アラスカのアメリカアカガエルは、体がこおったまま平均193日を過ごし、春にまた動き出した
アラスカのアメリカアカガエルは、落ち葉の下で平均193日こおったまま冬を越した。−18.1℃まで冷えても、追跡した18匹は全員が春に動き出した。

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- アラスカのカエルは、冬に落ち葉の下でこおって過ごす
- 平均193日こおったままでも、春に全員がまた動き出した
- 体に、実験室でこおらせたカエルの何倍もの糖をためていた
人に話すなら
アラスカのカエルって、冬のあいだ落ち葉の下でカチカチにこおってるんだって。平均193日もこおりっぱなしで、マイナス18℃まで冷えても、春になるとまた動き出したらしいよ。
読む前に予想しよう
アラスカのアメリカアカガエルは、体がこおったまま冬を越す
落ち葉の下で平均193日こおったまま過ごし、追跡した18匹全員が春にまた動き出した。
冬のアラスカの森では、雪と落ち葉の下で、小さなカエルがこおって固まっています。心臓も止まっています。ところが、春にまわりが暖かくなると、このカエルはまた動き出します。アメリカアカガエルは、体をこおらせたまま冬を越すカエルです。
アメリカのアラスカ大学フェアバンクス校などのチームは、野生のアメリカアカガエル18匹に電波の発信機をつけました。そして、冬ごもりの場所まで追いかけました。すると、カエルたちは落ち葉の下で、平均193日もこおったまま過ごしていました。最も冷えたカエルは−18.1℃にさらされました。それでも、18匹全員が春にまた動き出しました。
アメリカアカガエルがこおっても生きられることは、以前から知られていました。けれども、それまでの研究の多くは、もっと南の暖かい地域のカエルや、実験室でこおらせたカエルを調べたものです。冬が長く厳しいアラスカの野生のカエルが、実際にどこまで耐えているのかは、ほとんど分かっていませんでした。
01電波の発信機をつけたカエル18匹を、落ち葉の下まで追いかけた
研究の舞台は、アラスカ州の内陸の町フェアバンクスの近くの森です。研究を率いたのは、ドン・ラーソン(Don Larson)さんと、アラスカ大学北極生物学研究所のブライアン・バーンズ(Brian Barnes)さんです。
チームは2000年と2001年の9月に、体重12g以上の大人のカエルを手でつかまえました。1年目に8匹、2年目に10匹です。それぞれの背中に小さな電波の発信機をつけ、森に放しました。そして、カエルが動かなくなるまで、毎日その居場所を確かめて回りました。
カエルが冬ごもりに選んだのは、繁殖に使う池の近くの森の地面でした。落ち葉や枝の下の柔らかい土に、深さ4〜10cmほどの浅いくぼみを作り、その中でじっとしていました。チームは、カエルのおなかと土の間に温度計の先を差しこみ、5分ごとに温度を記録しました。記録は、カエルが春に冬ごもりから出てくるまで続けました。
チームは、温度の記録から、カエルの体がこおった時期ととけた時期を読み取りました。温度が−1.6℃より下がったときを「こおった」とし、−0.16℃より上がったときを「とけた」としました。春には、4月の初めから毎日カエルの様子を見て回りました。くぼみから自分で動き出したカエルを、「とけて生きている」と判断しました。
02平均193日こおったまま、最低−18.1℃でも全員が春に動き出した
記録を読むと、カエルたちは、平均193日もこおったままでした。いちばん短いカエルで175日、いちばん長いカエルで218日です。カエルのおなかの下の温度は、10月から5月までの平均で−6.3℃でした。
カエルが経験した最も低い温度は、カエルによって−8.9℃から−18.1℃まででした。平均すると−14.6℃です。春にカエルがとけ始めたのは、4月19日から5月9日の間でした。追跡した18匹は、1匹残らず冬を生きのびていました。
この数字は、それまで知られていた限界を大きくこえるものでした。研究チームによると、アメリカアカガエルが耐えられる最も低い温度は、長いあいだ−7℃ほどと報告されてきました。冬じゅうこおっている期間も、カナダのオンタリオ州では合計11〜13日ほどと見積もられていました。アラスカのカエルは、その10倍以上の長さをこおって過ごしていたのです。

03野外のカエルの体には、実験室の何倍もの糖がたまっていた
こおっても死なないカギの1つは、体の中にためる糖です。アメリカアカガエルは、こおり始めると、肝臓で糖を大量に作って体じゅうに送り出します。糖が多いと、体の中でできる氷の量が減ります。細胞から水が抜けすぎるのも防ぎ、細胞を守ると考えられています。
チームは、野外でこおったカエルと、実験室でこおらせたカエルの糖の量を比べました。実験室では、カエルを−2.5℃までゆっくり冷やし、最長6日間こおらせました。すると、野外でこおったカエルの糖は、実験室のカエルより、足の筋肉で13倍、心臓で10倍、肝臓で3.3倍も多かったのです。
野外のカエルの体からは、もう1つ別の物質も見つかりました。氷の結晶が大きくなるのをおさえる、不凍の働きを持つ物質です。この物質の働きは、筋肉や内臓から取り出した液では見られましたが、皮ふではほとんど見られませんでした。チームは、細胞の外にできた氷が大きく育って体を傷つけるのを、この物質が防いでいるのかもしれないと考えています。ただし、本当の働きはまだ分かっていません。
冬ごもりの準備の様子も観察しました。チームは、土と落ち葉を入れた囲いを−5℃に冷やし、その中にカエルを入れました。カエルは穴を掘るのではなく、体を横向きに回して、土に自分の形のくぼみを作りました。上をおおうものを取りのぞくと、別の場所に移ってまたくぼみを作りました。カエルは、体がこおる直前まで動き続けていました。
04秋にこおったりとけたりをくり返すことが、強さを育てているのかもしれない
なぜ野外のカエルは、実験室よりずっと多くの糖をためていたのでしょうか。チームが注目したのは、本格的な冬の前の様子です。10月の初め、カエルのいる地面は、夜にこおって昼にとけることを平均12回、多いときは17回くり返していました。
こおるたびに、カエルは肝臓で糖を作って送り出します。論文によると、こおったあとに糖を作る速さは、とけたあとに糖を肝臓のたくわえの形(グリコーゲン)にもどす速さより速いそうです。そのため、こおったりとけたりをくり返すうちに、体の中に糖がどんどんたまっていくのではないか。チームはそう考えました。実験室で一度だけこおらせたカエルでは、この積み重ねが起きません。
ただし、これは仮説の段階です。アラスカのカエルの強さが、秋の気温の経験によって育つものなのか、生まれつきの違いなのかは、まだ分かっていないと論文は書いています。南の地域のカエルが、同じ条件でここまで糖をためられるのかも分かっていません。
この仮説には、のちに別の結果も出ました。アメリカ・オハイオ州のマイアミ大学のジョン・コスタンゾ(Jon Costanzo)さんたちは、2015年に実験をしました。アラスカのカエルを実験室で−16℃まで1回だけ、ゆっくりこおらせたのです。すると肝臓の糖は、新鮮な肝臓1gあたり743マイクロモルに達しました。野外のカエルの788マイクロモルと、ほとんど変わりません。コスタンゾさんたちは、こおったりとけたりのくり返しは、肝臓に糖をためるのに欠かせないものではないと結論しました。ただし、くり返すと、足の筋肉などへ糖がよく届くようになることも確かめています。
調べ方にも限りがあります。こおったかどうかは、カエルのおなかの下の温度から判断したものです。カエル自身の体の中の温度を直接測ったわけではありません。また、追跡したのは2つの冬の18匹です。それでも論文によると、野生のアメリカアカガエルの冬ごもり場所の温度を測った研究は、それまでなかったそうです。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
こおったカエルは、心臓も息も止まっている
カナダのカールトン大学のケネス・ストーリー(Kenneth Storey)さんとジャネット・ストーリー(Janet Storey)さんは、アメリカアカガエルの研究を長く続けてきました。2人は共同研究者と一緒に、2021年の論文でこおったカエルの様子をまとめています。こおったアメリカアカガエルには、心臓の動きも、呼吸も、血液の流れも、脳の活動も見られません。体の水の65〜70%が氷になります。ただし、氷ができるのは細胞の外です。細胞の中の水は外へ引き出され、細胞の中はこおらずに保たれます。血液が流れないため、細胞は酸素が届かない状態で何週間も何か月もしのぐことになります。
糖だけでなく、尿素もためていた
コスタンゾさんたちは、アラスカのカエルを実験室でくわしく調べています。2015年の論文によると、夏の終わりにつかまえたカエルを、水を十分に与えながら冬に向けて飼うと、血液の中の尿素が約8倍に増えました。尿素は、タンパク質が分解されるときにできる物質です。−8℃や−16℃までゆっくりこおらせると、肝臓は糖を大量に作りました。このとき肝臓は、ふくんでいた水の最大3分の2を失いました。こおったりとけたりを3回くり返したあと−8℃までこおらせた5匹は、とけたあと全員がふつうに動き、その後7週間元気でした。コスタンゾさんは2019年の総説で、アラスカのカエルは冬の前に脂肪を使い、筋肉のタンパク質を分解して尿素をためると説明しています。
「−7℃が限界」から「−18℃でも生きる」へ
研究の歴史を見ると、限界の数字は大きく変わってきました。アメリカの中西部やカナダ南部のカエルは、−3〜−6℃までしか耐えられないとされています。ところが、アラスカのカエルは実験室で−16℃までこおらせても生きのびました。今回の野外の研究では、−18.1℃にさらされたカエルが春に動き出しました。同じ種のカエルでも、すむ場所によって寒さへの強さがこれほど違うのです。
実験室の結果と、野外の結果がくい違った
2013年のコスタンゾさんたちの実験室の研究では、アラスカのカエルを−4℃で2か月こおらせました。ラーソンさんたちの論文は、この実験を「こおったまま耐えられるのは2か月までで、生き残ったのは半分」と紹介しています。ところが野外では、平均193日(6か月あまり)こおっていても、全員が生きのびました。ラーソンさんたちは、この違いを、野外の秋にこおったりとけたりをくり返すことで糖が多くたまるためだと考えています。実験室の結果だけを見ると、動物の本当の強さを見誤るおそれがあることを示す例です。
05まとめ
アラスカの森で、電波の発信機をつけたアメリカアカガエル18匹を追いました。カエルたちは、落ち葉の下で平均193日こおったまま冬を越していました。最も冷えたカエルは−18.1℃にさらされましたが、18匹全員が春にまた動き出しました。野外のカエルの体には、実験室でこおらせたカエルの何倍もの糖がたまっていました。カエルは半年ほど、心臓も止まったままこおっています。それでも4月の下旬から5月の初めには、とけて落ち葉の下から動き出すのです。
研究カルテ
アメリカ アラスカ州 フェアバンクス
- 研究チーム
- アメリカのアラスカ大学フェアバンクス校などのチーム(第一著者ドン・ラーソン)
- 調べた場所
- アメリカ・アラスカ州の内陸、フェアバンクス近くの森
- 調べた動物
- 野生のアメリカアカガエル18匹(学名 Rana sylvatica)
- 調べ方
- 電波の発信機をつけて冬ごもりの場所まで追い、カエルのおなかの下の温度を5分ごとに記録した
- 分かったこと
- 平均193日こおったまま、最低−18.1℃でも全員が春に動き出した。体には実験室でこおらせたカエルの何倍もの糖があった
- まだ分からないこと
- 寒さへの強さが、秋の気温の経験で育つのか、生まれつきの違いなのか
- 論文
- Journal of Experimental Biology(2014年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Wood frogs live in North America, even in Alaska. In winter, their bodies freeze under the dead leaves. Their hearts stop, and they do not breathe.
Scientists in Alaska put small radios on 18 frogs. They followed the frogs to their winter homes. The frogs made small holes in the soil near ponds. The scientists recorded the temperature under each frog every five minutes.
The frogs stayed frozen for 193 days on average. The coldest frog was at minus 18.1 degrees. But all 18 frogs started to move again in spring. Frogs from warmer places can only live down to about minus 3 to minus 6 degrees.
The frogs had a lot of sugar in their bodies. Their leg muscles had 13 times more sugar than frogs frozen in a lab. Scientists think the sugar protects the cells from the ice. We still do not know everything about this frog.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How many frogs did the scientists follow?研究者たちは何匹のカエルを追いかけましたか。
18匹のカエルに発信機をつけて追いかけました。193は、こおっていた日数の平均です。
Q2. What happened to the frogs in spring?春になると、カエルたちはどうなりましたか。
18匹全員が、春にまた動き出しました。
Q3. What helps protect the frog's cells from the ice?カエルの細胞を氷から守るのに役立つものは何ですか。
体にためた大量の糖が、細胞を守っていると考えられています。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Larson, D. J. et al. (2014) Wood frog adaptations to overwintering in Alaska: new limits to freezing tolerance. Journal of Experimental Biology 論文確認済みdoi:10.1242/jeb.101931
- 2Costanzo, J. P. et al. (2015) Cryoprotectants and Extreme Freeze Tolerance in a Subarctic Population of the Wood Frog. PLOS ONE 論文確認済みdoi:10.1371/journal.pone.0117234
- 3Costanzo, J. P. et al. (2013) Hibernation physiology, freezing adaptation and extreme freeze tolerance in a northern population of the wood frog. Journal of Experimental Biology 論文確認済みdoi:10.1242/jeb.089342
- 4Costanzo, J. P. (2019) Overwintering adaptations and extreme freeze tolerance in a subarctic population of the wood frog, Rana sylvatica. Journal of Comparative Physiology B 論文確認済みdoi:10.1007/s00360-018-1189-7
- 5Storey, J. M., Wu, S. & Storey, K. B. (2021) Mitochondria and the Frozen Frog. Antioxidants 論文確認済みdoi:10.3390/antiox10040543
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





