ヨウムが、入れかえたカップの下の玉を当てるゲームで、ハーバード大生と14条件中12で互角

色の玉をカップで隠し、カップを入れかえて玉の行方を当てるゲーム。ヨウムは子どもを上回り、大学生とも14通り中12通りで互角以上だった。

No.002 7分で読めるえっ度 論文 2020年
灰色の体に赤いしっぽのヨウムが止まり木の上から身を乗り出し、テーブルにふせた黒い小さなカップの1つを、くちばしでつついている。

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  1. カップを入れかえても、ヨウムは玉の行方を追えた
  2. 6〜8歳の子どもには、すべての条件で勝った
  3. 大学生とも、14通りのうち12通りで互角以上だった

人に話すなら

ヨウムっていう鳥がさ、カップを何回も入れかえたあとで、下に隠した玉の場所を当てるゲームで、ハーバードの大学生と互角だったんだって。一番むずかしい問題だけは人間が勝ったらしい。

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読む前に予想しよう

ヨウムのグリフィンは、カップ当てゲームで6〜8歳の子どもに勝った

テーブルの上に、色の違う毛糸の玉が4つ並んでいます。黒いカップで玉を隠し、カップを2つずつ入れかえます。入れかえが終わると、黄色の玉が1つ見せられます。同じ色の玉はどのカップの下にあるか、という問題です。これを、灰色のインコのなかまのヨウムが解きました。

アメリカのハーバード大学などのチームが、22歳のヨウム「グリフィン」と人間を、同じゲームで比べました。グリフィンは、6〜8歳の子どもにはすべての条件で勝ちました。ハーバード大学の学生とも、条件の組み合わせ14通りのうち12通りで、互角か少し上の成績でした。

見えなくなった物を頭の中で動かす力は、人間の考える力の土台の一つです。それが人間と3億年以上前に分かれた鳥にも、大人の人間に近いレベルで見られたのです。ただし、調べたヨウムは1羽だけです。

01見えない玉の位置を、頭の中で入れかえ続けるゲーム

研究を中心になって進めたのは、ハーバード大学のフラグ・パイリアン(Hrag Pailian)さんです。ヨウムの研究を長く続けるアイリーン・ペパーバーグ(Irene Pepperberg)さんも加わりました。

使ったのは「シェルゲーム」と呼ばれるカップ当てです。まず、直径2.5センチほどの毛糸の玉を2〜4個、トレーに並べます。玉の色は緑・青・白・オレンジ・黄色から選びます。約2秒見せたあと、黒いカップで全部の玉を同時に隠します。

次に、カップを2つ同時に持ち、2秒かけて位置を入れかえます。入れかえの回数は0〜4回です。最後に、隠した玉と同じ色の玉を見せて、どのカップの下にあるかを答えてもらいます。

0回のときは、最初の位置を覚えておくだけです。入れかえがあると、頭の中の「どの色がどこにあるか」を、そのたびに書きかえなければなりません。研究チームが調べたかったのは、この書きかえる力です。

02ヨウムは練習なしで、人間が遊ぶのを見ただけで始めた

グリフィンは、生後7.5週でブリーダーから引き取られて以来、隠れた物の理解や言葉などの実験に参加してきました。英語の言葉を約30語話し、色の名前を含む40語以上を理解します。

実験の前、グリフィンは練習を1回もしていません。2人の人間が見本のゲームをするのを、横で見ていただけです。答えるときは、正しいと思うカップをくちばしでつつきます。正解すると、カシューナッツのかけらがもらえました。

チームは、ヨウムが人の動きをヒントにしないよう工夫しました。答える前に、実験者はすべてのカップに軽くさわります。直前にさわったカップを選ぶ、という手がかりを使えないようにするためです。実験者は、カップではなくヨウムのくちばしを見ていました。

ヨウムがよそ見をして入れかえを見ていなかったときは、別の人がその回を止めました。この「やり直し」は全部で7回ありました。グリフィンは約50日かけて、1日2〜3回ずつ、全部で120回のゲームに答えました。

03人間の側は、21人の大学生と21人の子ども

人間の参加者は、ハーバード大学の学生21人と、6〜8歳の子ども21人です。大人はグリフィンと同じ120回、子どもは36回に答えました。子どもには、4回入れかえる問題は出しませんでした。

ここで1つ問題があります。人間は「黄色はまん中」のように、言葉で覚えてしまえます。これでは、見た物を頭の中で動かす力を正しく測れません。

そこで大学生には、ゲームのあいだずっと、2けたの数字を声に出してくり返してもらいました。数字を言い続けていると、頭の中で言葉をくり返して覚えることがしにくくなります。子どもには、数字を言わせるのは負担が大きすぎました。そこで様子を見守り、色の名前を声に出していた3人を結果から外しました。

机の上に黒いカップが4つ並び、人の両手がそのうち2つを同時に持ち上げて、弧をえがくように位置を入れかえている。止まり木のヨウムが首をのばして、じっとカップを見ている。

04子どもには全部勝ち、大学生とは14通り中12通りで互角

グリフィンは、すべての条件で、当てずっぽうよりはっきり高い成績でした。比べる人間の成績は、統計のモデルを使って「この範囲に入れば同じくらい」という幅を出しました。

結果、グリフィンは6〜8歳の子どもを、すべての条件で上回りました。大学生とは、条件の組み合わせ14通りのうち12通りで、範囲の中か、それより上でした。

人間が勝ったのは、玉が4個で、3回か4回入れかえる一番むずかしい2通りです。玉4個・3回入れかえのとき、グリフィンの正解率は62.5%でした。これは子どもの予想範囲の上限60.8%よりは上でした。4回入れかえでは、子どもの3回入れかえの成績と同じくらいまで下がりました。

05むずかしい問題で成績が落ちた理由を、1年後に確かめた

チームは、成績が落ちた理由をいくつか考えました。1つは、やる気です。実験の終わりごろ、グリフィンはカップ4つの準備を見ただけで、参加を断ることがありました。

そこで、最初の実験が終わってから11か月後に、2つめの実験をしました。玉は4個、入れかえは毎回4回にそろえます。変えたのは、最後に聞く玉そのものが、4回の入れかえのうち何回動いたかです。

やる気が原因なら、どの条件でも成績は同じように下がるはずです。ところが結果は違いました。聞かれた玉が一度も動かなかったときは、正解率100%でした。動いた回数が増えるほど、成績はおおむね下がりました。1回と2回は75%、3回は33%、4回は58.3%でした。

研究チームは、成績を下げたのはやる気ではなく、頭の中で位置を書きかえる作業そのものの限界だろうと考えています。ただし、この実験も1羽だけで、数字を並べて比べただけです。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

「覚える力」と「頭の中で動かす力」は別もの

見たものを少しのあいだ覚えておく記憶を、作業記憶といいます。大人の人間が一度に覚えておける物の数は、3〜4個までといわれます。鳥やサルでも、同じくらいの限界が見つかっています。

一方、覚えたものを頭の中で動かしたり書きかえたりする力は、動物ではほとんど調べられていませんでした。動物に答えてもらえるテストがなかったからです。カップ当ては、ヨウムと人間の子どもと大人が、まったく同じ手順で取り組める方法でした。

この研究では、子どもは物を覚える力そのものが、まだ大人に届いていませんでした。玉4個を入れかえなしで覚えるだけの問題でも、子どもは大人より成績が低かったのです。グリフィンは、入れかえのない問題では、どれも大人と同じく満点に近い成績でした。

鳥の小さな脳に、サル並みの数の神経細胞

鳥の脳は、サルよりずっと小さいのが普通です。それでもヨウムのように頭のよい鳥がいるのはなぜでしょうか。

2016年、チェコのカレル大学などのチームが、鳥の脳の神経細胞を数えました。インコや鳴き鳥の脳には、同じ重さのサルの脳の平均2倍の神経細胞がありました。大きなインコやカラスでは、前脳の神経細胞の数が、脳がずっと大きいサルと同じか、それ以上でした。

3億年はなれた鳥と人間の頭が、なぜ似ているのか

鳥と人間の共通の祖先は、3億年以上前にさかのぼります。研究チームは実験の前から、ヨウムにもこの力があると予想していました。野生では、動き回るヒナや天敵の位置を追い続ける必要があるからです。

では、なぜ遠くはなれた鳥と人間で似た力が見られるのでしょうか。研究チームは、2つの可能性を挙げています。1つは、似た環境の中で、別々に似た力を身につけた可能性です。もう1つは、遠い祖先から受けついだしくみを、今も共通して使っている可能性です。どちらなのかは、まだ分かっていません。

研究方法の工夫と限界

一番の限界は、調べたヨウムがグリフィン1羽だけだという点です。研究チームは、1羽がくり返し安定して見せた成績は、その種が持ちうる力を表すと考えています。それでも、ほかのヨウムが同じようにできるかは分かりません。

もう1つは言葉の問題です。グリフィンは色の名前を知っています。大学生には数字を言わせて言葉で覚えるのを防ぎましたが、グリフィンが心の中で色の名前を使っていなかったかは、確かめきれていません。研究チームは、成績の出方からその可能性は低いと見ています。それでも、これから調べる課題だとしています。

06まとめ

ヨウムのグリフィンは、カップで隠した色の玉の行方を、入れかえのたびに頭の中で追うことができました。6〜8歳の子どもには全部の条件で勝ち、ハーバード大学の学生とも14通り中12通りで互角以上でした。

人間がはっきり勝ったのは、玉4個を3回か4回入れかえる、一番むずかしい問題だけでした。その理由を調べると、聞かれた玉が動いた回数が増えるほど、成績は下がる傾向がありました。

グリフィンが受けた練習は、人間2人の見本を見ることだけでした。大学生たちは、練習問題を6回解いてから本番に挑んでいます。

RESEARCH FILE

研究カルテ

アメリカ(マサチューセッツ州ケンブリッジ)

研究チーム
アメリカのハーバード大学とジョンズ・ホプキンス大学のチーム(第一著者フラグ・パイリアン)
調べた場所
ハーバード大学(アメリカ・マサチューセッツ州)
調べた動物
22歳のオスのヨウム「グリフィン」1羽(学名 Psittacus erithacus)
調べ方
色の玉をカップで隠し、カップを0〜4回入れかえて、指定した色の玉がどのカップにあるかを当てさせた
分かったこと
子どもには全条件で勝ち、大学生とも14通り中12通りで互角以上。玉4個を3〜4回入れかえると成績が落ちた
まだ分からないこと
調べたのは1羽だけ。ほかのヨウムや別の鳥でも同じかどうか
論文
Scientific Reports(2020年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

A Parrot Plays the Cup Game with College Students

Griffin is a gray parrot at Harvard University in the United States. He was 22 years old when he played a special cup game. He can say about 30 English words.

In the game, a scientist hides small colored balls under cups. Then the scientist moves the cups around. At the end, the player must find the ball of one color. Griffin did not practice at all. He only watched two people play first.

Twenty-one college students and twenty-one children also played. Griffin did better than the children in every type of game. He was as good as the students, or better, in 12 of 14 types.

The students won only the hardest games. In those games, there were four balls and three or four moves. The scientists studied only one parrot. So we do not know yet if other parrots can do the same.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How old was Griffin when he played the game?ゲームをしたとき、グリフィンは何歳でしたか。

Q2. How did Griffin learn the game?グリフィンはどうやってゲームを覚えましたか。

Q3. Which games did the students win?大学生が勝ったのはどのゲームですか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Pailian, H. et al. (2020) Age and Species Comparisons of Visual Mental Manipulation Ability as Evidence for its Development and Evolution. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-020-64666-1
  2. 2Harvard Gazette(2020)African grey parrot outperforms children and college studentsnews.harvard.edu/gazette/story/2020/07/african-grey-parrot-o
  3. 3Olkowicz, S. et al. (2016) Birds have primate-like numbers of neurons in the forebrain. PNAS 論文確認済みdoi:10.1073/pnas.1517131113
  4. 4Pepperberg, I. M. et al. (1997) Development of Piagetian object permanence in a grey parrot (Psittacus erithacus). Journal of Comparative Psychology 論文確認済みdoi:10.1037/0735-7036.111.1.63

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい