カエルにのみこまれた甲虫マメガムシは、9割がお尻から生きて出てきた
カエルにのみこまれた甲虫マメガムシは、9割が6時間以内にお尻から生きて出てきた。脚を固めると全滅したので、自分で歩いて出口へ向かったらしい。

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- カエルにのまれたマメガムシの9割が、お尻から生きて出てきた
- 脚をロウで固めると、1匹も生きて出られなかった
- ナマズに食べられたときは、お尻からは出られなかった
人に話すなら
マメガムシっていう小さな虫は、カエルに丸のみされても、9割がお尻から生きて出てくるんだって。脚をロウで固めると全滅したから、カエルの体の中を自分で歩いて出口へ向かってるらしいよ。
読む前に予想しよう
カエルにのみこまれたマメガムシは、ほとんどがお尻から生きて出てくる
5種のカエルで試すと、のみこまれた虫の90%が6時間以内に生きて出てきた。
カエルは、つかまえた虫をかまずに、そのまま丸のみにします。のみこまれた虫は、胃や腸の液にさらされて死にます。カエルにとっては、それが「消化」です。
ところが、田んぼにすむ体長5ミリほどの甲虫マメガムシは違いました。カエルにのみこまれても、9割が6時間以内に、カエルのお尻から生きて出てきたのです。早いものは、のみこまれてからわずか6分で出てきました。
食べられたあとに生きて出てくる動物は、これまでも知られていました。けれども、どれもフンと一緒に運ばれて出てくる「受け身」の脱出だと考えられていました。獲物が自分から動いてお尻から脱出する例を記録したのは、この研究が初めてです。
01マメガムシは、田んぼや池にすむ小さな甲虫
マメガムシは、ガムシのなかまの水にすむ甲虫です。体長は3.5〜5.2ミリほどです。アジアからオーストラリアにかけて広くすんでいます。日本では、池や田んぼの浅い水の中でよく見られます。
ふだんは水中で水草の葉を食べています。水面より上の草や地面で、休んでいることもよくあります。そうした場所には、トノサマガエルなどのカエルもすんでいます。カエルにとって、マメガムシは手ごろな大きさの獲物です。
ガムシのなかまには、敵をしりぞける毒の液を出すしくみがありません。ゲンゴロウやミズスマシのなかまとは、そこが違います。それなのに、なぜ生き残れるのでしょうか。
02カエルにのみこませ、お尻から出てくるまでをビデオで見張った
研究したのは、神戸大学大学院農学研究科の杉浦真治さんです。杉浦さんは、虫がどうやって天敵から身を守るのかを調べています。
実験は25℃の実験室で行いました。トノサマガエルの前にマメガムシを置くと、15匹のカエルはすべてマメガムシをのみこみました。杉浦さんは、そのカエルを入れ物に移し、ビデオで見張り続けました。
すると、15匹のうち14匹のマメガムシが、カエルのお尻から生きて出てきました。のみこまれてから出てくるまでは、平均で1.6時間でした。出てきた虫はすぐに元気をとりもどし、水の中を泳ぎ回りました。
トノサマガエルは、ふつうのエサだと、食べてから平均50時間ほどたってフンを出します。マメガムシは、その何十倍も速く体の中を通りぬけたことになります。
杉浦さんは、ほかの4種のカエルでも試しました。ダルマガエル、ツチガエル、ヌマガエル、ニホンアマガエルです。どのカエルでも、多くのマメガムシが生きて出てきました。5種を合わせると、のみこまれたマメガムシの90%が、6時間以内に生きて脱出しました。出てきた虫の94.4%は、その後2週間以上生きました。
比べるために、同じガムシのなかまのキベリヒラタガムシも、トノサマガエルに食べさせました。こちらは、のみこまれた13匹がすべて死にました。そして1日以上たってから、フンとして出てきました。
03脚をロウで固めると、1匹も生きて出られなかった
マメガムシは、カエルの体の中で何をしているのでしょうか。杉浦さんは、脚の働きを確かめることにしました。
マメガムシの脚を、ねばりけのあるロウで固めて動けなくしました。この虫15匹を、トノサマガエルに食べさせました。結果は、15匹すべてが死にました。死んだ虫は、平均58時間ほどたってからフンとして出てきました。
脚が動くかどうかで、生き死にが分かれたのです。ここから杉浦さんは、マメガムシが脚を使って消化管の中を進み、出口へ向かっていると考えました。
ただし、出口にはもう一つの関門があります。カエルのお尻の穴は、筋肉でぎゅっと閉じられています。小さな虫が自分の力でこじ開けるのは、むずかしいと考えられます。
そこで注目されたのが、出てくるときの向きです。2020年の実験では、マメガムシはいつも頭を先にして出てきました。杉浦さんは、マメガムシが腸のおわりのほうを刺激し、カエルにフンを出させているのではないかと考えています。

042025年の続報では、6種のカエルで79%が脱出した
2020年の実験では、カエルの種類によって数が少ないものもありました。ダルマガエルは3匹、ツチガエルは4匹だけでした。そこで杉浦さんは、数を増やして確かめ直しました。それが2025年に出た続報です。
今度は、6種のカエルについて、マメガムシがのみこまれた記録を21回ずつ集めました。一部は、2020年の実験の記録を使い直したものです。6種には、外国から持ちこまれたウシガエルも入っています。ウシガエルは1918年に、食用としてアメリカから日本に持ちこまれました。それが野外に逃げ出し、全国に広がったカエルです。
結果は、のみこまれたマメガムシの79%が、生きてお尻から出てきました。カエルの種類ごとに見ると、57〜91%でした。ウシガエルからも、71%が生きて出てきました。ただし、カエルの種類や体の大きさによる差は、はっきりしたものではありませんでした。
生きて出てきた虫は、すべてのみこまれてから7時間以内に出てきました。一方、体の中で死んでしまった虫は、19〜161時間もたってから出てきました。
野外での証拠も見つかりました。2024年8月、杉浦さんは池でウシガエルの子ども21匹をつかまえました。実験室に運ぶと、カエルたちは食べた虫の残りをフンとして出しました。その中に、生きたマメガムシが1匹まじっていたのです。野生のカエルから脱出したことを示す、初めての証拠です。
05ナマズに食べられたときは、お尻からは出られなかった
ここまで聞くと、マメガムシはどんな天敵のおなかからも脱出できそうに思えます。けれども、そうではありませんでした。
2026年に発表された研究で、杉浦さんは魚のナマズでも試しました。全長14〜25センチのナマズに、マメガムシを20匹与えました。すると70%は、口に入れられたあと、生きたまま吐き出されました。残りの30%は食べられてしまいました。
そして、食べられたマメガムシは、1匹もナマズのお尻から生きて出てきませんでした。死んだ体の残りが、26〜166時間後にフンとして出てきただけでした。杉浦さんは、お尻からの脱出はカエルを相手にしたときだけの作戦なのかもしれない、と考えています。
ナマズの口の中でも、脚は役に立っていました。脚を切って歩きにくく、泳ぎにくくしたマメガムシでは、85%が食べられたのです。マメガムシは、口の中で脚を使って動き回ったり、しがみついたりして、吐き出させていると考えられます。ただし、口の中の動きを直接見たわけではなく、まだ仮説の段階です。
もう一つ、細かい違いもあります。2020年の論文では「いつも頭から出てきた」と書かれていました。ところが2025年の続報では、出てくる様子がはっきり映った91匹のうち、2匹はおしりの側から出てきました。数を増やすと、例外も見えてくるのです。
また、マメガムシが体の中で本当に歩いているところは、まだ誰も見ていません。杉浦さんは、X線などでカエルの体の中を直接見る研究が必要だと書いています。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
食べられても生き残る動物は、ほかにもいた
食べられたあとに生きて出てくる動物は、昔から少しずつ報告されていました。1969年には、ゾウムシのなかまがヒキガエルの消化管を通りぬけ、数日後に生きて出てきたという記録があります。魚に食べられた巻き貝や二枚貝が、生きたままフンと一緒に出てくる例も知られています。
日本の研究もあります。2012年、日本の研究チームが、小笠原諸島の母島にすむ小さな陸の貝を調べました。鳥のメジロに食べさせた119匹のうち14.3%、ヒヨドリに食べさせた55匹のうち16.4%が、生きて鳥のフンから出てきました。中には、出てきたあとに子どもを産んだ貝もいました。鳥に食べられることが、貝が遠くへ広がる手段になっているかもしれません。
ただし、これらはどれも、殻にこもってじっと耐え、フンと一緒に運ばれるだけの「受け身」の脱出でした。生き残る割合も1〜2割ほどでした。マメガムシの9割という数字は、それとは大きく違います。
体の中から反撃して、はき出させる虫もいる
杉浦さんは、マメガムシの前にも、食べられた虫の脱出を調べていました。2018年の研究では、ミイデラゴミムシという甲虫をヒキガエルに食べさせました。ミイデラゴミムシは、敵におそわれるとお尻から熱い液を勢いよく出します。
実験では、ヒキガエルはみなミイデラゴミムシをのみこみました。けれども43%のヒキガエルは、12〜107分後に虫をはき出しました。はき出された虫は、すべて生きていました。体の中で熱い液を出し、カエルにはき出させたのです。大きな虫ほど脱出に成功しやすく、小さなヒキガエルほど虫をはき出しやすいことも分かりました。口から出るか、お尻から出るか。同じ「食べられたあとの脱出」でも、虫によって作戦が違います。
なぜカエルは、逃げられないように進化しないのか
カエルから見れば、せっかくのみこんだ獲物に逃げられています。それなのに、逃がさないしくみを進化させていないようです。
杉浦さんは2025年の論文で、その理由を考えています。マメガムシは小さく、栄養もあまり多くありません。そして、細長い体で消化管をなめらかに通りぬけるので、カエルの体を傷つけません。このような獲物なら、カエルが対抗策を進化させる意味は小さいのかもしれません。カエルの腸の形や筋肉のしくみに、変えにくい事情がある可能性もあります。
マメガムシが体の中で生きのびられる理由
カエルの消化管の中は、空気がほとんどなく、消化液もあります。マメガムシは、かたい羽の下に小さな空気のたくわえを持っています。水にもぐるときに使う空気です。これが、消化管の中での呼吸に役立っている可能性があります。かたい体の外側も、消化液から身を守っているのかもしれません。ただし、どちらもまだ直接は確かめられていません。
06まとめ
田んぼにすむ小さな甲虫マメガムシは、カエルにのみこまれても、9割がお尻から生きて出てきました。脚をロウで固めると1匹も助からなかったことから、脚を使って消化管を進んでいると考えられています。2025年の続報では、外来のウシガエルを含む6種のカエルで、79%が脱出に成功しました。
一方で、ナマズに食べられたときは、お尻からは1匹も出てきませんでした。お尻からの脱出は、カエル相手の作戦なのかもしれません。
マメガムシが、カエルのおなかの中を6分で通りぬけた記録もあります。トノサマガエルがふつうのエサをフンにするまでには、平均で50時間ほどかかります。
研究カルテ
日本・兵庫県神戸市(神戸大学)
- 研究チーム
- 神戸大学大学院農学研究科の杉浦真治さん(1人で行った研究)
- 調べた場所
- 神戸大学の実験室(25℃)。虫とカエルは近畿地方などの池や田んぼで集めた
- 調べた動物
- マメガムシ(学名 Regimbartia attenuata)と、トノサマガエルなどカエル6種
- 調べ方
- カエルにマメガムシを食べさせ、お尻から出てくるまでをビデオで記録した。脚をロウで固めた虫でも試した
- 分かったこと
- 5種のカエルで90%が6時間以内に生きて脱出。脚を固めると全滅した。2025年の続報では6種で79%
- まだ分からないこと
- 体の中でどう進んでいるのか。カエルにどうやってお尻を開けさせているのか
- 論文
- Current Biology(2020年)、Ecology and Evolution(2025年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Frogs do not chew their food. They swallow insects whole. Most insects die inside the frog.
But a small water beetle in Japan is different. A scientist at Kobe University gave these beetles to five kinds of frogs. About 90 percent of the swallowed beetles came out of the frog's back end alive. The fastest one came out in only six minutes.
Next, he covered the beetles' legs with wax. None of these beetles came out alive. So the beetles probably use their legs to walk through the frog's body.
The trick does not work with every animal. When catfish ate the beetles, no beetle came out of the back end alive. But many beetles were spat out of the catfish's mouth alive.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How many kinds of frogs were used in the first study?最初の研究では、何種類のカエルが使われましたか。
最初の研究では、トノサマガエルなど5種類のカエルで試しました。
Q2. What happened to the beetles with wax on their legs?脚をロウで固めた甲虫はどうなりましたか。
脚をロウで固めた15匹は、すべてカエルの体の中で死にました。
Q3. What did catfish do with many of the beetles?ナマズは多くの甲虫をどうしましたか。
ナマズの実験では、70%の甲虫が生きたまま吐き出されました。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Sugiura, S. (2020) Active escape of prey from predator vent via the digestive tract. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2020.06.026
- 2Sugiura, S. (2025) Effects of Predator Species and Size on Prey Escape Success Through the Digestive Tract. Ecology and Evolution 論文確認済みdoi:10.1002/ece3.72477
- 3Sugiura, S. (2026) Small prey fight back: post-capture defences shape prey–predator size relationships. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-026-39251-7
- 4Sugiura, S. & Sato, T. (2018) Successful escape of bombardier beetles from predator digestive systems. Biology Letters 論文確認済みdoi:10.1098/rsbl.2017.0647
- 5神戸大学(2020)プレスリリースkobe-u.ac.jp/ja/news/article/2020_08_04_01/
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





