本館「マジカ!?サイエンス」科学の雑学とニュースを論文でウラ取り読みに行く →
英語のマジか!?ホント

水着の「ビキニ」は、米国が原爆実験をした島の名前。水着の発表は実験の4日後

水着の「ビキニ」は、米国が原爆実験をした島の名前。水着の発表は実験の4日後

読む前に予想してみよう!

水着のビキニの「ビ」は、ラテン語の bi-(2つ)から来ている

研究カード(どんな研究?)
対象
英語辞書の語源欄・歴史研究・ユネスコの記録
規模
1946年の命名と、1946〜1958年の核実験
研究の種類
語源調査(辞書と歴史資料の照合)
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

水着のビキニは、1946年7月1日に米国が原爆実験をした太平洋のビキニ環礁の名前。水着の発表はその4日後。のちに bi を「2」と勘違いして monokini も生まれた。

ひとことで言うと水着のビキニは、アメリカが原爆の実験をした南の島の名前なんだ。

もくじ
  1. 原爆実験の4日後に、パリで「ビキニ」発表
  2. 島に住んでいた170人ほどは、その前に島を出されていた
  3. 日本人にとっての「ビキニ」
  4. “ビ=2”と勘違いして「モノキニ」が生まれた
  5. ヘリポートもテレソンも、「切る場所をまちがえた」言葉
  6. どんでん返し:「最初のビキニ」はレアールではないかもしれない
  7. まとめ

夏の水着売り場に必ず並んでいる「ビキニ」。この名前、どこから来たか知っていますか?

答えは太平洋の島の名前です。しかもそこは、アメリカが原子爆弾の実験をした場所でした。

1946年7月1日、マーシャル諸島のビキニ環礁で原爆が爆発しました。その4日後の7月5日、パリで新しい水着が発表され、この島の名前がつけられたのです。

01原爆実験の4日後に、パリで「ビキニ」発表

アメリカの辞書 American Heritage Dictionary(AHD)は、bikini の語源を「フランス語から。Bikini にちなむ」と書いています。地名の Bikini の項目には、「マーシャル諸島の環礁。1946年から1958年まで、アメリカの核実験場だった」とあります。

オックスフォード大学出版局の学習辞典(Oxford Learner's Dictionaries)は、もう一歩ふみこんで、こう説明しています。

  • 1940年代にできた言葉
  • 1946年に原爆が爆発した Bikini にちなむ
  • その水着が見る人に与える、とされる「爆発的な」衝撃から

スミソニアン協会の雑誌に、ネバダ大学リノ校の歴史研究者ジェニファー・ル・ゾット(Jennifer Le Zotte)が書いた記事(2015年)によると、発表のいきさつはこうです。

同じ記事によると、レアールはこの水着をマッチ箱に収めていました。「結婚指輪を通り抜けられなければ、ビキニとは呼べない」とも言ったといいます。それくらい小さい、という自慢でした。バチカンの話もふくめて、どれもよく語られる話ですが、当時の新聞などの記録まではたどれていません。

02島に住んでいた170人ほどは、その前に島を出されていた

では、名前を取られた島はどうなったのでしょう。

太平洋の島々の研究者テレシア・テアイワ(Teresia Teaiwa)は、1994年に学術誌『The Contemporary Pacific』(ハワイ大学出版局)で、ビキニの水着と核実験の関係を論じました。論文によると、こういう流れでした。

  • 1946年のビキニの人口は166〜170人
  • 1946年2月10日、島の人たちは米軍の軍政官から「人類のため、すべての戦争を終わらせるため」に島を使う、と告げられた
  • 3月7日、島の人たちは東へ160キロあまり離れたロンゲリック環礁へ移った
  • 7月1日と7月25日、約4万2千人の米軍関係者が見守るなか、2回の核実験が行われた

ロンゲリックは食べ物が足りず、人々はその後もクワジェリン、キリ島と移ることになります。1968年に「安全になった」とされ、一部の人がビキニに戻りました。しかし放射能はまだ強く、1978年、人々はふたたび島から強制的に立ち退かされました。テアイワによると、島の人たちの中からは放射能によるがんや生まれつきの障害に苦しむ人が出て、アメリカに対して多くの補償の訴えが起こされました。

ユネスコは2010年、ビキニ環礁を「核実験場」として世界遺産に登録しました。ユネスコによると、ビキニでは1946年から1958年までに23回の核実験が行われています。第五福竜丸展示館によると、マーシャル諸島全体では同じ期間に67回です。

ビキニ環礁の人々は、1946年3月に島を出てロンゲリック環礁へ移った(Teaiwa 1994)
ビキニ環礁の人々は、1946年3月に島を出てロンゲリック環礁へ移った(Teaiwa 1994)

03日本人にとっての「ビキニ」

日本では「ビキニ」と聞いて、別の出来事を思い浮かべる人もいるはずです。

1954年3月1日、アメリカはビキニ環礁で水爆「ブラボー」の実験を行いました。東京都立第五福竜丸展示館によると、爆発の場所から東へ160キロの海でマグロ漁をしていた静岡県焼津の漁船「第五福竜丸」に「死の灰」が降り、乗組員23人全員が被ばくしました。無線長の久保山愛吉さんは、被ばくから半年後に亡くなりました。この年の終わりまでに、放射能で汚れたマグロを水揚げした船は856隻にのぼります。

同じ「ビキニ」という言葉が、夏の水着の名前であり、日本の漁師たちが被ばくした海の名前でもあるのです。

04“ビ=2”と勘違いして「モノキニ」が生まれた

ここからは、言葉の話にもどります。

ビキニの「bi」には、もともと何の意味もありません。島の名前の一部です。ところが英語にもフランス語にも、bi-=2つのという部品があります。英語なら bicycle(自転車=車輪2つ)、bilingual(2か国語を話す)の bi- です。

上下2つに分かれた水着の名前が bi で始まっていたので、「bi-kini=2つの kini」と受け取る人たちが出てきました。そこで生まれたのが monokini(モノキニ) です。

  • Oxford Learner's Dictionaries:1960年代の言葉。mono-(1つの)+ bikini の短い形。「最初の音節を bi-(2つの)と誤って解釈した」と書いている
  • AHD:フランス語から入った言葉。bikini を「bi-(2つの)と -kini を合わせた語と受け取った。ビキニは2つの部分でできているから」と説明している

モノキニには、ビキニの下だけをはく水着(上はなし)という意味と、ワンピース型で胴に切りこみのある水着という意味があります。

一度「-kini」が水着の部品になると、新しい言葉が次々にできました。

  • tankini(タンキニ):タンクトップ+ビキニ(AHD)
  • burkini(ブルキニ):顔・手・足以外の全身をおおう、イスラム教徒の女性向けの水着。ブルカ(イスラム教徒の女性が着る、頭と顔、ときには全身をおおう上着)+ビキニ。オックスフォードの学習辞典では「21世紀初め」の言葉

05ヘリポートもテレソンも、「切る場所をまちがえた」言葉

言葉の切れ目を勘違いして、新しい部品が生まれる。英語には、同じ仕組みでできた言葉がほかにもあります。

heliport(ヘリポート)。helicopter の語源は、ギリシャ語の helix(らせん)+ pteron(翼)です(AHD)。正しく切るなら helico-pter。ところが英語では helicopter の頭を heli- と切り取り、airport(空港)の port とつないで heliport を作りました(AHD・オックスフォード)。日本語でヘリコプターを「ヘリ」と略すのと、同じところで切っています。

telethon(テレソン)。長時間のテレビ番組で寄付を集めるイベントのことです。語源は tele-(テレビ)+ -thon。この -thon は marathon(マラソン)から切り取った部品です(AHD・オックスフォード)。

marathon は、古代ギリシャの村マラトン(Marathon)の名前でした。AHD によると、紀元前490年にアテナイ(今のアテネ)軍がペルシャ軍に勝ったとき、その知らせを伝える使者がマラトンからアテナイまで走った、という話にちなみます。marathon を「mara+thon」と分ける理由は、もともとはありません。それでも -thon(-athon)は「長く続ける催し」の部品になりました。

ビキニも、ヘリポートも、マラソンも。地名や単語の一部が、切りまちがえられて新しい部品になったのです。

06どんでん返し:「最初のビキニ」はレアールではないかもしれない

「ビキニを発明したのはレアール」とよく言われます。でも、話はそう単純ではありません。

ル・ゾットの記事によると、レアールの発表の3週間前、同じフランスのデザイナー、ジャック・エイム(Jacques Heim)が上下に分かれた水着を「Atome(アトム=原子)」と名づけて売り出していました。飛行機で空に文字を書かせ、「世界一小さい水着」と宣伝したそうです。レアールも同じように空に文字を書かせ、「世界一小さい水着より小さい」と宣伝し返しました。

違いはおへそです。エイムのアトムはおへそが隠れる形、レアールのビキニはおへそが見える形でした。しかも当時、すぐに受け入れられて世界の海辺で着られたのは、エイムのほうだったといいます。名前として生き残ったのがビキニだったのです。

もう一つ。名前の理由とされる「爆発的な衝撃」も、オックスフォードの学習辞典は「supposed(〜とされる)」、ル・ゾットも「purportedly(伝えられるところでは)」と書いています。レアール本人が名前の理由をどう語ったかは、はっきりした記録で確かめられていません。

テアイワは論文で、楽しい夏のイメージの「ビキニ」が、島を追われた人々の歴史を見えにくくしている、と批判しています。

07まとめ

水着のビキニは、原爆実験が行われた太平洋の島の名前でした。発表は、その実験のわずか4日後。そして名前の「bi」が「2」と勘違いされ、monokini や tankini まで生まれました。

次にビキニという言葉を見たら、その名前の島で暮らしていた170人ほどの人たちのことも、少しだけ思い出してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerBikini Atoll is a ring of coral islands in the Marshall Islands. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Bikini Atoll is a ring of coral islands in the Marshall Islands. About 170 people lived there until March 1946, when the U.S. military moved them to another atoll. On July 1, the United States set off an atomic bomb at Bikini. Four days later in Paris, designer Louis Réard showed a tiny two-piece swimsuit and called it the "Bikini."

An Oxford dictionary says the name came from the "explosive" effect the suit was supposed to have. The name later led to a new word in an odd way. People took the "bi" in "bikini" to mean "two," like the "bi" in "bicycle." That is how a swimsuit with only the bottom part came to be called a "monokini."

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

ビキニ環礁は、マーシャル諸島にある輪の形をしたサンゴの島々だ。1946年3月まで約170人がそこに住んでいたが、米軍が彼らを別の環礁へ移した。7月1日、アメリカはビキニで原子爆弾を爆発させた。その4日後、パリでデザイナーのルイ・レアールがとても小さな上下に分かれた水着を発表し、「ビキニ」と呼んだ。

オックスフォードの辞書によると、この名前は、その水着が持つとされた「爆発的な」効果から来ている。この名前は、のちに風変わりな形で新しい言葉を生んだ。人々は、「bikini」の「bi」を、「bicycle」の「bi」のように「2」という意味だと受け取った。こうして、下の部分だけの水着は「monokini」と呼ばれるようになった。

4択リーディングクイズ

Q1. What happened to the people of Bikini in March 1946?

Q2. According to the Oxford dictionary, why was the swimsuit named "Bikini"?

Q3. What does the writer mean by "led to a new word in an odd way"?

重要単語

  • atollC1
    名詞環礁(輪の形に並んだサンゴの島々)The atoll is a ring of small coral islands. Bikini Atoll のように地名の後ろにつく。語源はインド洋の島国モルディブの言葉(ディベヒ語)の atholhu(AHD)。
  • swimsuitA2
    名詞水着I need a new swimsuit for the school trip. swim+suit(ひとそろいの服)。bathing suit とも言う。
  • two-pieceB1
    形容詞(服が)上下に分かれたShe wore a two-piece swimsuit to the beach. 反対は one-piece。a two-piece suit は「上下そろいのスーツ」。
  • nuclear testB2
    名詞核実験The nuclear test forced the islanders to leave their home. carry out a nuclear test「核実験を行う」。nuclear の発音は「ニュークリア」。
  • evacuateB2
    動詞(住民を)避難させる、立ち退かせるThe people were evacuated before the test. e-(外へ)+vacuate(からにする)。vacuum(真空)と同じ仲間。
  • falloutC1
    名詞放射性降下物、「死の灰」The fallout from the test landed on a fishing boat. fall out(落ちてくる)から。比ゆ的に「(事件の)余波、悪影響」の意味でもよく使う。
  • coinC1
    動詞(新しい言葉を)作るThe word "monokini" was coined in the 1960s. 名詞の coin(硬貨)と同じ語。「硬貨を鋳造する」から「新語を作る」に。
水着の「ビキニ」は、米国が原爆実験をした太平洋の島の名前。1946年7月1日の実験から4日後、パリで発表された。のちに bi を「2」と勘違いして、上の部分がない水着を monokini(mono=1)と呼ぶようになった。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(7件)タップで表示
  1. The American Heritage Dictionary「Bikini」「bikini」「monokini」「tankini」「burkini」「heli-」「heliport」「helicopter」「-athon」「telethon」「marathon」ahdictionary.com
  2. Oxford Learner's Dictionaries「bikini」「monokini」「burkini」「heliport」「telethon」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com
  3. Le Zotte, J. (2015) How the Summer of Atomic Bomb Testing Turned the Bikini Into a Phenomenon, Smithsonian Magazinesmithsonianmag.com
  4. Teaiwa, T. K. (1994) bikinis and other s/pacific n/oceans, The Contemporary Pacific 6(1): 87–109(ハワイ大学 ScholarSpace)scholarspace.manoa.hawaii.edu
  5. UNESCO World Heritage Centre「Bikini Atoll Nuclear Test Site」(2010年登録)whc.unesco.org
  6. 東京都立第五福竜丸展示館「第五福竜丸とは」d5f.org
  7. 東京都立第五福竜丸展示館「展示について」(久保山愛吉無線長)d5f.org

本館

マジカ!?サイエンスで読む、ことばの研究

論文でウラ取りした科学の「マジか!?」。言語・脳・学習の研究も

マジカ!?サイエンスのトップへ →