血も骨も舌も緑色のトカゲがいる。緑の血は、4つの別々の家系でそれぞれ進化したらしい
ニューギニアのトカゲには、血も骨も舌も緑色の種がいる。緑の色素の量は、人で死者が出た量の14〜20倍。DNAを調べると、緑の血は4つの家系で別々に進化したらしい。

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- ニューギニアに、血も骨も舌も緑色のトカゲがいる
- 血の緑の色素は、人で記録された最高の量の14〜20倍
- 緑の血は、4つの家系で別々に進化したらしい
人に話すなら
ニューギニアには、血も骨も舌も緑色のトカゲがいるんだって。人なら死んじゃうくらいの量の色素が血に入ってるのに平気らしい。しかもその緑の血、別々の家系で4回も進化したらしいよ。
読む前に予想しよう
緑の血のトカゲは、みんな同じ1つの祖先から生まれた仲間である
DNAで家系図を作ると、緑の血のトカゲは4つの別々の家系に分かれていた。
血は赤い。ほとんどの人は、そう思っています。ところが、ニューギニア島の森には、血が黄緑色のトカゲがすんでいます。血だけではありません。筋肉も、骨も、舌も、体の内側をおおう粘膜も、あざやかな緑色です。
この緑色のもとは、血に流れる「ビリベルジン」という色素です。人の血にこの色素がたまると、体が黄色くなる「黄だん」になり、命にかかわることもあります。トカゲの血には、人で記録された最も高い量の14〜20倍ほどの色素が流れています。それでもトカゲは元気に暮らしています。
この不思議な緑の血は、いつ、どうやって生まれたのでしょうか。アメリカのルイジアナ州立大学などのチームは、トカゲのDNAを調べて家系図を作りました。すると、緑の血は1回だけ生まれたのではなく、別々の家系で4回進化したらしいと分かりました。
01緑色のもとは、古い赤血球が壊れるときにできる色素だった
ほとんどの背骨のある動物の血は、赤い色をしています。赤血球の中のヘモグロビンが赤いからです。この赤血球は、古くなると壊されます。そのとき、ヘモグロビンの一部が分解されてできるのが、緑色のビリベルジンです。体にとっては、いらなくなった物質です。
ふつうの動物では、ビリベルジンの仲間の色素は、血の中にはほとんど見つかりません。たまると、細胞や神経を傷つけるからです。論文によると、たまり続けると、神経に一生残る傷が出ることもあります。生まれたばかりの赤ちゃんや、肝臓の働きが弱い人では、この色素がたまりやすいことが知られています。
ところが、緑の血のトカゲの血では、ビリベルジンの量が、血1Lあたり714〜1020マイクロモルもありました。マイクロモルは、液体にとけている物質の量を表す単位です。人で記録された最も高い値は50マイクロモルで、その人は亡くなりました。トカゲの値は、その14〜20倍ほどです。どの動物で測られた値よりも高いと、論文は書いています。
トカゲの赤血球は、ちゃんと赤い色をしています。けれども、まわりの緑色が強すぎて、血全体が黄緑色に見えるのです。
02緑の血のトカゲは、血の色だけで1つの仲間にまとめられていた
緑の血のトカゲは、スキンク(トカゲ科)と呼ばれるトカゲの仲間です。緑の血を持つことが分かっている種は、名前のついたものが5種ありました。この5種は、これまで同じ1つのグループ(属)にまとめられていました。
ところが、この5種は、体の形も暮らし方もばらばらです。それなのに、血が緑色だという1点だけで、同じ仲間とされてきたのです。本当に1つの祖先から生まれた仲間なのか。それとも、別々のトカゲが、たまたま同じ緑の血を手に入れたのか。トカゲたちの家系をくわしく調べた研究は、それまでありませんでした。
03DNAを約5000か所読んで、トカゲの家系図を作った
研究したのは、ルイジアナ州立大学のザカリー・ロドリゲス(Zachary Rodriguez)さんと、クリストファー・オースティン(Christopher Austin)さんたちです。アメリカ自然史博物館のスーザン・パーキンス(Susan Perkins)さんも加わりました。オースティンさんは、パプアニューギニアで野外調査を行い、トカゲの組織を集めました。ほかの博物館からも、標本の組織を借りました。
調べたのは、オーストラリアやニューギニアなどのスキンク51種、119匹です。このうち緑の血のトカゲは6種24匹でした。6種のうち2種は、まだ名前のついていない新しい種です。残りの95匹は、血が赤いふつうの近い仲間です。
チームは、それぞれの組織からDNAを取り出しました。そして、陸にすむ背骨のある動物の間で、ほとんど変わらずに受けつがれている約5000か所の領域をねらって読みました。1匹あたり、平均2690か所の領域が読めました。たくさんの場所を比べることで、誰と誰が近い親せきなのかを、くわしく決められます。

04緑の血は、4つの家系で別々に進化したらしい
できあがった家系図を見ると、緑の血のトカゲは1つのまとまりになりませんでした。緑の血の種は、4つの別々の枝に分かれていたのです。
チームはさらに、祖先の血が何色だったかを計算で推定しました。家系図の上で、赤から緑、緑から赤への変化が何回起きたかを、何通りもの方法で計算したのです。どの方法でも、赤から緑への変化は平均で約4回でした。計算のやり方によって確かさに差はありましたが、祖先は赤い血だったという答えが多く出ました。
つまり、ふつうの赤い血のトカゲから、緑の血のトカゲが4回別々に生まれたらしいのです。体にとって毒になるはずの色素をためる性質が、何度もくり返し現れていたことになります。
もう一つ分かったことがあります。緑の血のトカゲの家系は、どれもニューギニアの種だけからなる枝の中にありました。チームは、緑の血のトカゲの仲間はニューギニアで生まれたと考えています。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
最初の報告は1969年の短い論文だった
緑の血のトカゲが科学の世界で知られたのは、1969年のことです。アメリカの科学誌「サイエンス」に、短い報告がのりました。南西太平洋の木の上で暮らすスキンク3種に、緑色の色素があるという内容でした。色は血の液体の部分、筋肉、骨にはっきり見えたと書かれています。その後、1994年には、色のもとがビリベルジンだと分かりました。色素は食べ物から来たものではないことも確かめられています。
「4回生まれた」には、別の見方も残っている
論文は、4回別々に生まれたという考えを最も支持しています。ただし、ほかの可能性を完全には消せていないとも書いています。1つは、緑の血が1回だけ生まれ、その後、赤い血にもどる変化が何回も起きたという見方です。どちらが正しいかは、緑の血に関わる遺伝子が見つかれば確かめられます。4回別々に生まれたなら、4つの家系で違う遺伝子の変化が見つかるはずです。1回なら、共通の変化が見つかるはずです。
なぜ緑の血を持つのかは、まだ分からない
緑の血が何の役に立つのかは、まだ分かっていません。2025年の論文は、これまでに出された考えをまとめています。敵にとってまずい味になる、緑の葉にまぎれる、紫外線を防ぐ、体温の調節に役立つ、などです。
2018年の論文が注目したのは、病気から身を守る働きです。ビリベルジンの仲間の色素には、病原体の働きを弱める作用が報告されています。また、少ない量なら、細胞を傷つける物質を消す働きもあるようです。けれども、2025年の論文によると、これらの考えはどれも、緑の血のトカゲではまだきちんと確かめられていません。
ほかの動物にも、緑の色素をためるものがいる
ビリベルジンが多い動物は、ほかにもいます。いくつかの魚では、血の液体の部分が緑色です。血の液体が緑色の魚では、ビリベルジンがたんぱく質と強く結びついて、血の中にとどまっています。そのため、体が傷つかずにすむのかもしれません。
カエルにも例があります。2020年、アルゼンチンやアメリカなどの研究者のチームは、骨などが青緑色になるカエルを調べました。そのカエルたちは、ビリベルジンと結びつく特別なたんぱく質を持っていました。この性質も、カエルの中で何度も別々に生まれていました。緑の色は、葉の上で目立たなくする役に立っていると、このチームは考えています。
05まとめ
ニューギニアには、血も筋肉も骨も舌も緑色のスキンクがいます。緑色のもとはビリベルジンという色素で、その量は人で記録された最も高い値の14〜20倍ほどです。ルイジアナ州立大学などのチームが51種119匹のDNAを調べると、緑の血のトカゲは4つの家系に分かれていました。緑の血は、赤い血の祖先から別々に4回生まれたらしいのです。人なら命にかかわる量の色素を血に流しながら、なぜトカゲが平気なのかは、まだ誰にも分かっていません。
研究カルテ
パプアニューギニア
- 研究チーム
- アメリカのルイジアナ州立大学とアメリカ自然史博物館のチーム(第一著者ザカリー・ロドリゲス)
- 調べた場所
- ニューギニア島(パプアニューギニア)で集めたトカゲと、各地の博物館の標本
- 調べた動物
- オーストラリアやニューギニアのスキンク51種119匹。そのうち緑の血は6種24匹(学名 Prasinohaema など)
- 調べ方
- 体の組織からDNAを取り出し、約5000か所の領域を読んで家系図を作った
- 分かったこと
- 緑の血のトカゲは1つのまとまりではなく、4つの家系で別々に緑の血が生まれたらしい
- まだ分からないこと
- 緑の血が何の役に立つのか。なぜ黄だんにならないのか
- 論文
- Science Advances(2018年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Most animals with a backbone have red blood. But some lizards in New Guinea have green blood. Their muscles, bones, and tongues are green, too.
The green color comes from a pigment in the blood. The body makes this pigment when old red blood cells break down. Too much of it can make people very sick. These lizards have 14 to 20 times more than the highest level found in a person. But the lizards are healthy.
Scientists in the United States studied the DNA of 119 lizards. The lizards were from 51 species. They made a family tree of these lizards. The green-blooded lizards were not one close family. Green blood probably started four different times.
Nobody knows why these lizards have green blood. We also do not know how they stay healthy. The answer may help doctors in the future.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. What parts of these lizards are green?このトカゲの体のどこが緑色ですか。
血だけでなく、筋肉・骨・舌も緑色に見えます。
Q2. How many lizards did the scientists study?研究者たちは何匹のトカゲを調べましたか。
51種119匹のDNAを調べて、家系図を作りました。
Q3. How many times did green blood probably start?緑の血は、たぶん何回生まれましたか。
家系図から、緑の血は4回別々に生まれたらしいと分かりました。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Rodriguez, Z. B. et al. (2018) Multiple origins of green blood in New Guinea lizards. Science Advances 論文確認済みdoi:10.1126/sciadv.aao5017
- 2Greer, A. E. & Raizes, G. (1969) Green Blood Pigment in Lizards. Science 論文確認済みdoi:10.1126/science.166.3903.392
- 3Probst, T. S. et al. (2025) The first de novo genome assembly and annotation of a green-blooded skink (Prasinohaema aff. flavipes) from a historic museum sample. Journal of Heredity 論文確認済みdoi:10.1093/jhered/esaf014
- 4Taboada, C. et al. (2020) Multiple origins of green coloration in frogs mediated by a novel biliverdin-binding serpin. PNAS 論文確認済みdoi:10.1073/pnas.2006771117
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