帰ってきた飼い主が男性だと、ネコはよく鳴いて出迎えるらしい。31匹を録画して調べた

帰宅直後のネコの出迎えを録画して22の行動を数えると、男性の飼い主のときだけ鳴く回数が多かった。ほかの行動に差はなかった。

No.053 7分で読めるえっ度 論文 2025年
夕方、玄関のドアが少し開き、家の中で待っていたネコがしっぽをまっすぐ立てて、口を開けて鳴きながら近づいてくる。人の姿は足元だけが見えている。

30秒で読む

  1. 飼い主の胸のカメラで、帰宅直後100秒のネコの行動を録画した
  2. 男性の飼い主のときだけ、ネコの鳴く回数が多かった
  3. しっぽを立てる、すり寄るなど、ほかの行動には差がなかった

人に話すなら

家に帰ったときのネコの出迎えを録画した研究があってね。飼い主が男性だと、ネコの鳴く回数が多かったんだって。ほかの行動は男女で変わらなかったらしいよ。

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読む前に予想しよう

ネコは、帰ってきた飼い主が男性のときのほうが鳴く回数が多かった

家に帰ってドアを開けると、ネコが鳴きながら走ってくる。ネコと暮らす人なら、よく知っている場面です。では、ネコはその出迎え方を、相手によって変えているのでしょうか。

トルコの研究チームが、31匹のネコの出迎えを録画して調べました。飼い主の胸にカメラをつけてもらい、帰宅した直後の100秒を撮ったのです。しっぽの立て方やすり寄り方など、22の行動を1つずつ数えました。すると、違いが出たのはたった1つでした。飼い主が男性のとき、ネコの鳴く回数が多かったのです。

これまで、ネコの出迎えについての研究の多くは、飼い主へのアンケートに頼ってきました。アンケートでは、家の中での実際の行動をそのまま数えることはできません。この研究は、ふだんの家の中で起きる出迎えを、そのまま録画して数えました。

01飼い主の胸のカメラで、帰宅直後の100秒を撮った

研究したのは、トルコの首都アンカラにあるアンカラ大学とビルケント大学などのチームです。中心になったのは、ヤセミン・サルグルル・デミルバシュ(Yasemin Salgırlı Demirbaş)さんとカーン・ケルマン(Kaan Kerman)さんです。

チームは、SNSやメールで協力してくれる飼い主を集めました。条件は2つです。飼い主が大人で、6か月以上そのネコを世話していること。ネコが生後8か月以上の大人であることです。集まった40人のうち9人は、録画の向きが悪い、飼い主がネコに手を出しすぎた、などの理由で外しました。残った31人と31匹で分析しました。録画は2022年から2024年にかけて行われました。

撮り方は決めてありました。飼い主は、仕事や学校から帰ってきたとき、ドアを開ける前に録画を始めます。カメラは胸につけたスマートフォンか、小型のビデオカメラです。こうすると、ネコの最初の反応から記録できます。飼い主には、できるだけふだんどおりにふるまうよう頼みました。

動画の長さは家ごとに違いました。一番短い動画は100秒でした。そこで、どのネコも最初の100秒だけを数えることにしました。ネコを何匹も飼っている家では、飼い主が最初に名前を呼んであいさつした1匹だけを数えました。

02しっぽから鳴き声まで、22の行動を数えた

数えた行動は、これまでの研究で使われてきた22種類です。たとえば次のようなものです。

  • しっぽをまっすぐ立てている時間
  • 飼い主に近づいた回数
  • 飼い主に頭や体をこすりつけた回数
  • ごろんと転がっておなかを見せた回数
  • あくびや、体をぶるっとふるわせた回数
  • えさ皿を見に行った回数
  • 鳴いた回数

鳴き声には、「ニャー」だけでなく、のどを鳴らす声やうなり声なども入れて数えました。動画はすべて、動物の行動を見る仕事で15年以上の経験を持つ1人の研究者が見ました。1人がすべてを見ることで、数え方の違いが出ないようにしたのです。

31人の飼い主のうち、男性は13人、女性は18人でした。ネコはオスが18匹、メスが13匹です。7割以上が雑種で、ほぼ全員が、買うのではなく譲り受けてネコを迎えていました。

03違いが出たのは「鳴く回数」だけだった

チームは、出迎えの行動が何によって変わるのかを調べました。比べた条件は、飼い主の性別、ネコの性別、年齢、純血種か雑種か、ネコを何匹飼っているか、などです。

その結果、どの条件でも差が出なかった行動がほとんどでした。しっぽを立てる時間も、すり寄る回数も、近づく回数も、男性と女性の飼い主で変わりませんでした。ただ1つ、鳴く回数だけが飼い主の性別で違いました。

チームはさらに、ネコの性別や純血種かどうか、飼っている匹数をそろえて計算し直しました。それでも、男性の飼い主のときのほうが、100秒の間に約2.4回多く鳴いていました。ネコの年齢を計算に入れても、この差は残りました。

家の玄関で、帰ってきた人の足元に、しっぽを立てたネコが頭をこすりつけている。人の胸元には小さなカメラがついているのが、後ろ姿から分かる。

04ネコは男性の飼い主に、声ではっきり伝えているのかもしれない

なぜ、男性の飼い主によく鳴くのでしょうか。研究チームは、1つの考えを示しています。

これまでの研究では、女性の飼い主のほうが、ネコによく話しかけると報告されています。ネコの鳴き声の意味を読み取るのも、女性のほうが上手だという報告があります。男性はネコの小さな合図に気づきにくいのかもしれません。そうだとすると、ネコは男性にははっきり声を出さないと伝わらないことを覚えた、とも考えられます。

研究チームは、トルコの文化が関係している可能性にも触れています。トルコでは、男性が気持ちを表に出すのをおさえる傾向があると、別の研究で言われています。男性の飼い主がネコにあまり話しかけないので、ネコのほうがよく鳴くようになったのかもしれません。ただ、研究チーム自身が、これはまだ推測だと書いています。

0531匹・1つの国だけの小さな研究なので、気をつけたい点がある

この研究は、研究チーム自身が「予備的な研究」と呼んでいます。読むときに気をつけたい点がいくつかあります。

1つめは、数の少なさです。31匹は多いとは言えません。最初の比べ方では、男女の差は「差がある」と言えるかどうかのぎりぎりでした。ほかの条件をそろえた計算で、はっきりした差になりました。

2つめは、比べ方です。この研究では、1匹のネコに、男性と女性の両方が帰宅する場面を見せたわけではありません。男性の飼い主の家のネコと、女性の飼い主の家のネコを比べています。家ごとの暮らし方の違いが、結果に混ざっているかもしれません。

3つめは、測れなかったことです。飼い主が何時間家をあけていたかは、記録していません。ネコがおなかをすかせていたかも分かりません。同じ家に住むほかの家族のことも、計算に入れていません。

4つめは、場所が1つの国だけだということです。日本の家のネコでも同じ結果になるかは、まだ誰も確かめていません。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

ネコは、人の声の違いを聞き分けている

ネコはそっけない動物だと思われがちです。でも最近の研究で、ネコが人の声をよく聞いていることが分かってきました。2019年、上智大学や東京大学などの日本の研究チームは、ネコが自分の名前をほかの言葉と聞き分けることを示しました。ふつうの名詞を4つ続けて聞かせて慣れさせた後、自分の名前を聞かせると、ネコの反応がまた大きくなったのです。

2022年には、フランスのパリ・ナンテール大学などのチームが、16匹の飼いネコで実験をしました。飼い主がネコに話しかけるときの声と、大人に話しかけるときの声を録音し、ネコに聞かせました。するとネコは、飼い主の声なら、自分に向けた話し方を聞き分けました。知らない人の声では、聞き分けませんでした。ネコは、一緒に暮らす相手との間で、特別なやりとりを育てているようです。今回のトルコの研究も、この流れの中にあります。ネコは、相手が誰かによって、伝え方を変えているのかもしれません。

出迎えの行動は、2つのまとまりに分かれた

この研究では、行動どうしの関係も調べました。しっぽを立てる、近づく、すり寄るの3つは、一緒に起こりやすいことが分かりました。これは、親しい相手へのあいさつのまとまりと考えられます。もう1つのまとまりは、あくび、体をふるわせる、自分の体をかく、毛づくろいです。これらは、気持ちが高ぶったり落ち着かなかったりするときに出る行動だと考えられています。

鳴き声は、どちらのまとまりにも入りませんでした。ほかのどの行動とも、一緒に増えたり減ったりしなかったのです。研究チームは、鳴き声は1つの気持ちから出るものではなく、人とのふれあいを求める、広い欲求を表しているのかもしれないと考えています。えさ皿を見に行く行動も、どちらのまとまりとも関係しませんでした。帰宅直後の出迎えは、おなかがすいたからだけではなさそうです。

アンケートと録画の違い

ネコと人の関係の研究では、これまでアンケートがよく使われてきました。たくさんの人から答えを集められる便利な方法です。でも、飼い主の答えには、飼い主の感じ方が入ります。今回のように家の中で録画すれば、実際の行動を数えられます。その代わり、集められる数は少なくなります。どちらにも長所と短所があるのです。

よく鳴くことと、好きかどうかは別の話

論文が紹介している1988年などの研究では、ネコは子どもより大人、とくに女性とのふれあいを好むと報告されています。今回の結果は、ネコが女性より男性を好むという意味ではありません。鳴く回数が多いことは、伝える方法の違いかもしれないからです。どちらの相手をどれくらい好きなのかは、この研究では調べていません。

06まとめ

トルコの研究チームは、飼い主の胸のカメラで、31匹のネコの出迎えを録画しました。帰宅直後の100秒で22の行動を数えると、違いが出たのは鳴く回数だけでした。男性の飼い主のときのほうが、約2.4回多く鳴いていました。しっぽを立てる、すり寄るといった行動は、男女で変わりませんでした。

ただし、これは1つの国の31匹の小さな研究です。男性の飼い主は気づきにくいので、ネコが声ではっきり伝えている、という説明もまだ仮説です。家族のいる人は、誰が帰ってきたときに、ネコが何回鳴くかを数えてみてください。

RESEARCH FILE

研究カルテ

トルコ

研究チーム
トルコのアンカラ大学とビルケント大学などのチーム(第一著者ヤセミン・サルグルル・デミルバシュ)
調べた場所
トルコの飼い主の家(2022〜2024年)
調べた動物
家で飼われている大人のネコ31匹(学名 Felis catus)
調べ方
飼い主が胸につけたカメラで帰宅直後を撮り、最初の100秒の22の行動を数えた
分かったこと
男性の飼い主のときだけ鳴く回数が多かった。すり寄りなどほかの行動に差はなかった
まだ分からないこと
31匹・1つの国だけの小さな研究。なぜ男性によく鳴くのかは確かめていない
論文
Ethology(2025年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Cats Meow More When a Man Comes Home

What does your cat do when you come home? Scientists in Turkey studied this question with 31 cats. Each owner wore a small camera on their chest. They started the video before they opened the door.

The scientists watched the first 100 seconds of each video. They counted 22 kinds of actions. For example, they counted how often a cat rubbed against its owner.

Only one thing was different. Cats made more sounds when the owner was a man. Other actions, like raising the tail, were the same for men and women.

Why did this happen? Other studies say that women talk to their cats more. So cats may need to use their voice to get a man's attention. But this was a small study, and we need more research.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. Where did the owners wear the camera?飼い主はカメラをどこにつけましたか。

Q2. How many seconds of each video did the scientists watch?研究者は、それぞれの動画の何秒を見ましたか。

Q3. What was different when the owner was a man?飼い主が男性のとき、何が違っていましたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Salgırlı Demirbaş, Y. et al. (2025) Greeting Vocalizations in Domestic Cats Are More Frequent With Male Caregivers. Ethology 論文確認済みdoi:10.1111/eth.70033
  2. 2de Mouzon, C. et al. (2022) Discrimination of cat-directed speech from human-directed speech in a population of indoor companion cats (Felis catus). Animal Cognition 論文確認済みdoi:10.1007/s10071-022-01674-w
  3. 3Saito, A. et al. (2019) Domestic cats (Felis catus) discriminate their names from other words. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-019-40616-4

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい