「金魚の記憶は3秒」はウソ。金魚は水そうを乗せた車の運転まで覚えた

金魚は練習を重ねて、水そうつきの車を部屋の目印まで運転できるようになった。海の魚は、網でつかまった体験を11か月後も覚えていた。

No.007 8分で読めるえっ度 論文 2022年
白い壁の部屋の床を、車輪のついた四角い透明な水そうが走っている。中のオレンジ色の金魚が、水そうの前の壁にぴったり顔を向けている。金魚は背びれが1つ。ウソ
ウソ

判定の対象金魚の記憶は3秒しかもたない

30秒で読む

  1. 金魚は練習を重ねて、水そうつきの車を目印まで運転できた
  2. 出発点を変えても、にせの目印を置いても、正しい目印へ向かった
  3. 海の魚は、網でつかまった体験を11か月後も覚えていた

人に話すなら

金魚の記憶は3秒って言うけど、イスラエルの研究で金魚が車を運転したんだって。水そうに車輪がついてて、何回も練習したら、ちゃんと目印まで走らせられるようになったらしいよ。

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読む前に予想しよう

金魚の記憶は3秒しかもたない

「金魚の記憶は3秒しかもたない」。そんな話を一度は聞いたことがあるかもしれません。本当なら、金魚は何かを覚えても、すぐに忘れてしまうことになります。

ところがイスラエルの研究で、金魚が「車」を運転しました。水そうに車輪をつけ、金魚の動きに合わせて走る車です。6匹の金魚は練習を重ねるうちに、部屋の壁の目印まで車を走らせられるようになりました。

金魚の練習は、2日に1回行われました。3秒で忘れてしまうなら、前の練習を次の練習に持ちこすことはできません。さらに海の魚では、怖い体験を11か月後も覚えていたという研究もあります。証拠を順に見ていきます。

01金魚の動きで走る「水そうつきの車」を作った

研究したのは、イスラエルのネゲブ・ベングリオン大学のシャハル・ギボン(Shachar Givon)さんたちです。知りたかったのは、動物の「道を見つける力」が、すむ場所に関係なく働くのかどうかでした。そこで、水の中で暮らす金魚を、陸の上に連れ出すことにしました。

チームが作ったのは、車輪が4つついた台に水そうをのせた車です。水そうの上にはカメラがあり、金魚の位置と向きを見張っています。金魚が水そうの壁ぎわで外を向くと、車はその方向へ動きます。金魚が水そうのまん中にいると、車は止まります。

つまり金魚が水そうの壁に向かって泳げば、水そうごとその方向へ進みます。車にはレーザーで距離を測る装置もついていました。壁まで20cmより近づくと、ぶつからないように、その方向へはコンピューターが進ませません。

使った金魚は6匹で、体長は15〜18cmでした。実験の部屋は、たて3m・横4mです。壁には、ピンク色の板(たて60cm・横40cm)を目印としてはりました。車がこの板にふれたら、ごほうびのえさが1粒もらえます。

02練習を重ねると、金魚は目印へまっすぐ向かうようになった

1回の練習は30分です。えさのやりすぎをふせぐため、1回の練習で挑戦できるのは最大20回までにしました。練習は2日に1回、週に3回のペースでくり返しました。

最初の練習では、金魚はまだ車の動かし方を知りません。記録を見ると、部屋の中をあちこち、でたらめに動き回っていました。

ところが練習を重ねると、金魚は目印にたどり着く回数が増えました。目印までにかかる時間は短くなり、走る道のりも短くなりました。6匹の結果をまとめると、最初と最後の練習の差は、統計ではっきり確かめられました。

練習は2日に1回なので、金魚は前回の練習で覚えたことを、2日後の次の練習まで持ちこしていたことになります。 記憶が3秒で消えるなら、毎回ゼロからやり直しのはずです。

白い部屋の壁に、色の違う長方形の板が何枚もはってある。水そうつきの車が、その中のピンク色の板だけに向かってまっすぐ進んでいる。

03出発点を変えても、にせの目印を置いても、金魚は迷わなかった

金魚は道を覚えたのではなく、決まった動きの順番を丸暗記しただけかもしれません。それを確かめるため、チームは2匹の金魚で、車の出発点をばらばらに変えてみました。それでも金魚は、目印まで同じくらい効率よくたどり着きました。

次に、形は同じで色の違う板を、4つの壁すべてにはりました。にせの目印です。15回の挑戦で、金魚はにせの目印に向かおうとはせず、ピンク色の板へ進みました。

最後に、ピンク色の板を反対側の壁に移しました。金魚は最初、もとの場所へ向かい、何度もそこへ戻りました。けれども何回か失敗したあと、新しい場所の板へ向かいました。3回目の挑戦では、最初から新しい場所へまっすぐ進みました。

金魚は水そうの壁ごしに部屋を見ています。光は水とアクリルの壁を通るときに曲がるので、外の景色はゆがんで見えます。チームは、そのゆがみがあっても金魚が目印へ車を向けられたと書いています。

04海の魚は、網でつかまった体験を11か月後も覚えていた

もっと長い記憶を示した研究もあります。スイスのヌーシャテル大学のゼグニ・トリキ(Zegni Triki)さんたちは、ホンソメワケベラという海の魚を調べました。ほかの魚の体についた寄生虫を食べる、小さな魚です。

場所はオーストラリアのグレートバリアリーフにある、リザード島の近くのサンゴ礁です。2015年、チームは1つのサンゴ礁から、おとなのメス41匹を網でつかまえました。そのサンゴ礁にいたおとなの約6割にあたります。魚たちは研究所の実験に参加したあと、つかまえた場所に戻されました。

2016年6月、チームは別の研究のために、同じサンゴ礁へ魚をつかまえに行きました。ところが最初にねらった魚は、網を置くとすぐに隠れてしまいました。そこで記録を取ってみると、10匹のうち5匹が網を見て隠れました。

比べるために、少なくとも22か月はだれも魚をつかまえていない4つのサンゴ礁でも、同じことをしました。こちらでは、メス42匹のうち1匹も隠れませんでした。隠れた魚は、網を片づけると、また出てきました。チームは、魚がダイバーではなく網に反応したと考えています。

05それでも、はっきりしないことは残っている

ホンソメワケベラの研究は、魚に目印をつけて1匹ずつ見分けたわけではありません。隠れた5匹が、本当に前の年につかまった魚かどうかは確かめられていません。論文自身も、結果を「状況から見た証拠」だと書いています。ダイバーと網の両方がそろったときに隠れた可能性も、論文は認めています。

金魚の運転の研究も、目印がよく見える単純な部屋での実験です。チームは、もっと複雑な場所での研究が必要だと書いています。また、長い休みのあとも運転のしかたを覚えているかを確かめた結果は、この論文にはのっていません。

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もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

魚の長い記憶は、何十年も前から調べられてきた

トリキさんたちの論文は、魚の長い記憶についての昔の研究をまとめています。1973年の研究では、ニジマスが、3か月前に覚えた「レバーを押すとえさが出る」ことを思い出しました。ハゼの仲間は、となりの潮だまりに移されても、40日後に自分の潮だまりへ戻りました。

釣り針も記憶の研究に使われてきました。一度釣られたコイやサケは、1年たっても釣られにくくなったという報告があります。オーストラリアの淡水魚の一種は、実験で覚えた逃げ方を11か月後も思い出しました。ただし、この研究をした本人は、実験の場所に慣れていたことが結果に影響した可能性も書いています。

長く残る記憶の多くは、命にかかわる怖い体験の記憶です。網や釣り針につかまることは、命にかかわる出来事です。一度で覚えて次に生かすことが、生きのびるのに役立つと考えられています。

ほかの動物の長い記憶と比べると

トリキさんたちの論文は、魚以外の動物の例も並べています。鳴き鳥は仲間を8か月から3年、ハイエナは1年、サルは3年覚えていたという報告があります。ゾウやイルカでは、何十年も前の仲間を覚えていた例があります。

これに比べると、論文がまとめた魚の例は、数週間から数か月、長くて1年ほどでした。ただし、これで魚の記憶が短いと決まったわけではありません。論文によると、野生の動物で長い記憶を調べた研究そのものが、まだ少ないのです。論文は、自然の中で暮らす動物の記憶を、もっと調べる必要があると書いています。

魚の頭のよさは、なぜ低く見られてきたのか

オーストラリアのマッコーリー大学のカラム・ブラウン(Culum Brown)さんは、2014年に魚の頭のよさについての研究をまとめました。その結論は、魚の感覚や考える力は、ほかの背骨のある動物と同じくらいか、上回ることも多いというものです。

ブラウンさんは、人が思う魚の頭のよさと、研究で分かってきた実際の姿のあいだに、大きなずれがあると指摘しています。このずれは大事です。人が動物をどれくらいかしこいと思うかで、その動物を守るきまりが決まりやすいからです。

「陸に連れ出す」実験の工夫と限界

金魚の運転の研究で、チームは「すむ世界を入れかえる」という方法をとりました。ある動物を、まったく違う環境に置いて、ふだんと同じ課題をさせる方法です。もし水の中と同じように陸でも道を見つけられるなら、道を見つける力はすむ場所に関係なく働く、と考えられます。

一方で、今回の部屋は、ピンク色の板がどこからでも見える単純な場所でした。目印を目指して進むだけでも解ける課題です。チームは、陸の動物を水の中に連れていく実験もすれば、もっとはっきりしたことが言えると書いています。

06まとめ

イスラエルの研究で、6匹の金魚は水そうつきの車を運転し、部屋の目印までたどり着けるようになりました。練習は2日に1回で、金魚は前の練習の成果を次に持ちこしていました。出発点を変えても、にせの目印を置いても、金魚はピンク色の板を目指しました。

オーストラリアのサンゴ礁では、ホンソメワケベラが網を見て隠れました。前の年につかまった体験を、11か月後も覚えていたと考えられています。

「金魚の記憶は3秒」は、研究で支えられた話ではありません。家で金魚を飼っているなら、えさをあげる時間や場所を毎日そろえてみてください。金魚が先に待っているようになるかどうか、確かめられます。

RESEARCH FILE

研究カルテ

イスラエル・ベエルシェバ

研究チーム
イスラエルのネゲブ・ベングリオン大学のチーム(第一著者シャハル・ギボン)
調べた場所
イスラエルの大学の実験室(たて3m・横4mの部屋)
調べた動物
キンギョ6匹(学名 Carassius auratus)
調べ方
金魚の位置に合わせて動く「水そうつきの車」を作り、部屋の壁の目印まで運転させた
分かったこと
練習を重ねると、出発点を変えても、にせの目印を置いても、正しい目印にたどり着いた
まだ分からないこと
目印がよく見える単純な部屋での結果。もっと複雑な場所でも同じようにできるか
論文
Behavioural Brain Research(2022年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

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Can a Goldfish Remember for Only Three Seconds?

Many people say a goldfish can remember things for only three seconds. Scientists in Israel tested goldfish in a new way.

They put a fish tank on a small car with four wheels. A camera watched the fish. When the fish swam to one side of the tank, the car moved that way. The fish got food when the car reached a pink board on the wall.

Six goldfish practiced every two days. At first, they moved around the room at random. Later, they drove to the pink board faster. They also did not go to boards of other colors.

In the sea near Australia, another study looked at small cleaner fish. Some of these fish were caught in a net and then let go. Eleven months later, half of the fish there hid when they saw a net. Fish can remember much longer than three seconds.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. What did the car carry?その車は何をのせていましたか。

Q2. How often did the goldfish practice?金魚はどれくらいの間かくで練習しましたか。

Q3. What did half of the cleaner fish do eleven months later?11か月後、ホンソメワケベラの半分は何をしましたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Givon, S., Samina, M., Ben-Shahar, O. & Segev, R. (2022) From fish out of water to new insights on navigation mechanisms in animals. Behavioural Brain Research 論文確認済みdoi:10.1016/j.bbr.2021.113711
  2. 2PubMed:上の論文の要旨pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34896210/
  3. 3Triki, Z. & Bshary, R. (2019) Long-term memory retention in a wild fish species Labroides dimidiatus eleven months after an aversive event. Ethology 論文確認済みdoi:10.1111/eth.12978
  4. 4Brown, C. (2014) Fish intelligence, sentience and ethics. Animal Cognition 論文確認済みdoi:10.1007/s10071-014-0761-0

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい