足のない両生類アシナシイモリの母は、卵からかえった子に2か月、乳を飲ませていた
南米の土の中にすむアシナシイモリの母は、卵からかえった子に、脂肪の多い乳を2か月飲ませていた。乳は卵を運ぶ管の腺で作られていた。

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- アシナシイモリの一種の母は、おしりの出口から乳を出していた
- 卵からかえった子は、2か月ほどこの乳を飲んで育った
- 乳は脂肪と炭水化物が多く、卵を運ぶ管の腺で作られていた
人に話すなら
足のない両生類のアシナシイモリって、母親が子に乳を飲ませるんだって。子が母親のおしりのほうに集まって鳴くと、乳が出てくるらしいよ。
読む前に予想しよう
卵を産む両生類で、子に乳を飲ませるものが見つかった
南米のアシナシイモリの一種の母は、おしりの出口から乳を出し、子は2か月飲んでいた。
乳を出して子を育てるのは、哺乳類の大きな特徴です。ところが、卵を産む両生類にも、子に乳を飲ませる母がいました。南米の土の中にすむ、足のない両生類のアシナシイモリです。
ブラジルのブタンタン研究所などのチームが、この子育てを2024年に報告しました。卵からかえった子は、母のおしりの出口に集まり、そこから出る乳を2か月ほど飲んで育っていました。乳には、脂肪と炭水化物が多くふくまれていました。
実は、子が母のおしりのほうに集まる姿は、2008年にはすでに記録されていました。でも当時は、子が何を飲んでいるのか分かりませんでした。その答えが出たのは、16年後のことです。
01アシナシイモリは、土の中にすむ足のない両生類
両生類は、カエル、イモリ・サンショウウオ、そしてアシナシイモリの3つのグループに分かれます。アシナシイモリは足がなく、細長い体をしています。カリフォルニア大学バークレー校の両生類データベースによると、両生類は全部で9141種です。そのうちアシナシイモリは235種しかいません。
アシナシイモリの多くは土の中で暮らしているため、生き方があまり知られていません。ブラジルのアラゴアス連邦大学の研究者タミ・モット(Tamí Mott)さんも、そう話しています。すむ場所に近づきにくいので、背骨のある動物の中で、科学でもあまり知られていないグループの1つなのです。
今回の主役は、南米に広くすむ「シフォノプス・アヌラトゥス」という種です。卵を産むアシナシイモリで、母は卵や子のそばにとどまって世話をします。卵からかえった子は、体の色が白っぽく、長さ4cmほどしかありません。
02子が母の皮ふを食べて育つことは、前から知られていた
アシナシイモリには、変わった子育てが知られていました。2006年、東アフリカのアシナシイモリで、子が母の皮ふを食べて育つことが報告されたのです。子育て中の母の皮ふは、栄養をたくわえて厚くなります。子は特別な形の歯で、その皮ふの外側の層をはがして食べます。
2008年には、今回と同じシフォノプスでも同じ子育てが見つかりました。子の下あごには、先が何本にも分かれたスプーンの形の歯が並んでいます。長さ12cmの子では、その歯が44本ありました。子育て中の母の皮ふは、ほかの大人より白っぽく、皮ふの細胞の中に脂肪がたまっていました。
このとき研究者は、もう1つの行動も記録しています。母がとぐろを巻いて体の後ろの端を持ち上げると、子がおしりの出口のまわりに集まります。そして口を開けたり閉じたりしていました。2回は、母の出口から出た透明な液を子が飲むのも見えました。ただし論文は、その液が尿なのか別のものなのかは分からない、と書いています。
0316匹の母を撮影し、子が飲む液の中身を調べた
ブタンタン研究所のペドロ・マイリョ=フォンタナ(Pedro Mailho-Fontana)たちが、この液を調べました。ブラジルのサンパウロ州研究財団(FAPESP)の広報誌によると、チームは16匹の母とその子を、6年かけて合わせて242時間撮影しました。母子は、ブラジル北東部バイーア州のイリェウスで集められました。カカオの畑が広がる地域で、土の中にこのアシナシイモリがよくいます。
撮影の結果、卵からかえった子は2か月にわたり、母の総排出口から出る液を飲んでいました。研究を指導したブタンタン研究所のカルロス・ジャレド(Carlos Jared)さんによると、母がしっぽを持ち上げると、子が少しねばりのある液を吸います。

チームは、この液を集めて成分を調べました。液は主に脂肪と炭水化物でできていました。脂肪が多い点は、哺乳類の乳と似ています。チームはこの液を「乳」と呼びました。
さらに、母の体のどこで乳が作られるのかも調べました。乳は、輸卵管の内側にある腺から出ていました。子育て中の母では、この腺が大きくふくらんでいました。
04子がつついたり鳴いたりすると、乳が出るらしい
チームは、乳が出るきっかけにも注目しました。論文によると、母が乳を出すのは、子が体にふれる刺激と、子が出す音に応えているように見えました。
FAPESPの広報誌によると、子は乳をもらう数分前に音を出していました。この音は、乳をねだる合図かもしれません。前に出てきたモットさんは、子育ての時期に子が音を出すと分かったことを「目をみはる発見」と話しています。
05哺乳類の乳とは作る場所が違い、見つかったのもまだ1種だけ
この乳は、哺乳類の乳と同じものではありません。ジャレドさんも、乳を作る腺は進化のもとが違うので、乳腺とは呼べないと話しています。アシナシイモリの乳は、卵を運ぶ輸卵管の腺で作られます。それでも、脂肪の多い液を母が子に与える点は同じです。
また、子の音やつつく動きが乳を出す合図になっているかについて、論文の要旨は「応えているように見える」という言い方にとどめています。要旨の結論も、データは授乳を「示唆している」という書き方です。両生類の乳による子育ては、まだ1種で見つかったばかりなのです。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
研究のきっかけは、2007年のテレビ番組の撮影だった
FAPESPの広報誌によると、きっかけは2007年でした。イギリスのBBCの撮影チームが、両生類を撮影するためにブタンタン研究所を訪れました。そのとき、生まれたばかりの子が母の総排出口のまわりに集まる場面が撮れたのです。
2008年の論文は、この撮影のときの観察をもとに書かれています。家族ごとにココナッツの殻をかぶせた人工の巣で飼い、ふたを持ち上げて観察しました。96時間のあいだ、15〜60分おきに様子を確かめています。答えが出たのは、それから16年後の2024年でした。
皮ふを食べる子育ては、1億年以上前から続いているかもしれない
2008年の論文は、アフリカのアシナシイモリと南米のシフォノプスの皮ふ食いを比べました。歯の形や母の皮ふの変化など、細かいところまでよく似ていました。チームは、2つの種の共通の祖先がすでに皮ふ食いをしていたと考えました。
遺伝子から見積もると、2つの種が分かれたのは約1億5600万〜1億6200万年前です。南米とアフリカの大陸が離れたのは、多くの復元で約1億〜1億4000万年前とされます。両生類は塩水に弱いので、海をこえて広がるのはむずかしかったはずです。そのためチームは、皮ふ食いという子育てが、1億年以上続いてきたのかもしれないと考えています。
体の外で食べるか、体の中で食べるか
アシナシイモリには、卵ではなく子を産む種もいます。そうした種の子は、生まれる前に母の輸卵管の中で、厚くなった管の内側の壁を食べて育ちます。2006年と2008年の論文は、子を産むアシナシイモリは、皮ふ食いをする祖先から進化したのではないかと考えました。
2008年の論文はさらに、総排出口から出る液を子が飲む行動が、体の外での皮ふ食いと、体の中での輸卵管食いをつなぐヒントになるかもしれないと書いていました。2024年に、その液が輸卵管の腺で作られる乳だと分かりました。体の外で子を育てる種が、輸卵管の栄養を使っていたことになります。
乳で子を育てる動物は、哺乳類だけではない
FAPESPの広報誌は、乳のようなもので子を育てる例として、ある種のクモやゴキブリ、魚、鳥をあげています。卵を産む両生類では、これまで記録がありませんでした。アシナシイモリは、その初めての例になりました。
06まとめ
南米の土の中にすむアシナシイモリの一種は、卵を産む両生類です。それなのに母は、卵からかえった子に2か月ほど乳を飲ませていました。乳は脂肪と炭水化物が多く、輸卵管の腺で作られていました。子は母の皮ふも食べて育ちます。
2008年に「何を飲んでいるのか分からない」と書かれた行動の答えが、16年後に出ました。細長い体のこの両生類の子は、母に向かって音を出しながら、乳が出るのを待っているのかもしれません。
研究カルテ
ブラジル・バイーア州イリェウス
- 研究チーム
- ブラジルのブタンタン研究所などのチーム(第一著者ペドロ・マイリョ=フォンタナ)
- 調べた場所
- ブラジル(母子はバイーア州イリェウスで採集)
- 調べた動物
- アシナシイモリの一種(学名 Siphonops annulatus)の母と子
- 調べ方
- 母と子の行動を長時間撮影し、母が出す液の成分と、液を作る体の部分を調べた
- 分かったこと
- 子は2か月、母の総排出口から出る乳を飲む。乳は脂肪と炭水化物が多く、輸卵管の腺で作られる
- まだ分からないこと
- 子の鳴き声やつつく動きが、本当に乳を出す合図になっているのか
- 論文
- Science(2024年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Caecilians are amphibians with no legs. Many of them live under the ground. One kind in South America lays eggs.
After the babies hatch, they stay with their mother. They eat the outer layer of her skin with special teeth. In 2008, scientists also saw them drink a liquid from her body. But nobody knew what the liquid was.
In 2024, scientists in Brazil found the answer. The liquid was a kind of milk. It had a lot of fat and carbohydrates. The babies drank it for about two months. The milk is made in the tube that carries her eggs.
The babies seemed to ask for milk. They touched their mother and made sounds before feeding. Scientists still need to check if these sounds are really a call for milk. This is the first egg-laying amphibian known to feed its babies milk.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. What do caecilians not have?アシナシイモリには、何がありませんか。
Caecilians are amphibians with no legs とあります。
Q2. How long did the babies drink the milk?子どもたちは、どのくらいの期間、乳を飲みましたか。
The babies drank it for about two months とあります。
Q3. What did the babies do before feeding?子どもたちは、乳をもらう前に何をしましたか。
They touched their mother and made sounds before feeding とあります。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Mailho-Fontana, P. L. et al. (2024) Milk provisioning in oviparous caecilian amphibians. Science 論文確認済みdoi:10.1126/science.adi5379
- 2Wilkinson, M. et al. (2008) One hundred million years of skin feeding? Extended parental care in a Neotropical caecilian (Amphibia: Gymnophiona). Biology Letters 論文確認済みdoi:10.1098/rsbl.2008.0217
- 3Kupfer, A. et al. (2006) Parental investment by skin feeding in a caecilian amphibian. Nature 論文確認済みdoi:10.1038/nature04403
- 4Revista Pesquisa FAPESP(2024)Underground amphibians produce "milk" to feed their youngrevistapesquisa.fapesp.br/en/underground-amphibians-produce-
- 5AmphibiaWeb(カリフォルニア大学バークレー校)Amphibian Species by the Numbersamphibiaweb.org/amphibian/speciesnums.html
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





