「犬と飼い主は似ている」はホント。目もとを隠すと、本物のペアを選ぶ人は5割に減った
本物の犬と飼い主のペアの写真は、知らない人が見ても見分けられた。決め手は目もとで、目を隠すと当てずっぽうと同じ5割に落ちた。
ホント判定の対象犬と飼い主は顔が似ている
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- 知らない人でも、本物の犬と飼い主のペアを見分けられた
- 目もとを隠すと、当てずっぽうと同じ5割に落ちた
- 一緒に暮らして似るより、似た犬を選んでいるらしい
人に話すなら
犬と飼い主って本当に顔が似てるんだって。知らない人に写真を見せても、本物のペアを当てられるの。しかも決め手は目もとで、目を隠すと当たらなくなるらしいよ。
読む前に予想しよう
犬と飼い主は顔が似ているというのは本当だ
本物のペアと入れかえたペアの写真で、7〜8割の人が本物のほうが似ていると答えた。
散歩中の犬と飼い主を見て、「なんだか顔が似ている」と感じたことはありませんか。「犬は飼い主に似る」という言葉もあります。けれど、それは見る側の思いこみかもしれません。似ていると思って見るから、似て見えるだけかもしれないのです。
関西学院大学の中島定彦さんは、この言い伝えを実験で確かめました。犬と飼い主の写真を、知らない人たちに見せたのです。すると、本物のペアは入れかえたペアより「似ている」と、7〜8割の人が答えました。ところが、目もとを黒い帯で隠すと、本物を選ぶ人は約5割に落ちました。当てずっぽうと同じです。
これまでの研究で、犬と飼い主が似て見えることは分かっていました。けれど、顔のどこが似ているのかは分かっていませんでした。中島さんの実験は、その答えを「目もと」にしぼりこみました。
01写真の撮り方から、思いこみが入らないように工夫した
使った写真は、中島さんたちが2009年の研究で撮ったものです。愛犬団体の集まりに来ていた飼い主と犬を、正面から撮影しました。
撮影隊は、出会った飼い主50人すべてに頼み、全員が引き受けてくれました。似ている人だけを選んで撮ると、結果がかたよるからです。研究の目的は、撮影が終わってから伝えました。目的を知ると、飼い主の表情が変わるかもしれないからです。
50組のうち、雑種の犬と、両目が写っていない犬を除きました。残ったのは40頭で、すべて純血種でした。飼い主は20代から60代の日本人の男女です。
02本物のペアと入れかえたペアを並べて、どちらが似ているかを選ばせた
40組は、2つのセットに分けられました。1つは、犬と飼い主を正しく組み合わせた20組です。もう1つは、犬と飼い主を入れかえた20組です。この2つのセットを1枚の紙にカラーで印刷し、「犬と飼い主がより似ているのはどちらのセットか」を選んでもらいました。
紙の左右の位置で結果が変わらないよう、半数の人には本物のセットを左に、残りの半数には右に印刷しました。判定したのは、写真の人や犬を知らない人たちです。
実験は5回行われ、判定した人は合わせて547人です。4回は関西学院大学の学生が、1回は犬についての講演会に来た22〜70歳の人たちが判定しました。
写真には5つの見せ方がありました。①そのまま、②飼い主の目もとを黒い帯で隠す、③飼い主の口もとを隠す、④犬の目もとを隠す、⑤犬と飼い主の目もとだけを見せる、です。
03目もとを隠すと当てずっぽうになり、口を隠しても当たった
写真をそのまま見せると、67〜80%の人が、本物のセットのほうが似ていると答えました。偶然なら、どちらを選ぶかは半々の50%になるはずです。
飼い主の目もとを隠すと、本物を選んだ人は60人中30人、ちょうど50%でした。別の実験でも52%です。犬の目もとを隠した場合も47%でした。どちらも、当てずっぽうと変わりません。
一方、飼い主の口もとを隠しても、73%の人が本物を選びました。口もとは、あまり関係がなかったのです。
そして、犬と飼い主の目もとだけを切り取って見せても、69〜76%の人が本物を選びました。顔全体を見せたときと、ほぼ同じ成績です。
判定した人が男性か女性か、犬を飼ったことがあるか、犬が好きかは、結果に影響しませんでした。

中島さんは、この結果にはもう1つの意味があると考えています。これまでの研究では、雰囲気や思いこみが判断に入りこんでいた可能性がありました。たとえば「いかつい顔の人は強そうな犬を飼う」といった思いこみです。目もとだけで当てられたのなら、そうした思いこみの影響はほぼ取り除けた、というのです。論文の要旨では、髪型や太り具合が似ている、という説明も退けられたとしています。
04アメリカの実験では、雑種の犬だと飼い主を当てられなかった
犬と飼い主が似ているかを調べた研究は、ほかにもあります。よく知られているのは、2004年にアメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校で行われた実験です。マイケル・ロイ(Michael Roy)さんとニコラス・クリステンフェルド(Nicholas Christenfeld)さんの研究です。
2人は、45頭の犬と飼い主を別々に撮影しました。判定する人には、飼い主1人と、その飼い主の犬、ほかの犬1頭を見せ、どちらが飼い主の犬かを選ばせました。すると、純血種の犬では当てられたのに、雑種の犬では当てられませんでした。また、一緒に暮らした年数が長いペアほど当てやすい、ということもありませんでした。
この研究には、反論も出ました。判定する人が同じ犬を2回選ばないようにすると、計算の前提がくずれる、という統計の指摘です。2人は2005年に、コンピューターで計算し直し、別の方法で新しい実験もしました。新しい実験でも、雑種の犬では、本物の飼い主を当てる成績は当てずっぽうと変わりませんでした。
日本でも、中島さんたちが2009年に同じ問題を調べました。日本人の飼い主だけで調べても、本物のペアは入れかえたペアより似ていると、3分の2の人が答えました。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
なぜ自分に似た犬を選ぶのか
一番有力なのは、飼い主が犬を選ぶときに、自分に似た顔の犬を選んでいる、という考えです。純血種の犬は、大人になったときの見た目が予想しやすい犬です。雑種では当てられず、純血種では当てられたという結果は、この考えと合っています。
では、なぜ似た顔を選ぶのでしょうか。ドイツのイェーナ大学などのチームは、これまでの研究15本をまとめて見直しました。チームは、2つの心のはたらきを候補に挙げています。1つは、何度も見ているものを好きになる「単純接触効果」です。自分の顔は、鏡などで毎日見ている顔です。もう1つは、自分に似たものを好む傾向です。
似た犬を選ぶのか、暮らすうちに似るのか
中島さんは、目のどんな特徴が似ているのかが分かれば、この問いの手がかりになると話しています。たとえば目の色のように、生まれつき決まる特徴が似ているなら、暮らすうちに似たのではありません。飼い主が似た顔の犬を選んだ、と言えます。ただし、今回の実験では、目もとの何が似ていたのかまでは調べていません。
見た目ではなく性格についても、研究があります。イェーナ大学などのまとめでは、外向的かどうかや、不安を感じやすいかどうかで、犬と飼い主が似ているという研究が多くありました。こちらは、一緒に暮らすうちに気持ちが伝わり合って似ていく、という説明が出されています。
研究方法の限界
中島さんの実験は、写真を見た人が「似ている」と感じるかを調べたものです。顔の形を機械で測って比べたわけではありません。また、写真は、愛犬団体の集まりで撮った40組だけです。犬はすべて純血種で、飼い主はすべて日本人でした。もっと多くの犬種や、雑種の犬でも同じことが言えるのかは、これからの課題です。
05まとめ
関西学院大学の中島定彦さんの実験で、知らない人でも本物の犬と飼い主のペアを67〜80%の割合で見分けました。飼い主か犬の目もとを隠すと、当てずっぽうと同じ約5割に落ちました。目もとだけを見せると、69〜76%が当てました。
なぜ似るのかは、まだ決着していません。ただ、雑種の犬では当てられないことや、暮らした年数と関係がないことから、飼い主が似た犬を選んでいる、という見方が有力です。
犬を連れた人を見かけたら、顔全体ではなく、人と犬の目もとを見比べてみてください。似ているのは、そこかもしれません。
研究カルテ
日本・兵庫県西宮市(関西学院大学)
- 研究チーム
- 関西学院大学文学部の中島定彦さん(動物心理学)
- 調べた場所
- 日本(判定したのは関西学院大学の学生と、犬についての講演会の参加者)
- 調べた動物
- 純血種の飼い犬(学名 Canis familiaris)40頭とその飼い主
- 調べ方
- 本物のペア20組と入れかえたペア20組の写真を見せ、どちらが似ているか547人に選んでもらった
- 分かったこと
- 67〜80%が本物のペアを選んだ。目もとを隠すと約50%に下がり、目もとだけでも69〜76%が当てた
- まだ分からないこと
- 飼い主が似た犬を選ぶのか、暮らすうちに似るのか。目のどんな特徴が似ているのか
- 論文
- Anthrozoös(2013年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Many people say that dogs look like their owners. Or do people only think so? A scientist in Japan tested this idea.
He used photos of 40 dogs and their owners. All of the dogs were purebred. One set showed real pairs, and the other set showed mixed pairs. People who did not know them chose the set that looked more similar. Up to 80 percent of them chose the real pairs.
Then he covered the eyes in the photos with black bars. Now only about half of the people chose the real pairs. That is the same as a guess. But when he covered the mouths, people still chose well.
So the eyes of dogs and owners look alike. A study in the United States found a similar result, but only with purebred dogs. Owners may choose dogs that look like them.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How many dogs were in the photos?写真には何頭の犬がいましたか。
40頭の犬とその飼い主の写真を使いました。
Q2. What happened when the eyes were covered?目を隠すと、どうなりましたか。
目を隠すと、本物を選んだ人は約半分になり、当てずっぽうと同じになりました。
Q3. Which part of the face looks alike?顔のどの部分が似ていましたか。
口を隠しても当てられましたが、目を隠すと当てられなくなりました。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Nakajima, S. (2013) Dogs and owners resemble each other in the eye region. Anthrozoös 論文確認済みdoi:10.2752/175303713x13795775536093
- 2関西学院大学広報室(2013)プレスリリース「犬と飼い主は目が似ていることを発見」(ウェブ・アーカイブの保存版)web.archive.org/web/20250805213408/https://www.kwansei.ac.jp
- 3Nakajima, S. et al. (2009) Dogs look like their owners: Replications with racially homogenous owner portraits. Anthrozoös 論文確認済みdoi:10.2752/175303709x434194
- 4Roy, M. M. & Christenfeld, N. J. S. (2004) Do dogs resemble their owners? Psychological Science 論文確認済みdoi:10.1111/j.0956-7976.2004.00684.x
- 5Bender, Y. et al. (2025) Like owner, like dog – A systematic review about similarities in dog-human dyads. Personality and Individual Differences 論文確認済みdoi:10.1016/j.paid.2024.112884
- 6Stieger, S. & Voracek, M. (2014) Not only dogs resemble their owners, cars do, too. Swiss Journal of Psychology 論文確認済みdoi:10.1024/1421-0185/a000130
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





