横向きに寝るネコの約3匹に2匹は、体の左側を下にしていた。寝姿の動画408本で分かった

横向きに眠るネコの動画408本を調べると、65%が体の左側を下にしていた。起きた瞬間に危険に気づきやすい向きだから、という説がある。

No.041 7分で読めるえっ度 論文 2025年
日の当たる棚の上で、しま模様のイエネコが体の左側を下にして横向きに眠っている。前足と後ろ足を軽くのばし、しっぽは体にそっている。

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  1. 横向きに眠るネコの65%が、体の左側を下にしていた
  2. 右の脳は危険を見つけるのが得意で、左側の景色を受け持つ
  3. 身を守るための向きという説は、まだ確かめられていない

人に話すなら

横向きで寝てるネコの3匹に2匹は、体の左側を下にしてるんだって。起きたとき左側に見える景色が、危険を見つけるのが得意な右の脳に届くから、という説があるらしいよ。

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読む前に予想しよう

横向きで眠るネコは、左側を下にすることが多い

ネコが体をのばして、横向きに眠っています。下になっているのは、体の左側でしょうか。右側でしょうか。どちらでも同じだと思う人が多いはずです。

ところが、横向きに寝ているネコの動画を408本集めて数えた研究があります。その結果、約3匹に2匹が体の左側を下にして寝ていました。右側を下にしていたのは、3匹に1匹ほどでした。

なぜ左なのでしょうか。研究チームは、脳の右と左で仕事が違うことに注目しました。寝る向きという小さなくせが、身の守り方と関係しているかもしれないのです。

01ネコは1日の半分以上を眠ってすごしている

ネコは1日に平均12〜16時間眠ります。つまり、1日の半分以上を眠ってすごしています。

眠っているあいだ、動物はまわりへの注意がうすれます。深く眠っているときは、なおさらです。ネコはネズミなどを狩る側ですが、コヨーテなどに食べられる側でもあります。眠りは、ネコにとって危ない時間です。

そこでネコは、高い場所で休むことを好みます。高い場所なら、敵は下からしか近づけません。下にいる相手はよく見えます。逆に、ネコの姿は下から見えにくくなります。

研究チームは、ここから一歩進んだ問いを立てました。高い場所で眠るとき、体の向きにも身を守る意味があるのではないか。この問いを確かめるために選んだのが、インターネットの動画でした。

02動画408本の寝姿を、左と右に分けて数えた

研究を進めたのは、イタリアのバーリ大学のセビム・イスパルタ(Sevim Isparta)さんと、ドイツのルール大学ボーフムのオヌル・ギュンテュルキュン(Onur Güntürkün)さんたちです。カナダ、スイス、トルコの研究者も加わりました。

チームが使ったのは、動画サイト YouTube に公開されている、ネコが寝ている動画です。ただし、どんな動画でもよいわけではありません。次の条件をすべて満たすものだけを選びました。

  • 映っているネコは1匹だけ
  • 体の片側を下にして、横向きに寝ている
  • 10秒以上、目を覚まさずに眠り続けている
  • 頭から後ろ足まで、体全体が映っている

画質が悪いもの、体がかくれているもの、同じ動画のコピーは外しました。左右が反転した動画も外しました。自撮りのように鏡うつしになった映像では、左右を正しく数えられないからです。

こうして残った408本で、ネコがどちら側を下にしているかを数えました。

結果は、左側が下のネコが266匹で、全体の65.1%でした。右側が下のネコは142匹で、34.8%でした。もし左右がでたらめなら、ほぼ半分ずつになるはずです。チームが計算すると、この差は偶然では起こりにくい大きさでした。

03左を下にして寝ると、起きてすぐ見える左側の景色を右の脳が受け持つ、とチームは考えた

左を下にすると、何が得なのでしょうか。チームが注目したのは、目と脳のつながり方です。

ネコも人も、目の前の景色の左半分は、脳の右側で処理されます。景色の右半分は、脳の左側です。景色の左右と脳の左右は、入れかわってつながっているのです。

そして、脳の右側と左側は、得意な仕事が違います。チームが論文で挙げたのは、次のような脳の右側の得意分野です。

  • 危険なものの情報を処理するのが得意
  • まわりの空間全体に注意を向けるのが得意
  • 恐怖にかかわる「へんとう体」という部分も、右側がよく働く

実際に多くの動物では、敵が左側から近づいたときのほうが、すばやく反応できることが分かっています。

ここからチームは、次のように考えました。左側を下にして眠るネコが目を覚ますと、まず体の左側の景色が目に入ります。その景色は、危険の判断が得意な右の脳で処理されます。下から近づく敵や、同じ高さから来る相手を、すばやく見分けられるかもしれません。大学の発表は、この考えを「左側で眠ることは、生き残りの作戦になりうる」とまとめています。

横向きに眠っていたイエネコが目を覚まし、左側を下にしたまま頭だけ少し持ち上げて、棚の下の床を見下ろしている。

04ただし「身を守るため」という説は、まだ確かめられていない

ここで注意が必要です。この研究で分かったのは、「左を下にして寝るネコが多い」という事実だけです。「だから身を守れる」という部分は、チームの考えです。寝起きのネコに敵の姿を見せて、反応の速さを測ったわけではありません。

論文の中でも、チームはほかの理由がありえることを認めています。たとえば、ウシの研究です。おなかに子どもがいるウシは、56%の割合で左側を下にして横になります。出産が近づくほど、この割合は上がります。子どもがいないウシには、こうした左右の差がありません。

動画のネコについては、オスかメスかも、おなかに子どもがいるかも分かりません。ただ、ウシでも差は小さいので、たまたま妊娠中のネコばかりが映っていたとは考えにくい、とチームは書いています。

もう一つの候補は、前足の「利き手」です。ネコの約78%は、左か右のどちらかの前足をよく使います。けれども、左利きと右利きのネコは、ほぼ同じくらいの数です。利き手で説明しようとすると、寝る向きもほぼ半々になるはずです。65%という左への偏りは、利き手だけでは説明しにくいのです。

それでもチームは、ほかの要因を消しきれないと書いています。また、この方法には限りもあります。1本の動画で見たのは、1匹のネコのある日の寝姿だけです。同じネコが毎日左を下にして寝るのかは、動画からは分かりません。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

脳の左右で仕事を分けると、何が得なのか

脳の左右で役割が違うことは、人間だけの特徴ではありません。魚から哺乳類まで、背骨のある動物の多くに見られます。最近では、背骨のない動物でも報告されています。ギュンテュルキュンさんたちは2020年に、いろいろな動物の脳の左右差を比べた長い論文を書きました。今回のネコの論文も、その考え方を出発点にしています。

イタリアの研究者ジョルジョ・ヴァロルティガラ(Giorgio Vallortigara)さんたちは、2020年の論文で、その利点をまとめました。一つは、二つの仕事を同時にこなしやすくなることです。片側の脳がえさを探し、もう片側が敵を見張る、という分担ができます。もう一つは、片側ばかり使うと、その側の練習が積み重なることです。その結果、反応が速くなると考えられています。

なぜ多くのネコが同じ「左」にそろうのか

ふしぎなのは、1匹ずつにくせがあるだけでなく、多くのネコが同じ左にそろうことです。脳の働きをよくするだけなら、左を使うネコと右を使うネコが半々でもかまわないはずです。

ヴァロルティガラさんたちによると、魚から哺乳類まで、多くの動物で同じような偏りがあります。多くの個体は、敵が左から来たときにすばやく逃げます。けれども、右から来た敵に速く反応する少数派も、ふつう10〜35%ほどいます。こうした「多数派と少数派」の組み合わせができる理由は、仲間どうしや敵との関係から説明する理論が出されています。ネコの寝る向きの偏りも、同じしくみで生まれたのかどうか、これから調べる価値があります。

前足の利き手とは別のくせ

2019年、イヌとネコの前足の利き手を調べた研究をまとめて分析した論文が出ました。それによると、ネコの78%、イヌの68%が、左右どちらかの前足をよく使っていました。ただし、どちらの動物でも、群れ全体として右利きが多いという偏りはありませんでした。人間の多くが右利きなのとは違います。

ネコではオスとメスの差も見つかりました。メスのほうが右利きになりやすかったのです。寝る向きにもオスとメスの差があるのかは、今回の動画研究では分かりません。

動画を使う方法の強みと弱み

動画サイトを使うと、研究者が家々を回らなくても、たくさんのネコの寝姿を集められます。

一方で、映っているネコの年齢やオスメス、住んでいる家の様子は分かりません。チームも、性別や妊娠の情報がないことを限界として書いています。

05まとめ

横向きに眠るネコの動画408本を調べると、65%が体の左側を下にしていました。左側を下にすると、起きた瞬間の左の景色が、危険の判断が得意な右の脳に届きます。チームはこれを、眠っているあいだの身の守り方と結びつけて考えています。

ただし、その説はまだ確かめられていません。寝起きの反応の速さは測っていませんし、同じネコがいつも左で寝るのかも分かっていません。

家にネコがいる人は、今夜、横向きで眠るネコの下になっている側を見てみてください。左が下なら、そのネコは3匹に2匹の多数派です。

RESEARCH FILE

研究カルテ

ドイツ(ルール大学ボーフム)

研究チーム
イタリアのバーリ大学、ドイツのルール大学ボーフムなどの国際チーム(セビム・イスパルタ、オヌル・ギュンテュルキュンら)
調べた場所
誰でも見られる動画サイト YouTube に公開された動画
調べた動物
イエネコ(学名 Felis silvestris catus)
調べ方
1匹のネコが横向きで10秒以上眠り、頭から後ろ足まで映る動画408本を選び、どちら側を下にしているか数えた
分かったこと
266匹(65.1%)が左側を下に、142匹(34.8%)が右側を下にして寝ていた
まだ分からないこと
同じネコがいつも左で寝るのか。オスとメスで違うのか。寝起きに本当に早く危険に気づけるのか
論文
Current Biology(2025年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Most Cats Sleep on Their Left Side

Cats sleep for 12 to 16 hours a day. Sleep is a dangerous time for them. So they like to rest in high places.

A team of scientists watched 408 videos of sleeping cats on YouTube. Each video showed one cat lying on its side. They counted which side was down. About two out of three cats slept on their left side.

Why the left side? The scientists think a left-side sleeper first sees the space on its left when it wakes up. The right side of the brain handles what the cat sees on its left. This part of the brain is good at finding danger. So sleeping on the left may help a cat react quickly.

But this idea is not proven yet. The scientists did not test how fast the cats reacted. Do you have a cat at home? Check which side it sleeps on tonight.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How many videos did the scientists watch?研究者たちは何本の動画を見ましたか。

Q2. Which side did most cats sleep on?多くのネコはどちら側を下にして寝ていましたか。

Q3. What is the right side of the brain good at?脳の右側は何が得意ですか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Isparta, S., Ocklenburg, S. et al. (2025) Lateralized sleeping positions in domestic cats. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2025.04.043
  2. 2Ruhr University Bochum(2025)プレスリリース This is how cats prefer to sleep: on their left shouldernews.rub.de/english/press-releases/2025-06-24-biopsychology-
  3. 3Vallortigara, G. & Rogers, L. J. (2020) A function for the bicameral mind. Cortex 論文確認済みdoi:10.1016/j.cortex.2019.11.018
  4. 4Ocklenburg, S. et al. (2019) Paw preferences in cats and dogs: Meta-analysis. Laterality 論文確認済みdoi:10.1080/1357650X.2019.1578228

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい