世界一高い木にすむサンショウウオは、飛びおりると手足を広げて落ちる速さを最大1割おさえた

高い木の上にすむサンショウウオは、飛びおりると手足を広げ、落ちる速さを最大1割おさえた。体をくねらせて、ななめに滑空することもあった。

No.217 7分で読めるえっ度 論文 2025年
霧のかかった高いセコイアの森で、茶色の小さなサンショウウオが、腹を下にして4本の脚を大きく広げ、長い尾を少し曲げて、こずえから空中へ落ちていく。前足の指は4本、後ろ足の指は5本で、指先は少し四角く広がっている。下には太い枝とシダのかたまりが見える。

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  1. 高い木の上にすむサンショウウオは、おどろくと枝から飛びおりる
  2. 手足を広げた姿勢で、落ちる速さを最大1割おさえた
  3. 木にあまり登らない仲間は、空中でじたばたするだけだった

人に話すなら

アメリカの超高い木の上にすむサンショウウオは、びっくりすると枝から飛びおりるんだって。手足を広げてスカイダイビングみたいな姿勢をとって、ななめにすべるように落ちるらしいよ。

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読む前に予想しよう

木の上にすむサンショウウオは、落ちるときに手足を広げて姿勢を保つ

サンショウウオと聞くと、水辺や湿った地面をのそのそ歩く姿を思い浮かべるかもしれません。ところが、アメリカ西海岸には、地上から何十mも高い木の上で一生を過ごすサンショウウオがいます。しかもこのサンショウウオは、おどろくと枝から空中へ飛びおります。

アメリカの南フロリダ大学などのチームは、このサンショウウオを、下から風をふき上げる装置に入れました。サンショウウオは、手足を広げたスカイダイバーのような姿勢をとり、落ちる速さを最大で1割おさえました。58%の試行では、体をくねらせて、ななめに滑空しました。

空を飛ぶ動物の多くは、羽や、手足の間の膜など、空気を受ける特別なつくりを持っています。このサンショウウオには、そうしたものが何もありません。姿勢だけで、落ち方を変えていたのです。

01地上数十mのシダの中で一生を過ごすサンショウウオ

主役は、ワンダリングサラマンダーという、肺のないサンショウウオの仲間です。大きさは鼻先から尾の先まで約10cm、体重は5gほどです。すんでいるのは、カリフォルニア州北部の海沿いに生えるセコイア(コーストレッドウッド)の森です。セコイアは世界一背が高くなる木で、いちばん高いものは約116mあります。

すみかは、幹から枝が分かれる場所にたまった、シダや腐った葉のかたまりの中です。地上45m以上の高さで一生を過ごし、高さ88mのこずえで見つかった記録もあります。研究者がロープで木に登って、印をつけて調べる研究が20年続けられてきました。その結果、印をつけたサンショウウオの多くが、何年たっても同じ木にいたことが分かっています。印をつけたサンショウウオが地面で見つかることはまれで、見つかったものの多くは死んでいました。

研究の中心になったのは、南フロリダ大学の大学院生だったクリスチャン・ブラウン(Christian Brown)さんです。ブラウンさんは、木の上でこのサンショウウオを調べるうちに、あることに気づきました。印をつけようと手に取ると、すぐに手から飛び出してしまうのです。枝を軽くたたいたり、近くを影が通ったりしただけでも、サンショウウオはあっさり枝から飛びおります。高さ60mほどの同じ枝から、2匹が飛びおりたのも見られています。そんな高さから落ちて、サンショウウオはどうなるのでしょうか。

02下から風をふき上げる装置で、落ちる姿を再現した

ブラウンさんは、カリフォルニア大学バークレー校のロバート・ダドリー(Robert Dudley)さんに誘われました。ダドリーさんの研究室にある風洞を使うためです。風洞とは、人工的に風を起こして、物や動物に風を当てる装置です。使ったのは、下から上へ風をふき上げる縦型の風洞です。

落ちている物は、まわりの空気が下から上へ流れていくのと同じ状態にあります。そこで、サンショウウオを上向きの風の中にそっと押し出すと、空中を落ちている状態を再現できます。風の速さを秒速8.6〜10.6mに合わせると、サンショウウオは筒の中で宙に浮いたままになりました。その姿を、1秒に400コマ撮れるカメラで3つの方向から撮影しました。

比べたのは、肺のないサンショウウオの仲間4種です。主役のワンダリングサラマンダーと、背の低いカシの木などにすむ近い仲間。それに、ときどき木に登る仲間と、地面の落ち葉の中で暮らすエンサティナという種です。それぞれおとな5匹を、1匹につき9回、風洞に入れました。

透明な縦長の筒の中で、下から風がふき上がり、小さなサンショウウオが腹を下にして4本の脚を広げ、宙に浮いている。横と下から、カメラがその姿をねらっている。

03木の上の2種は、手足を広げて落ち方を変えた

風洞の中のワンダリングサラマンダーは、腹を下にして手足を大きく広げました。スカイダイバーと同じような姿勢です。この姿勢で、落ちる速さを最大で10%おさえました。パラシュートのように、ゆっくり落ちたのです。

さらに、尾と胴体を上下にくねらせることで、真下ではなくななめに落ちることもできました。こうした滑空は、試行の58%で見られました。落ちる角度は、真下から約5度ずれていました。わずかな角度ですが、高い所から落ちれば、横に進む距離は長くなります。

背の低い木にすむ近い仲間も、ほぼ同じくらい上手に落ち方を変えました。一方、木にあまり登らない2種は、空中で手足をばたつかせるだけでした。エンサティナは、空中でくるくる回ってしまうこともありました。木の上で暮らす2種は、一度もばたつきませんでした。木の上で暮らす度合いが高い種ほど、空中での姿勢の保ち方がうまかったのです。

風洞の中では、サンショウウオが壁にぶつかって、さかさまになることもありました。そこから元の姿勢にもどるまでは、平均0.116秒でした。手足を動かしてから、体の向きが変わり始めるまでは、わずか0.04秒ほどでした。

043mの高さから200回落として、着地まで確かめた

チームは、風洞とは別に、着地の様子も確かめました。ワンダリングサラマンダー5匹を、それぞれ40回ずつ、高さ3mから羽毛のふとんの上に落としたのです。合計200回のうち185回(92.5%)で、サンショウウオはスカイダイビングの姿勢を保ちました。96%では、腹から着地しました。

木の板から自分でジャンプさせる実験も、60回行いました。そのうち50回は、きれいに飛びおりることができました。

チームは、セコイアのこずえの枝の間隔と、風洞で測った落ち方から計算しました。真下から約5度ずれる角度と、秒速0.7mほどの横向きの速さがあるとします。すると、多くの場所から、元の木の幹や近くの枝にたどり着けるという結果でした。落ちても地面まで行かずに、木にもどれるのかもしれません。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

「木に登るため」の体が、空中でも役立つのか

ワンダリングサラマンダーと、背の低い木にすむ近い仲間は、体の大きさのわりに長い脚と指、大きな足を持っています。これらは、木に登るための特徴だと考えられてきました。チームは、この長い脚と、よく動く尾が、落ちるときの姿勢づくりにも役立っているのかもしれないと考えています。

2023年、ブラウンさんたちは、コンピューターの上でサンショウウオの体の形を再現し、空気の流れを計算しました。地面で暮らすエンサティナと比べると、ワンダリングサラマンダーは体が平たく、脚が長く、体のわりに足の面積が大きいことが分かりました。体を持ち上げる力の大きさを表す値は、ワンダリングサラマンダーで約0.02、エンサティナではほぼ0でした。小さな形の違いが、空中での動きを左右しているようです。

指先の「血のクッション」

ワンダリングサラマンダーなどの指先は、四角く広がった形をしています。2025年の研究では、この指先に、大きな血のたまり場があることが調べられました。生きたサンショウウオを透明な板の上に乗せて観察すると、立つ、歩く、しがみつくときの力のかかり方によって、血のたまり方が変わりました。チームは、指先の血をためたり流したりして、木にくっつく力やはなれやすさを調節しているのではないかと考えています。滑空のあとに着地するときにも役立つかもしれないと書いています。

特別なつくりがなくても、空中で動ける動物たち

空中で落ち方を変える動物には、トビトカゲやモモンガ、トビヤモリのように、皮ふの膜などを持つものがいます。一方で、そうした目立ったつくりを持たない小さな動物もいます。チームは論文の中で、アリやクモ、アノールというトカゲの仲間などを挙げています。ワンダリングサラマンダーも、そうした動物の1つに加わりました。

野生で本当に滑空しているのかは、まだ分からない

ただし、この研究には限界があります。風洞の中で浮いていられる時間は、長くて10秒ほどです。木から元の幹にもどれるという計算も、落ち始めてすぐに安定した滑空に入れると仮定しています。実際に飛びおりたサンショウウオは、まず姿勢を整える時間が必要です。チームは、野生でどれくらいこの行動が起きているかは、まだ確かめられていないと書いています。ダドリーさんは、「これがどのくらいの頻度で起きているのか、そしてどうすればそれが分かるのか」と問いかけています。

05まとめ

アメリカのセコイアのこずえにすむワンダリングサラマンダーは、おどろくと枝から飛びおります。風洞で調べると、手足を広げた姿勢で落ちる速さを最大1割おさえ、58%の試行ではななめに滑空しました。木にあまり登らない仲間は、空中でじたばたするだけでした。翼も膜もない、尾まで入れて10cmほどのサンショウウオが、地上60mほどの枝からでも、姿勢だけを頼りに飛びおりることがあるのです。

RESEARCH FILE

研究カルテ

アメリカ カリフォルニア州 ハンボルト郡

研究チーム
アメリカの南フロリダ大学とカリフォルニア大学バークレー校のチーム(第一著者クリスチャン・ブラウン)
調べた場所
カリフォルニア大学バークレー校の縦型の風洞(サンショウウオはカリフォルニア州北部で採集)
調べた動物
ワンダリングサラマンダー(学名 Aneides vagrans)と、近い仲間3種
調べ方
下から風をふき上げる装置にサンショウウオを入れ、1秒に400コマの動画で姿勢と動きを調べた
分かったこと
手足を広げて落ちる速さを最大1割おさえ、58%の試行ではななめに滑空した
まだ分からないこと
野生のサンショウウオが、実際にどれくらい飛びおりて滑空しているのか
論文
Current Biology(2022年)
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英語で読んでみよう

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Salamanders That Skydive From Tall Trees

Some salamanders live high up in the tallest trees in the world. They live in California, in the USA. They are about 10 centimeters long. When they are surprised, they often jump off the branch.

Scientists put the salamanders in a wind tunnel. The wind blew up from below, so the salamanders stayed in the air. They spread their legs like a skydiver. This slowed their fall by up to 10 percent.

They also moved their bodies and tails up and down. Then they glided at an angle in 58 percent of the tests. Salamanders that do not climb much did not do this well.

These salamanders have no wings and no special skin for flying. They use only the position of their bodies. But we still do not know how often they glide in the wild.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How long are the salamanders?このサンショウウオの体長はどれくらいですか。

Q2. How much did the skydiving position slow their fall?スカイダイビングの姿勢で、落ちる速さはどれくらいおさえられましたか。

Q3. What do we still not know?まだ分かっていないことは何ですか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Brown, C. E. et al. (2022) Gliding and parachuting by arboreal salamanders. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2022.04.033
  2. 2Brown, C. E. et al. (2022) Aerial maneuvering by plethodontid salamanders spanning an arboreality gradient. Journal of Experimental Biology 論文確認済みdoi:10.1242/jeb.244598
  3. 3University of California, Berkeley(2022)Skydiving salamanders live in world's tallest treesnews.berkeley.edu/2022/05/23/skydiving-salamanders-live-in-w
  4. 4Brown, C. E. & Kirk, A. M. (2023) Characterizing lift, drag, and pressure differences across wandering salamanders (Aneides vagrans) with computational fluid dynamics to investigate aerodynamics. Journal of Morphology 論文確認済みdoi:10.1002/jmor.21583
  5. 5Brown, C. E. et al. (2025) Vascular and Osteological Morphology of Expanded Digit Tips Suggests Specialization in the Wandering Salamander (Aneides vagrans). Journal of Morphology 論文確認済みdoi:10.1002/jmor.70026

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい