シドニーのオウムがゴミ箱を開け、住民は守りを強めた。カギを破る鳥も4羽いた
シドニー近郊のオウムがゴミ箱を開けると、住民はレンガや重りで守った。鳥がそれを破ると、住民はもっと強い守りに変えた。カギを破る鳥もいた。

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- キバタンがゴミ箱を開けると、住民はふたの守り方を工夫した
- 住民は近所のまねをし、鳥に破られるとより強い守りに変えた
- 調べた鳥の中には、カギつきのふたを破る鳥も4羽いた
人に話すなら
シドニーのオウム、ゴミ箱のふたを開けて生ゴミをあさるんだって。住民がレンガを置くとどかされて、近所のまねをして守りを強くしていったらしい。調べたら、カギつきのふたを破る鳥まで4羽いたんだよ。
読む前に予想しよう
キバタンにゴミ箱を開けられた住民は、守り方をだれにも聞かずに自分で考えることが多かった
くわしく答えた人の64%がほかの人から知った方法を使い、その多くは近所の人からだった。
オーストラリアのシドニーの近くでは、ゴミ収集の日の朝、家の前に大きなゴミ箱が並びます。そこへ、黄色いとさかの白いオウム、キバタンがやって来ます。ふたを開けて、中の生ゴミをあさるのです。
住民も負けてはいません。ふたにレンガをのせ、ゴム製のヘビを置き、水の入ったペットボトルをしばりつけます。ドイツのマックス・プランク動物行動研究所などのチームが、4つの町でゴミ箱3283個を調べました。すると、住民は近所の守り方をまね、鳥に破られるとさらに強い守りに変えていました。
人が動物の新しい技に対抗し、動物がまたそれを破る。チームは、人と野生動物のあいだでこうした「知恵くらべ」が起きているのかどうかを調べました。こうしたやりとりは、これまでほとんど研究されていませんでした。
01シドニーのキバタンは、ゴミ箱を開ける技を広めていた
キバタンは、オーストラリア東部にすむ大型のオウムです。シドニーでは、キバタンが家庭のゴミ箱のふたを開ける技が知られています。チームの以前の研究によると、この技は鳥から鳥へ見て覚えて広まり、地域ごとの伝統になっていました。
鳥がゴミをあさると、生ゴミが道に散らかります。困った住民は、ふたが開かないように工夫を始めました。けれども、ゴミ箱を守るのは簡単ではありません。収集車がゴミ箱を持ち上げて逆さにしたとき、ふたはちゃんと開かなければならないからです。
02ゴミ箱3283個を見て回り、守り方を13種類に分けた
2019年9月、チームはシドニーとウーロンゴンの地域にある4つの町を回りました。どれも、キバタンがゴミ箱を開けると報告のあった町です。ゴミ収集の日の朝、道に出されたゴミ箱を1つずつ調べ、合わせて3283個を記録しました。
守りがあれば、何のための守りか、どんな方法か、ゴミ箱のどこについているか、何でできているか、固定されているかを書きとめました。組み合わせは52通りありました。チームはそれを13種類にまとめ、守りの強さで段階に分けました。
一番弱い段階は、ゴム製のヘビのように、ゴミ箱そのものは変えない守りです。次が、レンガや石をのせるだけの守り。その上が、ちょうつがいに靴をはさんで、ふたが大きく開かないようにする守り。一番強いのは、重りをふたに固定する守りです。
チームが見たところ、ヘビやレンガのような弱い守りは、キバタンに破られていました。論文の写真には、ふたの上のレンガをどかすキバタンも写っています。一方、この時点では、靴をはさむ守りや、重りを固定する守りを鳥が破るところは見られませんでした。

03住民は、同じ通りの家の守り方をまねていた
守っているゴミ箱の割合は、町によって0%から50%までばらばらでした。チームは、守り方が地図の上でどう散らばっているかを調べました。すると、近くの家どうしで、守り方がよく似ていました。
チームはここで、「距離の測り方」を2つ比べました。1つは、まっすぐ結んだ距離。もう1つは、道を通って行くときの距離です。たとえば、裏の通りの家は、まっすぐなら近くても、道を通ると遠くなります。比べると、道を通った距離が近い家どうし、つまり同じ通りの家どうしのほうが、守り方がよく似ていました。
住民は、同じ通りでふだん目にする、となりの家の守り方をまねていると考えられます。 その結果、通りごとに同じ守り方の家がかたまっていました。
04鳥に破られると、住民はもっと強い守りに変えた
チームは2019年と2020年に、インターネットでアンケートもとりました。答えた1134人のうち、172人がゴミ箱を守ったことがありました。くわしく答えた人の64%が、ほかの人から知った方法を使っていました。そのうち60%は、近所や同じ通りの人から知ったと答えています。
守っていた人の61%は、年がたつにつれて、より強い守りに変えていました。守りを強めた理由で一番多かったのは、「キバタンに破られたから」で、強めた理由の39%でした。ある住民は、「レンガはしばらく効いたが、オウムがかしこくなりすぎた」と書いています。その人は、大通りの向こう側の近所の人にすすめられた棒に変えて、それが効いていると書いています。
統計で分析すると、1年たつごとに、住民がより強い守りを使う見こみは約3.6倍になっていました。キバタンがその町でゴミ箱を開け始めてからの期間が長いほど、見こみはさらに高くなりました。反対に、守りを弱めた理由で多かったのは、「近所でキバタンがゴミ箱を開けなくなったから」でした。
05カギを破る鳥もいたが、守りをやめる住民も増えていた
2025年、同じ研究グループは、ウーロンゴン市の北の海辺の町で続けた調査を発表しました。2023年と2024年の冬に、2年間で合わせて1419個のゴミ箱を調べました。すると、守っていないゴミ箱の割合は、55.6%から64.8%へ増えていました。
守りが壊れたまま放っておかれたゴミ箱は、ごくわずかでした。住民は、自分で守りを外していたのです。チームは、守りを続けるのは手間や負担が大きいのだろうと考えています。
2024年、チームは近くのキバタン193羽に、1羽ずつ見分けられる色の印をつけました。そして、鳥が集まる場所にゴミ箱を置き、挑戦させました。用意したのは、守りのないゴミ箱、重りをのせたゴミ箱、ちょうつがいに空のペットボトルをはさんだゴミ箱、専用のカギをつけたゴミ箱の4種類です。
その結果、ゴミ箱を最後まで開けられると確かめられたのは17羽でした。重りを破れる鳥は13羽、ペットボトルは3羽でした。そして、専用のカギを破る鳥が4羽いました。2019年に同じ地域で見つかった、ゴミ箱を開けられる鳥は9羽でした。ただし2019年は実験をしていないので、少なく見積もっていた可能性もあるとチームは書いています。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
「知恵くらべ」と呼ぶための条件
チームは、人と鳥の「知恵くらべ」を、生き物の軍拡競争という考えから定義しています。2つの種が、相手の変化に合わせて、学習した行動を何度も変え合うこと、というものです。強める方向だけでなく、弱める方向の変化も含みます。
2022年の研究で、住民の側が鳥に合わせて守りを変えていることは、はっきりしました。けれども、鳥の側が人の守りに合わせて技を変えたかどうかは、直接は測っていません。チームは、少なくとも1回は鳥が守りを破るという変化があったことを示す、間接的な証拠だとしています。
町全体でカギを配ると、どうなるか
2025年の研究で、チームはコンピューターの中に、家とキバタンのモデルを作りました。そして、守り方を近所から学ぶ家や、技をほかの鳥から学ぶ鳥を動かし、どうなるかを調べました。
ある市だけが全部の家に強い守りを義務づけると、その市で開けられるゴミ箱は減りました。ところが、守りの弱いゴミ箱を選ぶ鳥は、となりの市へ移りました。となりの市では、開けられるゴミ箱が一時的に増えました。さらに、強い守りを破る技を鳥が覚えるのも早まりました。義務づけをやめれば、技はいずれまた生まれる、ともチームは書いています。ただし、このモデルはかなり単純にしたものだと、チーム自身がことわっています。
ゴミ箱を開けるのは、ほとんどオスだった
2025年の研究では、ゴミ箱を開けた鳥のうち性別の分かる11羽中10羽がオスでした。地域の鳥のオスとメスの数はほぼ同じなので、この技はほとんどオスだけのものと考えられます。また、この町では10年以上前からゴミ箱開けが見られているのに、開けられる鳥は、観察できた印つきの鳥の約11%だけでした。チームは、自分で新しい技を思いつく鳥はめったにおらず、ほかの鳥から学ぶことが大事な役割を果たしていると考えています。
この研究の弱点
2022年の住民アンケートは、自分から答えた人の報告です。2025年の鳥の実験は、1つの地域の印つきの鳥で行ったものです。研究者がゴミ箱を用意した実験では、鳥がふだんより多くゴミ箱にふれることになります。チームは、ふだんから1年中ゴミ箱にふれていることにくらべれば、影響は小さいと考えています。
06まとめ
シドニー近郊では、キバタンがゴミ箱のふたを開けて生ゴミをあさります。住民は、同じ通りの家の守り方をまねながら、鳥に破られるとより強い守りに変えていました。ゴム製のヘビやレンガは、鳥に破られていました。
ただ、鳥の側が人に合わせて技を変えたかどうかは、まだ直接は確かめられていません。2025年の調査では、守りをやめる住民も増えていました。
2024年に193羽に印をつけて調べると、専用のカギを破るキバタンが4羽いました。
研究カルテ
オーストラリア・ヘレンズバラ
- 研究チーム
- ドイツのマックス・プランク動物行動研究所などのチーム(第一著者バーバラ・クランプ)
- 調べた場所
- オーストラリアのシドニーとウーロンゴンの地域(ゴミ箱の調査は4つの町)
- 調べた動物
- キバタン(学名 Cacatua galerita)と、ゴミ箱を守る住民
- 調べ方
- 4つの町でゴミ箱3283個の守り方を記録し、住民1134人にアンケートをとった
- 分かったこと
- 住民は近所のまねをして守り、年がたつほど強い守りに変えていた。弱い守りは鳥に破られていた
- まだ分からないこと
- 鳥が人の守りに合わせて、どこまで技を変えているのか。強い守りをどれだけ破れるのか
- 論文
- Current Biology(2022年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
In Sydney, Australia, big white parrots called cockatoos open trash bins. They lift the lid and eat the food waste inside. The trash ends up all over the street.
People started to protect their bins. Some put bricks on the lids, and some tied bottles of water to them. Scientists checked 3,283 bins in four towns. People often copied the ideas of neighbors on the same street.
The birds learned to move the bricks. So people changed to stronger ways to protect their bins. Later, scientists tested marked birds with different bins. Four birds could even get past a lock.
But in one town, more people stopped protecting their bins. The scientists think it may take too much time and work. The game between people and birds is still going on.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. How many bins did the scientists check in four towns?研究者たちは、4つの町でいくつのゴミ箱を調べましたか。
4つの町で、3283個のゴミ箱を調べました。
Q2. Whose ideas did people often copy?人々は、だれのアイデアをよくまねていましたか。
同じ通りの近所の人の守り方を、よくまねていました。
Q3. Why do the scientists think some people stopped protecting their bins?ゴミ箱を守るのをやめた人がいたのはなぜだと、研究者たちは考えていますか。
守りを続けるのは手間や負担が大きいのだろうと、研究者は考えています。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Klump, B. C., Major, R. E., Farine, D. R., Martin, J. M. & Aplin, L. M. (2022) Is bin-opening in cockatoos leading to an innovation arms race with humans? Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2022.08.008
- 2コンスタンツ大学リポジトリ:上の2022年の論文の著者版nbn-resolving.de/urn:nbn:de:bsz:352-2-1erw5znnwedel6
- 3Chimento, M., Dalmaijer, E. S., Klump, B. C. & Aplin, L. M. (2025) Temporal dynamics and policy implications in an innovation arms race. Philosophical Transactions of the Royal Society B 論文確認済みdoi:10.1098/rstb.2024.0265
- 4Klump, B. C. et al. (2021) Innovation and geographic spread of a complex foraging culture in an urban parrot. Science 論文確認済みdoi:10.1126/science.abe7808
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





