「ヘビは耳が聞こえない」はウソ。ヘビ19匹に音を聞かせると、種類ごとに違う反応をした

防音室でヘビ19匹に低い音を聞かせると、音から離れる種類、動き回る種類など反応が分かれた。ただしヘビの聞こえる高さの範囲は人よりずっとせまい。

No.190 8分で読めるえっ度 論文 2023年
薄暗い部屋の木の床の上で、太く短い体に細い尾を持つデスアダーが、床に置かれた黒いスピーカーから離れる向きに、体をくねらせて這っている。ウソ
ウソ

判定の対象ヘビは耳が聞こえない

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  1. ヘビには耳の穴も鼓膜もないが、頭の奥に音を感じるしくみがある
  2. 低い音を流すと、音から離れる種類や、よく動く種類がいた
  3. 人と同じように「聞いて」いるのかは、まだ議論がある

人に話すなら

ヘビって耳の穴がないから音が聞こえないと思われてるけど、防音室で低い音を流したら、デスアダーは音から離れて、ウォマっていうニシキヘビの仲間はよく動き回ったんだって。

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ヘビは空気を伝わる音にまったく反応しない

ヘビの頭をよく見ると、目と鼻の穴はあっても、耳の穴が見当たりません。耳の穴の奥にあるはずの鼓膜もありません。そのため、「ヘビは耳が聞こえない」と言われることがあります。

2023年、オーストラリアのクイーンズランド大学などのチームが、防音室でヘビ19匹に低い音を聞かせる実験を、音を流さない回も入れて合わせて304回行いました。すると、音から離れるように動くヘビや、よく動き回るヘビがいました。反応のしかたは、ヘビのグループごとにはっきり違っていました。

ヘビの耳を調べた研究は、これまでもありました。ただその多くは、ヘビに薬を使って半分眠らせたり、かごにつるしたりして調べたものでした。ヘビが自由に動けるときに、音を聞いてどうふるまうのかは、ほとんど分かっていなかったのです。

01ヘビには鼓膜がない。でも、あごの骨につながった耳の骨がある

人の耳では、空気のふるえが鼓膜をゆらし、小さな骨を伝わって、頭の奥の「内耳」に届きます。内耳は、音を感じとる部分です。

ヘビには、外から見える耳も鼓膜もありません。けれど、内耳はあります。そして、人の耳の小さな骨の1つ(あぶみ骨)にあたる骨が、あごの骨につながっています。論文によると、音で頭がふるえると、この骨を通って内耳に信号が届くと考えられています。

ヘビが音に反応することは、前から報告がありました。2002年、アメリカのラファイエット大学の研究では、ガラガラヘビの仲間を金網のかごにつるし、床のゆれが伝わらないようにしました。そこに200〜400ヘルツの音を聞かせました。ヘルツは音の高さの単位で、数が小さいほど低い音です。すると、ヘビは体の動きを止めたり、舌を出す回数を減らしたり、尾を鳴らしたりしました。研究者は、ヘビが空気の音に行動で反応した初めての実験的な証拠だと書いています。

ただ、つるされたかごの中では、ヘビは逃げることも近づくこともできません。ヘビがふだんどおり動ける場所で、音にどう反応するのか。第一著者のクリスティーナ・ズデネク(Christina Zdenek)さんたちは、それを確かめることにしました。

02防音室の床で、19匹を自由に動ける状態にして音を流した

実験は2021年1月、オーストラリアのブリスベンにあるクイーンズランド工科大学の防音室で行われました。1月は南半球では夏で、ヘビがよく活動する時期です。部屋は一辺4.9メートルの正方形で、温度は27〜28度に保たれました。

ヘビは、飼育下で生まれた大人の19匹です。5つのグループ(属)に分かれます。

  • タイパン(コースタルタイパン)6匹。動き回ってえものをさがす毒ヘビ
  • ブラウンスネークの仲間3匹。人とよく出会う毒ヘビ
  • デスアダーの仲間5匹。じっと待ちぶせしてえものをとる毒ヘビ
  • ウォマ3匹。毒のないニシキヘビの仲間
  • ペイルヘッドスネーク2匹。木の上でくらす毒ヘビ

体の長さは、0.35メートルから2.2メートルまでありました。ヘビは実験の10日前に全員同じ日にエサをもらい、実験中はエサをもらいませんでした。体の中の毒の量の違いで、行動が変わらないようにするためです。

部屋の床の両側には、スピーカーが3台ずつ置かれました。ヘビは最初、底のない木の箱の中で30秒待ちます。箱は天井の滑車につながっていて、離れた場所から持ち上げられます。箱が上がると、30秒間、片側のスピーカーから音が流れるか、何も流れません。

流した音は、低さの違う3種類です。

  1. 0〜150ヘルツの、いちばん低い音
  2. 150〜300ヘルツの音
  3. 300〜450ヘルツの音

チームは、床のゆれも測りました。床に置いたスマートフォンの、ゆれを測るアプリ(加速度計)を使ったのです。すると、床がはっきりゆれたのは、いちばん低い0〜150ヘルツの音だけでした。スピーカーの下に音を吸う厚いスポンジを敷いても、このゆれは止まりませんでした。ほかの2つの音では、床のゆれは測れませんでした。

1匹のヘビは、3つの音と「無音」を4回ずつ聞きます。19匹で合わせて304回です。研究者は、ヘビがどの向きにどれだけ動いたか、舌を出した回数、体を止めて固まる、シューッと息を出す、頭を高く持ち上げる、などの行動を記録しました。

何もない四角い部屋の床で、天井からロープでつり上げられた底のない木の箱の下から、1匹のヘビが姿を見せている。部屋の両側の床に、黒いスピーカーが3台ずつ並んでいる。

03音から離れるヘビ、動き回るヘビ。反応はグループで分かれた

結果は、グループごとにまったく違いました。

デスアダーは、もともとほとんど動かないヘビです。それでも、0〜150ヘルツと150〜300ヘルツの音では、音の出るほうから離れる向きに動くことが増えました。150〜300ヘルツの音は、床のゆれが測れなかった音です。

タイパンは、150〜300ヘルツの音で、音から離れる向きに動くことが増えました。音を流すと、固まる、頭をすばやく振るなど、身を守ったり用心したりする行動も出やすくなりました。

ウォマは、3つの音のどれでも、動き回ることが増えました。300〜450ヘルツの音では、ほぼ毎回動きました。

ブラウンスネークの仲間は、その場でじっとしているか、大きく移動するかの、どちらかにはっきり分かれました。論文によると、野生のブラウンスネークに人が近づいたときも、約半分は逃げ、残りの多くはじっと動かずにいたという報告があります。

行動の組み合わせの違いのうち、89%ほどはヘビのグループの違いで説明できました。音の種類で説明できたのは、4%ほどでした。また、音を流すと、全体として舌を出す回数は減りました。

04「空気の音を聞いた」とまで言えるかは、まだ分からない

この実験で、ヘビが音に反応することは確かめられました。けれど、ヘビが何を感じとったのかには、まだ議論があります。

まず、床のゆれは、スマートフォンのアプリで測ったものでした。研究チーム自身も、デスアダーは平たいあごを床につけているので、機械では測れない小さなゆれを感じた可能性がある、と書いています。

次に、2012年のデンマークのチームの研究があります。チームは、ボールニシキヘビ11匹の脳の反応を測りました。ヘビがいちばん敏感だったのは、80〜160ヘルツの低い音とゆれでした。そして、ちょうど感じとれる大きさの音を流すと、ヘビの頭は、感じとれる大きさのゆれと同じか、それ以上にふるえていました。

この結果からチームは、ニシキヘビは空気の音の圧力そのものではなく、音で起きた頭のふるえを感じている、と考えました。つまり、ヘビは「聞こえない」わけではありません。ただ、人と同じしくみで聞いているとは限らないのです。

実験のやり方にも限界があります。記録した人は、音が流れているかどうかを知っていました。また、ヘビはすべて飼育下で育ったヘビでした。年をとったヘビほど音に反応しにくい傾向がありましたが、年齢のせいか、飼われた年月が長いせいかは区別できませんでした。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

同じ音でも、なぜ逃げるヘビとよく動くヘビがいるのか

著者たちは、ヘビを食べる敵の多さが関係しているかもしれないと考えています。ウォマは、長さ2.7メートル、重さ5キロほどにもなる大きなニシキヘビです。主に夜に活動します。夜は、タカやワシなど猛きん類(肉食の鳥)の多くが活動しない時間です。

一方、デスアダー、タイパン、ブラウンスネークの大人は、重さ40グラムから2キロほどと、ずっと軽いヘビです。昼にも活動し、オオトカゲや猛きん類、野生化したネコなど、敵がたくさんいます。音から離れる反応は、こうした敵から身を守るのに役立つのかもしれません。

また、待ちぶせ型のデスアダーは、もともと舌を出す回数も動く量も、いちばん少ないヘビでした。体の色で周りにまぎれ、じっと固まって見つからないようにする暮らし方と合っています。

研究の歴史:「ヘビは聞こえるか」は長く議論されてきた

これまでのヘビの耳の研究の多くは、1種類のヘビだけを調べたものでした。方法は主に2つです。1つは、薬で半分眠らせたヘビの脳や頭のふるえを測る方法です。もう1つは、かごにつるしたヘビの行動を見る方法です。

2002年のガラガラヘビの研究では、200〜400ヘルツの音を聞かせた試行の92%で、ヘビは少なくとも1つの反応を見せました。海にすむウミヘビの一種では、水中のスピーカーから流した40〜600ヘルツの音に反応したという報告もあります。そして2023年の研究で、自由に動けるヘビでも、音で行動が変わることが示されました。

人の耳とヘビの耳を比べる

論文によると、人の耳がいちばんよく聞こえるのは、2000〜5000ヘルツの音です。ヘビがよく感じる音より、10倍以上高い音です。鼓膜を持つ動物の仲間全体では、およそ10ヘルツから10万ヘルツまでの音が聞きとられていますが、ヘビが感じられるのは1000ヘルツより低い音だけだとされています。

論文は、ヘビにとって音を感じることは、えものをとるときや、敵が近づくのに気づくときに役立つかもしれないと書いています。ヘビをふみつぶしかねない大きな動物が近づくのを知る手がかりにもなる、という考えです。

方法の工夫と、残された課題

この研究の工夫は、防音室を使ったことと、ヘビを自由に動かしたことです。部屋のどちら側から音を流すかは毎回ランダムに決め、ヘビを試す順番もランダムにしました。床は1回ごとに、うすめた漂白剤でふきました。

一方で、ヘビの数は1つのグループで2〜6匹と少なめでした。著者たちは、野生のヘビでも同じ実験をすること、ヘビよけとして売られている、地面に埋める装置の効果を確かめることを、次の課題に挙げています。

05まとめ

ヘビには、耳の穴も鼓膜もありません。けれど、防音室で19匹のヘビに低い音を聞かせると、音から離れる、よく動き回る、固まるなど、グループごとに違う反応を見せました。「ヘビは耳が聞こえない」は、ウソです。

ただし、ヘビが感じられるのは、1000ヘルツより低い音だけだと考えられています。そして、空気の音そのものを感じているのか、音で起きた頭や床のふるえを感じているのかは、まだはっきりしていません。

床のゆれが測れなかった150〜300ヘルツの音でも、デスアダーは音の出るほうから離れる向きに動いていました。

RESEARCH FILE

研究カルテ

オーストラリア・ブリスベン

研究チーム
オーストラリアのクイーンズランド大学などのチーム(第一著者クリスティーナ・ズデネク)
調べた場所
オーストラリア・ブリスベンのクイーンズランド工科大学の防音室
調べた動物
飼育下で生まれた5つのグループ(属)のヘビ19匹。タイパン、デスアダー、ウォマなど
調べ方
高さの違う3種類の低い音と無音を、1匹に4回ずつ、計304回聞かせて行動を記録した
分かったこと
反応はグループで大きく違った。デスアダーやタイパンは音から離れ、ウォマはよく動いた
まだ分からないこと
ヘビが空気の音そのものを感じたのか、音で起きた頭や床のゆれを感じたのか
論文
PLOS ONE(2023年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Snakes Are Not Deaf

Snakes have no ear holes and no eardrums. So many people think snakes cannot hear. But they have an inner ear inside the head.

Scientists in Australia tested 19 snakes in a quiet room. They played three kinds of low sounds from speakers. They also had quiet times with no sound. In total, they watched the snakes 304 times.

Different groups of snakes acted in different ways. Death adders moved away from the sound more often. Woma pythons moved around much more. Taipans froze or moved their heads quickly more often.

Still, snakes may not hear the way we do. They only sense sounds lower than about 1,000 hertz. Another study says pythons may feel their heads shake from sound. So snakes are not deaf, but their hearing is very different from ours.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How many snakes did the scientists test?科学者たちは何匹のヘビを調べましたか。

Q2. What did woma pythons do when they heard the sounds?ウォマは音を聞いたとき、どうしましたか。

Q3. Which sounds can snakes sense?ヘビが感じられるのは、どんな音ですか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Zdenek, C. N. et al. (2023) Sound garden: How snakes respond to airborne and groundborne sounds. PLOS ONE 論文確認済みdoi:10.1371/journal.pone.0281285
  2. 2Christensen, C. B. et al. (2012) Hearing with an atympanic ear: good vibration and poor sound-pressure detection in the royal python, Python regius. Journal of Experimental Biology 論文確認済みdoi:10.1242/jeb.062539
  3. 3Young, B. A. & Aguiar, A. (2002) Response of western diamondback rattlesnakes Crotalus atrox to airborne sounds. Journal of Experimental Biology 論文確認済みdoi:10.1242/jeb.205.19.3087

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい