体長1cmのカエルは跳ぶと3回に1回あお向けに落ちる。耳の奥の管が小さすぎるらしい
ブラジルの体長1cmほどのカエルは、跳ぶと空中で回り、3回に1回ほどあお向けに落ちた。体の回転を感じる耳の奥の管が小さすぎるためらしい。

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- 体長1cmほどのカエルは、跳ぶと空中で回ってしまう
- 跳んだうち3回に1回ほどは、あお向けに着地した
- 回転を感じる耳の奥の管が、小さすぎて働きにくいらしい
人に話すなら
ブラジルにいる体長1センチくらいのカエルって、跳ぶと空中でくるっと回って、3回に1回はあお向けに落ちるんだって。体が回ったことを感じる耳の奥の管が小さすぎて、うまく働かないらしいよ。
読む前に予想しよう
体がとても小さいカエルは、跳んだあと空中で回ってしまい、うまく着地できないことが多い
ブラキケファルスは跳んだ回数の35%であお向けに落ちた。
カエルといえば、ぴょんと跳んで、前脚からすっと着地する動物です。ところが、ブラジルの森には、それができないカエルがいます。跳ぶと空中でくるりと回り、横向きやあお向けで地面に落ちてしまうのです。
アメリカの南イリノイ大学エドワーズビル校のリチャード・エスナー(Richard Essner)さんたちは、このカエルが跳ぶ様子を高速カメラで撮りました。くわしく調べた115回のジャンプのうち、35%はあお向けの着地でした。原因として研究チームが考えたのは、耳の奥にある「体が回ったことを感じる管」です。この管が、大人の背骨のある動物の中で、これまでに測られた最も小さいものだったのです。
体が小さくなると、体の中のしくみも小さくなります。けれども、管の中を液体が流れるしくみには、物理の決まりがあります。管を細くしすぎると、液体はほとんど流れなくなります。体を小さくする進化には、バランスの感覚という点で限界があることを、この研究は示しました。
01ブラジルの落ち葉の下に、体長1cmほどのカエルがいる
主役は、ブラキケファルスというカエルのなかまです。英語では「パンプキン・トードレット(カボチャ色の小さなヒキガエル)」などとよばれます。ブラジルの大西洋岸の森で、地面に積もった落ち葉の下にくらしています。
このなかまは、とても小さいことで知られています。研究で測った標本には、鼻先からおしりまでの長さが8〜11ミリほどのものが並んでいました。2024年には、大人で6.95ミリの個体が見つかった新しい種も報告されています。ブラキケファルスには、大人になっても1cmに届かない種がいくつもあります。
体の色は種によって違います。オレンジや黄色のはでな種は、毒を持っていることを敵に知らせていると考えられています。茶色のじみな種は、落ち葉にまぎれて身をかくします。どちらも、すばやく逃げるより、目立たないか、まずそうに見せることで身を守っているようです。
02体が回ったことは、耳の奥の管を流れる液で感じている
わたしたちが目を閉じていても頭が回ったことが分かるのは、耳の奥に「三半規管」があるからです。三半規管は、たがいに直角に向いた3本の輪の形の管です。中は液体で満たされています。頭が回ると、管の中の液体が少し遅れて動き、そこにある細い毛をたおします。その信号が脳に送られ、体がどちらに回ったかが分かります。
管の中を流れる液体には、「ポアズイユの法則」という物理の決まりがあてはまります。流れやすさは、管の半径の4乗に比例します。つまり、半径が半分になると、流れやすさは16分の1になります。管が細くなるほど、液体はかべにじゃまされて動きにくくなるのです。
背骨のある動物の三半規管は、体の大きさのわりにあまり大きさが変わりません。論文によると、ヒゲクジラの三半規管でさえ、ほ乳類の中でふつうの大きさにすぎません。逆に、とても小さな動物では、頭の大きさが管の大きさの上限になってしまいます。
03147種のカエルの標本をCTで撮り、管の太さを比べた
研究チームはまず、カエルの耳の奥を調べました。使ったのは、博物館などに保管されている標本です。147種、54のなかま(科)のカエルの標本151体をCTで撮り、三半規管の形を立体で取り出しました。この中には、世界最大のカエルであるゴライアスガエルから、最も小さいカエルたちまでが入っています。
管の輪の大きさと、管の太さ(半径)を測りました。その結果、ブラキケファルスと、ペドフリネという別の小さなカエルのなかまの三半規管は、大人の背骨のある動物で、これまでに記録された中で最も小さいものでした。
ただし、小さなカエルの三半規管は、ただ小さいだけではありませんでした。体が小さいカエルほど、頭の大きさのわりに大きな三半規管を持っていました。頭も、体の大きさのわりに大きめでした。研究チームは、それでも管が十分な大きさに届いていないと考えています。
04高速カメラで撮ると、空中で回って横やあお向けに落ちた
次に、生きたカエルが跳ぶ様子を調べました。研究チームはブラジルの森でカエルを集め、パラナ連邦大学に運びました。ブラキケファルス4種の11匹と、近いなかまでふつうの大きさのカエル1種の2匹です。調べ終わったカエルは、集めた場所にもどしました。
カエルを囲いの中で跳ばせ、1秒に1057コマ撮れる高速カメラで上から撮りました。横に45度かたむけた鏡を置き、上と横からの姿を1台のカメラで同時に撮れるようにしました。
ふつうの大きさのカエルは、空中で後ろ脚をたたみ、前脚から着地しました。ところがブラキケファルスは違いました。後ろ脚をのばしたまま飛び、空中で体が前後や左右に回りました。すべらずに体の長さの2倍以上跳んだ115回を数えると、次のようになりました。

研究チームは、さらに23のなかま(属)のカエル38種の跳び方を撮って比べました。22のなかまでは、着地が終わる前に後ろ脚をたたみ始めていました。ただ一つの例外がブラキケファルスで、着地が終わって平均67ミリ秒(0.067秒)たってから、やっと後ろ脚をたたみ始めました。後ろ脚をたたむタイミングを一番よく説明できたのは、体の大きさでした。
05三半規管をこわされたカエルと、跳び方がよく似ていた
このおかしな跳び方は、本当に三半規管のせいなのでしょうか。研究チームは、昔の実験と比べました。三半規管などのバランスの器官をこわされたカエルやヒキガエルは、跳ぶと空中で回り、後ろ脚をのばしたまま落ちることが知られています。ブラキケファルスの跳び方は、この様子とよく似ていました。
研究チームは、空中での体の回り方も計算しました。1種のカエルの8回のジャンプを調べると、体が回るいきおいの変化は、地面をけるときより空中のほうがずっと小さくなっていました。管が小さく感度が低いカエルにとって、空中の小さな回転は特に感じとりにくいと考えられます。
ほかの説明も一つずつ確かめました。ブラキケファルスは、足の指のうち働くものが5本から3本に減っています。後ろ脚も短めです。これで跳ぶときに体が回りやすくなるかもしれません。でも、足がすべったのは約10%で、ほかのカエルと変わりませんでした。
身を守るための演技の可能性も調べました。いちばん近いなかまのカエルや、ブラキケファルスの1種では、あお向けになって死んだふりをすることが報告されています。しかし、この研究で調べたブラキケファルスでは、死んだふりは一度も見られませんでした。あお向けに落ちると、すぐに起き上がろうとしました。研究チームは、三半規管がうまく働かないことが、すべてを一番うまく説明できると結論しました。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
小さくなる進化には、物理の壁がある
カエルの小型化は、世界の雨の多い森の落ち葉の中で、何度も別々に起きてきました。小さければ、落ち葉のすき間を住みかにでき、小さな虫を食べてくらせます。研究チームは、こうした得と引きかえに、バランスの感覚という損を負っていると考えています。
三半規管の太さは、ポアズイユの法則で効き目が決まります。管の半径が4乗で効くので、少し細くなるだけで、液体はぐっと流れにくくなります。物理の決まりなので、ブラキケファルスだけでなく、関係の遠いほかの小さなカエルでも同じことが起きているはずだ、と研究チームは予想しています。
三半規管がうまく働かなくても、ゆっくり歩けば困りにくい
三半規管がうまく働かないと、速い動きのときに困ります。カエルで三半規管の一部をこわす実験では、ゆっくりはうときにはほとんど影響がなく、速くはうときに影響が大きく出ました。ブラキケファルスは、ふだんはゆっくり歩いて移動します。マダガスカルの小さなカエルなど、ほかの小さなカエルにもゆっくり歩くものが多く報告されています。
ゆっくりしか動けない小さな動物は、敵に見つかると逃げきれません。研究チームは、だから小さなカエルの多くが、毒・骨の板・目立つ色・目立たない色などで身を守っているのだろうと考えています。ブラキケファルスのなかまには、そのどれもが見られます。
古いカエルのなかまも、着地がへた
実は、今いるカエルの中で最も古くに分かれたなかまも、着地をうまくコントロールできません。2億年以上前に分かれたなかまで、着地を上手にする跳び方が生まれる前の姿を残していると考えられています。そこで研究チームは、このなかまの三半規管も測りました。すると、体の大きさに見合ったふつうの大きさでした。ブラキケファルスに近いなかまのカエルは、ふつうに着地できます。研究チームは、ブラキケファルスの着地のへたさは昔の名残ではなく、体が小さくなってから失ったものだと考えています。
この研究の限界
研究チームは、管の中の液体の動きや、神経の信号を直接測ったわけではありません。管の太さは、CTで見える骨の管から測りました。液体が流れる本当の管はもっと細いので、実際の感度はもっと低いはずだ、と論文は書いています。また、跳び方を撮った種のうち2種は、それぞれ1匹しか調べていません。研究チームも、足の指の少なさや脚の短さなど、ほかの原因が一部効いている可能性は消せないとしています。
06まとめ
ブラジルの体長1cmほどのカエル、ブラキケファルスは、跳ぶと空中で回り、115回のうち35%であお向けに着地しました。体の回転を感じる三半規管が、大人の背骨のある動物で最も小さく、中の液体がうまく流れないためだと考えられています。管の中を直接測ったわけではないので、ほかの原因が少し加わっている可能性も残ります。
それでもブラキケファルスは、ゆっくり歩き、毒や目立たない色で身を守って生きています。わたしたちが目を閉じていても頭が回ったことが分かるのは、耳の奥の管が十分に太いおかげです。
研究カルテ
ブラジル・パラナ州クリチバ
- 研究チーム
- アメリカの南イリノイ大学エドワーズビル校のリチャード・エスナーさん、ブラジルのパラナ連邦大学などのチーム
- 調べた場所
- ブラジルの森でカエルを集め、パラナ連邦大学の実験室で撮影した
- 調べた動物
- CTで調べたカエル147種の標本と、跳び方を撮ったブラキケファルス属のカエル4種(学名 Brachycephalus)
- 調べ方
- 標本をCTで撮って耳の奥の管の大きさを測り、生きたカエルが跳ぶ様子を高速カメラで撮った
- 分かったこと
- 管は大人の背骨のある動物でこれまでに記録された中で最も小さく、跳ぶと空中で回って着地に失敗した
- まだ分からないこと
- 管の中の液の動きを直接測ってはいない。足の指の少なさなど、ほかの原因も少しは効いているかもしれない
- 論文
- Science Advances(2022年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Some frogs in Brazil are only about one centimeter long. They live under dead leaves on the forest floor. Most frogs jump and land on their front legs. These tiny frogs often turn over in the air.
Scientists filmed the frogs with a very fast camera. In 35 percent of the jumps, the frogs landed on their backs. They did not fold their back legs in the air.
Deep inside our ears, we have small tubes filled with liquid. When the head turns, the liquid moves and tells the brain. The scientists scanned the ears of 147 kinds of frogs. The tubes of the tiny frogs were the smallest ever found in adult animals with backbones.
In very thin tubes, liquid cannot move easily. So the frogs probably cannot easily feel their bodies turn in the air. They usually walk slowly instead.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How long are these frogs?このカエルの体長はどのくらいですか。
ブラジルの森にいる、体長1cmほどのとても小さなカエルです。
Q2. In what percent of the jumps did the frogs land on their backs?跳んだうちの何%で、カエルはあお向けに着地しましたか。
くわしく調べた115回のジャンプのうち、35%があお向けの着地でした。
Q3. What is inside the small tubes in the ear?耳の中の小さな管には何が入っていますか。
管の中の液体が動くことで、頭が回ったことが分かります。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Essner, R. L. et al. (2022) Semicircular canal size constrains vestibular function in miniaturized frogs. Science Advances 論文確認済みdoi:10.1126/sciadv.abn1104
- 2Florida Museum of Natural History(2022)Miniature frogs set record as first vertebrates to lose the ability to balancefloridamuseum.ufl.edu/science/miniature-frogs-set-record-as-
- 3Toledo, L. F. et al. (2024) Among the world's smallest vertebrates: a new miniaturized flea-toad (Brachycephalidae) from the Atlantic rainforest. PeerJ 論文確認済みdoi:10.7717/peerj.18265
- 4Goutte, S. et al. (2017) Evidence of auditory insensitivity to vocalization frequencies in two frogs. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-017-12145-5
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