「猫は飼い主になつかない」はウソ。子猫の64%は、飼い主が戻ると落ち着いた
赤ちゃん用の愛着テストで子猫を調べると、64%が飼い主の戻りで落ち着いた。人の赤ちゃんや犬とほぼ同じ割合だった。ただし反対の結果の研究もある。
ウソ判定の対象猫は飼い主になつかない
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- 赤ちゃん用のテストで、子猫の64%が飼い主に安定した愛着を見せた
- 人の赤ちゃんは約65%、犬は58%で、猫もほぼ同じだった
- 同じ形のテストで「頼りにしていない」と出た研究もある
人に話すなら
猫ってクールで飼い主になつかないって言うけど、赤ちゃん用のテストをしたら、子猫の6割以上は飼い主が戻ると落ち着いたんだって。赤ちゃんとほぼ同じ割合らしいよ。
読む前に予想しよう
子猫を赤ちゃん用のテストで調べると、半分以上が飼い主に安定した愛着を見せた
分類できた子猫70匹のうち64.3%が「安定した愛着」と判定された。
犬は飼い主になつき、猫はなつかない。猫は家につき、人にはつかない。そんな言い方を聞いたことがある人は多いと思います。呼んでも来ない、なでようとすると逃げる。猫のそんな姿を見ると、たしかに飼い主のことなど気にしていないように見えます。
アメリカのオレゴン州立大学のチームは2019年、この「常識」を人の赤ちゃん用のテストで確かめました。生後3〜8か月の子猫を調べると、分類できた70匹のうち64.3%が、飼い主に「安定した愛着」を見せました。人の赤ちゃんの約65%とほぼ同じ割合です。
猫の心の研究は、犬にくらべてずっと少ない状態が続いてきました。世界で飼われている数は、猫のほうが犬より多いとされています。それなのに、猫が飼い主をどう思っているかは、はっきり分かっていなかったのです。
01赤ちゃんの愛着を調べるテストを、猫に使った
「愛着」は、心理学では特別な意味を持つ言葉です。ただ好きというだけではありません。こわいときや不安なときに、そばにいると安心できる相手との結びつきを指します。
人の赤ちゃんの愛着を調べる方法として有名なのが、メアリー・エインズワース(Mary Ainsworth)さんたちが1970年に発表したテストです。1歳ぐらいの赤ちゃんを、見慣れない部屋で親と少しの間離します。そして親が戻ってきたとき、赤ちゃんがどうふるまうかを見ます。
愛着が安定している子は、親が戻ると落ち着きます。親にくっついて安心したあと、また部屋の中を探検し始めます。親がいることで、安心して外の世界を見に行けるのです。この働きを「安全基地」と呼びます。
これに近い方法は、サルや犬の研究にも使われてきました。犬で調べると、飼い主に安定した愛着を見せる犬が多いことが分かってきました。そこで、オレゴン州立大学のクリスティン・ヴィターレ(Kristyn Vitale)さんとモニーク・ユーデル(Monique Udell)さんたちは、同じことを猫で試しました。
02知らない部屋で2分ひとりにし、飼い主が戻ったときの様子を見た
テストの手順はとても短いものです。猫と飼い主は、初めて入る部屋で2分間一緒に過ごします。次に飼い主が部屋を出て、猫は2分間ひとりになります。最後に飼い主が戻り、さらに2分間一緒に過ごします。
研究チームが注目したのは、最後の「飼い主が戻ってきた2分間」です。その様子を動画にとり、愛着の判定になれた専門家が分類しました。基準は、人の赤ちゃんや犬の研究で使われてきたものと同じです。
安定した愛着の猫は、飼い主が戻ると落ち着きます。飼い主にふれたり近くにいたりしながら、部屋の中も見て回ります。不安定な愛着の猫は、飼い主が戻っても落ち着きません。不安定な愛着には3つの型があります。飼い主から離れようとしない型、飼い主をさける型、近づいたりさけたりして迷う型です。

03子猫の64.3%が、飼い主の戻りで落ち着いた
テストを受けた子猫は79匹でした。そのうち9匹は、どの型とも決められませんでした。残りの70匹のうち、64.3%が安定した愛着、35.7%が不安定な愛着と判定されました。
不安定な愛着の子猫を細かく見ると、84%が「離れようとしない型」でした。「さける型」は12%、「迷う型」は4%でした。不安定な子猫の多くは、飼い主を無視したのではなく、逆に飼い主から離れられなかったのです。ヴィターレさんは大学の発表で、不安定な愛着の猫は、逃げてかくれたり、そっけなく見えたりすることがあると話しています。
チームは、子猫の一部に6週間の「しつけと人なれの教室」を受けさせました。教室に通った子猫39匹と、通わなかった子猫31匹をくらべたのです。約2か月後にもう一度テストすると、2つの組の間で、安定と不安定の割合に違いは出ませんでした。全体では68.6%が安定した愛着で、最初のテストとほぼ同じでした。1匹ずつ見ても、81%の子猫が前と同じ判定になりました。
チームは、愛着の型は一度できると、しつけの教室ぐらいでは変わりにくいと考えています。生まれつきの性格のようなものも関係しているかもしれない、と書いています。
04大人の猫でも、6割以上が安定した愛着を見せた
子猫だけでは、大人になると変わるのではないか、という疑問が残ります。そこでチームは、1歳以上の猫38匹にも同じテストをしました。結果は、65.8%が安定した愛着、34.2%が不安定な愛着でした。子猫とほぼ同じ割合です。
チームはさらに、ひとりにされた2分間に猫が鳴いた回数も数えました。鳴き声の回数で、ひとりにされた不安の強さを測ったのです。人の子どもの愛着の理論では、安定した型と「離れようとしない型」はどちらも、ひとりになると不安を見せるはずです。「さける型」と「迷う型」は、不安をあまり見せないはずです。
結果は、この予想どおりでした。安定した愛着の猫と「離れようとしない型」の猫は、同じくらいよく鳴きました。「さける型」と「迷う型」の猫は、それより鳴く回数が少なくなりました。安定した猫と「離れようとしない型」の猫は、同じくらい不安を見せたのに、飼い主が戻ったときの反応は違いました。型の違いは、ひとりのときの不安の強さだけでは説明できない、とチームは考えました。
論文は、人の赤ちゃん(安定65%、不安定35%)や犬(安定58%、不安定42%)の値と並べています。どの動物でも、半分以上が飼い主や親に安定した愛着を持っていました。
05同じ形のテストで「猫は飼い主を頼りにしていない」という研究もある
ただし、話はここで終わりません。2015年、イギリスのリンカーン大学のアリス・ポッター(Alice Potter)さんとダニエル・ミルズ(Daniel Mills)さんは、逆の結果を発表しています。
2人は1〜9歳の飼い猫20匹を調べました。エインズワースのテストをもとに、3分ずつ9つの場面を作りました。猫は、飼い主と一緒、知らない人と一緒、ひとり、の場面を順に経験します。順番による差が出ないよう、飼い主と知らない人の役を入れかえた形も用意しました。
結果、猫は飼い主が出ていったときに、知らない人が出ていったときより多く鳴きました。でも、飼い主がいるときに部屋の中をよく探検したり、よく遊んだりすることはありませんでした。安全基地の働きを示す証拠は見つからなかったのです。2人は、大人の猫はふつう、かなり自立した動物なのだろうと考えました。
この研究も、猫が飼い主と知らない人を区別していることは認めています。猫は飼い主のほうを好むようだ、とも書いています。食い違っているのは「飼い主を安心のよりどころにしているか」という点です。なお、ミルズさんは2019年の論文の謝辞にも名前があり、原稿の段階で意見を出していました。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
2つの研究は、なぜ違う結果になったのか
2つの研究は、テストの長さも、見た行動も違います。2019年の研究は全部で6分の短いテストで、飼い主が戻った場面の様子を専門家が型に分けました。2015年の研究は27分の長いテストで、探検や遊びなどの行動の時間を細かく測り、飼い主と知らない人で比べました。2015年の研究では、猫の行動はテストのたびに大きく変わり、使えない記録も多かったと書かれています。知らない場所で猫がじっと動かないとき、それが安心なのか不安なのか見分けにくい、とも書かれています。どの行動を「安心のしるし」と見るかで、答えが変わってしまうのかもしれません。
愛着はなぜ生まれたのか
愛着はもともと、親にくっついて離れないことで、子どもが生きのびやすくなるしくみと考えられています。2019年の論文は、猫や犬の飼い主への愛着は、この「子と親の結びつき」を人に向けて使っているのではないか、と書いています。飼い猫は大人になっても人から食べ物や世話をもらい続けます。子どものころの性質を大人になっても残しているとも書かれています。
猫は、人とのふれあいを選ぶのか
オレゴン州立大学のチームは2017年、猫の好みを調べる実験もしました。人とのふれあい、食べ物、おもちゃ、においの4種類を用意し、猫がどれと長く過ごすかを測ったのです。猫によって好みはばらばらでした。それでも半分以上の猫が一番好んだのは人とのふれあいで、次が食べ物でした。飼い猫でも保護施設の猫でも同じでした。猫は人にあまり興味がない、というイメージとは違う結果です。
06まとめ
赤ちゃん用の愛着テストを使うと、子猫の64.3%、大人の猫の65.8%が、飼い主の戻りで落ち着く安定した愛着を見せました。人の赤ちゃん(約65%)や犬(58%)とほぼ同じ割合です。一方で、猫が飼い主を安心のよりどころにしている証拠は出なかった、という研究もあります。
それでも、反対の結果を出した研究でも、猫は飼い主が出ていったときのほうがよく鳴きました。その研究も、猫は飼い主のほうを好むようだと書いています。不安定な子猫の多くも、飼い主をさけるのではなく、離れようとしませんでした。猫を飼っている人は、家に帰ったときの猫の迎え方を見てみてください。近くに来て、少しするとまた部屋を歩き回るなら、テストで「安定」と判定された猫の動き方に近い姿です。
研究カルテ
アメリカ・オレゴン州
- 研究チーム
- アメリカのオレゴン州立大学のチーム(第一著者クリスティン・ヴィターレ)
- 調べた場所
- アメリカのオレゴン州立大学(オレゴン州コーバリス)の研究室
- 調べた動物
- 飼い猫(学名 Felis silvestris catus)。生後3〜8か月の子猫79匹と、1歳以上の猫38匹
- 調べ方
- 知らない部屋で飼い主と2分、ひとりで2分、飼い主が戻って2分。戻ったときの様子で分類した
- 分かったこと
- 子猫の64.3%、大人の猫の65.8%が「安定した愛着」。人の赤ちゃん(約65%)や犬(58%)と近い
- まだ分からないこと
- 別の研究チームの実験では、猫が飼い主を安心のよりどころにする証拠は出なかった
- 論文
- Current Biology(2019年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Many people say that cats do not love their owners. Scientists in the United States tested this idea with a test for human babies.
A kitten and its owner stayed in a new room for two minutes. Then the owner left, and the kitten was alone for two minutes. When the owner came back, the scientists watched the kitten carefully.
About 64 percent of the kittens calmed down when their owner returned. They stayed near the owner and also explored the room. This number is close to the number for human babies, about 65 percent. Adult cats showed almost the same result.
But another team in the United Kingdom did a longer test with twenty cats. They did not find that cats use their owners as a safe base. Still, the cats in that test meowed more when their owner left.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How long was the kitten alone in the test?テストで子猫がひとりになったのは何分間ですか。
部屋で2分、ひとりで2分、飼い主が戻って2分という短いテストでした。
Q2. What percent of human babies show the same calm reaction?人の赤ちゃんで同じように落ち着く反応を見せるのは何%ですか。
人の赤ちゃんは約65%で、子猫の約64%とほぼ同じでした。
Q3. What did the cats in the UK test do more when their owner left?イギリスのテストの猫は、飼い主が出ていったとき、何を多くしましたか。
イギリスのテストでも、猫は知らない人より飼い主が出ていったときのほうがよく鳴きました。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Vitale, K. R., Behnke, A. C. & Udell, M. A. R. (2019) Attachment bonds between domestic cats and humans. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2019.08.036
- 2Potter, A. & Mills, D. S. (2015) Domestic Cats (Felis silvestris catus) Do Not Show Signs of Secure Attachment to Their Owners. PLOS ONE 論文確認済みdoi:10.1371/journal.pone.0135109
- 3Vitale Shreve, K. R., Mehrkam, L. R. & Udell, M. A. R. (2017) Social interaction, food, scent or toys? A formal assessment of domestic pet and shelter cat preferences. Behavioural Processes 論文確認済みdoi:10.1016/j.beproc.2017.03.016
- 4Ainsworth, M. D. S. & Bell, S. M. (1970) Attachment, Exploration, and Separation: Illustrated by the Behavior of One-Year-Olds in a Strange Situation. Child Development 論文確認済みdoi:10.2307/1127388
- 5Oregon State University(2019)プレスリリースnews.oregonstate.edu/news/cats-children-and-dogs-develop-att
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





