インドネシアのオウムは、役目の違う道具を最大3種類作って種を取り出した。サルの仲間以外で初めて
インドネシアのオウムが、硬い実の種を取るため、役目の違う最大3種類の道具を木から作って使い分けた。野生で道具のセットを使う例は、それまでチンパンジーだけだった。

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- 実の中の種を取るため、木から最大3種類の道具を作って使った
- 3種類はそれぞれ、すき間に差しこむ・膜を破る・種をかき出す役目だった
- 飼育下では、2本の道具をセットで運ぶ鳥も現れた
人に話すなら
インドネシアのオウムって、実の中の種を取るのに、木から最大3種類の道具を作るんだって。すき間に差しこむ丈夫な棒、膜を破る細い棒、種をかき出す棒を持ちかえて使うらしいよ。
読む前に予想しよう
道具をセットで使う動物は、人以外ではサルの仲間しか知られていない
インドネシアのシロビタイムジオウムも、役目の違う道具をセットで使うと報告された。
道具を使う動物は、チンパンジーやカラスなど、いくつか知られています。では、役目の違う何本かの道具を順番に使う動物はどうでしょう。人のほかには、野生のチンパンジーが知られていたくらいでした。
2021年、その仲間にオウムが加わりました。インドネシアの島にすむシロビタイムジオウムです。硬い実の中の種を食べるために、木から最大3種類の道具を作り、順番に使ったのです。サルの仲間以外で、道具のセットを作って使う様子が記録されたのは初めてとされています。
このオウムは、オーストリアの研究室では道具の名人として知られていました。けれども、森の中で道具を使う姿は確認されていませんでした。「研究室だからできるだけではないか」という疑問に、野生でつかまえた鳥で答えた研究です。
01研究室の名人なのに、ふるさとの森では道具を使う姿が見られなかった
シロビタイムジオウムは、インドネシアのタニンバル諸島だけにすむ、白い小型のオウムです。オーストリアのウィーン獣医大学には、このオウムを飼って研究する「ゴフィン・ラボ」があります。ここの鳥たちは、道具を使う問題を解くのが得意です。研究チームによると、その力は道具使いの名手であるニューカレドニアガラスや類人猿に並びます。
研究チームは、タニンバル諸島にも調査基地を置いています。マーク・オハラ(Mark O'Hara)さんたちが2019年に出した報告では、野生のオウムはいろいろな種類の実や種を食べていました。食べ物によって取り出し方も違いました。ただ、道具を使う様子は見られませんでした。研究チームは、くちばしだけで十分にえさが取れるので、道具を使う必要がないのかもしれないと考えました。
023種類の道具は、すき間に差しこむ・膜を破る・種をかき出す役目だった
そこで研究チームは、調査基地で野生のオウム15羽を一時的に飼い、近くでくわしく観察しました。観察の対象は、この島に生えるミフクラギという木の実でした。英語では「海のマンゴー」と呼ばれます。実の中のかたい部分に、種が埋まっています。
15羽のうち2羽が、道具を作り始めました。材料は木です。2羽は、太さや長さなどの性質が違う3種類の道具を作りました。
1つ目は、丈夫な道具です。実のかたい部分の背中側にあるすき間に、くさびとして差しこみます。2つ目は細い道具です。縦向きに差しこんで、種を包んでいる外側の膜を突き破ります。3つ目は中くらいの道具です。縦にも横にも動かして、中の種をかき出します。
オウムには手がありません。2羽は、道具を作る間も使う間も、片足で実をつかんだままでした。くちばしにくわえられる道具は1本だけです。それでも2羽は、必要に応じて道具を持ちかえ、種を取り出していました。道具の作り方も、1通りではありませんでした。研究チームは、はっきり違う2つの作り方を報告しています。

03研究室の実験で、2本をセットで運ぶ鳥が現れた
1本目の後に2本目を使うのは、「1本目で穴があいたのを見て、次を思いついた」だけかもしれません。チンパンジーでも昔、同じ疑問が出されました。疑問を解いたのは、コンゴのチンパンジーの観察です。シロアリの巣に穴をあける短くてかたい棒と、シロアリを釣る長くしなる棒を、使う前から2本まとめて運んでいました。しかも、巣の状態によっては、釣る棒だけを運びました。
ウィーン獣医大学のアントニオ・オスナ=マスカロ(Antonio Osuna-Mascaró)さんは、この考え方をオウムで試しました。研究室の10羽に、透明な箱を見せます。箱の奥にはカシューナッツのかけらがあり、手前を薄い紙の膜がふさいでいます。道具は2本です。先のとがった短い棒は膜を破れますが、ナッツに届きません。長くしなる棒はナッツに届きますが、膜を破れません。
結果、10羽のうち7羽が、2本を順番に使う方法を自分で見つけました。フィガロという名のオスは、最初の挑戦でわずか31秒で解きました。メスのフィニも34秒でした。
次の実験では、膜のある箱と、膜のない箱を、ばらばらの順に出しました。膜のない箱は、長い棒1本で取れます。5羽が参加し、最初に差しこむ道具を正しく選んだ回数は128回でした。まちがいは22回でした。
最後の実験では、箱を高さ104cmの台の上に置き、道具は離れた机に置きました。道具を1本ずつ運ぶと、何度も往復しなければなりません。台へは、はしごを登るか、飛んでいく必要がありました。
すると、4羽が2本の道具をまとめて運びました。くり返し運んだ3羽は、いつも短い棒を長い棒に差しこみ、1つにして運びました。長い棒は、半分に割ったストローでできていました。キウイというオウムは、膜のある箱のときは17回中17回、2本を運びました。膜のない箱のときに2本を運んだのは、16回中5回だけでした。
04必要なときだけセットを運べた鳥は、多くなかった
ただし、どの鳥も上手に運び分けたわけではありません。ピピンというオスは、膜のある箱には22回中22回、2本を運びました。でも、膜のない箱にも22回中11回、2本を運んでいます。フィガロは、膜のない箱にも9回中7回、2本を運びました。2本を運んだのは1回だけのメスや、一度も運ばなかった鳥もいました。
研究チームも、慎重な見方をしています。2本をまとめやすかったのは、短い棒が長い棒にちょうど差しこめる形だったからかもしれません。ほかの形の道具でも同じことができるかは、これから調べる必要があります。
野生のほうにも、まだ分からないことがあります。道具を作った2羽は、一時的に飼われていた鳥でした。森で自由にくらす鳥にも同じ行動をしている手がかりはありますが、種全体に広がった行動ではないようです。研究チームは、一部の鳥が自分で思いついたものだと考えています。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
「道具のセット」がなぜ特別なのか
動物の道具使いの多くは、1本の道具で1つの問題を解くものです。ラッコが石で貝を割る、カラスが棒で虫を引き出す、といった例です。これに対して、役目の違う2本以上の道具を同じ目的のために使うことを「道具のセット」と呼びます。役目が違えば、使う順番や動かし方も変えなければなりません。
2023年の論文によると、人以外で、野生で道具のセットを使うと、たまたまの記録をこえて報告されている動物は、チンパンジーとシロビタイムジオウムの2種だけです。チンパンジーの例は、1995年の論文で、コンゴ北部のヌドキの森から報告されました。
研究の歴史:チンパンジーをめぐる論争
ヌドキの森の報告の後、10年ほど論争が続きました。2004年、研究者のリチャード・バーン(Richard Byrne)さんは、こう指摘しました。チンパンジーは2本を「セット」と考えているのではなく、別々の問題に1本ずつ答えているだけかもしれない、と。その後、コンゴのグアルーゴ・トライアングルでの長い観察で、チンパンジーが巣の状態に合わせて道具を運び分けていることが分かりました。バーンさん自身も、それを認める立場に変わりました。
オウムの研究室の実験は、この流れをそのままなぞったものです。「運び分け」ができれば、2本を最初からセットとして考えている証拠になる、という考え方です。
オウムの道具使いは、本当に珍しいのか
オウムの仲間が道具を使う報告は、これまで少数の種にかぎられていました。ところが2025年の研究で、動画サイトの映像を調べたところ、自分の体をかくなどの道具使いが17種で新たに見つかりました。道具を使うと知られたオウムは、11種(全体の3%)から28種(7%)に増えました。研究チームは、今いるオウムの11〜17%が道具を使える可能性があると見積もっています。「珍しい」と思われていたのは、観察が足りなかったせいかもしれません。
05まとめ
インドネシアのタニンバル諸島で、一時的に飼われた野生のシロビタイムジオウム2羽が、木から最大3種類の道具を作りました。すき間に差しこむ、膜を破る、種をかき出す、という役目の違う道具です。オーストリアの研究室では、2本の道具をまとめて運ぶ鳥も現れました。
ただ、森の中でどれくらいの鳥が道具を使っているのかは、まだ分かっていません。それでも、道具のセットを使う動物は、サルの仲間だけではなくなりました。次に台所でフライ返しと菜ばしを持ちかえるとき、くちばし1つで同じことをするオウムがいると思い出してみてください。
研究カルテ
インドネシア・タニンバル諸島
- 研究チーム
- オーストリアのウィーン獣医大学などのチーム(第一著者マーク・オハラ)
- 調べた場所
- インドネシアのタニンバル諸島の調査基地。続きの実験はオーストリアの研究室
- 調べた動物
- シロビタイムジオウム(学名 Cacatua goffiniana)
- 調べ方
- 野生の15羽を一時的に飼い、硬い実から種を取り出す様子を記録した。研究室では2本の道具が要る箱を作った
- 分かったこと
- 2羽が木から最大3種類の道具を作り、持ちかえて使った。研究室では2本をセットで運ぶ鳥もいた
- まだ分からないこと
- 森の中で、どれくらいの鳥がこの道具を使っているのかは分かっていない
- 論文
- Current Biology(2021年、2023年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Goffin's cockatoos are small white parrots from islands in Indonesia. Scientists kept fifteen wild birds for a short time. They watched how the birds ate a hard fruit. The seed inside is hard to get.
Two birds made tools from wood. They made up to three different kinds. They put a strong tool into a gap in the fruit. A thin tool broke the skin around the seed. A third tool helped them take the seed out.
In a lab in Austria, birds had to use two tools to get a nut. Some birds carried both tools together to a high table. This may show that they planned to use both tools. But some birds also carried both tools when they needed only one.
Before this study, only chimpanzees were known to use tool sets in the wild. We still do not know how many wild cockatoos do this in the forest.
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. What did the two birds make tools from?2羽は何から道具を作りましたか。
2羽は木から、最大3種類の道具を作りました。
Q2. What did the thin tool do?細い道具は何をしましたか。
細い道具は、種を包んでいる膜を破るのに使われました。
Q3. What did some birds do in the lab?研究室で、一部の鳥は何をしましたか。
一部の鳥は、2本の道具をまとめて高い台まで運びました。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1O'Hara, M. et al. (2021) Wild Goffin's cockatoos flexibly manufacture and use tool sets. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2021.08.009
- 2Osuna-Mascaró, A. J. et al. (2023) Flexible tool set transport in Goffin's cockatoos. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2023.01.023
- 3Vetmeduni Vienna(2023)Flexible tool set transport in Goffin's cockatoosvetmeduni.ac.at/en/universitaet/infoservice/presseinformatio
- 4Vetmeduni Vienna Goffin Labvetmeduni.ac.at/en/cognition/goffin-lab
- 5Lambert, M. L. et al. (2023) Recent developments in parrot cognition: a quadrennial update. Animal Cognition 論文確認済みdoi:10.1007/s10071-022-01733-2
- 6Bastos, A. P. M. et al. (2025) Evidence of self-care tooling and phylogenetic modeling reveal parrot tool use is not rare. iScience 論文確認済みdoi:10.1016/j.isci.2025.112156
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





