標高3800mのハチドリは、夜に体温を大きく下げて過ごす。1羽は3.26℃まで下がった
アンデスの高い山のハチドリは、夜に体温を大きく下げてエネルギーを節約していた。1羽は体温3.26℃まで下がり、鳥で最も低い記録になった。

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- 高い山のハチドリは、夜に体温を大きく下げてエネルギーを節約する
- 1羽は体温3.26℃まで下がり、鳥で最も低い記録になった
- 体温の下げ方は種ごとに違い、親せきの近い種ほど似ていた
人に話すなら
アンデスの高い山にすむハチドリは、夜になると体温をぐっと下げるんだって。ある1羽は体温が3℃ちょっとまで下がったらしい。それでも朝には自分で体を温めて元にもどるんだよ。
読む前に予想しよう
ハチドリは、夜に体温を10℃より低くすることがある
アンデスの研究では、1羽が3.26℃まで体温を下げた。ふだんは36℃前後ある。
ハチドリは、とても小さな鳥です。花の前で空中に止まって、みつを吸います。この飛び方は、とても多くのエネルギーを使います。体の大きさのわりに使うエネルギーは、背骨のある動物の中で最も多いとされています。そんな鳥が、夜の気温が2〜6℃まで下がる高い山で、どうやって夜を越しているのでしょうか。
アメリカのニューメキシコ大学などのチームは、南米ペルーのアンデス山脈で、標高約3800mにすむハチドリの体温を一晩じゅう測りました。調べた6種すべてが、夜になると体温を大きく下げました。ある1羽の体温は、3.26℃まで下がりました。論文によると、鳥でも、冬眠しないほ乳類でも、これまでに報告された中で最も低い体温です。
ふだんのハチドリの体温は、36〜37℃ほどです。それが一晩で、30℃以上も下がったことになります。しかも多くのハチドリは、朝になると自分の力で体を温め直していました。
01夜に体温を下げる「休眠」で、エネルギーを節約する
ハチドリは、夜の間は何も食べられません。けれども、体温を高く保つには、たくさんのエネルギーが必要です。体が小さい動物ほど体の熱がにげやすく、寒い場所では特に大変です。アンデスのような高い山は、寒くて、空気がうすく、湿った場所です。ハチドリは、そんなアンデス山脈の標高約5000mのあたりまですんでいます。
そこで多くのハチドリが使うのが、「休眠」という方法です。休眠とは、体の働きを大きく落として、体温を下げる状態のことです。体温を保つのに使うエネルギーを、ぐっと減らせます。冬眠と違って、休眠は一晩のうちに終わります。ふつうは、ふだんより10〜30℃ほど体温が下がります。
ハチドリが休眠することは以前から知られていました。けれども、同じ場所にすむいくつもの種を比べ、休眠の違いがどこから来るのかを調べた研究は、ほとんどありませんでした。
02標高3800mの森で、6種26羽の体温を一晩じゅう測った
調査を行ったのは、ニューメキシコ大学のブレア・ウルフ(Blair Wolf)さんたちと、南アフリカのプレトリア大学などのチームです。2015年3月7日から18日にかけて、ペルーのボスケ・ハパニという森で調べました。標高は約3800mです。この時期の夜の長さは、約12時間でした。
チームは、かすみ網という細い網でハチドリをつかまえ、テントを改造した鳥小屋で一時的に飼いました。日が暮れる30分前からはエサをあげず、暗くなると1羽ずつ、夜を過ごすための小部屋に移しました。小部屋の中の気温は、外の気温と同じように変わります。
体温は、細い温度計を、おしりの穴に1〜2cm入れて測りました。温度計は、尾羽に小さなテープでとめました。夕方と朝には体重を量り、一晩でどれだけ体重が減ったかも調べました。体温が30℃より低かった時間を、休眠していた時間として数えました。

03まわりの気温と同じくらいまで体温を下げる種がいた
調べた6種すべてで、休眠が見られました。26羽のうち24羽が休眠しました。調査の間、夜の最低気温は2.4〜5.9℃でした。
体温の下げ方は、種によって違いました。英語でブラック・メタルテイルと呼ばれるハチドリ(学名 Metallura phoebe)は、まわりの気温とほぼ同じところまで体温を下げました。この種の休眠中の最低体温は、平均5.13℃でした。いちばん寒かった夜には、2羽がそれぞれ3.80℃と3.26℃まで下がりました。この種は、どこまで体温を下げるかの「下限」を持っていないように見えました。もっと寒い夜なら、さらに下がるのかもしれません。
一方、別の種(学名 Colibri coruscans)は、体温をおよそ8℃より下げないように保っていたようです。休眠の長さも、2.3時間から12.9時間まで、鳥によって大きく違いました。長く休眠した鳥ほど体温が低く、一晩で減った体重は少なくなりました。
朝の目ざめも速いものでした。ハチドリは1分間に1〜1.5℃ほどの速さで体温を上げました。体の小さな種では、この速さは、体の大きさから予想される値の1.6〜1.9倍ほどでした。中には、朝に上がる気温に合わせて体を温め始めた鳥もいました。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
親せきの近い種ほど、体温の下げ方が似ていた
ウルフさんたちは、ハチドリの家系図と、休眠の深さを比べました。すると、最低体温や一晩で減った体重には、近い親せきどうしほど似るという傾向がありました。特に「コケット」と呼ばれるグループの3種は、体温が低く、休眠も長い傾向がありました。コケットのグループは、アンデスの高い山に特に多く見られます。チームは、深く休眠できる体の性質が、このグループが高い山に広がった理由の1つかもしれないと考えています。
「親せきより、その日の寒さで決まる」という研究も
ところが、2023年に発表されたコロンビアの研究は、少し違う見方を示しました。コロンビアのバジェ大学などのチームは、アンデス山脈の西側で、標高差1920mにわたる3か所を調べました。29種249羽のハチドリを一晩ずつ測った、これまでで最大の調査です。こちらの調査では、夕方に人工のみつをおなかいっぱい与えてから測りました。
この調査では、休眠したのは29種のうち26種でした。調べた209羽のうち、休眠したのは109羽で、全体のおよそ半分でした。体の小さい鳥ほど休眠しやすかったのですが、それは気温が低いときだけでした。寒い夜には、休眠は長く深くなりました。チームは、休眠の長さや深さの違いの多くは、同じ種の中の個体差だと分析しています。家系の影響がはっきり出たのは「休眠するかどうか」の起こりやすさだけで、それ以外は小さいという結果でした。
寒くない低地のハチドリも休眠していた
2023年に発表された研究では、中米パナマの低地にすむハチドリ6種37羽が調べられました。気温が年じゅう高い場所です。それでも、6種すべてが休眠し、28℃以上の気温でも休眠に入ることがありました。また、アメリカとスイスのチームが別のハチドリ3種を赤外線カメラで観察すると、深い休眠だけでなく浅い休眠も使い分けていました。同じ夜に両方を使うこともありました。休眠は「するか、しないか」ではなく、さまざまな深さがあるようです。
冬眠する鳥は、ほとんどいない
冬眠する鳥として報告されているのは、ヨタカの仲間のプアーウィル(Phalaenoptilus nuttallii)だけです。野生のプアーウィルでは、皮ふの温度2.8℃から、体の中の温度が4.3℃と推定されています。ほ乳類でも、体温が5℃より低くなるのは、冬眠する動物にかぎられていました。今回のハチドリの記録は、一晩の休眠でありながら、冬眠する動物に並ぶ低さです。チームは、天気の悪い時期には、高い山のハチドリの中に何日も続けて休眠するものがいるかもしれないと書いています。
04まとめ
標高約3800mのアンデスで6種26羽のハチドリを調べると、6種すべてが夜に体温を大きく下げていました。1羽の体温は3.26℃まで下がり、鳥で最も低い記録になりました。ただし、つかまえて一晩小部屋に入れた状態での記録なので、野生で毎晩こうしているのかは、まだ確かめる必要があります。小さな鳥が、まわりの気温とほぼ同じ体温で一晩を過ごし、朝には自分で36℃の体にもどっているのです。
研究カルテ
ペルー アンデス山脈
- 研究チーム
- アメリカのニューメキシコ大学と南アフリカのプレトリア大学などのチーム(第一著者ブレア・ウルフ)
- 調べた場所
- ペルーのアンデス山脈、標高約3800mの森(ボスケ・ハパニ)
- 調べた動物
- 野生のハチドリ6種26羽
- 調べ方
- つかまえたハチドリを一晩1羽ずつ小部屋に入れ、外と同じ気温のもとで体温を測り続けた
- 分かったこと
- 6種すべてが夜に体温を大きく下げた。1羽は3.26℃まで下がった
- まだ分からないこと
- 野生で毎晩こうしているのか、それともエネルギーが足りないときだけなのか
- 論文
- Biology Letters(2020年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Hummingbirds are very small birds. They stay still in the air and drink from flowers. This uses a lot of energy. At night, they cannot eat, so they must save energy.
Scientists studied 26 hummingbirds of six kinds in Peru. The birds lived about 3,800 meters high in the mountains. The scientists checked the body temperature of each bird all night.
All six kinds lowered their body temperature at night. Their usual temperature is about 36 degrees. One bird went down to 3.26 degrees. This is the lowest body temperature ever found in a bird.
In the morning, most birds warmed up their bodies again by themselves. But the birds were kept in small rooms for the night. We still need to learn if wild birds do this every night.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. Where did the scientists study the hummingbirds?研究者は、どこでハチドリを調べましたか。
南米ペルーのアンデス山脈で調べました。
Q2. How low did one bird's body temperature go?1羽の体温は、何℃まで下がりましたか。
1羽は3.26℃まで体温を下げ、鳥で最も低い記録になりました。
Q3. Why do hummingbirds lower their body temperature at night?ハチドリは、なぜ夜に体温を下げるのですか。
夜は食べられないので、体温を下げてエネルギーを節約します。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Wolf, B. O. et al. (2020) Extreme and variable torpor among high-elevation Andean hummingbird species. Biology Letters 論文確認済みdoi:10.1098/rsbl.2020.0428
- 2Revelo Hernández, D. C. et al. (2023) Ecological drivers and consequences of torpor in Andean hummingbirds. Proceedings of the Royal Society B 論文確認済みdoi:10.1098/rspb.2022.2099
- 3Pollock, H. S. et al. (2023) Widespread Torpor Use in Hummingbirds from the Thermally Stable Lowland Tropics. Physiological and Biochemical Zoology 論文確認済みdoi:10.1086/722477
- 4Shankar, A. et al. (2022) A heterothermic spectrum in hummingbirds. Journal of Experimental Biology 論文確認済みdoi:10.1242/jeb.243208
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