カレドニアガラスは、短い部品をつないで長い道具を作った。8羽中4羽が教わらずに

1本では届かない短い部品を渡すと、8羽のカラスのうち4羽が、教わらずに部品をつないで長い道具を作った。1羽は4本つなぎまで作った。

No.109 8分で読めるえっ度 論文 2022年
黒いカレドニアガラスが、くちばしで細い棒を短い透明な筒に差しこんでいる。足もとには、同じような短い筒と棒がいくつか転がっている。

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  1. 短い部品を渡すと、8羽のうち4羽がつないで長い道具を作った
  2. エサが近いときは、つながずにそのまま使うことが多かった
  3. 1羽は、3本や4本をつないだ道具まで作った

人に話すなら

カレドニアガラスに短い筒と棒を渡したら、8羽のうち4羽が自分で差しこんでつないで、長い道具にしてエサを取ったんだって。1羽は4本つなぎまで作ったらしいよ。

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カラスは、人に手本を見せてもらってから部品をつなぐようになった

短い棒が2本あります。どちらも、ほしい物には届きません。大人なら、2本をつなげば長くなる、とすぐに思いつきます。けれど、新しい道具を自分で考えて作る力は、人の子どもでも5歳から9歳ごろにならないと現れないとされています。

イギリスやドイツなどの研究チームが、南太平洋のニューカレドニアにすむカラス、カレドニアガラスにこの問題を出しました。1本ではエサに届かない短い部品を8羽に渡すと、4羽が教わらずに部品をつなぎ、長い道具を作ってエサを取りました。そのうち1羽は、3本や4本をつないだ道具まで作りました。

部品を組み合わせて1つの道具を作る動物は、人のほかには、飼育されている類人猿で数例が報告されているだけでした。そこに、鳥が加わったのです。

01部品をつないで道具を作るのは、人以外ではとても珍しい

道具を使う動物は、サル、カラス、オウムなど、いろいろ知られています。けれど、2つ以上の部品をしっかりつないで、持ち運べる1つの道具にする例は、ほとんどありません。

野生のチンパンジーも、いくつかの物を組み合わせることはあります。西アフリカのギニアでは、平たい石の下に別の石をかませて台を安定させ、3つ目の石でナッツを割るチンパンジーがいます。けれど、台は地面に置いたままです。1つにつながった道具として持ち運ぶわけではありません。

いちばん有名なのは、100年ほど前の観察です。ヴォルフガング・ケーラー(Wolfgang Köhler)という研究者が調べた、飼育されているチンパンジーのスルタンは、2本の竹をつないで長いさおを作り、おりの外のバナナを引き寄せました。ただしスルタンが成功したのは、人が竹の穴に指を差しこんで見せたあとでした。それまでに1時間以上、竹をいじっていました。次の日には、すぐには同じことをくり返しませんでした。

028羽のカラスに、1本では届かない短い部品を渡した

研究をしたのは、マックス・プランク鳥類学研究所のアウグステ・フォン・バイエルン(Auguste von Bayern)さんと、オックスフォード大学のアレックス・カセルニク(Alex Kacelnik)さんたちです。実験の場所は、ドイツのゼーヴィーゼンにある、オックスフォード大学の鳥の研究施設でした。

カラスは8羽で、オス4羽とメス4羽です。どれも2010年に野生でつかまえた大人のカラスでした。カレドニアガラスは、野生でも小枝などの道具を穴に差しこんで、エサを取り出します。ただし、部品をつなぐ課題を見たことは、一度もありませんでした。

実験の道具は、一部が透明な箱です。箱の正面から15センチ奥の溝に、エサが置いてあります。正面の細いすき間から棒を差しこんでエサを押すと、エサは横の穴から外に落ちます。カラスたちは最初に、15センチの長い棒を渡されました。8羽とも、最初の1回でエサを取り出しました。

次に、長い棒をなくして、長さ8センチほどの短い部品だけを渡しました。部品は2種類です。1つは注射器の筒で、中が空いています。もう1つは、筒に入るくらい細い木の棒です。筒の入り口の近くには子ども用の粘土が詰めてあり、棒を強く押しこむと抜けにくくなります。どちらも1本では、エサに届きません。

034羽が数分で部品をつなぎ、すぐに箱へ運んでエサを取った

8羽のうち4羽が、筒に棒を差しこんで1本の長い道具を作り、エサを取り出しました。成功するまでに部品をいじっていた時間は、1羽ごとに合計すると、どれも4分から6分ほどでした。うまくいかない試し方をくり返して少しずつ覚えた、という様子はほとんどありませんでした。

4羽は、道具を作るとすぐに箱へ運び、エサをねらいました。3羽は、その後のテストでも続けて道具を作りました。残りの1羽も、2回参加をこばんだあとは成功を続けました。

成功しなかった4羽は、短すぎる部品を箱に差しこむことを続けました。部品をつなごうとすることは、ほとんどありませんでした。

チームは、ほかの部品でも試しました。注射器の筒のかわりにストローを、木の棒といっしょにモールを渡しました。部品を台に立てずに、床にばらまいたテストもしました。4羽とも、新しい部品でも道具を作りました。ただし、メスのテュミュルトが床で作った道具は、使っている途中でばらばらになりました。

黒いカレドニアガラスが、つないで長くなった棒を透明な箱のすき間に差しこみ、箱の奥のエサを押し出している。箱の中のエサまでの距離は、つないだ棒の長さとちょうど同じくらい。

04エサが近いときは、わざわざつながなかった

カラスは、つなぐことそのものが楽しくて、つないでいただけかもしれません。チームはこれを確かめるため、箱にもう1本、正面から6センチの近い溝を作りました。近い溝のエサなら、短い部品1本で届きます。

エサを遠い溝と近い溝に、決まりのない順番で置き、それぞれ12回ずつテストしました。渡したのは、短い部品だけです。

エサが遠いとき、カラスが最初からつないだ道具を差しこんだのは、79.2%でした。エサが近いときは、29.2%でした。4羽とも、エサが遠いときのほうがよくつなぎました。ただし、偶然ではないとはっきり言える差が出たのは、4羽のうち2羽だけでした。

051羽のオスは、3本や4本をつないで道具を作った

最後に、チームはさらに短い4.5〜5センチほどの部品を渡しました。エサは正面から12センチ奥です。2本つないでも届きません。3本以上つなぐ必要があります。

このテストを受けたのは3羽です。2羽は、2本つなぎの道具をすぐに作って試しました。けれど届かず、3本目をつなごうとはしませんでした。

オスのマンゴーは違いました。最初の回から、2本つなぎの道具に3本目をつなごうとしました。はじめは押しこむ力が足りず、しっかりした道具になりませんでした。4回目からは、しっかりした3本つなぎの道具を作り、エサを取り出しました。6回目と9回目には、4本つなぎの道具も作って、箱のエサを動かしました。チームによると、人以外の動物で、3つ以上の部品から道具を作った例は、これが初めてです。

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なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

偶然つながっただけではないのか

いちばん考えやすい説明は、偶然です。カレドニアガラスには、穴に棒を差しこんでエサを探す性質が、生まれつきあります。筒の穴をつついているうちにたまたま棒がはまり、それが長い道具になると気づいた。そして、エサがもらえたので、くり返すようになった。この説明なら、むずかしい頭の働きを考えなくてもすみます。

けれどチームは、この説明では合わない点をいくつも挙げています。成功した4羽は、エサの見える箱に集中していて、筒の中のエサを探していたわけではありませんでした。つなぐときの動きも、エサを探すときの動きと違いました。そしてマンゴーは、2本つなぎに3本目を足すことを、最初の回から試しました。偶然から始まったとは考えにくい、とチームは書いています。

それでも、カラスの頭の中はまだ見えない

チームは、カラスがどう考えて道具を組み立てたのかは「今のところ分からない」とはっきり書いています。頭の中で部品を動かすようすを思い描いた可能性はあります。けれど、それを確かめる方法はまだありません。チンパンジーと鳥で、同じ頭の働きを使っているとも限りません。また、参加したカラスは8羽だけで、成功したのは4羽です。エサが近いか遠いかで使い分けたテストでは、はっきりした差が出たのは2羽だけでした。

なぜカレドニアガラスは道具がうまいのか

カレドニアガラスは、野生で道具を作ることで知られています。2004年には、野生のカラスが小枝を選び、余分な部分を切り落とし、先をかぎ状に削るという3つの手順で、かぎ付きの道具を作るようすが報告されました。人以外で、野生でかぎ付きの道具を作ると知られている動物は、この鳥だけです。

2018年には、かぎ付きの道具を使うと、かぎのない道具よりも何倍も速くエサを取れることが確かめられました。道具の形が少し変わるだけで、エサを取る速さが大きく変わるのです。道具をうまく作れるカラスほど得をする暮らしが、こうした力を育てたのかもしれません。

オウムも、2つの物を組み合わせて使った

2022年には、オウムの仲間のシロビタイムジオウムが、2つの物を組み合わせて使えることが報告されました。1つの物で、もう1つの物の動きを操ってエサを取る課題です。部品をつないで1つにするわけではありませんが、組み合わせて道具を使う力が、サルの仲間のほかでも進化したことを示す例です。

06まとめ

8羽のカレドニアガラスに、1本ではエサに届かない短い部品を渡しました。4羽が、教わらずに4〜6分のうちに部品をつなぎ、長い道具を作ってエサを取りました。

エサが近いときは、つながずにそのまま使うことが多くありました。オスのマンゴーは、2本では届かないとき、3本や4本をつないだ道具まで作りました。ただし、カラスが頭の中で何を考えていたのかは、まだ分かっていません。

100年ほど前のチンパンジーは、1時間以上竹をいじり、人に竹の穴を指で示してもらってから、竹をつなぎました。カラスは、手本なしで、数分でつなぎました。

RESEARCH FILE

研究カルテ

ドイツ・ゼーヴィーゼン

研究チーム
イギリスのオックスフォード大学とドイツのマックス・プランク鳥類学研究所などのチーム(第一著者アウグステ・フォン・バイエルン)
調べた場所
ドイツ・ゼーヴィーゼンにある、オックスフォード大学の鳥の研究施設
調べた動物
野生でつかまえたカレドニアガラス8羽(学名 Corvus moneduloides)
調べ方
1本ではエサに届かない、差しこめばつながる短い筒と棒を渡し、カラスがどうするかをビデオで記録した
分かったこと
4羽が教わらずに部品をつないでエサを取った。1羽は3本・4本つなぎの道具も作った
まだ分からないこと
カラスが頭の中で何を考えて組み立てたのか。野生のカラスも部品をつなぐことがあるのか
論文
Scientific Reports(2018年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Crows Build Long Tools From Short Parts

New Caledonian crows often use sticks to get food. Scientists gave eight crows some short parts. Each part was too short to reach the food in a box.

Four crows pushed one part into another. They made one long tool and got the food. Nobody showed them how to do it. It took them only about four to six minutes.

When the food was close, the crows often used one short part. One crow, Mango, did even more. He joined three or four parts to make a longer tool.

About one hundred years ago, a chimpanzee joined two pieces of bamboo. But a person showed him the hole in the bamboo first. Scientists still do not know what the crows were thinking.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How many crows made a long tool?長い道具を作ったカラスは何羽ですか。

Q2. What did Mango do?マンゴーは何をしましたか。

Q3. What did the crows often do when the food was close?エサが近いとき、カラスはどうすることが多かったですか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1von Bayern, A. M. P. et al. (2018) Compound tool construction by New Caledonian crows. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-018-33458-z
  2. 2Hunt, G. R. & Gray, R. D. (2004) The crafting of hook tools by wild New Caledonian crows. Proceedings of the Royal Society B 論文確認済みdoi:10.1098/rsbl.2003.0085
  3. 3St Clair, J. J. H. et al. (2018) Hook innovation boosts foraging efficiency in tool-using crows. Nature Ecology & Evolution 論文確認済みdoi:10.1038/s41559-017-0429-7
  4. 4Osuna-Mascaró, A. J. et al. (2022) Innovative composite tool use by Goffin's cockatoos. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-022-05529-9

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

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