ネコどうしが見せる表情は276種類。仲良しのときとけんか腰のときで、耳の動きが違った

猫カフェのネコ53匹を約1年観察すると、ネコどうしで見せる表情が276種類見つかった。仲良しのときは耳が前、けんか腰のときは耳を伏せる動きが多かった。

No.189 7分で読めるえっ度 論文 2025年
明るい室内のキャットタワーの上で、2匹の短毛のネコが顔を近づけている。1匹は耳を前に向けて目を閉じかけ、もう1匹はひげを前に出している。

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  1. 猫カフェのネコ53匹が、ネコどうしで276種類の表情を見せた
  2. 仲良しのときは、耳を前に向ける・目を閉じる動きが多かった
  3. けんか腰のときは、耳を伏せる・ひとみを細くする動きが多かった

人に話すなら

猫カフェのネコ53匹がネコどうしで見せる顔を、筋肉の動きで数えたら276種類もあったんだって。仲良しのときは耳を前に向けて、けんか腰のときは耳を伏せたり回したりするらしいよ。

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読む前に予想しよう

ネコどうしの表情を筋肉の動きで数えると、10種類にも満たない

ネコの顔は、犬にくらべて変化が分かりにくい。そう感じている人もいるでしょう。でも、ネコどうしが向き合っているときの顔を、筋肉の動き1つずつに分けて記録すると、話は変わります。

アメリカの研究チームは、ロサンゼルスの猫カフェで、53匹のネコがネコどうしで見せる顔を観察しました。約1年かけて撮影した映像から、相手に向けた顔の動きを書き出すと、形の違う表情が276種類見つかりました。そして、仲良くしているときと、けんか腰のときとで、使う筋肉の組み合わせが違っていました。

ネコの顔の研究は、これまで人とネコのやりとりや、痛みの表情が中心でした。ネコどうしの表情も、主にけんかの場面が調べられてきました。この研究は、ネコどうしが仲良くする場面の顔にも光を当てました。

01猫カフェは、ネコどうしのやりとりを観察できる場所だった

研究したのは、アメリカの2人の研究者です。ローレン・スコット(Lauren Scott)さんは、カンザス大学医療センターにいます。ブリタニー・フロルキエヴィッチ(Brittany Florkiewicz)さんは、アーカンソー州のライオン・カレッジにいます。結果は2023年に発表されました。

舞台は、ロサンゼルスの「キャットカフェ・ラウンジ」です。保護したネコの里親を探す、営利を目的としない団体で、2018年にできました。広い室内で、お客さんが里親募集中の20〜30匹ほどのネコとふれ合えます。たくさんのネコが同じ部屋でくらすので、ネコどうしのやりとりを観察できます。

観察したのは、オス26匹、メス27匹の大人のネコ53匹です。どのネコも毛の短いイエネコで、不妊・去勢の手術を受けていました。撮影は2021年8月から2022年6月まで続き、ネコどうしのやりとり186回分が記録されました。

02顔の動きを、筋肉ごとに書き出した

表情を数えるのに使ったのは、ネコ用の「顔の動きの記録方法」です。顔の筋肉の動きを1つずつ番号で表します。たとえば「耳を前に向ける」「耳を伏せる」「目を閉じる」「ひげを前に出す」が、それぞれ別の番号です。この方法を使えば、見た人の印象ではなく、どの筋肉が動いたかで表情を記録できます。

ただし、数えたのは「相手に向けた顔」だけです。体を相手のネコに向け、目をじっと相手に向けているときの顔の動きに限りました。たまたま顔が動いただけのものを、合図と区別するためです。1つの表情は、動きがいちばん大きくなった瞬間で記録しました。

やりとりは、そのときのほかの行動で2つに分けました。

  • 仲良し:毛づくろいし合う、くっついて休む、鼻をくっつけてにおいをかぐ、体をこすりつける、しっぽを立てる。
  • けんか腰:じっとにらむ、ゆっくり近づく、体をこわばらせる、毛を逆立てる、かむ、シャーッと言う、ひっかく、前足でたたく。
床の上で2匹のネコが向き合っている。1匹は耳を横に寝かせて伏せ、ひとみが細くなっている。もう1匹は体を少し低くして、相手をじっと見ている。

03表情は276種類。仲良しかけんか腰かで、組み合わせが違った

映像は、約3時間分(3.23時間)ありました。そこから見つかった形の違う表情は、276種類でした。1つ1つの表情は、いくつかの筋肉の動きの組み合わせでできています。

次に研究チームは、仲良しのときとけんか腰のときで、表情がどう違うかを比べました。研究チームは、2つの場面で表情の形に違いがあると予想していました。比べたのは、1つの表情に使う動きの数と、どの動きを組み合わせるかの2つです。結果、場面とはっきり結びついていたのは組み合わせのほうでした。動きの数ではありませんでした。

2024年に出た続きの研究が、この論文の結果を紹介しています。それによると、場面と結びついていた動きは次のとおりです。

  • 仲良しのときに多い:耳を前に向ける、両耳を寄せる、目を閉じる、ひげを前に出す。
  • けんか腰のときに多い:舌で口のまわりをなめる、耳を伏せる、耳を回す、ひとみを細くする。

04コンピューターでも、表情から場面を当てられた

2024年の続きの研究では、イスラエルのハイファ大学などのチームが、同じ映像を使いました。スコットさんとフロルキエヴィッチさんも加わっています。

チームはまず、筋肉の動きの記録から、そのやりとりが仲良しかけんか腰かをコンピューターに当てさせました。動きの順番も手がかりに入れると、77%を超える割合で当たりました。顔の目や耳などの位置をコンピューターが自動で測る方法では、68%でした。

もう1つ調べたのが、相手の表情をすぐにまねる「表情のうつり合い」です。ネコの場合、このうつり合いは、けんか腰のときより仲良しのときに多く見られました。特にうつりやすかったのは、耳を伏せる・耳を回すといった耳の動きでした。この2つは、けんか腰のときに多い動きです。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

ネコの顔の記録方法は、2017年にできた

この研究で使った記録方法は、イギリスのリンカーン大学などのチームが2017年に発表したものです。チームはネコの顔の動きを調べ、15種類の筋肉の動き、6種類のその他の動き、7種類の耳の動きに番号を付けました。

同じ論文で、チームはこの方法を保護施設のネコ106匹に使いました。知らない人と初めて会う場面を作り、顔や体の動きを記録したのです。そして、早く里親が決まったネコはどんな動きをしていたかを調べました。顔の動きは、里親が決まる早さと関係がありませんでした。関係していたのは、人に体をこすりつける回数でした。人は、ネコの細かな顔の動きより、はっきりした体の動きに心を動かされるようです。

人とネコの間では、ゆっくりしたまばたきが合図になっているらしい

イギリスのサセックス大学のチームは2020年、飼い主がネコに向かって、ゆっくりまばたきをする実験をしました。するとネコも、半分まぶたを閉じたり、目を細めたりすることが多くなりました。知らない実験者がゆっくりまばたきをしたあとは、ネコがその人に近づきやすくなりました。チームは、このゆっくりしたまばたきが、人とネコの間の好意的な合図になっているのかもしれないと考えています。ネコどうしの仲良しの場面で「目を閉じる」動きが多かったことと、つながる話かもしれません。

1匹でくらす祖先から、群れでくらすネコへ

ネコの祖先は、ほかの仲間と群れずにくらす野生のネコでした。一方、人のそばでくらすネコは、猫カフェや多頭飼いの家、外の大きな群れなど、仲間と一緒にくらすこともあります。研究チームは、人とくらすようになって仲間と過ごす機会が増え、仲良くするための顔の合図が多く使われるようになったのではないか、と考えています。

276種類は「見つかった数」にすぎない

フロルキエヴィッチさんたちは2025年、ネコの顔で動く29種類の動きから、ありうる組み合わせをすべて計算しました。その数は106万2719通りになりました。もちろん、すべてが実際に使われるわけではありません。それでも、276種類は約3時間の映像で見つかった数にすぎず、まだ記録されていない表情がたくさんあるかもしれない、と研究チームは書いています。

同じ方法で数えたチンパンジーの表情は、357種類と報告されています。数だけ見ると、ネコはチンパンジーに近く見えます。ただし、チンパンジーの映像は156.5時間、ネコの映像は3.23時間でした。撮影時間がこれほど違うので、研究チーム自身も、2つの数を直接比べることはできないと書いています。

ネコは表情を「わざと」使っているのか

2025年には、同じ研究者が加わったチームが、ネコの表情に「わざと」使っている証拠があるかを調べました。研究の世界で使われている9つの目安で、1つ1つの表情を調べています。ネコの表情は、何かの目的と結びついていることが多くありました。けんか腰の場面では、わざと使っているらしい目安が出やすくなりました。ただ、全体としては、わざと・使い分けているという目安は、あまり見られませんでした。276種類の表情が、それぞれ何を伝えているのかは、まだこれからの研究です。

05まとめ

ロサンゼルスの猫カフェで53匹のネコを観察すると、ネコどうしで見せる表情は276種類ありました。仲良しのときは耳を前に向けたり、目を閉じたり、ひげを前に出したりする動きが多く見られました。けんか腰のときは、耳を伏せたり回したり、ひとみを細くしたりする動きが多く見られました。

しかも276種類は、約3時間の映像で見つかった数です。ネコの顔は、私たちが思うよりずっと多くの動きを使い分けているのかもしれません。2匹のネコが顔を合わせたら、まず耳の向きに注目してみてください。

RESEARCH FILE

研究カルテ

アメリカ・ロサンゼルス

研究チーム
アメリカのカンザス大学医療センターのローレン・スコットさんと、ライオン・カレッジのブリタニー・フロルキエヴィッチさん
調べた場所
アメリカ・ロサンゼルスの猫カフェ「キャットカフェ・ラウンジ」
調べた動物
保護されて里親を待つ大人のネコ53匹(オス26匹・メス27匹、学名 Felis catus)
調べ方
ネコどうしのやりとりを撮影し、相手に向けた顔の動きを、ネコ用の顔の筋肉の記録方法で書き出した
分かったこと
表情は276種類。仲良しかけんか腰かで、使う筋肉の数は変わらず、組み合わせが違った
まだ分からないこと
1つ1つの表情の意味。理論上はもっと多くの組み合わせがありえ、まだ見つかっていない表情も多い
論文
Behavioural Processes(2023年)
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Cats Have Many Faces

Some people think cats do not change their faces much. Two scientists in the United States watched cats at a cat cafe in Los Angeles. They filmed 53 cats for almost a year.

They looked at the faces cats made at other cats. They wrote down each small move of the ears, eyes, mouth, and whiskers. In the end, they found 276 different faces.

Friendly cats often moved their ears forward or closed their eyes. Unfriendly cats often flattened their ears or made their pupils small. The number of moves was not very different. The mix of moves was different.

The scientists only had about three hours of face video. So cats may have even more faces. Next time, look at a cat's ears!

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. Where did the scientists watch the cats?研究者はどこでネコを観察しましたか。

Q2. How many different faces did they find?違う表情はいくつ見つかりましたか。

Q3. What did friendly cats often do?仲良しのネコがよくしたことは何ですか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Scott, L. & Florkiewicz, B. N. (2023) Feline faces: Unraveling the social function of domestic cat facial signals. Behavioural Processes 論文確認済みdoi:10.1016/j.beproc.2023.104959
  2. 2Martvel, G. et al. (2024) Computational investigation of the social function of domestic cat facial signals. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-024-79216-2
  3. 3Florkiewicz, B. N. et al. (2025) Examining Mammalian facial behavior using Facial Action Coding Systems (FACS) and combinatorics. PLOS ONE 論文確認済みdoi:10.1371/journal.pone.0314896
  4. 4Caeiro, C. C., Burrows, A. M. & Waller, B. M. (2017) Development and application of CatFACS: Are human cat adopters influenced by cat facial expressions? Applied Animal Behaviour Science 論文確認済みdoi:10.1016/j.applanim.2017.01.005
  5. 5Humphrey, T. et al. (2020) The role of cat eye narrowing movements in cat–human communication. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-020-73426-0
  6. 6Dickey, S. et al. (2025) Evaluating indicators of intentionality, flexibility, and goal-association in domestic cat (Felis silvestris catus) facial signals. Behavioural Processes 論文確認済みdoi:10.1016/j.beproc.2025.105244

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

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