言い伝えの中身
「月を指さすと耳が切れる」「月を指さすと、寝ている間に耳を切られる」「耳のうしろが切れる」など、言い方は地域や家庭によって少しずつちがいます。
夜空にきれいな月を見つけて、思わず「あ、月だ!」と指さした子どもに、大人が教える言葉として受けつがれてきました。
どうして生まれた?
この言い伝えがいつ、どこで始まったのかを示す、はっきりした記録は見つかっていません。そのため、理由についてはいくつかの考え方があります。
いちばんよく言われるのは、「月を大切にする心」です。昔の人は月を神さまのように敬い、お月見ではお団子やススキをそなえて月を拝みました。日本の神話には月の神さま・月読命(つくよみのみこと)も登場します。人を指さすのが失礼なように、敬うべき月を指さすのも失礼なこと、という考えです。
「三日月の形が鎌や刃物に見えるから、耳が切れると言われた」という説もあります。
冬は空気が乾いて、耳のつけ根の皮ふが切れやすい季節でもあります。冬の澄んだ夜空にうかぶ月と結びついたのかもしれない、と考える人もいます。
どの説が正しいかは分かりませんが、どれも「自然を敬う」「人に失礼なことをしない」という、昔の人の暮らしの知恵とつながっています。
世界ではどう?
よく似た言い伝えは、日本の外にもあります。アメリカの南カリフォルニア大学(USC)の民俗学アーカイブには、台湾や中国出身の家族から聞いた「月を指さすと耳を切られる」という話が記録されています。
そこでは、月の女神(中国の神話の嫦娥・じょうが)が、指さされたことを失礼に思い、眠っている間に耳を切ってしまう、と語られています。特に中秋節のころに、子どもに言い聞かせることが多いそうです。
国はちがっても、「月は大切なもの」「失礼なことをしてはいけない」という気持ちは同じ。月が、アジアの多くの地域で特別な存在だったことが分かります。
科学で分かっていること

月は地球から約38万km(NASA)もはなれていて、指さしが月にとどくことはありません。また、指さしによって耳が切れるしくみも、科学では見つかっていません。安心してください。
でも、この言い伝えを「まちがい」と言ってしまうのは、もったいないことです。言い伝えには、その土地の人びとが大切にしてきた気持ちや、子どもに伝えたい教えがこめられています。
月を見つけたら、指さすかわりに「きれいな月だね」と声をかけてみてはどうでしょう。いっしょに月を見上げるだけで、言い伝えの心も、月を観察する楽しさも、両方大切にできます。
英語では?
指さすのは失礼だよ(英語圏でも、人を指さすのは失礼とされます)
Don't point at people. It's rude.人を指ささないで。失礼だよ。
~を指さす
The child pointed at the moon.その子は月を指さした。
迷信・言い伝え
Is that a Japanese superstition?それは日本の言い伝え?
三日月
Look at the crescent moon!三日月を見て!
よくある質問
月を指さすと、本当に耳が切れるの?
指さしによって耳が切れるしくみは、科学では見つかっていません。この言い伝えは、月を大切にする心や、人に失礼なことをしないという教えを伝えるためのものと考えられています。
どうして「耳が切れる」と言われるようになったの?
はっきりした記録はありませんが、月を神さまのように敬う心から「指さしは失礼」とされたという考え方がよく知られています。三日月の形が刃物に見えるから、という説もあります。
外国にも同じような言い伝えはある?
中国や台湾には「月を指さすと、月の女神に耳を切られる」という、よく似た言い伝えがあります。アメリカの南カリフォルニア大学の民俗学アーカイブにも記録が残っています。
参考にした資料
研究の数字は、それぞれの論文の要旨・公式資料にもとづいています。新しい研究で分かることが変わる場合もあります。
