ハチの巣へ人を案内する野鳥は、地元の人の呼び声に、外国の呼び声の約3倍よく応じた
人をハチの巣へ案内する野鳥ミツオシエ。地元と外国の人の呼び声を流すと、地元の声に強く応じた。鳥が土地ごとの声を覚えているらしい。

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- アフリカの野鳥ミツオシエは、人をハチの巣まで案内する
- 鳥を呼ぶ声は、口笛やうなり声など土地ごとに違う
- 鳥は、外国の呼び声より地元の呼び声によく応じた
人に話すなら
アフリカには、人をハチの巣まで連れていく野鳥がいるんだって。しかも地元の人の呼び声と外国の人の呼び声を聞き分けて、地元の声にずっとよく応じるらしいよ。
読む前に予想しよう
ミツオシエは、どの国の人の呼び声にも同じように応じる
タンザニアでもモザンビークでも、地元の人の呼び声に、外国の呼び声より強く応じた。
アフリカのタンザニアにくらすハッザの人たちは、ハチミツをとりに林へ入ると、口笛を吹きます。すると、地味な色の小鳥が近づいてきて、にぎやかに鳴きはじめます。鳥は木から木へと飛び移り、人はそのあとを追います。行き着いた先には、野生のミツバチの巣があります。
この鳥はノドグロミツオシエ(以下、ミツオシエ)です。人をハチの巣まで案内することで知られています。イギリスとアメリカの研究者が、この鳥の前で地元の人の呼び声と外国の人の呼び声を流してみました。すると、タンザニアの鳥は、地元の口笛に、ほかの音の3倍以上よく応じました。
鳥が人を案内すること自体は、200年以上前から知られていました。けれど、鳥が人の土地ごとの呼び声の違いまで聞き分けているのかは、確かめられていませんでした。今回の実験は、野生の鳥が、土地ごとに違う人の習わしに合わせてふるまいを変えているらしいことを示しました。
01ミツオシエは人を呼び、ハチの巣まで飛んで案内する
ミツオシエはアフリカの林にすむ鳥です。ハチの巣のありかを見つけるのが得意で、巣のロウを食べます。けれど、鳥にはハチをおとなしくさせて巣を開ける力がありません。
一方、人はけむりでハチをおとなしくさせ、巣を切り開くことができます。そこで、両者は手を組みます。鳥は人に向かって特別な声で鳴き、木から木へ飛んで巣の方向を示します。人は巣を開けてハチミツをとり、鳥は残ったロウや幼虫を食べます。
この協力は、人にとって大きな得になります。タンザニアのハッザの人たちの以前の調査では、ミツオシエに案内されると、1時間に3.3個のハチの巣が見つかりました。鳥なしでは1時間に0.5個でした。6倍以上の差です。
02国が違えば、ミツオシエを呼ぶ声も違う
ハチミツとりの人たちは、ミツオシエを呼ぶための特別な声を持っています。ところが、その声は土地ごとにまったく違います。
タンザニア北部のハッザの人たちは、メロディーのある口笛を吹きます。モザンビーク北部のヤオの人たちは、大きな「ブルルル」というふるえ声のあとに「フム」とうなります。アフリカのほかの地域にも、それぞれ違う呼び声があります。
ハチミツとりの人たちは、この呼び声を父親や年上の人から教わると話しています。そして、だれも決まった呼び声から外れないそうです。外れると、とれるハチミツが減ってしまうからです。
では、鳥のほうはどうでしょうか。どの呼び声にも同じように集まってくるのか。それとも、地元の人の呼び声を覚えていて、それによく応じるのか。これを確かめたのが、ケンブリッジ大学のクレア・スポティスウッド(Claire Spottiswoode)さんと、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のブライアン・ウッド(Brian Wood)さんです。
03同じ3種類の声を、2つの国で流してみた
実験の舞台は2か所です。1つはハッザの人たちがくらすタンザニアのキデロ丘陵、もう1つはヤオの人たちがくらすモザンビークのニアサ特別保護区です。
2人は、どちらの土地でも同じ3種類の音を用意しました。ハッザの口笛、ヤオの「ブルルル・フム」、そして、ハチミツとりの男の人が自分の名前を叫ぶ声です。最後の声は「人がいる」ことは伝わるが、鳥を呼ぶ合図ではない音として使いました。
実験はこう進みます。研究者1人と地元のハチミツとり2人が、林の中をまっすぐ歩きます。研究者はスピーカーから、3種類のうち1つの音を5秒おきに流し続けます。その間、だれもしゃべりません。モザンビークでは15分、タンザニアでは30分歩きました。タンザニアは乾いていて、ハチも鳥も少ないので、長めにしたのです。
その間に、ミツオシエが近づいてきて案内の鳴き声を出しはじめたら「応じた」と数えます。同じ鳥に2回当たらないよう、歩く道は前の道から500メートル以上はなしました。流す音も、1回ごとに別の人の録音を使いました。歩いた回数は、モザンビークで77回、タンザニアで75回です。
04タンザニアでは3倍、モザンビークでは2倍、地元の声によく応じた
結果ははっきりしていました。タンザニアでは、地元の口笛を流すと、歩いた回のうち81.5%で鳥が案内を始めました。外国のヤオの呼び声では24%、名前を叫ぶ声では26.1%でした。地元の口笛は、ほかの2つの音より3.26倍も鳥を引きつけたのです。
タンザニアの鳥にとって、ヤオの呼び声は、ただの人の声と同じあつかいでした。どちらにも、同じくらいしか応じなかったからです。
モザンビークでも、向きは同じでした。地元のヤオの呼び声では73.1%、外国のハッザの口笛では25.9%、名前を叫ぶ声では50%です。地元の呼び声は、ほかの2つより1.96倍よく鳥を引きつけました。
つまり、鳥は「人の声なら何でもよい」わけではありませんでした。しかも、どこでも口笛が好き、どこでもうなり声が好き、というわけでもありません。それぞれの土地で、その土地の人の呼び声によく応じたのです。

05声の届きやすさの違いでは説明できなかった
ここで、別の説明も考えられます。林の様子は国によって違います。タンザニアの乾いた林では口笛がよく届き、モザンビークの林ではうなり声がよく届くのかもしれません。それなら、鳥は単に「よく聞こえた音」に応じただけです。
2人はこれも確かめました。実験に使った77の録音を、両方の国の林で流しました。そして、3メートル先と30メートル先で音の大きさを測り、どれだけ弱まるかを比べました。
結果、ハッザの口笛が一番弱まりにくい音でした。けれど、地元の声が地元の林で特によく届く、ということはありませんでした。音の弱まり方を計算に入れても、鳥の応じ方の違いは説明できませんでした。
残る一番すなおな説明は、鳥が地元の人の呼び声を覚えているというものです。スポティスウッドさんたちはそう結論づけています。ただし、鳥がいつ、どうやって覚えるのかは、この実験では確かめていません。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
鳥はどうやって地元の呼び声を覚えるのか
考えられる道は2つあります。1つは、鳥が自分で経験から覚える道です。ある呼び声のあとに人についていくと、ロウが食べられた。これをくり返すうちに、その声を「よい相手の合図」として覚えるのかもしれません。
もう1つは、仲間から学ぶ道です。ハチの巣が開けられた場所には、若い鳥をふくむたくさんのミツオシエが集まり、残ったロウを食べます。そこで、どんな声の人が来たのかを見聞きして学ぶのかもしれません。研究チームは、1羽ずつ経験で覚えるより、仲間から学ぶほうが効率がよいはずだと考えています。鳥の数は、人よりずっと多いからです。ただし、ミツオシエが仲間から学ぶことは、まだ確かめられていません。
なぜ呼び声は土地ごとに違うのか
研究チームは、くらし方の違いが関係するかもしれないと考えています。ハッザの男の人たちは、ハチミツとりのときも弓矢を持ち歩き、動物を見つけるとそっと近づいて狩ります。インタビューで、口笛を使う理由の1つは「鳥のように聞こえるから」だと答えています。人の声だと、獲物に気づかれてしまいます。
ヤオの人たちは、畑仕事と漁がおもな仕事で、けものは狩りません。むしろ、ゾウやバッファロー、ライオンをさけたいのです。いかにも人らしい大きな声は、そうした動物を遠ざけるのに役立つのかもしれません。ただし、これはまだ確かめられていない考えです。
2026年には、同じチームのジェシカ・ファン・デル・ワル(Jessica van der Wal)さんたちが、モザンビーク北部の13の村で調べた結果を出しました。村どうしが遠いほど、呼び声は違っていました。林の音の伝わり方では説明できず、よその村から移ってきた人は、新しい村の呼び声に合わせているようでした。人の言葉の方言とよく似た広がり方です。
研究の歴史
ミツオシエが人を案内することは、1777年にはすでに学術誌で報告されていました。1989年には、ケニアのボランの人たちが、鳥の飛び方や鳴き方から巣の方向や距離を読み取っていると確かめられました。2016年には、スポティスウッドさんたちがモザンビークで実験しました。ヤオの「ブルルル・フム」を流すと、鳥に案内される確率は約33%から66%に上がりました。ハチの巣が見つかる確率も17%から54%に上がりました。2023年の今回の研究は、その声が「人の合図ならどれでもよい」のではなく、地元の合図でなければならないことを示しました。
消えかけている協力
この協力は、いま弱まりつつあります。研究チームは、養蜂が広まったこと、町が広がったこと、砂糖が手に入りやすくなったことをあげています。保護区から人が外に出されることもその1つです。研究チームは、この協力を守るには、土地ごとの伝統がどう生まれ、どう保たれてきたかを知る必要があると書いています。
06まとめ
アフリカの野鳥ミツオシエは、人をハチの巣まで案内します。タンザニアとモザンビークで同じ3種類の音を流すと、鳥はどちらの国でも、地元の人の呼び声に強く応じました。タンザニアでは3.26倍、モザンビークでは1.96倍の差です。
声の届きやすさの違いでは説明できず、鳥が地元の人の呼び声を覚えているらしいと分かりました。ただし、鳥がどうやって覚えるのかは、まだ分かっていません。
ハッザの口笛は、ミツオシエを呼ぶ合図として、父親や年上の人から教わってきたものです。その口笛を流すと、タンザニアの鳥は、歩いた回のうち8割以上で案内を始めました。
研究カルテ
タンザニア・キデロ丘陵
- 研究チーム
- イギリスのケンブリッジ大学のクレア・スポティスウッドと、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校のブライアン・ウッド
- 調べた場所
- タンザニア北部のキデロ丘陵と、モザンビーク北部のニアサ特別保護区
- 調べた動物
- 野生のノドグロミツオシエ(学名 Indicator indicator)
- 調べ方
- 森を歩きながら、ハッザの口笛・ヤオの呼び声・人が名前を叫ぶ声のどれか1つを流し、鳥が案内を始めるかを記録した
- 分かったこと
- どちらの国でも、鳥は地元の呼び声に強く応じた。声の届きやすさの違いでは説明できなかった
- まだ分からないこと
- 鳥がどうやって地元の声を覚えるのか。仲間から学ぶのかは確かめられていない
- 論文
- Science(2023年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
In Africa, a small bird called the honeyguide leads people to wild bees' nests. People open the nest and take the honey. The bird eats the wax that is left.
Honey hunters use special calls to find a honeyguide. The Hadza people in Tanzania whistle. The Yao people in Mozambique make a trill and a grunt.
Two scientists played both calls in both countries. They also played a man shouting his name. In Tanzania, the birds came to the local whistle more than three times as often. In Mozambique, they came to the local call about twice as often.
The local call did not travel better in its own forest. So the scientists think the birds learn the local call. We still do not know how the birds learn it.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. What does the honeyguide eat after people open the nest?人が巣を開けたあと、ミツオシエは何を食べますか。
鳥は、人がハチミツをとったあとに残ったロウを食べます。
Q2. How do the Hadza people call the bird?ハッザの人たちは、どうやって鳥を呼びますか。
タンザニアのハッザの人たちは、口笛でミツオシエを呼びます。
Q3. What do the scientists think?研究者はどう考えていますか。
音の伝わり方では説明できなかったので、鳥が地元の呼び声を覚えていると考えられています。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Spottiswoode, C. N. & Wood, B. M. (2023) Culturally determined interspecies communication between humans and honeyguides. Science 論文確認済みdoi:10.1126/science.adh4129
- 2Spottiswoode, C. N. et al. (2016) Reciprocal signaling in honeyguide-human mutualism. Science 論文確認済みdoi:10.1126/science.aaf4885
- 3van der Wal, J. E. M. et al. (2026) Cooperative human signals to honeyguides form local dialects. People and Nature 論文確認済みdoi:10.1002/pan3.70234
- 4ケンブリッジ大学(2023)プレスリリースcam.ac.uk/node/243671
- 5ケープタウン大学(2026)プレスリリースnews.uct.ac.za/article/-2026-01-22-humans-and-honeyguides-sp
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





