カラスは合図の数だけ1〜4回鳴き分けた。最初の1声の音から、全部の回数がある程度分かった

3羽のカラスが、数字や音の合図に合わせて1〜4回鳴き分けた。最初の1声の音から全部の回数が予想でき、鳴く前に回数を決めていたらしい。

No.014 7分で読めるえっ度 論文 2026年
暗い実験室で、黒いハシボソガラスが画面の前にとまり、くちばしを開けて鳴いている。画面には色のついた形が1つ光っている。

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  1. カラスは合図を見聞きして、その数だけ1〜4回鳴き分けた
  2. 最初の1声の音から、全部で何回鳴くかが予想できた
  3. まちがいは、途中で数を見失ったときに起きていた

人に話すなら

カラスって、合図を見せると、その数だけ鳴き分けられるんだって。しかも最初の1声の音をコンピューターで調べると、全部で何回鳴くかを半分以上当てられたんだって。鳴く前に回数を決めてるらしい。

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読む前に予想しよう

カラスは、まちがえるとき、合図とまったく違う回数を鳴くことが多い

小さな子どもに「いくつある?」と聞くと、まだ数の言葉を使いこなせない子は、物の数だけ声を出すことがあります。「いち、いち、いち」と3回言って、3つだと伝えるのです。数を声の回数で表すのは、数える力の始まりの1つと考えられています。

ドイツの研究チームが、3羽のハシボソガラスにこれと似たことを教えました。色つきの数字や音を合図に見せると、カラスはその数だけ、1回から4回まで鳴き分けました。しかも、最初の1声の音を調べると、全部で何回鳴くかがある程度予想できました。

動物が鳴く回数は、ふつうは気持ちの高ぶりで変わると考えられてきました。興奮するほどたくさん鳴く、というわけです。けれど今回のカラスは、合図に合わせて、自分で回数を決めて鳴いていました。

01声の回数を自分で決めて鳴ける動物は、ほとんど知られていなかった

動物の中には、鳴く回数で大事なことを伝えるものがいます。北アメリカの小鳥アメリカコガラは、警戒の声に入れる「ディー」という音の数を、敵の大きさによって変えます。

けれど、こうした回数の変化は、気持ちの高ぶりから自然に出るものだと考えられてきました。自分の意思で鳴く回数を決めるには、2つの力が必要です。1つは数を扱う力、もう1つは声を思いどおりに出す力です。

ハシボソガラスは、この2つを両方持っている数少ない鳥です。ドイツのテュービンゲン大学のアンドレアス・ニーダー(Andreas Nieder)さんの研究室は、何年もかけてこのことを確かめてきました。2019年には、カラスが合図に合わせて鳴いたり、鳴かずにがまんしたりできることを示しています。

そこで、同じ研究室のダイアナ・リャオ(Diana Liao)さんたちは考えました。数の力と声の力を組み合わせれば、カラスは決まった回数だけ鳴けるのではないか。

023羽のカラスに、数字と音の合図で鳴く回数を教えた

実験に参加したのは、3羽のハシボソガラスです。カラスは、暗くした防音の部屋で、画面の前に立ちます。

カラスが画面の前に頭を置くと、試行が始まります。画面には、合図が出ます。合図は2種類ありました。1つは色のついたアラビア数字の「1」「2」「3」「4」です。もう1つは、0.5秒の4種類の音です。どちらも、カラスにとってはもともと意味のない記号や音です。

カラスは、合図が表す数だけ鳴きます。鳴き終わったら、画面の「エンター」のボタンをくちばしでつつきます。鳴いた回数が合図と同じならエサがもらえ、違えばもらえません。カラスは何か月もかけて、この手順を覚えました。

03合図どおりに鳴き、まちがえても1回多いか少ないかだった

3羽とも、合図どおりの回数で鳴くことができました。数字の合図でも音の合図でも、1から4のどの数でも、でたらめに鳴いた場合よりずっとよく当てました。

まちがえるときにも、決まった形がありました。たいていは、合図より1回多いか1回少ないかでした。また、合図の数が大きいほど、まちがいが増え、ずれも大きくなりました。人や動物が、数を数えずにおおよそでつかむときにも、同じ形のまちがいが出ます。

合図が数字でも音でも、成績はほとんど変わりませんでした。チームは、カラスが「数字の3」や「音の3」を覚えたのではなく、その奥にある「3」という数をつかんでいた、と考えています。

04鳴く前に、何回鳴くかを決めていた

では、カラスはどうやって回数を合わせているのでしょうか。考えられる方法は2つです。

1つは、鳴きながら回数を確かめる方法です。それなら、合図から最初の1声までの時間は、合図の数に関係なく同じになるはずです。もう1つは、鳴く前に回数を決めておく方法です。それなら、たくさん鳴く準備ほど時間がかかり、最初の1声が遅くなるはずです。

結果は後者でした。合図の数が大きいほど、最初の1声が出るまでの時間が長くなりました。3羽それぞれで、数字の合図でも音の合図でも同じでした。

チームは、さらに確かめました。1つ1つの鳴き声から、23項目の音の特徴を取り出します。そして、最初の1声の音の特徴と、合図からその1声までの時間をコンピューターに覚えさせ、全部で何回鳴くかを当てさせました。

すると、コンピューターは約55%の割合で回数を当てました。でたらめなら約25%です。最初の1声が出るまでの時間を使わずに、音の特徴だけで当てても、結果は偶然より良いままでした。カラスの最初の1声には、すでに「これから何回鳴くか」が表れていたのです。

黒いハシボソガラスが、画面の前で首を少し下げ、くちばしで画面の四角いボタンをつついている。そばの台には小さなエサが置かれている。

05まちがえたカラスは、途中で数を見失っていた

次にチームは、カラスがまちがえた試行を調べました。まちがいの原因は2つ考えられます。最初から回数を決めまちがえたのか、それとも、正しく始めたのに途中で数を見失ったのか。

最初の1声を調べると、答えが出ました。まちがえた試行でも、最初の1声は、実際に鳴いた回数より、合図の数のほうによく合っていました。カラスは正しい回数で始め、途中でずれていたのです。

さらに、鳴き声の特徴は、1声目、2声目、3声目と進むにつれて、決まった向きに少しずつ変わっていました。そのため、1つ1つの声が「何番目の声か」をコンピューターで読み取れます。読み取ると、まちがいの種類も見えてきました。多く鳴いたときは、同じ番目の声をくり返す「言いよどみ」が多く出ていました。少なく鳴いたときは、途中の番目を飛ばす「飛ばし」が多く出ていました。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

人とカラスでは、声の並べ方が逆だった

2026年、同じチームは、人にも同じ課題をしてもらいました。参加したのは26人です。人には「カー」や「カ」と声を出してもらい、数は1から8まで広げました。予備のテストで、1から4では全問正解になってしまったからです。

すると、人とカラスで、声の長さの変わり方が逆になりました。カラスは、たくさん鳴くときほど、1つ1つの声が短くなりました。最初の1声から少し短くなっていたので、全体の回数を先に決めて、それに合わせて声を作っていたと考えられます。人の言葉でも、長い言葉ほど1つ1つの音が短くなる傾向が知られています。

一方の人は、たくさん声を出すときほど、1つ1つの声が長くなりました。チームは、人が頭の中で「1、2、3」と1つずつ数えながら声を出したためだと考えています。数の言葉を持っていることが、かえって声の並べ方を変えたのかもしれません。

同じ研究室が積み重ねてきたこと

ニーダーさんの研究室は、カラスの数の力を長く調べてきました。2021年には、カラスが「何もない」ことを、0という数に近いものとしてあつかえることを報告しました。2022年には、見せた数と同じ回数だけ画面をつつけることを示しました。2023年には、ある形を見せると、その形と結びつけた数を思い浮かべられることを報告しています。

数とは別に、並べ方の力も調べています。2022年には、かっこの記号を、内側と外側の組み合わせを守って並べる課題で、カラスが人の子どもと同じくらいの成績を出しました。サルより良い成績でした。

なぜカラスにこんなことができるのか

カラスは、歌を学ぶ鳥のなかまです。歌を学ぶ鳥の脳には、歌を作る神経の集まりがあり、これが声を思いどおりに出すことを支えていると考えられています。さらに、カラスの脳で考える仕事をする部分には、数に反応する神経細胞があることが分かっています。チームは、この2つの働きが組み合わさって、回数を決めて鳴く力が生まれていると考えています。

人とカラスの祖先が分かれたのは、3億2000万年以上前です。脳のつくりもかなり違います。それでも、決まった数の声を出すという、似た力を持つようになりました。

研究の限界

実験に参加したカラスは3羽だけです。どのカラスも何か月も訓練を受けていて、野生のカラスが自然にこうした鳴き分けをしているかは分かりません。また、コンピューターが回数を当てられたのは約55%で、完全ではありません。3羽はそれぞれ違う鳴き声を使っていて、ある1羽で覚えさせたコンピューターは、ほかのカラスの回数をほとんど当てられませんでした。

06まとめ

ドイツの研究で、3羽のハシボソガラスは、数字や音の合図に合わせて1〜4回鳴き分けました。まちがえるときは、たいてい1回多いか1回少ないかでした。

合図の数が大きいほど最初の1声が遅くなり、最初の1声の音からは全部の回数が予想できました。カラスは鳴く前に回数を決め、まちがえるときは途中で数を見失っていたのです。

ただし、カラスは人のように1、2、3と唱えて数えているわけではありません。数をおおよそでつかむしくみを使っています。合図の「4」を見たカラスは、1声目を出す前から、4回分の声の準備を始めていたらしいのです。

RESEARCH FILE

研究カルテ

ドイツ・テュービンゲン

研究チーム
ドイツのテュービンゲン大学のダイアナ・リャオ、アンドレアス・ニーダーらのチーム
調べた場所
ドイツ・テュービンゲン大学の実験室
調べた動物
ハシボソガラス3羽(学名 Corvus corone)
調べ方
色つきの数字と、4種類の音を合図にして、その数だけ鳴くよう訓練した。鳴き声の音の特徴を23項目で分析した
分かったこと
合図どおりに1〜4回鳴けた。鳴く前に回数を決めていて、最初の1声に回数が表れていた
まだ分からないこと
野生のカラスが鳴く回数で何かを伝えているのか。脳のどこで回数を管理しているのか
論文
Science(2024年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Crows Can Call a Set Number of Times

Scientists in Germany trained three crows. The crows saw a number on a screen or heard a sound. Then they had to call one to four times. When the number of calls was right, they got food. The crows practiced this task for many months.

All three crows did the task well. When they made a mistake, they usually called just one time more or less.

The crows started to call later when the number was bigger. A computer studied the sound of the first call. It guessed the total number of calls more than half the time. So the crows seemed to plan the number before they started.

Crows do not say one, two, three like people. They have a rough sense of numbers. Young children use a similar skill before they learn number words.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How many crows did the scientists train?科学者は何羽のカラスを訓練しましたか。

Q2. What did the crows get when they were right?正しく鳴けたとき、カラスは何をもらいましたか。

Q3. What did the first call tell the scientists?最初の1声から、科学者は何が分かりましたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Liao, D. A. et al. (2024) Crows "count" the number of self-generated vocalizations. Science 論文確認済みdoi:10.1126/science.adl0984
  2. 2Liao, D. A. et al. (2026) Investigating Menzerath's law in crows and humans during cued vocal 'counting'. Animal Cognition 論文確認済みdoi:10.1007/s10071-026-02054-4
  3. 3Brecht, K. F. et al. (2019) Volitional control of vocalizations in corvid songbirds. PLOS Biology 論文確認済みdoi:10.1371/journal.pbio.3000375
  4. 4Liao, D. A. et al. (2022) Recursive sequence generation in crows. Science Advances 論文確認済みdoi:10.1126/sciadv.abq3356

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい