Bluetoothの「青い歯」は1000年以上前のデンマーク王のあだ名。しかも“仮の名前”だった

読む前に予想してみよう!
Bluetoothという名前は、開発の最初から正式名称として決まっていた
1996年の会議で「仮のコード名」として出された。本命はPANとRadioWireだったが、どちらも使えず、Bluetoothが残った(Bluetooth SIG)。
- 対象
- Bluetooth SIGの公式説明・デンマークの博物館と百科事典・ユネスコ世界遺産の記録
- 規模
- 10世紀の王と1996年の命名
- 研究の種類
- 公式資料・歴史資料の調査
- 確かさ
- ★★★★☆
Bluetoothは10世紀のデンマーク王ハーラルのあだ名「青歯」から。1996年に仮の名前として出され、本命の名前が使えず、そのまま残った。
ひとことで言うとブルートゥースは、1000年以上前の王様のあだ名「青い歯」だった!
もくじ
ワイヤレスイヤホンをスマホにつなぐとき、毎日のように目にする「Bluetooth(ブルートゥース)」。英語をそのまま訳すと「青い歯」です。
無線の技術が、なぜ「青い歯」なのか。答えは、1000年以上前のデンマークの王様のあだ名です。
しかもこの名前、本当は正式な名前が決まるまでの「仮の名前」でした。本命の名前が間に合わず、仮の名前がそのまま世界中に広まったのです。
01「青い歯」の王、ハーラル
Bluetooth の規格を管理している業界団体 Bluetooth SIG は、公式サイトで名前の由来を説明しています。もとになったのは、10世紀の王ハーラル・ゴームソン(Harald Gormsson)。あだ名が「Bluetooth」でした。
デンマーク語では、このあだ名を Blåtand と書きます。デンマークの百科事典『Lex(デン・ストーレ・ダンスケ)』は、Blåtand を英語にすると bluetooth で、無線の Bluetooth もこれを使った名前だと書いています。
デンマーク国立博物館によると、ハーラルの父はゴーム老王(Gorm the Old)。ゴームが958年ごろに亡くなったあと、ハーラルが王になり、987年まで治めました。ハーラルの息子はスヴェン双髭王(Svein Forkbeard)。父から力ずくで王位を奪い、一時はデンマーク・ノルウェー・イングランドの王になった人です。
「老いた」「青い歯」「ふたまたのひげ」。博物館の説明でも、親子3代がそろってあだ名つきで呼ばれています。
021996年、会議で出た「とりあえずの名前」
時代は一気に1000年後に飛びます。
1990年代、パソコンや携帯電話を線なしでつなぐ技術が作られていました。1996年、インテル、エリクソン、ノキアの3社が集まり、この技術をみんなで使える共通の規格にする相談をしました。
その会議で、インテルのジム・カーダック(Jim Kardach)が「とりあえず Bluetooth と呼ぼう」と言い出します。理由について、カーダックはのちにこう語ったと SIG は紹介しています。
“King Harald Bluetooth…was famous for uniting Scandinavia just as we intended to unite the PC and cellular industries with a short-range wireless link.”
(ハーラル王はスカンディナビアをまとめたことで有名だ。私たちも、パソコンと携帯電話の業界を短距離の無線でまとめようとしていた)
ばらばらの国をまとめた王と、ばらばらの機械をつなぐ技術。この2つを重ねた名前でした。ただし SIG によると、これはマーケティングの担当者がもっといい名前を考えるまでの「場つなぎ」のつもりでした。
03本命は「PAN」と「RadioWire」だった
いよいよ正式な名前を決める段階になり、候補は2つにしぼられました。
- PAN(Personal Area Networking:個人のまわりの通信網)
- RadioWire(radio=無線、wire=電線)
いちばん有力だったのは PAN でした。ところが調べてみると、PAN という言葉はネット上ですでに数万件も使われていました。ありふれすぎていたのです。
もう1つの RadioWire は、ほかの会社が商標(商品の名前の権利)を持っていないかを調べる必要がありました。その調査が、発売に間に合わなかったのです。
こうして、残ったのは仮の名前の Bluetooth だけ。SIG によると、この名前はあっという間に業界に広まり、変える前に定着してしまったそうです。

04ロゴは王のイニシャル、イェリングの石碑は「デンマークの出生証明書」
スマホの画面に出る、あの少しとがった B のようなマーク。SIG によると、これはルーン文字の ᚼ(H)と ᛒ(B)を重ねた「束ねルーン」です。ルーン文字は、昔の北欧で石などに刻まれた文字です。
ハーラル自身も、ルーン文字で大きな記録を残しています。デンマーク国立博物館によると、ハーラルは965年ごろ、イェリングに大きなルーン石碑を建てました。父ゴームと母テューラをしのぶための石碑です。
碑文には、ハーラルがデンマークとノルウェーのすべてを手に入れ、デンマークの人々をキリスト教徒にした、と刻まれています。石の片面にはキリストの姿が彫られていて、博物館によると、これはスカンディナビアで最も古いキリストの像です。
この石碑は「デンマークの出生証明書」とも呼ばれます。碑文に「デンマーク」という国の名前が出てくることと、宗教が変わったことのはっきりした証拠であることが理由です。イェリングの塚と石碑と教会は、1994年にユネスコの世界遺産に登録されました。
05どんでん返し:「死んだ歯」も「958年に統一」も、確かな記録はない
SIG の公式サイトは、ハーラルについてこう書いています。958年にデンマークとノルウェーを統一した。そして、死んだ歯が暗い青灰色だったので Bluetooth と呼ばれた。
でも、歴史の資料を見ると、どちらもそこまではっきりした話ではありません。
まず、あだ名です。デンマークの百科事典『Lex』の項目(歴史学者が執筆)によると、Blåtand というあだ名が記録に出てくるのは、1140年ごろの『ロスキレ年代記』が最初です。ハーラルが亡くなってから、150年ほどたってからのことです。百科事典は、目立って青い(あるいは黒い)歯があったことを指すのだろう、と書いています。歯がなぜその色だったのか、「死んだ歯」だったのかは、百科事典にも博物館の説明にも書かれていません。
次に、958年です。デンマーク国立博物館の説明では、958年ごろは父ゴームが亡くなり、ハーラルが王になった年です。『Lex』はハーラルが王だった時期を950年ごろからとし、ハーラルがデンマークをまとめたとしても、どの地方を新しく加えたのかははっきりしない、と書いています。ノルウェーについては、南部に影響力を持っていた、という書き方です。
「デンマークとノルウェーのすべてを手に入れた」という言葉は、ハーラルが自分の石碑に刻ませた言葉です。歴史の記録というより、王自身の主張として読むのがよさそうです。
06英語の Bluetooth、こう使う
英語では Bluetooth は名前なので、大文字の B で書きます。会話でよく使う言い方を覚えておきましょう。
- Turn on Bluetooth on your phone.(スマホのブルートゥースをオンにして)
- Can you connect it via Bluetooth?(ブルートゥースでつなげる?)
- I paired my new earbuds with my phone.(新しいイヤホンをスマホとペアリングした)
オックスフォードの学習辞典には、動詞 pair に「電子機器を Bluetooth で別の機器とつなぐ」という意味が載っています。日本語の「ペアリングする」は、英語でもそのまま pair です。
07まとめ
Bluetooth は、1000年以上前のデンマークの王ハーラルのあだ名「青い歯」から来ていました。しかも1996年の会議で出た仮の名前で、本命の PAN と RadioWire が使えなかったために、そのまま残った名前です。
次にイヤホンをつなぐときは、画面の小さなマークを見てみてください。そこには、イェリングの石碑と同じルーン文字で、王のイニシャルが刻まれています。
よくある質問
Bluetoothの名前の由来は何ですか?
10世紀のデンマークの王ハーラル・ゴームソンのあだ名です。デンマーク語の Blåtand を英語にすると bluetooth(青い歯)になります。規格を管理する Bluetooth SIG が公式サイトで説明しています。
なぜ技術の名前に王様のあだ名をつけたのですか?
名前を提案したインテルのジム・カーダックは、ハーラル王がスカンディナビアをまとめたことで有名で、自分たちもパソコンと携帯電話の業界を短距離の無線でまとめようとしていたから、と語ったと SIG は紹介しています。
Bluetoothは仮の名前だったのですか?
はい。1996年の会議で出された仮のコード名でした。正式な名前の候補は PAN と RadioWire でしたが、PAN はネット上ですでに数万件も使われ、RadioWire は商標の調査が発売に間に合わず、Bluetooth だけが残りました。
ハーラル王はなぜ「青い歯」と呼ばれたのですか?
はっきりしません。SIG は「死んだ歯が暗い青灰色だったから」と書いていますが、デンマークの百科事典『Lex』は、目立って青い(あるいは黒い)歯があったことを指すのだろう、と書くだけです。あだ名の最初の記録も、亡くなって150年ほど後の1140年ごろです。
Bluetoothのロゴにはどんな意味がありますか?
ルーン文字の ᚼ(ハガル)と ᛒ(ビャルカン)を1つに組み合わせたものです。ハーラル(Harald)とブルートゥース(Bluetooth)の頭文字 H と B にあたります。ルーン文字は昔の北欧で石などに刻まれた文字です。
Bluetoothは何かの略語ですか?
いいえ。SIG は、この名前は略語ではなく、何かの頭文字でもないと説明しています。王のあだ名を、そのまま借りた名前です。
「ブルートゥースでつなぐ」は英語で何と言いますか?
connect via Bluetooth と言います。「ペアリングする」はそのまま pair で、I paired my new earbuds with my phone.(新しいイヤホンをスマホとペアリングした)のように使います。Bluetooth は名前なので大文字の B で書きます。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhen you pair your earbuds with your phone, you are using a name that is over 1,000 years old.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Many people use Bluetooth every day to connect earbuds to a phone. But where does the name come from? It comes from a king. Harald Bluetooth ruled Denmark more than 1,000 years ago, and "Bluetooth" was his nickname.
In 1996, a man from Intel suggested this name for a new technology. It was only for a short time. The team wanted to choose a better name later. But the other names did not work out, so "Bluetooth" stayed.
78 words ・ CEFR A2
和訳を見る
多くの人が、イヤホンをスマホにつなぐために毎日 Bluetooth を使っています。でも、この名前はどこから来たのでしょう。王様から来ています。ハーラル・ブルートゥースは1000年以上前にデンマークを治めた王で、「Bluetooth」は彼のあだ名でした。
1996年、インテルの男性が、新しい技術にこの名前を提案しました。しばらくのあいだだけのつもりでした。チームはあとでもっといい名前を選ぶつもりでした。でも、ほかの名前はうまくいかなかったので、「Bluetooth」が残りました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
But where does the name come from? と問いかけ、王のあだ名から来たと説明しているので B。
Q2. When did the new technology get the name "Bluetooth"?
In 1996, a man from Intel suggested this name for a new technology とあるので C。1000年以上前は王が生きていた時代。
Q3. In the passage, what is a "nickname"?
"Bluetooth" was his nickname は、本名のハーラルとは別の呼び名=あだ名のことなので D。
When you pair your earbuds with your phone, you are using a name that is over 1,000 years old. Harald Bluetooth was a Danish king who ruled until 987. In 1996, Intel, Ericsson and Nokia met to plan a shared standard for short-range radio.
Jim Kardach from Intel suggested "Bluetooth" as a code name. He later explained that the king had brought Scandinavia together, and the new technology would bring computers and mobile phones together.
The name was only supposed to last until a better one was found. The favorite was PAN, but it already appeared tens of thousands of times online. A trademark check on RadioWire could not be finished in time. So the temporary name stayed.
118 words ・ CEFR B1
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イヤホンをスマホとペアリングするとき、あなたは1000年以上前の名前を使っている。ハーラル・ブルートゥースは987年まで国を治めたデンマークの王だった。1996年、インテル、エリクソン、ノキアが、短距離無線の共通の規格を計画するために集まった。
インテルのジム・カーダックが、コード名として「Bluetooth」を提案した。彼はのちに、王がスカンディナビアをまとめたように、新しい技術がパソコンと携帯電話をまとめるのだと説明した。
この名前は、もっといい名前が見つかるまでのはずだった。本命は PAN だったが、ネット上にすでに数万回も出ていた。RadioWire の商標の確認は間に合わなかった。そこで、仮の名前が残った。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
The name was only supposed to last until a better one was found. … So the temporary name stayed. が中心なので A。
Q2. Why was PAN not used?
The favorite was PAN, but it already appeared tens of thousands of times online とあるので C。商標の確認が間に合わなかったのは RadioWire。
Q3. Why did Kardach connect the king with the technology?
the king had brought Scandinavia together, and the new technology would bring computers and mobile phones together から、どちらも別々のものをまとめると考えたので B。
The Bluetooth logo on your phone is two runes joined together: the letters for H and B, the initials of Harald Bluetooth, a Danish king of the tenth century. Around 965, Harald set up a large rune stone at Jelling in memory of his parents. Its inscription says he won all of Denmark and Norway and made the Danes Christian, and the stone is often called Denmark's birth certificate.
The tech name came much later. At a 1996 meeting, an Intel engineer, Jim Kardach, offered "Bluetooth" as a placeholder. PAN was the planned name, but it was already everywhere online, and a trademark search on RadioWire was not ready in time. The industry group's website says Harald united Denmark and Norway in 958 and had a dead, bluish tooth.
Historians are more careful. A Danish encyclopedia notes that the nickname first shows up in a chronicle written around 1140, some 150 years after he died. The National Museum of Denmark gives 958 as roughly the year he became king. And the words on the stone were Harald's own claim about himself.
181 words ・ CEFR B2
和訳を見る
スマホに出る Bluetooth のロゴは、2つのルーン文字を合わせたものだ。H と B の文字で、10世紀のデンマーク王ハーラル・ブルートゥースの頭文字にあたる。965年ごろ、ハーラルは両親をしのんでイェリングに大きなルーン石碑を建てた。
その碑文には、彼がデンマークとノルウェーのすべてを手に入れ、デンマーク人をキリスト教徒にしたとあり、この石碑はよく「デンマークの出生証明書」と呼ばれる。技術の名前になったのは、ずっとあとのことだ。1996年の会議で、インテルの技術者ジム・カーダックが「Bluetooth」を仮の名前として出した。予定していた名前は PAN だったが、ネット上にすでにあふれていて、RadioWire の商標調査も間に合わなかった。業界団体のサイトは、ハーラルが958年にデンマークとノルウェーを統一し、死んで青みがかった歯をしていたと書いている。
歴史家はもっと慎重だ。デンマークの百科事典によると、このあだ名が最初に出てくるのは1140年ごろに書かれた年代記で、彼の死から150年ほどあとのことだ。デンマーク国立博物館は、958年をおよそ彼が王になった年としている。そして石碑の言葉は、ハーラルが自分について述べた主張だった。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
ロゴと名前の由来になった王ハーラルを紹介し、後半で業界団体の説明と歴史家の見方のちがいを述べているので C。
Q2. According to the passage, when does the nickname first appear in writing?
the nickname first shows up in a chronicle written around 1140 とあるので C。958年は王になった年、965年ごろは石碑の年。
Q3. What can be inferred about the "dead, bluish tooth" story?
あだ名が出てくる最初の記録は死から150年ほどあとの年代記なので、歯の話を本人の生きていた時代の記録で裏づけることはできないと分かる。D。
重要単語
- wirelessB1形容詞無線の、線を使わないI use wireless earbuds on the train.
wire(電線)+-less(〜のない)。wireless earbuds「ワイヤレスイヤホン」。 - pairC1動詞(機器を)ペアリングするI paired my new earbuds with my phone.
pair A with B「A を B とペアリングする」。名詞の a pair of shoes「くつ1足」と同じ語。 - nicknameB1名詞あだ名The king got his nickname from his tooth.
動詞でも使える。He was nicknamed "Bluetooth."「彼はブルートゥースとあだ名された」。 - placeholderC1名詞(本番が決まるまでの)仮のもの"Bluetooth" was only meant to be a placeholder.
place(場所)+holder(押さえておくもの)。席取りのイメージ。 - trademarkB2名詞商標They didn't have time to check the trademark.
会社が商品の名前やマークを独占して使える権利。™ のマークで表す。 - runeC1名詞ルーン文字The logo is made of two old runes.
昔の北欧などで石や木に刻まれた文字。rune stone「ルーン石碑」。 - temporaryB1形容詞一時的な、仮のThis is only a temporary name.
反対語は permanent(永久の)。a temporary job「臨時の仕事」。
公式・一次情報をチェック
- Origin of the name(Bluetooth SIG)bluetooth.com
- pair(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
- Jelling Mounds, Runic Stones and Church(UNESCO World Heritage Centre)whc.unesco.org
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イヤホンをつなぐ「Bluetooth」は、10世紀のデンマーク王のあだ名「青い歯」。1996年に“仮の名前”として出され、本命の候補(PAN と RadioWire)が使えず、そのまま残った。ロゴは王の頭文字のルーン文字。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Bluetooth SIG「Origin of the Name」(公式サイト)bluetooth.com
- National Museum of Denmark「The Jelling Stone」en.natmus.dk
- National Museum of Denmark「Gorm the Old, Harald Bluetooth and Svein Forkbeard」en.natmus.dk
- Pajung, S. & Skovgaard-Petersen, I.「Harald Blåtand」Lex(Den Store Danske)lex.dk
- UNESCO World Heritage Centre「Jelling Mounds, Runic Stones and Church」whc.unesco.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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