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日本語のマジか!?ホント

「足元をすくわれる」は辞書では“誤り”。それでも使う人は64.4%、本来の「足をすくわれる」は26.3%

「足元をすくわれる」は辞書では“誤り”。それでも使う人は64.4%、本来の「足をすくわれる」は26.3%

読む前に予想してみよう!

文化庁の2016年度調査では、本来の言い方とされる「足をすくわれる」を使う人が多数派だった

研究カード(どんな研究?)
対象
全国の16歳以上の男女
規模
2,015人(2016年度)
研究の種類
全国世論調査(個別面接)+国語辞典
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「卑劣なやり方で失敗させられる」ことを「足元をすくわれる」と言う人は64.4%。本来の言い方とされる「足をすくわれる」は26.3%。ただし9年前より、本来の形を使う人が10ポイント増えている。

ひとことで言うと「足元をすくわれる」はよく聞くけど、辞書では「足をすくわれる」が正しい形なんだって!

もくじ
  1. 本来の形を選んだのは4人に1人
  2. 年代別では、どの世代も「足元」を使う人のほうが多い
  3. なぜ「足」なのか
  4. それでも「足元」と言いたくなるわけ
  5. 英語では「足の下のじゅうたん」を引っこ抜く
  6. どんでん返し:本来の形は増えている
  7. まとめ

「油断していたら、ライバルに足元をすくわれた」

ニュースでも会話でもよく聞く言い方です。ところが国語辞典を引くと、「足元をすくわれる」は本来の言い方ではないとされています。正しいとされるのは「足をすくわれる」。

小学館の『デジタル大辞泉』は「足元」の項目で、「足を掬(すく)う」と混同して「足下を掬う」とするのは誤り、とはっきり書いています。それでも文化庁の調査では、64.4%の人が「足元」の方を使うと答えました。

01本来の形を選んだのは4人に1人

「足元」を使う人は、本来の「足」を使う人の2倍以上。辞書の考え方と、多くの人の使い方が逆になっているわけです。

02年代別では、どの世代も「足元」を使う人のほうが多い

年代別のグラフを見ると、どの年代でも「足元」を使う人のほうが多くなっています。

  • 16〜19歳:「足元」71.1%、「足」19.7%
  • 20代:「足元」74.6%、「足」14.8%
  • 50代:「足元」67.5%、「足」25.2%
  • 70歳以上:「足元」53.8%、「足」34.9%

本来の形を選ぶ人が一番多かったのは70歳以上で、34.9%でした。それでも「足元」の方が多いのです。報告書は、全ての年代で「足元」を使う人が「足」を使う人を19〜60ポイント上回っていると書いています。

03なぜ「足」なのか

「すくう」には、「下から持ち上げるようにして横に払う」という意味があります(デジタル大辞泉)。小学館の『日本国語大辞典』は「足を掬う」の成り立ちを、相手の足を払うようにして支えを失わせることから、と説明しています。そこから、相手のすきにつけ入って、思いがけない手で失敗させる、という意味になりました。

払うのは相手の「足」そのもの。「足元」は足のまわりの場所のことです。成り立ちを知ると、「足」の方が本来の形とされる理由が見えてきます。

「足を掬う」は、相手の足を払うようにして支えを失わせる意から(日本国語大辞典)
「足を掬う」は、相手の足を払うようにして支えを失わせる意から(日本国語大辞典)

04それでも「足元」と言いたくなるわけ

一方で、「足元」という語にも、まぎらわしい意味があります。デジタル大辞泉の「足元」には、「苦しい立場。差し迫った状況。弱点。弱み」という意味が載っていて、例として「足元につけ込む」が挙がっています。

「弱みにつけ込まれて失敗する」という場面なら、「足元」が頭に浮かんでもふしぎではありません。辞書は「足を掬う」との混同としていますが、「足元」の「弱み」の意味がその混同を後押ししたのかもしれません。ただし、これは筆者の推測で、確かめた研究は見つかりませんでした。

05英語では「足の下のじゅうたん」を引っこ抜く

英語にも、似たような場面で使う言い回しがあります。オックスフォードの学習辞典で確かめました。

  • pull the rug (out) from under somebody's feet:(くだけた表現)それまでの助けや支えを急に取り去る。rug は「敷物」。足の下の敷物を引っぱられたら、転びますよね
  • cut the ground from under somebody's feet:相手の考えや計画を、急に成り立たなくさせる

The company pulled the rug out from under our feet.(会社に急にはしごを外された)

この二つは、どちらも「足の下」の敷物や地面をねらう言い方です。足そのものを払う日本語の「足をすくう」とは、ねらう場所がちがいます。

06どんでん返し:本来の形は増えている

ことばの「誤用」は広がる一方、と思われがちです。でもこの言い方では逆でした。

2007年度に16.7%だった「足をすくわれる」は、2016年度には26.3%に増えました。報告書によると、全ての年代で増え、70歳以上では13ポイントも増えています。デジタル大辞泉の「足を掬う」の項目にも、この調査の数字がそのまま載っています。

ただし、この調査は「自分はどちらを使うか」を答えてもらう方式です。実際の会話でどちらを何回言ったかを数えたものではありません。また、文化庁は「本来の言い方とされる」という書き方をしていて、「足元」の方を使ってはいけない、とまでは言っていません。

07まとめ

「足元をすくわれる」は、辞書では「足をすくう」と混ざった言い方とされています。払うのは相手の「足」。この成り立ちを知っておくと、もう迷いません。

それでも今は64.4%の人が「足元」を使っています。一方で、本来の形を使う人は9年で10ポイント増えました。ことばの「誤用」は、いつも広がる一方とは限らないのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe Japanese phrase "ashi o sukuu" means to make someone fail by catching them off guard. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The Japanese phrase "ashi o sukuu" means to make someone fail by catching them off guard. A major Japanese dictionary says the image comes from sweeping a person's feet away so they lose their balance.

But many speakers say "ashimoto o sukuu." The extra word, "ashimoto," means the area around your feet. One dictionary calls this version a mistake. In early 2017, about 2,000 people answered a government survey about which form they use. Of those, 64.4 percent chose "ashimoto," and 26.3 percent chose the original "ashi."

Even so, the original form is gaining ground. In a survey nine years earlier, only 16.7 percent picked it. English speakers have their own picture for this. They say someone "pulled the rug out from under" them.

124 words ・ CEFR B1

和訳を見る

日本語の「足をすくう」は、相手のすきをついて失敗させることを意味する。ある大きな国語辞典によると、このイメージは人の足を払ってバランスを失わせることから来ている。

しかし多くの話し手は「足元をすくう」と言う。加わった語の「足元」は、足のまわりの場所を意味する。ある辞書は、この形を誤りとしている。2017年の初めに、約2,000人が、どちらの形を使うかをたずねる政府の調査に答えた。そのうち64.4%が「足元」を、26.3%が本来の「足」を選んだ。

それでも、本来の形は広がってきている。9年前の調査では、それを選んだ人は16.7%だけだった。英語の話し手には、これを表す独自のイメージがある。誰かに「足の下から敷物を引き抜かれた」と言うのだ。

4択リーディングクイズ

Q1. Where does the phrase "ashi o sukuu" come from, according to a major dictionary?

Q2. How did the share of people choosing "ashi" change?

Q3. What does the writer suggest by saying "the original form is gaining ground"?

重要単語

  • tripB1
    動詞つまずかせる、足をすくうHe tried to trip me during the game. trip up で「(人を)つまずかせる、失敗させる」。名詞の trip(旅行)と同じつづり。
  • idiomB2
    名詞慣用句、決まった言い回し"Pull the rug out from under someone" is an English idiom. 単語の意味を足しても全体の意味にならない言い回し。形容詞は idiomatic。
  • rugB1
    名詞敷物、小さなじゅうたんThe cat is sleeping on the rug. 部屋全体に敷くのは carpet、一部に敷くのが rug。pull the rug (out) from under ~'s feet で「急に支えを外す」。
  • rivalB2
    名詞競争相手She beat her rival in the final. もとはラテン語 rivalis(同じ川を使う人)。発音は「ライヴァル」。
  • originalB1
    形容詞元の、本来のThe original form of the idiom uses "ashi." origin(起源)の形容詞。「独創的な」の意味もある。
  • balanceB1
    名詞バランス、体の釣り合いI lost my balance and fell. lose one's balance「バランスを崩す」、keep one's balance「バランスを保つ」をセットで。
  • respondentC1
    名詞(調査の)回答者Most respondents chose the word "ashimoto." respond(答える)+-ent(人)。調査の英文でよく出る。
「足元をすくわれる」、実は辞書では誤りとされる言い方。本来は「足をすくわれる」。文化庁の調査では、使う人は「足元」64.4%、「足」26.3%。でも本来の形を使う人は、9年で10ポイント増えていた。

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出典・参考文献(7件)タップで表示
  1. 文化庁 (2017) 平成28年度「国語に関する世論調査」の結果の概要(問28)bunka.go.jp
  2. デジタル大辞泉「足を掬う」・精選版 日本国語大辞典「足を掬う」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  3. デジタル大辞泉「足元」補説・精選版 日本国語大辞典「足元」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  4. Oxford Learner's Dictionaries「rug」(idiom: pull the rug (out) from under somebody's feet)oxfordlearnersdictionaries.com
  5. Oxford Learner's Dictionaries「foot」(idiom: cut the ground from under somebody's feet)oxfordlearnersdictionaries.com
  6. デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典「掬う」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
  7. Oxford Learner's Dictionaries「rival」(Word Origin)oxfordlearnersdictionaries.com

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