ヨーロッパアカガエルのメスは、オスに抱きつかれると3割が死んだふりをした

ヨーロッパアカガエルのメス54匹の実験で、オスに抱きつかれたメスは体を回し、声を出し、3割は手足をのばして固まった。46%が逃げ出せた。

No.079 8分で読めるえっ度 論文 2023年
早春の浅い池で、目の後ろに暗い色のもようがある茶色のヨーロッパアカガエルのメスが、オスに背中から抱きつかれたまま、前足と後ろ足をまっすぐ横にのばして、ぴたりと固まっている。

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  1. オスに抱きつかれたメスの83%が、体をぐるぐる回した
  2. 48%が鳴き声を出し、33%が手足をのばして死んだふりをした
  3. メスは、オスにされるがままではなかった

人に話すなら

カエルのメスって、オスに抱きつかれると、ぐるぐる回ったり声を出したりして逃げようとするんだって。3割くらいは手足をピンとのばして、死んだふりまでするらしいよ。

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ヨーロッパアカガエルのメスは、オスに抱きつかれると死んだふりをすることがある

早春のヨーロッパの池に、何百匹、ときには何千匹ものヨーロッパアカガエルが集まります。子を残す期間は、数日から2週間ほどしかありません。池にはオスがメスよりずっと多く、オスは動くものなら何にでも抱きつこうとします。1匹のメスに何匹ものオスがしがみつき、メスが死んでしまうこともあります。

これまで、この種類のメスは、オスにされるがままだと考えられてきました。ところが、ドイツのベルリン自然史博物館のカロリン・ディットリヒ(Carolin Dittrich)さんたちが撮った動画には、別の姿が映っていました。オスに抱きつかれたメス54匹の83%が体をぐるぐる回し、33%が手足をのばして固まる「死んだふり」をしたのです。

実は、メスが抵抗するという記録は、昔にもありました。250年以上前には、メスがうなるような声を出すことが報告されています。1934年には、メスが体を回す様子や、死んだふりをする様子も書かれていました。ただ、体を回す行動は、その後ほとんど取り上げられてきませんでした。今回の研究は、それを動画と数字で確かめ直したものです。

01早春の池では、オスがメスよりずっと多い

ヨーロッパアカガエルは、早春に池に一斉に集まって、短い間に子を残します。研究者はこれを「爆発的な繁殖」と呼びます。こうした種類では、オスどうしがメスを先につかまえようと争います。

カエルのオスは、メスの背中に乗り、前足でしっかり抱きつきます。この抱きつき方を「抱接」といいます。

問題は、1匹のメスに何匹ものオスが抱きつくことです。オスが重なって団子のようになると、メスが死ぬことがあります。おぼれることや、オスに強くしめつけられることが原因と考えられていますが、はっきりとは分かっていません。この「交尾の団子」は、メスにとって大きな危険です。

02箱にメス2匹とオス1匹を入れて、1時間撮影した

この発見は、もともと別の研究の途中で生まれました。2019年の春、研究チームは「オスは大きいメスを好むのか」を調べていました。そのために、野外の池からオスとメスを集めました。

実験では、水を5センチほど張った箱(たて40センチ、横60センチ)を使いました。箱に、大きさの違うメス2匹とオス1匹を入れ、1時間自由に動かします。その様子を、ウェブカメラで撮影しました。

あとで動画を見直すと、メスたちがオスから逃れようとする様子が、たくさん映っていました。研究チームは、メスの行動を1つずつ数え、どの組み合わせで使われたかを調べました。メスの体の大きさとの関係も調べました。

03抱きつかれたメスの83%は、体をぐるぐる回した

実験の中でオスに抱きつかれたメスは、54匹でした。一番多かったのは、体を回す行動です。メスは、自分の体の長い軸を中心に、くるりと横に回ります。83%のメスが、この行動を見せました。

オスは、ふり落とされないように、のばした後ろ足で踏んばって回転に逆らいます。研究チームは、野外の池でも、メスが体を回す様子を何度も見ています。めずらしい行動ではなさそうです。

体を回すと、上に乗ったオスが水の下にしずみます。研究チームは、オスがおぼれないようにメスを離すのかもしれないと考えています。また、オスの力や粘り強さを試しているのかもしれない、という考えも出しています。どちらも、まだ確かめられてはいません。

04半分近くのメスが鳴き、3割は手足をのばして固まった

2つ目の行動は、声です。抱きつかれたメスの48%が鳴きました。声には、低い「うなり声」と、高い「キュッという声」の2種類がありました。

うなり声は、オスがまちがって別のオスに抱きつかれたときに出す「離せ」という声に似ています。博物館の発表で、レーデルさんは、メスは鳴くことで、交尾の準備ができていないことを示せると説明しています。高い声の意味は、まだ分かっていません。メスが鳴くときは、いつも体を回す行動と一緒でした。

3つ目が、死んだふりです。メスは前足と後ろ足をまっすぐ体の外側にのばし、体を固くして動かなくなります。抱きつかれたメスの33%、つまり18匹がこれをしました。そのうち13匹は、体を回す行動と声も一緒に使っていました。

死んだふりは、水の中だけでなく陸でも見られました。体長83ミリのオスに抱きつかれた、体長79ミリのメスが、陸の上で固まっていたのです。

水を少し張った箱の中で、メスのカエルが体をくるりと横に回している。背中のオスは、後ろ足を大きく広げて踏んばり、ひっくり返らないようにしている。

05小さいメスほど、3つの技を全部使っていた

研究チームは、メスの体の大きさと、使った技の関係を調べました。3つの技を全部使ったメスは、体を回して鳴くだけのメスより、平均して体が小さいことが分かりました。この差は、統計ではっきりしたものでした。

抱きつかれた54匹のうち、25匹(46%)はオスから逃げ出せました。体の小さいメスほど、また、オスにくらべて体の小さいメスほど、逃げ出しやすい傾向が見られました。

ただし、逃げやすさと体の大きさの関係は、統計で確かめると、たまたまの差である可能性を十分には消せない段階でした。はっきりした差とまでは言えません。研究チームは、小さいメスはオスにしっかりつかまれにくいのかもしれないと考えています。

研究チームは、小さいメスは若いメスでもあると見ています。そして、若くて経験の少ないメスほど、強いストレスを受けて固まりやすいのかもしれないと考えています。ただし、これも推測の段階です。メスの年れいやストレスの強さは、この研究でははかっていません。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

死んだふりは、もともと敵から身を守る技

死んだふりは、虫などの背骨のない動物から、背骨のある動物まで、たくさんの動物で知られています。研究のまとめによると、多くの場合、敵につかまったあとに使う「最後の手段」です。動かなくなることで、敵がそれ以上攻撃しなくなると考えられています。

死んだふりには、得と損があります。甲虫の一種コクヌストモドキを使った2010年の研究があります。この研究では、死んだふりが長い系統と短い系統を、何世代もかけて作って比べました。長い系統のオスは、クモに食べられにくくなりました。その一方で、敵がいない場所では、交尾に成功する割合が下がりました。ずっと動かないと、相手を探す機会も減るからだと考えられています。

交尾をさけるのに、なぜ死んだふりが役立つのか

研究チームは、死んだふりは、暴れて逃げるよりよい選択なのかもしれないと考えています。池の中で暴れると、その動きにつられて、近くのオスがさらに集まってきます。オスが増えるほど、命にかかわる「交尾の団子」ができやすくなります。

じっと動かなければ、まわりのオスの注意を引かずにすむかもしれません。ただし、死んだふりの間は心臓の動きがゆっくりになることがあり、皮ふから取りこむ酸素が減るおそれもあります。研究チームは、死んだふりにもこうした危険があることを指摘しています。

ほかの動物との比較

交尾をさけるために死んだふりをする動物は、ごくわずかしか知られていません。論文によると、主にクモやトンボなどの節足動物で、両生類ではイベリアトゲイモリというイモリの一種だけでした。ヨーロッパアカガエルは、両生類で2つ目の例になります。

博物館の発表で、ディットリヒさんは、交尾の場面での死んだふりは、とてもめずらしく、ほとんど観察されていないと述べています。

研究の歴史:忘れられていた昔の記録

1758年には、ヨーロッパアカガエルのメスがうなるような声を出すことが報告されていました。1934年には、メスが体を回す行動や、オスにつかまれて何時間も固まるメスの様子が書き残されています。同じ研究者の別の記録には、2時間固まったメスを、オスが何度も鳴きながら離さなかった例もあります。

それなのに、最近のくわしい解説では、メスは繁殖の間、受け身だと書かれてきました。体を回す行動の記録は、1934年のあと、ほとんど引用されてこなかったのです。今回の研究は、こうした古い観察を、動画と数字で確かめ直しました。

研究方法の限界

この観察は、オスの好みを調べる実験の「おまけ」として得られたものです。メスの抵抗を調べるために計画された実験ではありません。箱の中には、メス2匹とオス1匹しかいませんでした。何十匹ものオスがいる本物の池とは、条件が大きく違います。

研究チームは、カエルの数、オスとメスの割合、年れいを変えて調べる必要があると書いています。メスのストレスホルモンをはかれば、死んだふりと年れいの関係も確かめられるかもしれません。

06まとめ

ヨーロッパアカガエルのメスは、オスに抱きつかれると、体を回し、声を出し、ときには手足をのばして固まりました。抱きつかれた54匹のうち、46%が逃げ出しています。メスは、されるがままではありませんでした。

小さいメスほど逃げやすいかどうかは、まだはっきりしていません。それでも、250年以上前から断片的に書かれていた行動が、動画で確かめられました。早春の池でぴたりと動かないカエルを見かけたら、それは本当に死んでいるとは限りません。

RESEARCH FILE

研究カルテ

ドイツ・バイエルン州(下フランケン地方)

研究チーム
ドイツのベルリン自然史博物館のカロリン・ディットリヒさんとマルク=オリヴァー・レーデルさん
調べた場所
ドイツ・バイエルン州の下フランケン地方(ヴュルツブルク大学の野外研究施設)
調べた動物
ヨーロッパアカガエル(学名 Rana temporaria)
調べ方
水を張った箱に大きさの違うメス2匹とオス1匹を入れ、1時間の様子をカメラで撮った
分かったこと
抱きつかれたメス54匹のうち83%が体を回し、48%が声を出し、33%が死んだふりをした
まだ分からないこと
小さいメスほど死んだふりをする理由。年れいや経験がかかわるのかどうか
論文
Royal Society Open Science(2023年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Female Frogs Play Dead to Escape Males

In early spring, many common frogs meet at ponds in Europe. There are many more males than females. Sometimes several males hold one female, and she can die.

Scientists in Germany put two females and one male in a box of water. They filmed the frogs for one hour. Males held 54 females in the videos.

Most of the females turned their bodies around and around. About half of them made calls. One third of them stretched out their arms and legs and did not move. They looked dead.

In the end, 25 females got away from the males. Smaller females used all three moves more often. People used to think these females could not say no. This study shows they are not so helpless.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How many females did males hold in the videos?動画の中で、オスは何匹のメスに抱きつきましたか。

Q2. What was the most common move?一番多かった技は何ですか。

Q3. What did females do when they played dead?死んだふりをしたとき、メスは何をしましたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Dittrich, C. & Rödel, M.-O. (2023) Drop dead! Female mate avoidance in an explosively breeding frog. Royal Society Open Science 論文確認済みdoi:10.1098/rsos.230742
  2. 2Museum für Naturkunde Berlin(2023)プレスリリース Female common frogs fake death to get rid of malesnachrichten.idw-online.de/2023/10/11/female-common-frogs-fak
  3. 3Humphreys, R. K. & Ruxton, G. D. (2018) A review of thanatosis (death feigning) as an anti-predator behaviour. Behavioral Ecology and Sociobiology 論文確認済みdoi:10.1007/s00265-017-2436-8

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい