言葉の得意な犬10匹のうち7匹が、飼い主どうしの会話を聞くだけでおもちゃの名前を覚えた
言葉の得意な犬10匹のうち7匹が、飼い主2人の会話を横で聞くだけで、新しいおもちゃの名前を覚えた。直接教わったときと同じ7匹だった。

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- 言葉の得意な犬は、人どうしの会話から名前を覚えた
- 直接教えたときも、横で聞いたときも、成功したのは7匹
- おもちゃの名前を知らない犬では、覚えた犬はいなかった
人に話すなら
おもちゃの名前をたくさん覚えてる犬ってさ、飼い主どうしの会話を横で聞いてるだけで、新しいおもちゃの名前を覚えちゃうんだって。1歳半の子どもと似た覚え方らしいよ。
読む前に予想しよう
おもちゃの名前をたくさん知る犬は、自分に話しかけられなくても新しい名前を覚えられる
10匹のうち7匹が、飼い主2人の会話を聞くだけで新しいおもちゃの名前を覚えた。
家の中で、2人の大人が向かい合って座っています。1人が新しいおもちゃを手に取り、「これは〇〇だよ」とその名前を言いながら、もう1人に渡します。2人とも、そばにいる犬には目もくれません。それでも、横で聞いていた犬の多くは、この新しいおもちゃの名前を覚えていました。
ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学などのチームが、おもちゃの名前をたくさん知る犬10匹で、これを試しました。飼い主どうしの会話を聞いただけで、10匹のうち7匹が新しいおもちゃの名前を覚えました。飼い主が犬に直接教えたときも、成功したのは7匹で、同じ数でした。
人間の子どもは、1歳半ごろから、大人どうしの会話を横で聞いて言葉を覚えられます。自分に向けられていない言葉からも学べるのです。この力が人間以外の動物にもあるかは、よく分かっていませんでした。
01おもちゃの名前を何十個も覚える「言葉の天才犬」
ほとんどの犬は、「おすわり」のような合図は覚えても、物の名前はあまり覚えません。ところが、ごく一部に、おもちゃの名前を何十、何百と覚える犬がいます。研究者たちは、こうした犬を「言葉の天才犬(Gifted Word Learner dogs)」と呼んでいます。
この研究の第一著者は、シャニー・ドロール(Shany Dror)さんです。ドロールさんたちは2023年、こうした犬41匹を調べ、多くの犬に共通する特徴を報告しました。その一つは、飼い主が教えようとしていないのに、自然におもちゃの名前を覚えていたことです。
では、天才犬は、人どうしの会話からも名前を覚えられるのでしょうか。今回の研究は、これを実験で確かめました。
02犬には話しかけず、2人の会話の中で名前を聞かせた
実験に参加したのは、天才犬10匹です。7匹がボーダー・コリーで、平均4.3歳でした。犬が知っているおもちゃの名前は、平均84個、少ない犬で20個、多い犬で180個でした。
実験は、犬が暮らす家で行いました。飼い主は、新しいおもちゃを2つ買い、犬が聞いたことのない名前をつけます。1つめのおもちゃの名前はとびとびの4日間、2つめも別の4日間に聞かせました。1日2回、1回1分間だけです。1つのおもちゃの名前を聞くのは、全部で8分間でした。
「会話を聞く」条件では、犬の世話をしている人が、もう1人の家族と一緒に座ります。世話をする人は、「これは〇〇だよ」「〇〇ほしい?」のように、文の中でおもちゃの名前を言い、家族に渡します。家族は何も話しません。2人とも、犬を見たり、犬に話しかけたりしません。
犬がおもちゃに飛びつかないよう、2人はテーブルにつくか、犬を柵の向こうや自分のベッドにいさせました。ビデオで確かめると、2人が犬のほうを見ていた時間は、全体の1%ほどでした。
「直接教える」条件では、飼い主はいつもどおり、犬とおもちゃで遊びながら名前を教えました。名前を言った回数は、どちらの条件でも同じくらいでした。

03別の部屋のたくさんのおもちゃから、名前を聞いて正しい1つを持ってきた
テストは、1日休んだあとに行いました。研究者は、オンライン会議で家とつなぎます。別の部屋の床に、前から知っているおもちゃ9個と、新しいおもちゃ2個を、ばらばらに置きます。
飼い主は、おもちゃの見えない部屋から、「〇〇を持ってきて」と頼みます。どのおもちゃを頼むかは、研究者がその場で指示しました。おもちゃは2回ごとに混ぜ直し、置き場所から答えが分からないようにしました。新しいおもちゃは、それぞれ6回ずつ頼みました。
正解でもまちがいでも、犬は毎回ほめられたり、おやつをもらったりしました。
結果、会話を聞いただけの条件で、10匹のうち7匹が、当てずっぽうより高い割合で正しいおもちゃを持ってきました。そのうち4匹は、新しいおもちゃを頼んだ12回すべてに正解しました。直接教えた条件でも、成功したのは7匹でした。統計で比べても、2つの条件で成功の割合に差は見られませんでした。
04ふつうの犬は、同じやり方では名前を覚えなかった
この力は、よく訓練された犬ならどれでも持っているのでしょうか。チームは、ふつうの犬10匹でも同じ実験をしました。全員がボーダー・コリーで、ドッグスポーツなどの経験が豊富でした。動作の合図を20〜50個知っている犬たちです。
ふつうの犬には、知っているおもちゃの名前がありません。そこで、おもちゃを12回頼むだけのテストにしました。結果、新しいおもちゃをよく持ってくる犬はいました。しかし、2つの新しいおもちゃのどちらを持ってくるかは、当てずっぽうと変わりませんでした。名前を聞き分けて選べた犬は、1匹もいませんでした。
この結果は、2021年の研究ともそろっています。そのときは、天才犬2匹が、遊びの中で4回名前を聞くだけで覚えました。一方、ふつうの家の犬20匹は、同じやり方では覚えられませんでした。
05名前を言ったときにおもちゃが見えなくても、5匹が覚えた
チームは、もう1つ実験をしました。犬に名前を聞かせるとき、おもちゃをバケツの中に隠しておくのです。名前と物が同時に目に入らなくても、結びつけられるかを調べました。
飼い主は、まずバケツからおもちゃを出して見せ、またバケツに戻します。それからバケツを持ち上げ、中が見えないようにして、1分間、犬に話しかけながら名前を言います。バケツの下の段には、もう1つの新しいおもちゃも入れておきました。においで区別できないようにするためです。
この実験には天才犬8匹が参加し、5匹が名前を覚えました。2週間後にもう一度テストすると、4匹はまだ覚えていました。2014年の別の研究では、同じような条件でうまくいった犬はほとんどいませんでした。チームは、そのときは2つのおもちゃを一度に教えたことなどが、犬に負担をかけたのではないかと考えています。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
子どもは、どうやって「聞いているだけ」で言葉を覚えるのか
人間の子どもの研究では、2001年に、2歳の子どもが大人どうしの会話から新しい言葉を覚えることが報告されました。自分に直接話しかけられたときと、同じくらいよく覚えたのです。2012年には、1歳半の子どもでも同じことができると示されました。
会話を聞いて言葉を覚えるには、ただ音を聞くだけでなく、周りの人どうしのやりとりを理解する力が必要だと考えられています。研究チームは、天才犬にも、こうした社会的な力があると考えています。論文は、天才犬の力は1歳半の子どもの力と「働きの上で似ている」とまとめています。
なぜ一部の犬だけが言葉の天才になるのか
天才犬は、ボーダー・コリーに多いものの、ほかの犬種にもいます。2023年の41匹の調査では、天才犬たちは覚えるのが速く、教えられなくても自然に名前を覚えていました。2021年の別の研究では、天才犬6匹に1週間で新しいおもちゃ12個の名前を教えました。犬たちは多くの場合、名前を覚え、1〜2か月後も覚えていました。
一方、ふつうの犬は、今回の実験でも2021年の実験でも、短い時間では名前を覚えませんでした。生まれつきの才能なのか、育つ中での経験なのかは、まだ分かっていません。
遊びの中で聞いた名前は覚え、「消去法」では覚えなかった
2021年、同じ大学のクラウディア・フガッツァ(Claudia Fugazza)さんたちは、天才犬2匹で別の比べ方をしました。1つは、飼い主が遊びながら新しいおもちゃの名前を言う方法です。もう1つは、知っているおもちゃの中に新しいおもちゃを1つまぜ、知らない名前を聞かせて、消去法で選ばせる方法です。
2匹は、消去法の場面では新しいおもちゃを選べました。ところがあとでテストすると、名前を覚えていたのは、遊びの中で聞いたときだけでした。チームは、名前を素早く覚えるには、人とのやりとりの場面が大事だと考えました。また、このとき覚えた名前は、10分後や1時間後には忘れやすい傾向がありました。
研究方法の工夫と限界
工夫の一つは、飼い主におもちゃが見えない部屋から頼ませたことです。飼い主が目線やしぐさで、うっかり答えを教えてしまうのを防げます。
一方で、限界もあります。天才犬はとても少なく、実験に参加したのは10匹だけでした。また、名前を聞かせる場面は飼い主が家で行い、研究者はビデオや日記で確かめる方法でした。家ごとの細かな違いを、すべてそろえることはできません。今回の結果が、ほかの天才犬や、もっと日常に近い会話でも同じかどうかは、これから調べる必要があります。
06まとめ
おもちゃの名前をたくさん知る天才犬10匹のうち7匹が、飼い主どうしの会話を横で聞くだけで、新しいおもちゃの名前を覚えました。直接教わったときと、成功した数は同じでした。ふつうの犬10匹では、同じやり方で名前を覚えた犬はいませんでした。
名前を聞くとき、おもちゃがバケツに隠れていても、8匹中5匹が名前を覚えました。2週間後も、4匹がまだ覚えていました。
この実験で、犬が1つのおもちゃの名前を聞いた時間は、全部で8分間でした。しかもその名前は、犬に向けて言われたものではありませんでした。
研究カルテ
ハンガリー(ブダペスト)
- 研究チーム
- ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学などのチーム(第一著者シャニー・ドロール)
- 調べた場所
- 飼い主の家(テストはオンライン会議でつないで実施)
- 調べた動物
- おもちゃの名前を20〜180語知る犬10匹(多くはボーダー・コリー)。比べる相手としてふつうの犬10匹
- 調べ方
- 飼い主2人が犬に話しかけずに会話の中でおもちゃの名前を言い、あとで名前を聞いて正しいおもちゃを持ってこられるか試した
- 分かったこと
- 10匹中7匹が、会話を聞くだけで名前を覚えた。直接教えたときと成功した数は同じだった
- まだ分からないこと
- なぜ一部の犬だけがこうした力を持つのか。ふつうの犬は練習で身につけられるのか
- 論文
- Science(2026年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Some dogs know the names of many toys. Scientists call them Gifted Word Learner dogs. Scientists in Hungary wanted to know one thing. Can these dogs learn a new word just by listening to people?
Ten dogs took part in the study. At home, two family members talked about a new toy. They said its name, but they did not look at the dog. The dog only watched and listened.
Later, the toy was in another room with many other toys. The owner said the new name. Seven of the ten dogs brought the right toy most of the time. This was the same number as when owners taught the dogs directly.
Ten other dogs with no toy names also tried. None of them learned the new names this way. Children can learn words like this from about one and a half years old.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. What did the two family members do?2人の家族は何をしましたか。
2人は犬を見ずに、会話の中でおもちゃの名前を言いました。
Q2. How many dogs learned the new names by listening?聞くだけで新しい名前を覚えた犬は何匹でしたか。
天才犬10匹のうち7匹が、会話を聞くだけで名前を覚えました。
Q3. What happened with the ten other dogs?別の10匹の犬はどうなりましたか。
おもちゃの名前を知らないふつうの犬は、このやり方では1匹も名前を覚えませんでした。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Dror, S. et al. (2026) Dogs with a large vocabulary of object labels learn new labels by overhearing like 1.5-year-old infants. Science 論文確認済みdoi:10.1126/science.adq5474
- 2Fugazza, C. et al. (2021) Rapid learning of object names in dogs. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-021-81699-2
- 3Dror, S. et al. (2023) A citizen science model turns anecdotes into evidence by revealing similar characteristics among Gifted Word Learner dogs. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-023-47864-5
- 4Dror, S. et al. (2021) Acquisition and long-term memory of object names in a sample of Gifted Word Learner dogs. Royal Society Open Science 論文確認済みdoi:10.1098/rsos.210976
- 5Gampe, A., Liebal, K. & Tomasello, M. (2012) Eighteen-month-olds learn novel words through overhearing. First Language 論文確認済みdoi:10.1177/0142723711433584
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