深海魚16種の皮ふは、当たった光の0.5%未満しかはね返さないほど真っ黒だった
深海魚16種の皮ふは、当たった光の0.5%未満しかはね返さなかった。黒い色素の粒が、すき間なく、光をよく吸う大きさと形でならんでいた。

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- 深海魚16種の皮ふは、光を0.5%未満しかはね返さなかった
- 黒い色素の粒が、すき間なく皮ふにならんでいた
- 粒の大きさと形が、光を吸うのにちょうどよかった
人に話すなら
深海魚の中には、当たった光の0.5%もはね返さない真っ黒な魚が16種もいたんだって。一番黒いアンコウの仲間は、人が作った真っ黒な素材と同じくらい黒いらしいよ。
読む前に予想しよう
深海で一番黒かった魚は、人が作った真っ黒な素材と同じくらい黒い
アンコウの仲間の反射は0.044%。炭素の細い筒で作った真っ黒な素材は0.045%だった。
深さ200mより深い海には、太陽の光がほとんど届きません。それでも、深海は真っ暗ではありません。自分で光を出す生き物がいるからです。その光は、近くにいる別の生き物の姿を照らし出してしまいます。
アメリカのデューク大学などのチームは、深海魚の皮ふがどれだけ光をはね返すかを測りました。すると、16種の魚の皮ふが、当たった光の0.5%未満しかはね返さないことが分かりました。一番黒い魚は0.044%で、炭素で作った人工の真っ黒な素材とほぼ同じでした。
ふつうの黒い紙は、当たった光の10%ほどをはね返します。深海魚の黒さは、それとはけた違いです。チームは、皮ふの中を顕微鏡で調べ、この黒さがどうやって生まれるのかも突き止めようとしました。
01深海では、透明な体や鏡のような体がかえって目立つ
海の生き物は、敵から隠れるためにいろいろな方法を使います。浅い海でよく見られるのは、体を透明にする方法と、体を鏡のように光らせる方法です。四方から光が来る浅い海では、どちらも背景にとけこめます。
ところが深海では、光は四方からではなく、生き物が出す光の束としてやって来ます。その光が体に当たると、鏡のような体は光を強くはね返します。白い体や鏡のような体は、当たった光の50%以上をはね返します。透明な体でも、0.4%より多くの光をはね返します。深海の生き物の目は、ほんのわずかな光でも感じ取ります。そのため、少しの反射でも見つかってしまうおそれがあります。
チームは、深海では光をできるだけはね返さない真っ黒な体が有利なのではないか、と考えました。そして、深海魚の黒さを実際に測ることにしたのです。
02船の上で、とれたての深海魚に光を当てて測った
研究したのは、アメリカのデューク大学の大学院生アレクサンダー・デイヴィス(Alexander Davis)さんたちです。研究は、デューク大学とスミソニアン国立自然史博物館が中心となって進めました。デューク大学のセンケ・ジョンセン(Sönke Johnsen)さんと、スミソニアンのカレン・オズボーン(Karen Osborn)さんも、中心となる著者です。
チームは、2018年6月にアメリカ西海岸のモントレー湾で、2019年6月にメキシコ湾で、調査船に乗りました。深さ2000mまでの海で網を引き、遠隔操作の潜水ロボットも使って、黒い深海魚を集めました。
とれた魚は、すぐに4〜6℃の冷たい海水に入れました。そして1時間以内に、船の上で皮ふの反射を測りました。光を出して、はね返ってきた光を受け取る細い管を、皮ふに直角に当てます。1匹につき3〜6か所を測りました。測った魚は、18種39匹です。
深海魚の皮ふはとても傷つきやすく、網で傷がつくことがよくあります。そこでチームは、傷の少ない場所を選んで測りました。

0316種が、当たった光の0.5%未満しかはね返さなかった
18種のうち16種は、青緑色の光(波長480ナノメートル)の反射が0.5%未満でした。この色の光は、深海に届くわずかな太陽の光と、多くの生き物が出す光の色に近いものです。チームは、0.5%未満を「超黒」と呼んでいます。
一番黒かったのは、ユメアンコウの仲間でした。反射はわずか0.044%です。これまでに知られていた特に黒い動物には、黒いチョウ(0.06〜0.5%)や、フウチョウという鳥の黒い羽(0.05〜0.31%)がありました。ユメアンコウの仲間は、そのチョウより黒く、最も黒いフウチョウと並ぶ黒さでした。人が作った特に黒い素材に、炭素でできた細い筒を立てて並べたものがあります。論文によると、その反射は0.045%です。
超黒の16種は、「目(もく)」と呼ばれる魚の大きなグループで分けると、7つのグループにまたがっていました。7つのグループの間には、色あざやかな魚や銀色の魚のグループがたくさんはさまっています。チームは、超黒は何度も別々に生まれたのかもしれないと考えています。
多くの種では、超黒の皮ふが体のほとんどをおおっていました。ただし、銀色の帯の上下だけが超黒の種もいました。また、おなかのまわりだけが超黒の種もいました。チームは、食べた獲物が体の中で光るのを隠すためかもしれないと考えています。
04黒い色素の粒が、すき間なく、ちょうどよい形で並んでいた
チームは、超黒の9種の皮ふを、電子顕微鏡などで調べました。皮ふのいちばん外側の層(表皮)のすぐ下に、メラノソームという粒がびっしりつまった層がありました。メラノソームは、メラニンという黒い色素をためた小さな粒です。
ふつうの黒っぽい魚では、色素を持つ細胞と細胞の間に、色のないすき間があります。ところが超黒の魚では、粒の層が切れ目なく続いていました。層の厚さは、平均7.9マイクロメートル(1000分の7.9mm)でした。
粒の形も変わっていました。7種で粒を測ると、大きさの平均は612ナノメートル(1000分の0.612mm)で、長さが幅の約2倍の細長い形でした。チームは、コンピューターで169通りの大きさと形の粒を並べ、光をどれだけはね返すかを計算しました。すると、大きさ600〜800ナノメートルで、長さが幅の1.5〜3倍の粒が、最も反射が小さくなりました。測った7種のうち5種の粒が、この範囲に入っていました。
チームは、計算の結果から次のように考えています。粒が光を横方向に散らすので、光は層の中で長い道のりを進みます。そのあいだにメラニンが光を吸いとるのです。背骨のある変温動物50種の黒や茶色の皮ふでは、粒は270〜550ナノメートルと小さめでした。
05反射が2%から0.05%になると、見つかる距離は約6分の1になる
超黒であることは、ただの黒に比べてどれだけ得なのでしょうか。チームは、敵に見つかる距離を計算で比べました。チームが使った計算のしかたでは、光が弱いとき、見つかる距離は、はね返る光の量の平方根に比例します。
計算すると、皮ふの反射を2%から1%に下げると、見つかる距離は29%短くなりました。0.5%なら50%、0.05%なら84%短くなります。つまり、反射0.05%の魚は、反射2%の魚に比べて、約6分の1の距離まで近づかれないと見つかりません。今回の魚は小さく、敵や獲物とのやりとりは近い距離で起きると考えられます。わずかな距離の差でも、結果を大きく変えるかもしれません。
チームは、光る突起で獲物をおびきよせる魚について、別の考えも出しています。超黒の皮ふは、自分の光で自分の体が照らされるのも防いでいるのかもしれない、というものです。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
深海の生き物の色は、ライトで照らされても見えにくい色だった
深海の生き物の色を調べる研究は、この論文の前からありました。ジョンセンさんは2005年、深海の約70種の色を測りました。海中をただよう種では、青緑色の光の反射がとても小さい値でした。わずかな太陽の光に合わせた色よりも、ライトで照らされたときに見えにくい色に近かったのです。深海では、太陽の光よりも、生き物が出す光のほうが見つかるかどうかを左右するらしい、とジョンセンさんは考えました。
深海の背骨のない動物には、赤い色のものが多くいます。深海には赤い光がほとんど届かないため、赤い体は黒く見えます。それでも2020年の論文は、赤い動物ではなく、本当に黒い魚を調べました。理由として、黒い体の表面は、真っ黒な人工の素材づくりのヒントになるかもしれないことを挙げています。
鳥やチョウの超黒は「目立つため」、魚の超黒は「隠れるため」
超黒は、フウチョウやチョウ、ハエトリグモでも見つかっています。これらの動物では、超黒の部分のとなりに、あざやかな色の部分があります。黒をより黒くすると、となりの色が引き立ちます。求愛などのアピールに使っていると考えられています。
フウチョウの羽では、羽の細かい枝がつくる立体的な形が、光を何度もはね返させて吸いとります。チョウでは、うろこの中の穴の多い細かい構造が光を吸います。ところが深海魚は、羽やうろこのような材料の構造を使っていません。色素の粒そのものが光を散らし、吸いとっていました。チームは、このしくみが新しい黒い素材づくりのヒントになるかもしれないと書いています。
この研究で、まだ確かめられていないこと
測った魚の多くは、網で引き上げられて、すでに死んでいたか、弱っていました。網で皮ふの表面が傷つくと、反射はむしろ大きく測られます。そのため、生きた魚は、測った値よりもさらに黒い可能性があるとチームは書いています。一方で、表面の傷のせいで、皮ふの表面にある別の工夫を見のがしたかもしれない、とも書いています。
見つかる距離が6分の1になるという話も、計算による見積もりです。生き物の出す光がどんな形で広がるかは分かっていません。そのため、何mで見つかるかという実際の距離は出せていません。論文の中では、敵が本当に見つけにくくなるかを確かめる実験はしていないのです。
06まとめ
深海魚16種の皮ふは、当たった光の0.5%未満しかはね返しませんでした。その黒さは、すき間なく並んだ色素の粒の層から生まれていました。粒の大きさと形は、光を吸うのにちょうどよい範囲に入っていました。計算では、反射0.05%の魚は、反射2%の魚に比べて、敵が約6分の1の距離まで近づかないと見つかりません。一番黒いユメアンコウの仲間は0.044%で、炭素の細い筒で作った人工の黒い素材の0.045%と並ぶ黒さでした。
研究カルテ
アメリカ・モントレー湾
- 研究チーム
- アメリカのデューク大学とスミソニアン国立自然史博物館などのチーム(第一著者アレクサンダー・デイヴィス)
- 調べた場所
- アメリカのモントレー湾とメキシコ湾。深さ2000mまでの海
- 調べた動物
- 深海魚18種39匹(そのうち16種が光を0.5%未満しかはね返さなかった)
- 調べ方
- 船の上で皮ふに光を当てて反射を測り、皮ふを顕微鏡で見た。色素の粒の形をコンピューターで再現した
- 分かったこと
- 黒い色素の粒が、すき間のない層を作っていた。粒の大きさと形が、光を吸うのに最適に近かった
- まだ分からないこと
- 本当に敵や獲物に見つかりにくくなっているのかは、まだ計算で見積もった段階
- 論文
- Current Biology(2020年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Very little sunlight reaches the deep sea. But some animals there make their own light. This light can show other animals to hungry hunters.
Scientists in the United States studied 39 black fish from the deep sea. On the ship, they shone light on the fish skin. Then they measured how much light came back. The skin of 16 kinds of fish sent back less than 0.5 percent of the light. Black paper sends back about 10 percent.
The scientists looked at the skin with a microscope. They found many tiny grains of black pigment. The grains were packed closely together with no gaps. Their size and shape were good for taking in light.
Very black skin may help these fish hide. The scientists used math to compare the fish. A hunter must come about six times closer to see the blackest fish. This is compared to a fish that sends back 2 percent of the light.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How many black fish did the scientists study?研究者たちは、黒い魚を何匹調べましたか。
18種39匹の黒い深海魚の皮ふを測りました。
Q2. How much light does black paper send back?黒い紙は、光をどれくらいはね返しますか。
黒い紙は約10%をはね返します。超黒の魚は0.5%未満でした。
Q3. What did the scientists find in the skin?研究者たちは、皮ふの中に何を見つけましたか。
メラニンをためた粒が、すき間なく並んでいました。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Davis, A. L. et al. (2020) Ultra-black Camouflage in Deep-Sea Fishes. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2020.06.044
- 2Johnsen, S. (2005) The Red and the Black: Bioluminescence and the Color of Animals in the Deep Sea. Integrative and Comparative Biology 論文確認済みdoi:10.1093/icb/45.2.234
- 3McCoy, D. E. et al. (2018) Structural absorption by barbule microstructures of super black bird of paradise feathers. Nature Communications 論文確認済みdoi:10.1038/s41467-017-02088-w
- 4Davis, A. L. et al. (2020) Diverse nanostructures underlie thin ultra-black scales in butterflies. Nature Communications 論文確認済みdoi:10.1038/s41467-020-15033-1
- 5Duke University(2020)Ultra-Black Skin Allows Some Fish to Lurk Unseentoday.duke.edu/2020/07/ultra-black-skin-allows-some-fish-lur
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





