「蚊はO型をよく刺す」はグレー。蚊がO型にはっきり多くとまったのは、A型とくらべた時だけ
日本の実験で、蚊がとまる回数はO型がA型より多かったが、ほかの型との差ははっきりしなかった。蚊に好かれる人は肌の酸が多いという研究もある。
グレー判定の対象蚊はO型の人をよく刺す
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- 64人で試すと、はっきり差が出たのはO型とA型の間だけだった
- 別の種類の蚊では、AB型が一番好まれたという結果もある
- 蚊に好かれる人は、肌の「酸」が多いという研究がある
人に話すなら
蚊がO型を好むって話、日本の実験ではO型とA型の差しかはっきりしなかったんだって。それより、蚊に好かれる人は肌のにおいの成分が多くて、1年たっても好かれやすさが変わらないらしいよ。
読む前に予想しよう
蚊がO型の人を好むことは、研究ではっきり証明されている
O型とA型の差は出たが、ほかの型との差ははっきりせず、研究で結果が分かれる。
夏の夜、同じ部屋にいたのに、自分だけ何か所も蚊に刺されていた。そんな経験がある人は多いと思います。そのとき、よく聞く説明が「O型の人は蚊に刺されやすい」です。アメリカの研究者も論文の中で、蚊に好かれる理由として一般の人がよく持ち出すのは血液型だと書いています。
この説とかかわる研究の一つが、2004年に日本のチームが発表した実験です。64人の腕にヒトスジシマカがとまる回数を、毎回同じ「基準の人」とくらべて点数にしました。基準の人と同じなら50になる点数で、O型は平均78.5、A型は平均45.3でした。ただし、はっきりした差が出たのは、O型とA型の間だけでした。
「蚊に好かれる人」がいることは、別の研究でも確かめられています。ただ、その理由は血液型なのか、それとも別のものなのか。研究を順に見ていくと、答えは「グレー」になります。
01日本の実験:64人が、蚊の入った水槽に手と腕を入れた
実験をしたのは、千葉県にある害虫対策の研究所などの日本のチームです。使ったのは、ヒトスジシマカのメスでした。岐阜県大垣市で採集した蚊を、研究室で育てて増やした系統です。
参加したのは64人です。O型が19人、A型が21人、B型が17人、AB型が7人でした。男性32人、女性32人で、年れいは5〜61歳でした。
実験の道具は、水槽です。水槽の中に、蚊を35匹入れます。参加者は、水槽の横のそで口から、手と腕を中に差し入れます。蚊は、血を吸うための口の先を切り取ってありました。腕にとまることはできても、血を吸うことはできません。
腕を入れるのは、いつも2人同時でした。1人は調べる参加者で、もう1人は毎回同じ「基準の人」です。基準の人は、A型の30歳の男性でした。10分の間、30秒ごとに、それぞれの腕にとまっている蚊を数えます。左右の位置は入れかえ、新しい蚊で3回くり返しました。
02O型はA型より多くとまられたが、ほかの型との差ははっきりしなかった
結果は、O型が78.5、B型が56.9、AB型が48.0、A型が45.3でした。並べるとO型が一番多く、A型が一番少なくなっています。
ところが、統計で確かめると、はっきりした差があったのはO型とA型の間だけでした。O型とB型、O型とAB型の差は、たまたまの差と区別できませんでした。
研究チーム自身も、論文の考察で慎重な書き方をしています。この蚊が血液型で人を選んでとまるという考えは、この研究の結果からは強くは支持されない、という内容です。
03「分泌型」の人で分けても、差が出たのはO型とA型の間だけ
人の中には、血液型の目印になる物質を、だ液などに出す「分泌型」の人がいます。研究チームは、参加者のだ液を調べて、分泌型かどうかも分けました。
分泌型の人だけでくらべると、O型は83.3、A型は46.5でした。この差は、はっきりしたものでした。ただし、この分け方でも、ほかの組み合わせでは、はっきりした差は出ませんでした。
研究チームは、血液型の目印になる物質そのものを腕にぬる実験もしました。すると、O型の目印になる物質は、A型の目印になる物質より多くの蚊を引きつけました。それでも研究チームは、こうした物質だけでは、血液型による差を全体として説明できないと結論しています。
04イランの別の蚊では、一番好まれたのはAB型だった
血液型と蚊の研究は、ほかにもあります。2014年、イランの研究チームは、マラリアを運ぶハマダラカの一種で調べました。蚊に、4つの血液型の血を人工の膜ごしに吸わせたり、参加者の腕から直接吸わせたりしました。
血を吸った蚊450匹のおなかの血を調べると、AB型が40%、A型が24%、B型が21%、O型が15%でした。この蚊では、O型が一番少なかったのです。
ただし、この実験は、とまる回数ではなく、血を吸えた回数を調べたものです。蚊の種類も違います。日本の実験とそのままくらべることはできません。それでも「蚊はO型を好む」と、ひとまとめに言えないことは分かります。

05アメリカの研究:蚊に好かれる人は、肌の「酸」が多かった
では、蚊に好かれる人と好かれない人の違いは、どこにあるのでしょうか。2022年、アメリカのロックフェラー大学のマリア・エレナ・デ・オバルディア(Maria Elena De Obaldia)さんたちが、この問題に取り組みました。使ったのは、デング熱などのウイルスを運ぶネッタイシマカです。
参加者は、無香料のせっけんで腕を洗ってから、ナイロンの布を腕に6時間まきました。その布を小さく切り、2つの入り口がある装置の両側に置きます。蚊は約90センチ先のにおいをかぎ分けて、どちらかに飛んでいきます。研究は3年あまり続き、2330回以上の実験が行われました。
まず、8人の布を2枚ずつ、総当たりでくらべました。28通りの組み合わせを、それぞれ別の6日に試しました。すると「被験者33」と呼ばれた人の布が、ほぼすべての回で、相手より多くの蚊を引きつけました。好かれやすさの点数は、一番好かれなかった2人の100倍以上になりました。
この差は、何か月たっても変わりませんでした。1年あまりあとに、新しい参加者56人を加えて調べ直しても、被験者33は一番好かれるグループに入っていました。一番好かれなかった人も、合わせて64人の中で、やはり一番好かれませんでした。
布のにおいを分析すると、よく好かれる人の肌からは、カルボン酸という種類の酸が多く出ていました。ただし、研究チームは、これは「関係がある」ことを示しただけで、酸が原因だとまでは言えないと書いています。酸が多いのに、あまり好かれない人も1人いました。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
蚊は、何を手がかりに人を見つけるのか
2022年の論文によると、メスのネッタイシマカは、人の息にふくまれる二酸化炭素、体の熱、肌のにおいを手がかりに人を探します。二酸化炭素や熱は、温かい動物ならどれも出しています。人か、ほかの動物かを見分けるのに使われるのが、肌のにおいだと考えられています。
肌のにおいは、たくさんの物質がまざったものです。カルボン酸は、1つだけでは蚊を引きつけません。ところが、アンモニアや乳酸といっしょになると、蚊を強く引きつけることが知られています。蚊は、においの「組み合わせ」で人をかぎ分けていると考えられています。
研究チームは、一番好かれた人の布のにおいを、大きくうすめる実験もしました。すると蚊は、その布と、一番好かれない人の布を見分けられなくなりました。好かれやすさの差は、においの濃さとも結びついているようです。
においを感じるしくみをこわしても、好みは残った
研究チームは、遺伝子を変えて、においを感じるしくみの一部を働かなくした蚊も使いました。その一部は、人のにおいに引きつけられる力が弱くなりました。それでも、好かれる人と好かれない人を見分ける力は残っていました。
蚊は、においを感じるしくみを何重にも持っているようです。1つのしくみがこわれても、別のしくみで人をかぎ分けられると考えられます。
血液型の研究は、なぜ結果が分かれるのか
2022年の論文は、血液型と蚊の好みについての研究結果は「食い違っている」とまとめています。理由の一つは、調べ方がばらばらなことです。日本の実験は、口を切った蚊が「とまる回数」をはかりました。イランの実験は、蚊が「血を吸えた回数」をはかりました。蚊の種類も違います。
人数の少なさも問題です。日本の実験で、AB型の人は7人でした。くらべる相手になる基準の人も、ずっと同じ1人でした。こうした条件では、小さな差を確かめるのは難しくなります。
蚊に好かれやすくなると報告されたこと
2022年の論文の序文には、これまでの研究で、人が蚊に好かれやすくなると報告された場面がまとめられています。妊娠しているとき、マラリアにかかっているとき、そしてビールを飲んだあとです。
ふたごを調べた研究では、蚊への好かれやすさには、生まれつきの部分が大きいことも示されています。ただし、生まれつきでない要因もかかわります。2022年の研究は人数が少ないため、性別、年れい、食べ物などで分けた分析はしていません。
06まとめ
日本の64人の実験では、蚊がO型の腕にとまる回数は、A型より多くなりました。けれども、B型やAB型との差ははっきりせず、別の蚊ではAB型が一番好まれた研究もあります。「蚊はO型をよく刺す」は、今のところグレーです。
一方で、蚊にとても好かれる人がいることは、3年あまりの実験で確かめられました。好かれる人の布は、1年あまりたっても好かれ続けました。刺されやすさを知りたいなら、血液型より、肌のにおいを見るほうが近道かもしれません。
研究カルテ
日本・千葉県(研究チームの所在地)
- 研究チーム
- 千葉県にある害虫対策の研究所などの日本のチーム
- 調べた場所
- 日本の研究チームの実験室(蚊は岐阜県大垣市で採集した系統)
- 調べた動物
- ヒトスジシマカ(学名 Aedes albopictus)のメス
- 調べ方
- 64人が手と腕を蚊の入った水槽に入れ、10分間に蚊がとまった回数を基準の人とくらべた
- 分かったこと
- O型はA型より多くとまられた。B型・AB型との差ははっきりしなかった
- まだ分からないこと
- 血液型が、なぜ、どれくらい蚊の選び方にかかわるのか
- 論文
- Journal of Medical Entomology(2004年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Some people say mosquitoes like people with type O blood. Is this true?
In a Japanese study, 64 people put their arms into a tank of mosquitoes. The mosquitoes could land but could not bite. Each test lasted ten minutes. More mosquitoes landed on type O arms than on type A arms. But the differences with type B and type AB were not clear.
In a study in Iran, another kind of mosquito liked type AB blood the most. So the results are different from study to study. The Japanese team also said their results did not strongly support the idea.
A team in the United States tested the smell of people's skin. People wore nylon cloth on their arms to collect the smell. Some people were very popular with mosquitoes for more than a year. Their skin had more of some acids. Skin smell may matter more than blood type.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How many people joined the Japanese study?日本の研究には何人が参加しましたか。
64人が参加しました。35は水槽に入れた蚊の数です。
Q2. Which blood type did the mosquitoes in Iran like the most?イランの研究の蚊は、どの血液型を一番好みましたか。
イランのハマダラカの一種では、AB型が40%で一番多く、O型は15%でした。
Q3. What did the team in the United States study?アメリカのチームは何を調べましたか。
腕にまいたナイロンの布で、肌のにおいを集めて調べました。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Shirai, Y. et al. (2004) Landing Preference of Aedes albopictus (Diptera: Culicidae) on Human Skin Among ABO Blood Groups, Secretors or Nonsecretors, and ABH Antigens. Journal of Medical Entomology 論文確認済みdoi:10.1603/0022-2585-41.4.796
- 2De Obaldia, M. E. et al. (2022) Differential mosquito attraction to humans is associated with skin-derived carboxylic acid levels. Cell 論文確認済みdoi:10.1016/j.cell.2022.09.034
- 3Anjomruz, M. et al. (2014) Preferential feeding success of laboratory reared Anopheles stephensi mosquitoes according to ABO blood group status. Acta Tropica 論文確認済みdoi:10.1016/j.actatropica.2014.08.012
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





