おもちゃの名前を覚えた犬は、名前で頼まれると43%の回で首をかしげた。ふつうの犬は2%
おもちゃの名前を覚えた犬は、名前で頼まれると43%の回で首をかしげた。ふつうの犬は2%。かしげる向きは犬ごとにほぼ決まっていた。

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- 名前を覚えた犬は、名前を聞くとよく首をかしげた
- 同じ練習をしたふつうの犬は、ほとんどかしげなかった
- 右か左か、かしげる向きは犬ごとに決まっていた
人に話すなら
犬が首をかしげるのって、かわいいだけじゃないかも。おもちゃの名前を覚えた犬は、名前で頼まれると4割以上の回で首をかしげたんだって。ふつうの犬はたった2%だったらしいよ。
読む前に予想しよう
犬が首をかしげる向きは、毎回でたらめに変わる
名前を覚えた犬では、かしげる向きが数か月たっても犬ごとにほぼ同じだった。
話しかけると、犬が首をこてんとかしげることがあります。犬と暮らす人なら、一度は見たことがあるしぐさでしょう。けれども、犬がなぜ首をかしげるのかを調べた研究は、ほとんどありませんでした。
ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学のチームは、おもちゃの名前を覚えられる犬と、ふつうの犬を比べました。飼い主が「〇〇を持ってきて」とおもちゃの名前で頼む場面を、動画で調べたのです。名前を覚えた犬が首をかしげた回は43%、ふつうの犬は2%でした。
しかも、名前を覚えた犬では、右にかしげるか左にかしげるかが、犬ごとにほぼ決まっていました。チームは、首をかしげることが、意味のある言葉を聞いて注意を向けることと関係しているのではないかと考えています。
013か月練習しても、おもちゃの名前を覚えられる犬はわずかだった
まず、この研究の前の研究から説明します。同じチームは2021年、犬がおもちゃの名前を覚えられるかを、3か月かけて調べました。
参加したのは、ふつうの家の犬34匹と、もともとおもちゃの名前をたくさん知っていた犬6匹です。この6匹は、世界中を2年かけて探して見つけた犬でした。飼い主は毎日、5〜10分ほどの遊びを何回か行います。おもちゃを見せて名前を言い、引っぱりっこをしたり、投げて持ってこさせたりしながら、名前をくり返し聞かせました。
2つの新しいおもちゃの名前を聞き分けられたのは、名前をたくさん知っていた6匹全員と、ふつうの犬1匹だけでした。この1匹は、ブラジルのボーダー・コリーのオリーバです。オリーバは、練習の最初の2か月で21個のおもちゃの名前を覚えました。
研究者たちは、こうした犬を「言葉を覚える才能のある犬」と呼んでいます。首をかしげる研究は、この3か月の練習と同時に行われました。
02飼い主が名前で頼む場面を撮影し、首の動きを数えた
首をかしげる研究の第一著者は、アンドレア・ソンメーゼ(Andrea Sommese)さんです。調べた犬は40匹でした。名前を覚えられた7匹と、覚えられなかったふつうの犬33匹です。7匹は全員ボーダー・コリーでした。
テストのやり方は、次のとおりです。犬は、飼い主の前に立つか、すわります。おもちゃは、となりの部屋に置いてあります。飼い主が「ロープを持ってきて」のように、おもちゃの名前で頼みます。犬はとなりの部屋に行き、おもちゃを1つ選んで持ってきます。
このテストを、練習を始めてから1か月後、2か月後、3か月後に行いました。1回のテストで、犬1匹につき12回頼みます。研究者は、飼い主が話し始めてから、犬がおもちゃを取りに行くまでの間に、首をかしげたかどうかを記録しました。かしげた向きと、飼い主が犬のどちら側にいたかも書きとめました。
記録が人によってずれないよう、動画の20%は、別の人にも記録してもらいました。2人の記録は、とてもよく一致していました。

03名前を覚えた犬は43%の回で首をかしげ、向きは犬ごとに決まっていた
結果、名前を覚えた犬は、全体の43%の回で首をかしげました。ふつうの犬は、2%でした。統計で比べても、はっきりした差でした。名前を覚えた7匹のうち、一度も首をかしげなかったのは1匹だけでした。
犬ごとの記録を見ると、差はさらにはっきりします。名前を覚えたガイアという犬は、1か月後のテストで92%、2か月後のテストで83%の回で首をかしげました。ふつうの犬では、一番多い犬でも、1回のテストで16%の回でした。
かしげる向きも調べました。名前を覚えた犬は、どのテストでも同じ向きにかしげる傾向がありました。3か月のテストの間でも、そのあとに行った2つの実験でも、向きは安定していました。2つの実験とは、新しいおもちゃを増やしていくテストと、7日間で6個、次に12個の名前を覚える挑戦です。
首をかしげたとき、犬はいつも飼い主の方を向いていました。飼い主が犬の右にいても左にいても、かしげる向きは変わりませんでした。チームは、音がどちらから来るかで向きが決まるわけではないと考えています。
04同じ練習をした犬でも、ほとんど首をかしげなかった
この研究で大事なのは、ふつうの犬も同じ練習をしていたことです。3か月の間、飼い主は同じやり方で名前を聞かせ、毎週トレーナーから同じ指導を受けていました。ふつうの犬も、おもちゃの名前を何度も聞いていたのです。
それでも、ふつうの犬はほとんど首をかしげませんでした。チームは、名前を聞き慣れているだけでは、首をかしげることにつながらないと考えました。そして、名前を覚えた犬にとっては、意味のある言葉を聞いていることが違いを生んだのではないか、としています。名前を聞いて、頭の中のおもちゃの姿と結びつけているときに、首をかしげるのかもしれない、とも書いています。
ただし、この研究は「探索的な分析」とタイトルにあるとおり、最初の手がかりを探す研究です。名前を覚えた犬はとても少なく、向きを詳しく調べられたのは6匹だけでした。その6匹は、全員ボーダー・コリーです。チームは、ふつうの犬にもボーダー・コリーが多くいたので、首をかしげるのはこの犬種のせいとは言えないとしています。それでも、ほかの犬種の名前を覚えた犬で同じことが起きるかは、まだ調べられていません。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
103匹の動画では、右にかしげる犬が多かった
2025年、アメリカのジョージ・ワシントン大学などのチームは、103匹の家の犬で首をかしげるしぐさを調べました。飼い主に、スマートフォンで30秒の動画を4本撮ってもらう方法です。1本目は犬が休んでいて目を合わせない場面、2本目は目を合わせるだけの場面です。3本目は、犬の知らない文を話す場面で、古代エジプトのピラミッドの話を読みました。4本目は、犬が知っている言葉で、ふつうの楽しげな調子で話しかける場面です。
首をかしげた犬は、103匹中41匹でした。首をかしげた回数の平均は、最初の3つの場面ではとても少なく、犬が知っている言葉の場面で一番多くなりました。主にどちらにかしげるかを数えると、右が22匹、左が15匹で、右が多いという結果でした。チームは、言葉を主に脳の左側で処理する人と似ているのではないかと考えています。
ただし、この研究の4つの場面は、いつも同じ順番で撮られていました。最後の場面ほど犬が慣れて、首をかしげやすくなった可能性も残る、とチーム自身が書いています。ソンメーゼさんたちの研究では、向きは犬ごとに決まっていましたが、どちらの向きが多いかは、犬の数が少なくて調べられませんでした。
首をかしげても、見る力は上がらなかった
首をかしげる理由には、別の考えもあります。かたむいた物を見るとき、人は首をかたむけて見やすくすることがあります。犬も同じことをしているのでしょうか。
2022年、オーストリアのウィーン獣医大学のチームは、8匹の犬に2つの図形を見分ける練習をさせました。そのあと、図形を回転させて見せ、犬が見分けられるかと、首のかたむきを記録しました。犬は、図形が回った向きと大きさに合わせて、首をかたむけていました。ところが、首をかたむけても、見分ける成績はよくなりませんでした。
聞こえた言葉で、犬が向く方向が変わる
首をかしげる研究の前には、犬が首を左右にふり向ける動きの研究がありました。2014年、イギリスのサセックス大学のチームは、犬に加工した人の声を聞かせ、犬が右と左のどちらにふり向くかを調べました。言葉の音をはっきりさせた声と、声の調子を目立たせた声とで、ふり向く方向の偏りが逆になりました。人の言葉の別々の部分を、犬の脳の左右が分担して処理している可能性を示した研究です。
研究方法の工夫と限界
ソンメーゼさんたちの工夫は、名前を覚えた犬とふつうの犬に、同じ練習を3か月させたことです。こうすると、「言葉を聞き慣れているか」の違いを取りのぞいて比べられます。一方で、首をかしげる理由そのものは、動画からは分かりません。脳の働きを同時に測る研究が、これから必要です。
05まとめ
おもちゃの名前を覚えた犬は、飼い主に名前で頼まれると、43%の回で首をかしげました。同じ練習をしたふつうの犬は、2%でした。名前を覚えた犬では、かしげる向きが犬ごとにほぼ決まっていて、数か月たっても変わりませんでした。
首をかしげる理由は、まだはっきりしていません。ただ、意味の分かる言葉を聞いて注意を向けることと関係している可能性があります。
家の犬が首をかしげたら、右と左のどちらが多いか、何回か数えてみてください。
研究カルテ
ハンガリー(ブダペスト)
- 研究チーム
- ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学のチーム(第一著者アンドレア・ソンメーゼ)
- 調べた場所
- ハンガリーの大学のチームが、ハンガリーやブラジルなどに住む犬を調べた
- 調べた動物
- おもちゃの名前を覚えられた犬7匹(全員ボーダー・コリー)と、ふつうの家の犬33匹
- 調べ方
- 飼い主が別の部屋のおもちゃを名前で頼む場面を撮影し、首をかしげた回と向きを数えた
- 分かったこと
- 名前を覚えた犬は43%の回で首をかしげ、ふつうの犬は2%。向きは犬ごとに安定していた
- まだ分からないこと
- 首をかしげることが、言葉の聞き取りや記憶とどうつながっているのか
- 論文
- Animal Cognition(2021年オンライン公開)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Many dogs tilt their heads when people talk to them. But why do they do it? Scientists in Hungary studied 40 dogs.
Seven of the dogs could learn the names of toys. The other 33 dogs could not. All the dogs practiced with their owners for three months. The toys were in the next room. Then the owners said, "Bring the rope!"
The dogs that knew the toy names often tilted their heads. They did it after 43 percent of the requests. The other dogs did it after only 2 percent. Each smart dog usually tilted its head to the same side.
The scientists think head tilting may show attention to words with meaning. A later study in the United States used videos of 103 pet dogs. Dogs tilted their heads most when owners used familiar words. More of these dogs tilted to the right than to the left. But nobody knows the full answer yet.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How many dogs could learn the names of toys?おもちゃの名前を覚えられた犬は何匹でしたか。
40匹のうち、おもちゃの名前を覚えられたのは7匹でした。
Q2. How long did the dogs practice?犬たちはどれくらいの期間練習しましたか。
どの犬も、飼い主と3か月間、おもちゃの名前の練習をしました。
Q3. What did each smart dog usually do?名前を覚えた犬は、たいていどうしましたか。
名前を覚えた犬は、かしげる向きが犬ごとにほぼ決まっていました。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Sommese, A. et al. (2021) An exploratory analysis of head-tilting in dogs. Animal Cognition 論文確認済みdoi:10.1007/s10071-021-01571-8
- 2PMC:上の論文の全文pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9107419/
- 3Fugazza, C. et al. (2021) Word learning dogs (Canis familiaris) provide an animal model for studying exceptional performance. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-021-93581-2
- 4Buckley, C. et al. (2025) What Does That Head Tilt Mean? Brain Lateralization and Sex Differences in the Processing of Familiar Human Speech by Domestic Dogs. Animals 論文確認済みdoi:10.3390/ani15213179
- 5Lonardo, L., Versace, E. & Huber, L. (2022) Recognition of rotated objects and cognitive offloading in dogs. iScience 論文確認済みdoi:10.1016/j.isci.2022.103820
- 6Ratcliffe, V. F. & Reby, D. (2014) Orienting asymmetries in dogs' responses to different communicatory components of human speech. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2014.10.030
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





