体が透けるカエル「グラスフロッグ」は、眠るあいだ赤血球の約9割を肝臓にかくしていた

葉の裏で眠るグラスフロッグは、赤血球の約9割を肝臓にしまい、体の透明さを2〜3倍に高めていた。起きると赤血球は全身にもどる。

No.208 7分で読めるえっ度 論文 2025年
明るい緑の葉の裏に、小さなグラスフロッグが逆さまにはりついて眠っている。おなか側が透けて、白い骨と、銀色に光る内臓の袋が見える。

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  1. グラスフロッグは眠っているときだけ、いっそう透明になる
  2. 眠るあいだ、赤血球の約9割を肝臓にしまいこんでいた
  3. 赤血球をぎゅっと集めても、血のかたまりはできなかった

人に話すなら

グラスフロッグっていう透明なカエル、寝ているあいだは血の赤い細胞を9割くらい肝臓にしまいこんで、もっと透明になるんだって。起きるとまた全身に流すらしいよ。

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グラスフロッグは、起きて動いているときのほうが透明になる

昼間、森の小川のそばで、1匹のカエルが葉の裏に逆さまにはりついて眠っています。グラスフロッグというカエルです。下から光を当てると、おなかの皮ふや筋肉が透けて、骨や内臓まで見えます。ところがこのカエルが目を覚まして動き出すと、血管を流れる赤血球が増え、透明さが下がっていきます。

アメリカのデューク大学などのチームは、その理由を調べました。すると、眠っているグラスフロッグは、血管を流れる赤血球の約9割を、肝臓にしまいこんでいました。そのおかげで、体の透明さは2〜3倍に高まっていました。

背骨のある動物が透明になるのは、とてもむずかしいことです。血の中の赤血球は、ヘモグロビンという赤い物質をたくさん含み、光をよく吸収します。体のほかの部分が透明でも、赤い血が流れていれば目立ってしまいます。グラスフロッグは、この問題を「眠るあいだ血をかくす」という方法で解いていました。

01眠っているときだけ、光が多く通りぬけていた

調べたのは、メキシコ南部から南アメリカ北西部にすむグラスフロッグの一種です。夜は小川ぞいの木の上でえさをとり、昼間は広い葉の裏に逆さまにとまって眠ります。背中は葉に似た緑色で、手足やおなかは透けています。

研究したのは、デューク大学のカルロス・タボアダ(Carlos Taboada)さんたちです。アメリカ自然史博物館のジェシー・デリア(Jesse Delia)さんも加わりました。チームはまず、カエルの透明さを測りました。11匹のカエルを、色を正確に測れるよう調整したカメラで撮影したのです。撮影したのは、眠っているとき、起きているとき、鳴いているとき、運動のあと、麻酔をかけたときです。

すると、眠っているカエルは、ほかのどの状態よりも34〜61%多くの光を通していました。眠っていない4つの状態では、通す光の量はどれもほぼ同じでした。

眠っているカエルのおなかを見ると、血管の中には赤血球がほとんど見えませんでした。ところが、目を覚ますと、血管の中の赤血球が一気に増えました。チームは13匹で、光の通り方をくわしく測りました。運動のすぐあとは、通す光が、眠っているときの2分の1から3分の1に減っていました。光が減った主な原因は、ヘモグロビンが光を吸ったことでした。

02光を当てると出る音で、赤血球の居場所を追った

では、眠っているあいだ、赤血球はどこへ行っているのでしょうか。これを調べるのは簡単ではありません。グラスフロッグの透明さは、動いたり、おどろいたり、麻酔をかけたりするとすぐに失われるからです。死ぬと透明でなくなることも多いのです。

さらに、心臓や肝臓、腸などは、光をよくはね返す結晶をふくんだ袋に包まれています。この袋は、当たった光の8割以上をさえぎります。ふつうのカメラでは、袋の中は見えません。

そこでチームは、光音響顕微鏡という装置を使いました。物が光を吸うと、そのエネルギーの一部が、ごく小さな音(超音波)に変わります。この装置は、ヘモグロビンが光を吸ったときに出る超音波を拾って、赤血球のある場所を画像にします。超音波は体の中を通りやすいので、光が届きにくい深い場所や袋の中まで見えます。薬を注射する必要もなく、眠ったままのカエルを調べられました。

葉の裏で眠るグラスフロッグを、真下からライトで照らしている。手足の筋肉は透けていて、赤い色はほとんど見えない。おなかの中の銀色の袋だけがはっきり見える。

03眠るあいだ、赤血球の約9割が肝臓に集まっていた

チームはまず、3匹のカエルの全身を、眠っているときと麻酔をかけたときに撮影しました。麻酔をかけると、赤血球は全身に流れ出します。眠っているときは、体をめぐる赤血球が80〜90%減っていました。赤血球の信号は、ほとんど肝臓だけに集まっていました。

次に、12匹の肝臓をくり返し調べました。休んでいるとき、赤血球は肝臓に集まっていました。運動させると、肝臓の赤血球の信号は平均で83%減り、全身の血管へ流れ出しました。休ませると、赤血球はまた肝臓にもどりました。

13匹のおなかと太ももの皮ふや筋肉では、眠っているあいだ、血管の中の赤血球の信号が平均で89%減っていました。運動のあと、透明さが元にもどるまでには約60分かかりました。

肝臓そのものも大きさが変わっていました。10匹を超音波の画像で測ると、赤血球をためこんだ眠りのあいだ、肝臓の体積は平均で40%大きくなっていました。顕微鏡で肝臓を見ると、大きく広がる血の通り道に、赤血球がぎっしりつまっていました。

04ほかのカエルは、ここまで赤血球をしまえなかった

カエルの肝臓が赤血球をためること自体は、前から知られていました。ヨーロッパにすむカエルの一種は、6℃という低い温度で薬で眠らせると、赤血球の最大44%を肝臓にためます。ところが18℃になると、ためこみはなくなり、すべての赤血球が体をめぐります。グラスフロッグは、25〜27℃の暖かさでも、赤血球の82〜93%をしまいこみます。そして夜になると、毎晩それを送り出していました。

チームは、同じように木の上にすむ、体が透けていない熱帯のカエル3種も調べました。休んでいるときに減った赤血球は、どの種も12%以下でした。グラスフロッグの89%とは大きな差です。グラスフロッグにいちばん近い仲間の透けていないカエルでも、休むあいだ肝臓の大きさはほとんど変わりませんでした。

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もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

透明になるために、なぜ血をかくすのか

透明な動物は、海や川にはたくさんいますが、陸ではとても少ないことが知られています。透明になるには、光をはね返したり吸ったりするものを、体じゅうから減らさなければなりません。背骨のある動物では、その最大のじゃまものが、ヘモグロビンを含む赤血球です。

ほかの方法をとる動物もいます。透明なコオリウオの仲間や、ウナギの子どもは、そもそもヘモグロビンや赤血球を作らないことで、透明な体を保っています。グラスフロッグは赤血球を作ったまま、眠るあいだだけ見えない場所にしまうという、別の方法をとっていたのです。

赤血球をしまうと、酸素はどうなるのか

赤血球は、体に酸素を運ぶ細胞です。眠っているグラスフロッグの体をめぐる血液では、酸素と結びついたヘモグロビンの量が、運動のあとと比べてわずか3.4%でした。論文は、眠っているあいだ、体の活動をかなり落としているか、酸素を使わない方法でエネルギーを作っているのだろうと考えています。どちらなのかは、まだ確かめられていません。

血がかたまらないしくみは、まだ分からない

人を含む多くの背骨のある動物では、赤血球が1か所に集まると、血のかたまり(血栓)ができてしまいます。ところがグラスフロッグは、毎日、赤血球の8〜9割を肝臓に集め、また送り出しても、血管がつまったり血栓ができたりしませんでした。

なぜ血栓ができないのかは、分かっていません。論文は、血をかためるしくみに働く物質か、集まった赤血球の形に、何か特別なことがあるのだろうと書いています。カエルは、血をかためるしくみが哺乳類とよく似ています。そのため、血栓の研究にも役立つかもしれないと、チームは期待しています。

光と音を組み合わせた技術

この研究を可能にしたのは、光音響顕微鏡という新しい技術でした。同じ研究グループは2025年、この技術でグラスフロッグの胚がオタマジャクシになるまでの成長も画像にしています。体が透けているグラスフロッグは、生きたまま、押さえつけたり薬を使ったりせずに、血の流れを観察できる動物でもあるのです。

05まとめ

グラスフロッグは、眠っているあいだ、血管を流れる赤血球の約9割を肝臓にしまいこんでいました。そのおかげで体の透明さは2〜3倍になり、葉の裏で眠る姿は見つかりにくくなります。

起きて動き出すと、赤血球は肝臓から全身へもどり、透明さは下がります。毎日、血をしまったり出したりしても、血のかたまりはできません。眠ることが、そのまま身をかくす方法になっているカエルです。

RESEARCH FILE

研究カルテ

アメリカ(デューク大学)

研究チーム
アメリカのデューク大学のカルロス・タボアダ(Carlos Taboada)、アメリカ自然史博物館のジェシー・デリア(Jesse Delia)らのチーム
調べた場所
研究室(チームはアメリカのデューク大学など)
調べた動物
グラスフロッグの一種(学名 Hyalinobatrachium fleischmanni)
調べ方
光を当てて出る超音波で赤血球の場所を追う装置を使い、眠っているときと動いたあとで比べた
分かったこと
眠るあいだ赤血球の約9割が血管から消え、肝臓に集まっていた。透明さは2〜3倍になった
まだ分からないこと
赤血球を集めても血がかたまらないしくみ。酸素が少ない状態をどう乗り切るのか
論文
Science(2022年)
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英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Glass Frogs Hide Their Blood While They Sleep

These glass frogs live near forest streams from Mexico to South America. Their bellies and legs are clear, so you can see their bones. During the day, they sleep under green leaves.

But red blood is easy to see. So how do these frogs stay clear? Scientists used light and sound to find their red blood cells.

They found that sleeping frogs hide about 90 percent of their red blood cells in the liver. Because of this, the frogs become two or three times clearer. When the frogs wake up and move, the blood goes back into their bodies.

In most animals with a backbone, many blood cells in one place can make a dangerous clot. But glass frogs do this every day without clots. Scientists hope this frog can help blood research for people.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. Where do glass frogs sleep during the day?グラスフロッグは昼間どこで眠りますか。

Q2. Where do sleeping frogs hide their red blood cells?眠っているカエルは、赤血球をどこにかくしますか。

Q3. How much clearer do the frogs become?カエルはどれくらい透明になりますか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Taboada, C. et al. (2022) Glassfrogs conceal blood in their liver to maintain transparency. Science 論文確認済みdoi:10.1126/science.abl6620
  2. 2Barnett, J. B. et al. (2020) Imperfect transparency and camouflage in glass frogs. PNAS 論文確認済みdoi:10.1073/pnas.1919417117
  3. 3Rong, Q. et al. (2025) Label-free photoacoustic imaging of glassfrog development. Photoacoustics 論文確認済みdoi:10.1016/j.pacs.2025.100773
  4. 4PMC(米国国立医学図書館)Taboada et al. 2022 の著者版全文pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9984244/

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい