冬眠中のマルハナバチの女王は、1週間水に沈められても8割以上が生きていた

冬眠中のマルハナバチの女王143匹を水に沈めたり浮かべたりすると、約9割が生き残った。1週間沈めた女王も8割以上が生きていた。

No.204 7分で読めるえっ度 論文 2026年
水がしみこんだ土の中の小さな部屋で、黒と黄色の毛におおわれた大きなマルハナバチの女王が、脚を体に寄せて丸くなり、じっと動かずにいる。まわりのすき間は水で満ちている。

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  1. 冬眠中のマルハナバチの女王は、水に沈めても約9割が生き残った
  2. 1週間沈めた女王も、8割以上が生きていた
  3. 見つかったきっかけは、実験の手ちがいで容器に水がたまったこと

人に話すなら

マルハナバチの女王って、土の中で冬眠するんだけど、その最中に1週間水の中に沈められても、8割以上が生きてたんだって。しかも見つかったきっかけは、実験の容器にうっかり水がたまったことらしいよ。

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冬眠中のマルハナバチの女王は、水に1日沈められると、ほとんどが死んでしまう

冬眠中のハチを入れておいた容器に、実験の手ちがいで水がたまってしまいました。水を抜いてみると、中のマルハナバチの女王たちは生きていました。この研究は、そんな手ちがいから始まりました。

カナダのゲルフ大学のチームは、この出来事をきっかけに、きちんとした実験を行いました。冬眠させたマルハナバチの女王143匹を、水に沈めたり、水に浮かべたりしたのです。その後8週間まで調べると、全体で約9割が生き残りました。7日間ずっと水に沈めた女王も、81%が生きていました。

マルハナバチの女王は、土の中で冬を越します。大雨や雪どけで土が水びたしになることもあるはずです。けれども、チームの知るかぎり、冬眠中の女王が水にたえられるのかを調べた研究は、それまで一つもありませんでした。

01実験の手ちがいで、女王の容器に水がたまっていた

研究を行ったのは、ゲルフ大学のサブリナ・ロンドー(Sabrina Rondeau)さんと、ナイジェル・レイン(Nigel Raine)さんです。ロンドーさんたちの以前の研究で、手ちがいから、冬眠中の女王を入れた容器に水がたまってしまいました。水を抜いてみると、女王たちは生きていたのです。

マルハナバチの暮らしでは、女王が冬を越せるかどうかがとても大切です。夏の終わりに、巣では新しい女王が生まれます。新しい女王は交尾をすませ、土の中にもぐって6〜9か月を過ごします。働きバチやオスは、冬が来る前に死んでしまいます。冬を越すのは女王だけです。次の春に新しい巣を作るのは、その女王です。

土の中で冬を越す女王は、寒さを避けられる代わりに、いろいろな危険にさらされます。寄生する生き物、カビ、土の汚れ、そして水びたしです。気候の変化で大雨や洪水が増えると考えられている今、女王が水にどれだけ強いかを知ることは、マルハナバチを守るうえでも大切だとチームは考えました。

02143匹の女王を、土の入った管で冬眠させた

実験に使ったのは、北アメリカ東部に広くすむマルハナバチの一種です。チームは、市販されている巣を4つ取り寄せ、そこで生まれた新しい女王を使いました。結果がぶれないよう、交尾させていない女王を選びました。生まれてから9〜15日たった女王143匹の体重を量り、1匹ずつ50mLの管に入れました。

管の中には、15gの土を入れました。野外でマルハナバチが冬眠用の穴を掘っていた場所から取ってきた土です。これを殺菌し、水で少し湿らせて使いました。管のふたには空気穴をあけ、4℃の暗い冷蔵室に7日間置きました。こうして冷やすと、女王は冬眠の状態に入ります。

1週間後、女王を5分間だけ部屋の温度と明るさにさらし、脚や腹を動かしたものを「生きている」と判断しました。そして、女王を3つの組に分けました。何もしない組が17匹です。残りの女王の管には、4℃の水道水を20mLずつ入れました。水に浮かべたままにする組と、上から押さえる道具で、水の中にとどめておく組です。

水につける時間は、8時間、24時間、7日間の3通りにしました。浮かべる組と沈める組のそれぞれに3通りの時間があり、1つの条件につき21匹ずつです。浮かべる条件は、大雨や雪どけで地下の水位が上がり、冬眠の部屋に水がたまる場面を想定しました。沈める条件は、土地がまるごと水につかる洪水を想定しています。水につけている間も、管は冷蔵室に置いたままでした。

03水に沈めた女王も、浮かべた女王も、ほとんどが生き残った

決めた時間がたつと、女王を水から出し、新しい土を入れた管に移して、また冷蔵室にもどしました。そして、1週間後、4週間後、8週間後に、生きているかを確かめました。死んでいるように見えた女王は、2時間部屋の温度に置き、本当に動かないかを確認しました。

8週間後に生きていた女王は、全体の平均で89.5%でした。何もしない組は88%です。最も厳しい「7日間沈める」組でも、21匹のうち17匹、81%が生きていました。8時間沈めた組は100%、24時間沈めた組は95%が生き残りました。水につけたかどうかで、生き残る割合に意味のある差は出ませんでした。差が出たのは体重で、重い女王ほど生き残りやすい結果でした。

透明な細長い管が3本並んでいる。1本目は土の上で女王が眠り、2本目は水の上に女王が浮かび、3本目は水の中に女王が沈められている。

04水の中でも、女王はわずかに呼吸していた

なぜ女王はおぼれないのでしょうか。2026年、カナダのオタワ大学のダルボー(Charles-A. Darveau)さんたちのチームが、そのしくみを調べた論文を出しました。ロンドーさんも、このチームに加わっています。チームは、水に沈めた女王が出す二酸化炭素の量を、密閉した容器の中で測りました。

すると、女王は水の中でも、少しずつですが二酸化炭素を出し続けていました。沈めて4日たっても、8日たっても続いていました。女王のまわりの水では、とけている酸素がへっていました。女王は水の中でも、わずかに呼吸をしていたのです。

同時に、女王の体には乳酸がたまっていました。乳酸は、酸素が足りないときに、体がエネルギーを作るとできる物質です。水から出したあと、女王がエネルギーを使う速さはいったん上がり、1週間かけて元にもどりました。乳酸の量も、1週間で水に入れる前の量にもどりました。チームは、体の働きを極端に落とした状態で、水の中の呼吸と、酸素を使わずにエネルギーを作るしくみを組み合わせて生きのびていると結論づけました。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

なぜ女王は水を体に入れずにすむのか

2024年の論文で、チームはいくつかの理由を考えています。昆虫は、体の横にある「気門」という小さな穴から空気を出し入れします。冬眠中の女王は、気門を長い時間閉じておき、ときどきだけ短く開けて呼吸することが知られています。この呼吸のしかたが、水が入るのを防いでいるのかもしれません。気門の穴はとても小さく、昆虫の体の表面は水をはじきます。また、体の表面から直接の気体の出入りや、体についた空気の泡が、冬眠中の少ない酸素の必要量をまかなっている可能性もあります。2026年の論文で、水の中での呼吸が実際に起きていることが確かめられました。

成虫で冬を越す虫で、水に強いものは珍しい

水びたしに強い昆虫は、ふだんから水につかりやすい場所にすむものが多く、その多くは卵の状態で水にたえます。トビムシやバッタ、ウンカ、ヨコバイの仲間には、水に強い休眠中の卵を持つものがいます。地面に巣を作るハチの中には、さなぎになる前の段階で、6か月も水の中にたえる種がいます。一方、成虫の姿で冬を越す虫で、水に強い例はあまり知られていません。オサムシの仲間の多くは、冬の水びたしにたえられず、安全な場所へ移動します。マルハナバチの女王は、その珍しい例だとチームは書いています。

女王は、本当は水はけのよい場所を選んでいる

これまでの観察では、マルハナバチの女王は、斜面や砂地など、水はけのよい土で冬を越すことが多いと報告されています。水びたしを避けていると考えられてきました。そのため、女王がこれほど水に強いことは意外でした。ただし、地下の水位が上がれば、水はけのよい場所でも冬眠の部屋が水につかることがあります。チームは、女王はそうした場合にも備えているのだろうと考えています。

この研究の限界

実験は、冷蔵室で冬眠させた、交尾していない女王で行いました。市販の巣から生まれた女王で、野生の女王とは違うかもしれません。水につけた期間は最長7日間、その後の観察は8週間までです。本物の冬は6〜9か月続きます。もっと長い水びたしや、こおったりとけたりをくり返す冬にたえられるかは分かっていません。また、2023年にアメリカで行われた別の研究では、野外で冬を越した女王の約6か月後の生き残りが60%をこえていました。これまでの実験室の研究をまとめた見積もりでは、6か月後の生き残りは10%未満でした。実験室の結果がそのまま野外にあてはまるとは限りません。地面に巣を作る別のハチでは、長く続いた洪水で多くが死んだという報告もあります。

05まとめ

冬眠中のマルハナバチの女王143匹を水に沈めたり浮かべたりすると、8週間後に約9割が生き残りました。7日間ずっと水の中に沈めた女王も、21匹のうち17匹が生きていました。女王は水の中でも少しずつ呼吸し、酸素を使わないしくみも組み合わせて生きのびていました。この発見のきっかけは、冬眠中の女王を入れた容器に、うっかり水がたまってしまったことでした。

RESEARCH FILE

研究カルテ

カナダ オンタリオ州ゲルフ

研究チーム
カナダのゲルフ大学のチーム(第一著者サブリナ・ロンドー)
調べた場所
カナダ・オンタリオ州のゲルフ大学の実験室
調べた動物
北アメリカ東部にすむマルハナバチの一種の、交尾前の女王143匹(学名 Bombus impatiens)
調べ方
土を入れた管で女王を冷やして冬眠させ、水に沈めたり浮かべたりして、8週間後まで生き残りを調べた
分かったこと
水に沈めても浮かべても約9割が生き残り、7日間沈めても81%が生きていた
まだ分からないこと
もっと長い水没や、野外の本物の洪水でも生き残れるのか
論文
Biology Letters(2024年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Queen Bees Can Survive a Week Under Water

Bumblebee queens spend the winter under the ground. Only the queens live through the winter. Workers and males die before the cold months. In spring, the queens start new nests.

One day, water got into a container of sleeping queens by mistake. The scientists took the water out, and the queens were still alive.

So the scientists did a careful test with 143 queens. They kept the queens in cold soil to make them sleep. Then they put some queens under water and let others float. Eight weeks later, about 90 percent of the queens were alive. Some stayed in the water for only eight hours, and some for a full week. Even after seven days under water, 17 of 21 queens lived.

A later study found that the queens breathe a little under water. Their bodies also use very little energy. This discovery started with a small mistake.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. Where do bumblebee queens spend the winter?マルハナバチの女王は、どこで冬を過ごしますか。

Q2. How did this research start?この研究は、どのように始まりましたか。

Q3. How many queens lived after seven days under water?7日間水の中にいたあと、何匹の女王が生きていましたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Rondeau, S. & Raine, N. E. (2024) Unveiling the submerged secrets: bumblebee queens' resilience to flooding. Biology Letters 論文確認済みdoi:10.1098/rsbl.2023.0609
  2. 2Darveau, C.-A., Rondeau, S. & Rojas, S. L. (2026) Diapausing bumble bee queens avoid drowning by using underwater respiration, anaerobic metabolism and profound metabolic depression. Proceedings of the Royal Society B 論文確認済みdoi:10.1098/rspb.2025.3141
  3. 3Pugesek, G., Thuma, J. A. & Crone, E. E. (2023) First field-based estimates of bumblebee diapause survival rates showcase high survivorship in the wild. Journal of Insect Conservation 論文確認済みdoi:10.1007/s10841-023-00478-8

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい