1年に7〜8か月冬眠するマーモットは、冬眠の間「体の年齢」がほとんど進んでいなかった
マーモットのメス73頭の血液149本で「体の年齢」を測ると、夏の間に進み、冬眠の間はほとんど進んでいなかった。冬眠と長生きの関係のヒントになる。

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- マーモットは1年のうち7〜8か月も冬眠する
- DNAの印で測る体の年齢は、冬眠の間ほとんど進まなかった
- 冬眠する動物が長生きな理由のヒントかもしれない
人に話すなら
マーモットって1年に7〜8か月も冬眠するんだけど、血液のDNAで「体の年齢」を測ると、冬眠中はほとんど進んでなかったんだって。冬眠する動物が体のわりに長生きな理由かもしれないらしいよ。
読む前に予想しよう
マーモットの血液で測った「体の年齢」は、冬眠の間よりも夏の活動期のほうが速く進んでいた
体の年齢は活動期に進み、冬眠の間はほとんど止まっていた。
冬眠する動物は、体の大きさのわりに長生きです。同じくらいの大きさのほ乳類どうしで比べると、冬眠する種のほうが長く生きる傾向があります。では、冬眠している間、体の中の老化はどうなっているのでしょうか。
この問いにいどんだのが、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校のガブリエラ・ピニョ(Gabriela Pinho)さんたちです。調べたのは、野生のキバラマーモットです。メス73頭から集めた血液149本で、DNAの印から「体の年齢」を計算したのです。すると、体の年齢は夏の活動期に進み、冬眠の間はほとんど進んでいませんでした。
冬眠と長生きの関係は、昔から言われてきました。でも、1頭の動物の中で、冬眠中に老化がおそくなるのかを確かめるのはむずかしいことでした。冬眠中の動物は地下の巣穴の中にいて、体を調べられないからです。そこで研究チームは、何十年も続く野生のマーモットの記録と、保存してあった血液を使いました。
01キバラマーモットは、1年のうち7〜8か月を眠ってすごす
キバラマーモットは、高い山にすむ大型のリスのなかまです。おなかが黄色っぽいので、この名前があります。1年のうち7〜8か月も冬眠します。
冬眠といっても、ずっと同じ状態で眠り続けるわけではありません。体温と代謝(体がエネルギーを使うはたらき)を大きく下げた深い眠りが長く続き、そのあと1日より短い時間だけ体温がもどります。この切りかえを冬眠の間に何度もくり返します。キバラマーモットでは、冬眠期間の88.6%が深い眠りの状態です。その結果、起きているときより、使うエネルギーを平均83.3%減らせます。
研究の舞台は、アメリカ・コロラド州のロッキー山脈生物学研究所の近くです。ここでは、ブラムスタインさんたちが長年マーモットを調べ続けています。2013年の論文の時点で、研究はすでに50年続いていました。1頭1頭を一生見守り、生まれて初めて巣穴から出てきた日まで記録しているのです。
02DNAにつく印の変化から「体の年齢」を計算した
人や動物のDNAには、メチル化とよばれる小さな印がついています。この印は、年をとるにつれて、決まった場所でふえたり減ったりします。この変化を使うと、その体が何歳くらいかを計算できます。こうして計算した年齢は、カレンダーの上の年齢とは少しずれることがあります。そのずれが、体の老化の進み方を表していると考えられています。
研究チームは、マーモットを夏の活動期(5〜8月)に2週間ごとにつかまえ、血液をとってきました。今回はその中から、メス73頭の血液149本を使いました。1頭あたり1〜8本で、年齢は生まれてすぐから12歳までです。メスだけを使ったのは、オスはほかの場所で生まれてやってくることが多く、正確な年齢が分からないからです。
体の年齢は、2つの方法で計算しました。1つは、よく使われる「エピジェネティック・クロック」です。もう1つは「エピジェネティック・ペースメーカー」という方法で、年齢による変化がまっすぐでない場合も、うまくとらえられます。どちらの方法も、計算した体の年齢と、実際の年齢がよく合っていました。
03体の年齢は夏に進み、冬眠の間はほとんど進まなかった
ペースメーカーで計算した体の年齢を、1年の中の日付ごとに整理しました。すると、体の年齢は夏の活動期にふえていき、冬眠の間にはほとんどふえていませんでした。いちばん速く進んだのは、活動期のまん中ごろでした。
研究チームは、別の見方でも確かめました。2年続けて血液がとれていた11頭を選び、1頭ずつ、活動期と冬眠の間の進み方を比べたのです。夏のはじめと終わりの血液の差からは、活動期の1日あたりの進み方が分かります。秋の最後の血液と、次の春の最初の血液の差からは、冬眠の間の進み方が分かります。比べると、1日あたりの進み方は、活動期のほうがはっきり速くなっていました。

一生で見ると、体の年齢は2歳になるまで速く進み、そのあとはゆっくり進みました。マーモットのメスが子を産めるようになるのは2歳ごろです。人でも、20歳をこえると体の年齢の進み方がゆるやかになることが知られていて、よく似た形でした。
04若いマーモットは、冬眠の間も少し年をとっていた
ただし、どの年齢でも同じではありませんでした。生まれて1年目と2年目の若いマーモットでは、冬眠の間に体の年齢の進み方がおそくなる効果が弱く見えました。ただし、統計の上では、はっきりした差とまでは言えませんでした。
研究チームは、若いマーモットの冬眠の仕方に理由があると考えています。若いマーモットは、大人より何週間かおそく冬眠に入ることがあります。冬眠中に深い眠りの状態でいる時間も短く、深い眠りの間に体重が減るペースも大きいとされています。つまり、冬眠中も大人よりエネルギーを多く使っていると考えられます。
また、活動期のはじめと終わりにも、体の年齢の進み方はゆるやかでした。春先と秋の終わりのマーモットは、食べる量が少なく、あまり動かず、代謝も夏より低いことが分かっています。研究チームは、食べる量や体温、代謝の低さが、老化の進み方にかかわっているのではないかと考えています。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
なぜ冬眠する動物は長生きなのか
2011年、オーストリアのウィーン獣医科大学のクリストファー・タービル(Christopher Turbill)さんたちは、たくさんのほ乳類の記録を比べました。冬眠する種は、同じくらいの大きさの冬眠しない種より、1年の間に生き残る割合が約15%高くなっていました。体重50グラムくらいの種では、冬眠する種の最長の寿命が50%ほど長いという結果でした。冬眠中は動かないので、敵に食べられにくいことが一つの理由と考えられています。
ピニョさんたちは、それだけではないと考えています。冬眠中の体では、食べ物をとらない、体温が低い、代謝が低い、という3つが同時に起きています。どれも、ほかの研究で長生きと関係があるとされてきた条件です。冬眠のしくみそのものが、老化をおそくしているのかもしれません。
ほかの動物でも同じ結果が出ている
同じ2022年、カナダのマクマスター大学で飼われているオオクビワコウモリを調べた研究が発表されました。冬と夏に、つばさの膜から小さな試料をとって比べました。すると、冬眠中のコウモリの体の年齢は、冬眠していないときより平均0.77歳若く計算されました。
2025年には、アメリカのマサチューセッツ工科大学などのチームが、冬眠しないマウスで試しました。脳の一部の神経を薬で刺激できるようにして、冬眠に似た体温の低い状態を何日も続けさせたのです。これを3か月くり返すと、血液で測った体の年齢の進み方は、比べたマウスより平均80%少なくなりました。肝臓では20%少なくなりましたが、腎臓と大脳皮質では違いが見られませんでした。このチームは、効いていたのは食べる量や代謝の低さではなく、体温の低さだったと報告しています。
研究の限界と、残る疑問
この研究には、いくつかの限界があります。まず、血液をとれたのは4月末から8月20日までの活動期だけです。冬眠中の体の年齢は、冬眠の前と後の血液から計算したものです。研究チームは、この調べ方でも結果がかたよらないことを、コンピューターの計算で確かめています。
次に、2つの方法のうち、よく使われるエピジェネティック・クロックでは、季節による違いは見つかりませんでした。研究チームは、この方法はもともと年齢とまっすぐな関係にある変化しかとらえない作りだからだと説明しています。それでも、どの方法で測るかで結果が変わることは、覚えておく必要があります。
さらに、調べたのは血液だけです。DNAの印から計算した体の年齢は、実際の寿命そのものではありません。ヤマネのなかまでは、別の老化の目印である「テロメア」が、活動期にかえって長くなったという報告もあり、冬眠と老化の関係はまだ単純には言えません。
05まとめ
アメリカ・コロラド州の野生のキバラマーモットで、メス73頭の血液149本を調べると、DNAの印から計算した体の年齢は夏の活動期に進み、冬眠の間はほとんど進んでいませんでした。冬眠する動物が体のわりに長生きな理由の一つかもしれません。
ただし、調べたのは血液だけで、もう1つの計算方法では季節の違いが見えませんでした。冬眠中のキバラマーモットが使うエネルギーは、起きているときの平均17%ほどです。
研究カルテ
アメリカ・コロラド州
- 研究チーム
- アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校のガブリエラ・ピニョさん、ダニエル・ブラムスタインさん、スティーブ・ホーヴァスさんたち
- 調べた場所
- アメリカ・コロラド州のロッキー山脈生物学研究所の近く(ガニソン国有林)
- 調べた動物
- 野生のキバラマーモット(学名 Marmota flaviventer)のメス73頭
- 調べ方
- 生まれた日が分かるメスの血液149本で、DNAの印の変化から「体の年齢」を計算し、季節ごとの進み方を比べた
- 分かったこと
- 体の年齢は夏の活動期に進み、冬眠の間はほとんど進まなかった。2歳までは進み方が速かった
- まだ分からないこと
- 冬眠のどのしくみが老化をおそくするのか。血液以外の体の部分でも同じなのか
- 論文
- Nature Ecology & Evolution(2022年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Yellow-bellied marmots are large ground squirrels. Scientists study them in the mountains of Colorado, in the United States. They hibernate for seven to eight months every year.
Scientists have studied these marmots for many years. They took blood from the animals in summer. They used 149 blood samples from 73 females. Small marks on DNA change as an animal gets older. From these marks, the scientists measured the body age of each marmot.
The body age went up during the summer. But it almost stopped during the winter sleep. Animals that hibernate often live longer than other animals of the same size. This may be one reason.
The scientists only studied blood. Another way of measuring body age did not show the same change. So we still need more studies.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How long do yellow-bellied marmots hibernate each year?キバラマーモットは毎年どのくらい冬眠しますか。
1年のうち7〜8か月を冬眠してすごします。
Q2. What did the scientists use to measure body age?研究者たちは何を使って体の年齢を測りましたか。
血液のDNAにつく印の変化から、体の年齢を計算しました。
Q3. When did the body age go up the most?体の年齢がいちばん進んだのはいつですか。
体の年齢は夏の活動期に進み、冬眠の間はほとんど進みませんでした。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Pinho, G. M. et al. (2022) Hibernation slows epigenetic ageing in yellow-bellied marmots. Nature Ecology & Evolution 論文確認済みdoi:10.1038/s41559-022-01679-1
- 2Blumstein, D. T. (2013) Yellow-bellied marmots: insights from an emergent view of sociality. Philosophical Transactions of the Royal Society B 論文確認済みdoi:10.1098/rstb.2012.0349
- 3Turbill, C. et al. (2011) Hibernation is associated with increased survival and the evolution of slow life histories among mammals. Proceedings of the Royal Society B 論文確認済みdoi:10.1098/rspb.2011.0190
- 4Sullivan, I. R. et al. (2022) Big brown bats experience slower epigenetic ageing during hibernation. Proceedings of the Royal Society B 論文確認済みdoi:10.1098/rspb.2022.0635
- 5Jayne, L. et al. (2025) A torpor-like state in mice slows blood epigenetic aging and prolongs healthspan. Nature Aging 論文確認済みdoi:10.1038/s43587-025-00830-4
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





