがえられたという点では、どの辞書も一致している。日本語は逆の道をたどり、「green peas」を複数形の「s」ごと「グリンピース」として取り入れた。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
s の音を複数形と思いこんだ習慣が、pea・cherry・sherry・kudo などの形を変えた話なので B。
Q2. According to the passage, what is true about "kudo"?
for about a hundred years some have used "kudo" for a single compliment とあるので C。改まった文章ではまちがいと見なされることが多いので D は誤り。
Q3. What does the writer mean by "Japanese went the other way"?
英語は s を落としたが、日本語は green peas を plural "s" and all(複数形の s ごと)取り入れた、という意味なので B。
重要単語
- peaA2名詞エンドウ豆(の1粒)There is one pea left on your plate.
pease の最後の音を複数形とまちがえて取った逆成。複数形は peas。 - podB2名詞(豆の)さやOpen the pod and take out the peas.
like two peas in a pod で「(見た目が)そっくり」。 - singularB1名詞・形容詞単数(の)"Pea" is the singular, and "peas" is the plural.
the singular form「単数形」。反対語は plural。 - pluralB1名詞・形容詞複数(の)Most English plurals end in "s."
in the plural「複数形で」。反対語は singular。 - back-formationC1名詞逆成(語の一部を取り去ってできた語)"Pea" is a back-formation from "pease."
commentator から commentate ができたのも逆成(Oxford Learner's Dictionaries の例)。 - kudosC2名詞称賛、名声Kudos to the team for finishing on time.
ギリシャ語から来た単数の名詞。kudo という単数形は改まった文章では避けるのが無難。 - complimentB2名詞ほめ言葉She took his comment as a compliment.
pay someone a compliment「人をほめる」。complement(補うもの)とつづりが似ているので注意。
公式・一次情報をチェック
- pea(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- cerise(Larousse/フランス語)larousse.fr
- like two peas in a pod(Cambridge Dictionary)dictionary.cambridge.org
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豆1粒は英語で a pea。でも昔は a pease だった。最後の音を複数形の s と勘違いした人たちが削り、pea が生まれた。cherry も古いフランス語 cherise の s が消えた形。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Oxford Learner's Dictionaries「pea」「cherry」「sherry」(Word Origin)・「back-formation」「pease pudding」oxfordlearnersdictionaries.com
- The American Heritage Dictionary of the English Language, 5th ed.「pea」「cherry」「kudos」(Usage Note)「marquee」ahdictionary.com
- Dictionary.com(Random House Unabridged Dictionary)「pea」「cherry」「kudo」「marquee」(Origin)dictionary.com
- Bosworth, J. & Toller, T. N. An Anglo-Saxon Dictionary Online(カレル大学)「PISE」「CIRIS-」bosworthtoller.com
- 精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉「グリンピース」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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