「ダメ」はもとは囲碁の言葉。どちらの陣地にもならない“むだな場所”のこと

読む前に予想してみよう!
「駄目押し」は、もともと野球の言葉である
もとは囲碁。対局の終わりに、どちらの陣地にもならない「駄目」を石でふさぐことを「駄目を押す」と言った。そこから「念を押す」、さらに「勝ちを決定的にする」の意味が生まれた。
- 対象
- 国語辞典2種・日本棋院の囲碁規約・英国囲碁協会の解説
- 規模
- 辞書の用例(1275年の辞書〜1945年の小説)
- 研究の種類
- 辞書の記述と競技規則の比較
- 確かさ
- ★★★★☆
「ダメ」のもとの意味は、囲碁で白と黒のどちらの陣地にもならない場所。石を置いても陣地は増えない。そこから「むだ」「できない」「いけない」の意味が生まれた。「駄目押し」も囲碁の言葉。
ひとことで言うと「ダメ」は、囲碁で「打っても得にならない場所」のことだった!
もくじ
「ダメ!」「もうダメだ」「それじゃダメだよ」。
一日に何度も口にする「ダメ」。じつは、もとは囲碁の言葉です。
囲碁で「駄目(だめ)」とは、白と黒のどちらの陣地にもならない場所のこと。そこに石を置いても、自分の陣地は1つも増えません。つまり「打っても意味がない場所」。これが、私たちの「ダメ」のスタートでした。
01囲碁の「ダメ」は、どちらのものにもならない点
まず、囲碁のしくみをかんたんに確かめておきます。
囲碁は、縦横19本ずつの線が引かれた盤の、線と線が交わる点(全部で361か所)に、黒と白が交互に石を置いていくゲームです。自分の石で囲んだ場所が陣地になり、最後に陣地の広さで勝ち負けを決めます。
ところが、黒と白の陣地の境目には、どちらの石にも囲まれていない点が残ることがあります。これが「駄目」です。
「ダメ」はくだけた話し言葉に聞こえますが、囲碁のルールブックに定義が書かれている、れっきとした専門用語なのです。
02鎌倉時代の辞書に、もう載っていた
囲碁の「駄目」は、かなり古くからある言葉です。
『日本国語大辞典』は、囲碁の意味の「駄目」が、1275年の辞書『名語記(みょうごき)』に載っていることを示しています。『名語記』は鎌倉時代に経尊(きょうそん)という人がまとめた辞書で、当時の話し言葉や俗語の語源を、問答の形で説明したものです。
一方、「むだ」という意味の「だめ」が文章に出てくるのは、同じ辞典が挙げる例では1686年。囲碁の言葉として辞書に載ってから、400年ほどあとです。
03「むだ」→「できない」→「いけない」→「よくない」
『日本国語大辞典』が意味ごとに挙げている、いちばん古い例を年代順に並べてみます。
- 1686年:行っても効果がないこと、むだ(評判記『野郎児桜』)
- 1885〜86年:できないこと、不可能(坪内逍遙『当世書生気質』)
- 1896年:してはいけないこと(尾崎紅葉『多情多恨』)
- 1945年:よくない状態、どうしようもないこと(太宰治『新釈諸国噺』)
江戸時代後期の『続膝栗毛』(1810〜22年)には、「むだ」の意味の例として、次のせりふがあります。
「此たかい米をだめにくはれてたまるもんか」(『続膝栗毛』。日本国語大辞典の用例による)
「この高い米を、むだに食われてたまるか」という意味です。「打っても得にならない場所」から「むだ」へ。意味のつながりは、すんなり見えてきます。
ただし、ここに並べた年は「辞典が見つけて載せた例」の年です。その意味が生まれた年とはかぎりません。たとえば「ダメな人」のような「よくない」の意味が、1945年まで使われなかったわけではないでしょう。

04「駄目押し」も囲碁から
野球やサッカーでおなじみの「駄目押しの1点」。これも囲碁の言葉です。
対局の終わりに、残った駄目に石を置いてふさぐことを「駄目を押す」と言いました。『日本国語大辞典』は、この囲碁の意味の例として『太閤記』(1625年)を挙げています。
そこから意味が広がりました。
- 念のために、もう一度確かめる(「念を押す」と同じ)。浮世草子『諸芸袖日記』(1743年)に例がある
- 勝ちがほぼ決まっているのに、さらに点を取って勝ちを確実にする(デジタル大辞泉の「駄目押し」の2番目の意味)
もうはっきりしている勝負に、念のため石を置く。「駄目押し」の感じは、囲碁の盤の上の動きそのままです。
05「ダメ出し」は、芝居の世界の言葉
仕事や部活でよく聞く「ダメ出し」は、囲碁ではなく演劇から広まった言い方です。
『デジタル大辞泉』は「駄目出し」を「もと演劇用語」とし、「駄目を出す」を名詞にした形だと説明しています。俳優に演技の悪いところを注意することを「駄目を出す」と言いました。
『日本国語大辞典』では、演劇でのこの使い方の例として、久保田万太郎の小説『春泥』(1928年)が挙がっています。古川ロッパの1936年12月3日の日記の「部屋へ皆集めて、ダメをいろいろ」という一節も、同じ辞典が演劇の「ダメ」の例に挙げています。
06英語の囲碁でも「dame」
英語圏の囲碁ファンも、この言葉をそのまま使っています。
イギリス囲碁協会(British Go Association)の用語集では、dame を、どちらの打ち手にとっても価値のない中立の点(neutral point)と説明しています。英語の囲碁用語には、日本語から入った言葉がたくさんあるのです。
ただし、ふだんの英語で「ダメ」と言いたいときに dame は通じません。
07どんでん返し:中国ルールでは、ダメにも1点の値打ちがある
「ダメは打っても意味がない場所」。じつはこれ、日本のルールでの話です。
囲碁には、国や団体によっていくつかのルールがあります。日本のルールは、囲んだ陣地(と取った石)で勝負を決めます。ところが中国のルールは、盤の上に置いた自分の石の数も得点に数えます。日本囲碁規約の前文も、この2つのちがいにふれています。
イギリス囲碁協会がルールを比べたページによると、日本式以外のルールでは、駄目を埋めると1点得になります。中国式のように盤の上の石も数えるなら、駄目に置いた石も1点になるからです。中国のルールで打つなら、ダメは「むだな場所」ではないのです。
しかも日本のルールでも、駄目はただ放っておけばいいわけではありません。日本囲碁規約の解説では、陣地を確かめるために、対局が終わるまでに駄目をふさぐことが必要だとしています。得にはならないけれど、打たないと終われない。それが日本の囲碁の「ダメ」です。
08まとめ
「ダメ」は、囲碁で白と黒のどちらの陣地にもならない場所のこと。鎌倉時代の辞書にすでに載っていて、そこから「むだ」「できない」「いけない」「よくない」と意味を広げてきました。「駄目押し」も囲碁、「ダメ出し」は芝居の世界の言葉です。
今度「ダメ!」と言いかけたら、碁盤の上のすき間を思い出してみてください。英語で言うなら、Don't!、It's no use.、It's no good. を使い分けましょう。
よくある質問
「ダメ(駄目)」の語源は何ですか?
囲碁の言葉です。囲碁で「駄目」とは、白と黒のどちらの陣地にもならない場所のことで、石を置いても陣地は増えません。デジタル大辞泉は、この囲碁の意味を「原義」(もとの意味)としています。
囲碁の「駄目」とはどういう意味ですか?
石の周りや相手の陣地との境にあって、どちらの陣地にもならない空いた点です(日本国語大辞典)。日本囲碁規約(1989年)の第八条でも「駄目」と呼ばれる、正式なルールの用語です。
囲碁の「駄目」はいつからある言葉ですか?
日本国語大辞典によると、鎌倉時代の1275年の辞書『名語記』に載っています。「むだ」という意味の「だめ」が文章に出てくるのは、同じ辞典が挙げる例では1686年です。
囲碁の言葉がなぜ「むだ」「いけない」の意味になったのですか?
「打っても得にならない場所」から「むだ」の意味が生まれ、そこから「できない」「してはいけない」「よくない」へと広がりました。ただ、日本国語大辞典もデジタル大辞泉も、意味の移り方を細かくは説明していません。
「駄目押し」の由来は何ですか?
これも囲碁の言葉です。対局の終わりに残った駄目に石を置いてふさぐことを「駄目を押す」と言いました。そこから「念のために確かめる」「勝ちを確実にする」の意味が生まれました。
「ダメ出し」はどこから来た言葉ですか?
演劇の世界の言葉です。デジタル大辞泉は「駄目出し」を「もと演劇用語」とし、俳優に演技の悪いところを注意する「駄目を出す」を名詞にした形だと説明しています。
「ダメ」は英語で何と言いますか?
場面で使い分けます。してはいけないなら Don't touch that!、むだなら It's no use. や It's no good.、あきらめなら I give up.、役に立たないなら useless です。英語の囲碁用語には dame がありますが、ふだんの英語では通じません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerJapanese speakers say "dame" all the time, but the word started as a term in the board game Go.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In Japanese, "dame" means "no good" or "don't." But the word first came from the board game Go. In Go, two players put black and white stones on a board. Each player tries to surround more of the board.
A dame is an empty point that belongs to neither player. If you put a stone there, you get nothing for it. It is easy to see how the word came to mean "useless." English Go players still say "dame" today.
80 words ・ CEFR A2
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日本語で「ダメ」は「よくない」や「してはいけない」という意味です。でもこの言葉は、もとはボードゲームの囲碁から来ました。囲碁では、二人が盤の上に黒と白の石を置きます。それぞれが盤のより多くの部分を囲もうとします。
「ダメ」とは、どちらのものにもならない空いた点のことです。そこに石を置いても、何も得られません。この言葉が「役に立たない」という意味になったのも、うなずけます。英語で囲碁をする人たちも、今でも「dame」と言います。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
the word first came from the board game Go とあり、「ダメ」という言葉の出どころの話なので B。
Q2. In Go, what is a dame?
A dame is an empty point that belongs to neither player とあるので C。
Q3. In the passage, what does "neither" mean in "belongs to neither player"?
neither は「(二つのうち)どちらも〜ない」。どちらのプレーヤーのものでもない、という意味なので A。
Japanese speakers say "dame" all the time, but the word started as a term in the board game Go. Players place black and white stones and try to surround as much of the board as possible.
An empty point that ends up surrounded by neither side is called a dame. Under Japanese rules, filling it adds nothing to your score. Japanese dictionaries treat this as the original meaning, and it appears in a dictionary from 1275.
By 1686 the word was also used to mean "useless," and later it came to mean "impossible" and "not allowed." The phrase "dame-oshi" comes from Go too. It first meant filling the last empty points. Now it often means scoring again in a game that is already won.
124 words ・ CEFR B1
和訳を見る
日本語を話す人はいつも「ダメ」と言うが、この言葉は囲碁というボードゲームの用語として始まった。打ち手は黒と白の石を置き、盤のできるだけ多くを囲もうとする。
最後にどちらにも囲まれなかった空いた点を「駄目」と呼ぶ。日本のルールでは、そこを埋めても点数は少しも増えない。日本の辞書はこれをもとの意味としており、1275年の辞書にも出てくる。
1686年までには「役に立たない」という意味でも使われ、のちに「できない」「してはいけない」という意味にもなった。「駄目押し」という言い方も囲碁から来ている。もとは最後に残った空いた点を埋めることだった。今では、もう勝ちが決まっている試合でさらに点を取ることを指すことが多い。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
the word started as a term in the board game Go とあり、日常語の「ダメ」が囲碁の用語から生まれた話なので B。
Q2. By what year was "dame" used to mean "useless"?
By 1686 the word was also used to mean "useless" とあるので B。1275年は囲碁の意味で辞書に出てくる年。
Q3. Why does the writer mention "dame-oshi"?
The phrase "dame-oshi" comes from Go too とあり、ほかのよく使う言い方も囲碁から来た例として挙げているので A。
In the game of Go, a dame is an empty point that sits between the two players' areas and belongs to neither of them. Japan's official Go rules, adopted in 1989, still define the term this way. One major Japanese dictionary calls this board-game sense the original meaning of the everyday word "dame," and another lists it first. The Go meaning is listed in a dictionary compiled in 1275, while the earliest example one dictionary gives for "dame" meaning "useless" dates from 1686.
Later examples show it meaning "impossible" and "not allowed." These dates only mark the oldest examples the editors found, so each meaning may be older. The idea of a dame as a wasted move also depends on the rules. Japanese scoring counts surrounded territory, so filling a dame earns nothing.
Chinese rules count the stones on the board as well, and according to the British Go Association, filling a dame under rules like these gains a point. Even in Japan, players have to fill these points before the game can officially end. Another phrase, "dame-dashi," came from the theater, where a director pointed out what an actor had done wrong.
193 words ・ CEFR B2
和訳を見る
囲碁で「駄目」とは、二人の打ち手の領域の間にあって、どちらのものにもならない空いた点のことだ。1989年に定められた日本の正式な囲碁のルールも、今なおこの語をそのように定義している。日本の大きな辞書の一つは、このボードゲームの意味を日常語「だめ」のもとの意味だとしており、もう一つもこの意味を最初に挙げている。囲碁の意味は1275年に編まれた辞書に載っており、一方で、ある辞書が挙げる「役に立たない」という意味の最も古い例は1686年のものだ。
その後の例では「できない」「してはいけない」という意味も見られる。これらの年は編集者が見つけた最も古い例を示すだけなので、それぞれの意味はもっと古いかもしれない。また、駄目をむだな手とする考え方はルールによって変わる。日本の数え方は囲んだ陣地を数えるので、駄目を埋めても何も得られない。
中国のルールは盤上の石も数え、イギリス囲碁協会によると、こうしたルールでは駄目を埋めると1点得になる。日本でも、対局を正式に終えるには、打ち手はこれらの点を埋めなければならない。もう一つの言い方「ダメ出し」は演劇から来ており、そこでは演出家が、俳優の演技のよくなかったところを指摘した。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
囲碁の用語としての「駄目」が日常語の始まりであること、そして駄目の価値がルールによって変わることを述べているので B。
Q2. According to the passage, what happens when a player fills a dame under Chinese-style rules?
filling a dame under rules like these gains a point とあるので C。
Q3. What can be inferred from the sentence about the dates in the dictionaries?
These dates only mark the oldest examples the editors found, so each meaning may be older とあるので、示された年より前から使われていた可能性があると推測できる。B。
重要単語
- uselessA2形容詞役に立たない、むだなThis old charger is useless. It doesn't work with my phone.
use(役に立つこと)+-less(〜がない)。「ダメな」に近い。反対語は useful。 - no goodB1句役に立たない、だめなIt's no good asking him. He never listens.
It's no good + -ing で「〜してもダメだ・むだだ」。It's no use + -ing もほぼ同じ意味。 - territoryB2名詞領土、(囲碁などの)陣地In Go, you win by having more territory.
国の「領土」のほか、動物の「なわばり」にも使う。囲碁の「地」も英語では territory。 - neutralB2形容詞どちらの側にもつかない、中立のSwitzerland stayed neutral during the war.
囲碁の dame は英語で neutral point(中立の点)とも言う。車の「ニュートラル」も同じ語。 - surroundB1動詞囲む、取り巻くThe old castle is surrounded by trees.
be surrounded by 〜「〜に囲まれている」の形でよく使う。名詞 surroundings は「周りの環境」。 - make sureA2句念のため確かめる、確実にするMake sure the door is locked before you leave.
「駄目を押す(念を押す)」の感じに近い。make sure (that) 〜 の形で使う。 - feedbackB1名詞(改善のための)意見、指摘The director gave us feedback after the rehearsal.
「ダメ出し」は give feedback で言える。数えられない名詞なので a feedback とは言わない。
公式・一次情報をチェック
- British Go Journal - Glossary of Go Terms(British Go Association)britgo.org
- 「駄目を押す」(精選版 日本国語大辞典・デジタル大辞泉、コトバンク)kotobank.jp
- no good(Oxford Learner's Dictionaries)oxfordlearnersdictionaries.com
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毎日のように言う「ダメ」、もとは囲碁の言葉。白と黒のどちらの陣地にもならず、石を置いても陣地が増えない場所のこと。「駄目押し」も囲碁から。英語の囲碁用語でも、そのまま dame と呼ばれている。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- 精選版 日本国語大辞典「駄目」・デジタル大辞泉「駄目」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- 精選版 日本国語大辞典「駄目を出す」・デジタル大辞泉「駄目を出す」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- デジタル大辞泉「駄目出し」(小学館、コトバンク掲載)kotobank.jp
- 日本棋院・関西棋院「日本囲碁規約」(1989年)前文・第八条(地)・第九条(終局)逐条解説nihonkiin.or.jp
- British Go Association「Comparison of Some Go Rules」britgo.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。
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