インコのヨウム8羽中7羽が、自分ではエサと交換できない輪を、交換できる仲間に渡した

自分では使えないエサの引きかえ用の輪を、ヨウムは隣の仲間に渡した。仲間が使えないときは、あまり渡さなかった。

No.180 8分で読めるえっ度 論文 2025年
透明な板で仕切られた台の上で、灰色の体に赤い尾のヨウムが、板の小さな丸い穴ごしに、くちばしにくわえた金属の輪を隣のヨウムのくちばしへ渡している。

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  1. 自分ではエサと交換できないとき、ヨウムは輪を隣の仲間に渡した
  2. 仲間が輪を使えないときは、あまり渡さなかった
  3. 別の形の実験では、ヨウムはあまり仲間に分けなかった

人に話すなら

ヨウムっていうインコに、エサと交換できる輪を持たせて、自分は交換できないようにしておくんだって。そうすると、交換できる隣の仲間に、くちばしで輪を渡すらしいよ。

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ヨウムは、自分では使えないエサの引きかえ用の輪を、隣の仲間に渡すことがある

台の上に、灰色のインコが2羽、透明な板をはさんで並んでいます。アフリカにすむヨウムです。片方の前には、金属の小さな輪が10個あります。この輪は、窓口で人に渡すとクルミのかけらと交換してもらえます。ところが、この鳥の窓口はふたで閉じられています。

隣のヨウムの窓口は開いています。でも、隣の鳥は輪を1つも持っていません。2羽のあいだの板には、くちばしが通るくらいの穴があいています。輪を持った鳥は、輪をくわえて穴から隣の鳥に渡しました。1つ、また1つと渡しました。

ドイツのマックス・プランク鳥類学研究所のチームが、2020年にこの実験の結果を発表しました。調べたヨウム8羽のうち7羽が、輪を渡す役になった1回目から輪を渡しました。相手がエサを手に入れるのを自分から手伝う行動を、哺乳類以外の動物で確かめたのは初めてだと論文は書いています。ただし、その後の別の形の実験では、ヨウムの「親切」はあまり続きませんでした。

01自分の窓口は閉じられ、隣の仲間は輪を持っていない

実験をしたのは、デジレ・ブルックス(Désirée Brucks)さんとアウグステ・フォン・バイエルン(Auguste von Bayern)さんです。場所は、スペインのテネリフェ島にある動物園「ロロ・パルケ」の中の研究所でした。実験は2018年8月から2019年2月まで行われました。

実験に参加したのは、2014年にこの動物園で生まれ、人の手で育てられたヨウム8羽です。8羽はメス6羽とオス2羽でした。どの鳥も、前の研究で「輪を人に渡すとエサがもらえる」ことを覚えていました。輪は直径2センチの金属の輪です。

実験の台は、透明な板で左右に分けられていました。正面の板には、鳥1羽ごとに1つずつ、交換用の窓口があります。研究者は窓口の前に座り、手のひらを上に向けて差し出します。輪がその手に置かれると、もう片方の手でクルミのかけらを渡します。2羽のあいだの仕切りには、輪を受け渡しできる穴が2つありました。

1回の実験で、研究者は片方の鳥に輪を10個わたします。そのあと10分間、何が起きるかを見ました。クルミの入った黒いカップは、2羽のどちらからも同じくらいの距離に置かれました。見えるけれど、くちばしは届かない場所です。

028羽中7羽が、1回目から輪を隣に渡した

本番では、輪を持った鳥の窓口をふたで閉じ、隣の鳥の窓口だけを開けました。輪を持った鳥は、輪を隣に渡さない限り、何ももらえません。隣に渡しても、自分には何も返ってきません。

すると、8羽中7羽が、渡す役になった1回目から少なくとも1個の輪を渡しました。本番の条件で用意した輪は全部で320個です。そのうち157個、ほぼ半分が隣の鳥に渡りました。

渡し方も記録されています。いちばん多かったのは、くちばしから隣のくちばしへ直接渡すやり方で、84.7%でした。隣の鳥の側に輪を落としたのが8.9%、仕切りの穴のすぐ近くに置いたのが6.4%です。受け取った鳥は、その輪を窓口に出してクルミと交換しました。

実験に出るかどうかは、鳥が決めました。実験室に移るための小さなかごに入るのを、鳥はいやがることもできたからです。

透明な板で左右に仕切られた台に、ヨウムが1羽ずつとまっている。右のヨウムの前の窓は緑のふたで閉じられ、左のヨウムの前の窓の向こうでは、人の手のひらが上を向いて差し出されている。

03仲間が輪を使えないとき、仲間がいないときは、あまり渡さなかった

輪を渡したのは、本当に仲間のためでしょうか。ただ輪を動かして遊んでいただけかもしれません。研究チームは、条件を変えて比べました。

1つ目の比べる条件では、2羽とも窓口を閉じました。輪を渡しても、隣の鳥はクルミと交換できません。このとき、ヨウムが渡した輪の数は、本番よりはっきり少なくなりました。

2つ目の比べる条件では、隣の窓口は開いていますが、隣に鳥がいません。輪を窓口に近づけたいだけなら、ここでも隣に輪を落とすはずです。けれど、このときも渡した数は本番より少なくなりました。

くちばしからくちばしへ直接渡した場面だけを数えると、82.6%が本番の条件で起きていました。隣の鳥が交換できない条件では、15.5%でした。研究チームは、ヨウムが「隣の鳥が輪を使ってエサをもらえるとき」を見分けて渡していた、と考えています。

もう1つ分かったことがあります。ふだんから仲のよいペアほど、多くの輪を渡しました。研究チームは、ふだんの群れのようすを1種あたり20時間観察し、ペアごとの仲のよさを点数にしていました。仲のよさが低いペアでも、輪は渡されていました。

04役を入れかえると、もらった鳥がお返しをした。ただし疑問も残った

この実験では、2羽のうちどちらが先に輪を持つかを、研究者がでたらめに決めました。1回目が終わると休けいをはさみ、役を入れかえます。さっき輪をもらった鳥が、今度は輪を持つ側になるのです。

すると、前の回に多くの輪をもらった鳥ほど、次の回に多くの輪を渡しました。もらったら返す、というお返しのパターンです。

ところが、研究チームは気になる点も書いています。お返しは、隣の鳥がクルミと交換できない条件でも同じように起きていました。役に立たない輪をもらっても、同じように返していたのです。研究チームは、2つの見方を挙げています。1つは、相手の行動をまねていただけという見方です。もう1つは、「自分は仲間思いだ」と周りに示すために、返していたという見方です。どちらなのかは、この実験では分かりませんでした。

05コンゴウインコのなかまは、ほとんど輪を渡さなかった

研究チームは、南アメリカにすむコンゴウインコのなかま6羽でも同じ実験をしました。英語ではブルーヘッデッド・マコーと呼ばれる種類です。この鳥たちも、窓口でエサと交換することはよく覚えていました。

それでも、隣の鳥にはほとんど輪を渡しませんでした。渡したときも、93.1%は隣の側に輪を落とすやり方でした。隣の鳥が困っているかどうかで、渡す数は変わりませんでした。研究者がいないときに渡す数が減ったことから、研究チームは「研究者やエサの近くに輪を動かしたかっただけ」と考えています。

2種の違いを説明するヒントとして、研究チームはエサの分け合いを調べました。小さな器においしいエサを入れると、ヨウムのほうが、2羽で同じ器から食べることが多かったのです。

野生のヨウムは、夜は最大1200羽ほどの大きな群れでねぐらに集まり、昼は小さく分かれてエサを探すと報告されています。一緒にいる顔ぶれが、いつも入れかわる暮らしです。研究チームは、こうした暮らしでは「助けてくれる鳥だ」という評判が役に立つのかもしれない、と考えました。一方のコンゴウインコのなかまは、小さく、顔ぶれの変わらない群れでくらしているようです。

DEEP DIVE

もっと深く

なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

見返りのない助け合いは、なぜ生まれるのか

自分が損をしても相手を助ける行動は、進化の考え方では長いあいだのなぞでした。助ける相手が親や兄弟なら、自分と同じ遺伝子を持つ相手を助けることになるので説明がつきます。血のつながらない相手の場合は、「あとで助け返してもらえる」ことが、説明の中心になってきました。

ヨウムの実験では、2つの説明が考えられます。1つは、相手のためになること自体を、鳥が好んでいるという説明です。もう1つは、お返しを期待しているという説明です。論文は、この2つを切り分けるのは次の研究の課題だと書いています。

同じ形の実験で、ほかの動物はどうだったか

輪や小さな道具を隣に渡すこの形の実験は、サルや類人猿でも行われてきました。論文によると、同じような方法で自分から渡したのは、これまでオランウータンとボノボだけでした。チンパンジー、ゴリラ、ワタリガラスは渡さなかったと論文は紹介しています。

2021年には、オーストリアのウィーン大学などのチームが、ハシボソガラスとオナガでも同じ形の実験をしました。どちらの鳥も、仲間を助けるようすは見られなかったと報告しています。2021年の時点で、この形の実験で隣に輪を渡した鳥は、ヨウムだけでした。

別の形の実験では、ヨウムは仲間にあまり分けなかった

2025年、同じ研究所をふくむチームが、ヨウムを含む4種類のインコで別の実験をしました。今度は、ふだん暮らしている鳥小屋の外に、シーソーのしくみで動く板の装置を取りつけます。1羽が止まり木に乗ると、隣の止まり木にいる別の鳥がエサを取れるしくみです。自分はエサを取れません。

コンゴウインコのなかま(7羽)は、全体の94.9%の回で仲間にエサを届けました。ところがヨウム(8羽)は、最初の2回は85%と93%だったのに、4回目には17.5%まで下がりました。仲間が受け取れない場合と比べて、ちゃんと区別していたヨウムは8羽中2羽だけでした。

論文は、この結果が2020年の実験と「はっきり食い違う」と書いています。そして、助ける行動は実験の形によって変わるのかもしれない、と考えています。群れの中では、一部のヨウムが装置をひとりじめして、ほかの鳥が受け取り側に近づけなかった可能性もあるそうです。

2羽で選ぶ実験の結果も、すっきりしなかった

2019年には、同じ研究所のアナスタシア・クラシェニンニコワ(Anastasia Krasheninnikova)さんたちが、ヨウム8羽で別の実験をしました。ヨウムは2種類の輪から1つを選びます。片方は自分だけ、もう片方は自分と隣の両方がエサをもらえる輪です。

ずっと同じ鳥が選ぶときは、ヨウムは2種類の輪をでたらめに選んでいました。2羽が交代で選ぶようにすると、両方がもらえる輪を選ぶ回数が増えました。ただし、比べるための条件での選び方から、研究チームは「ヨウムは装置のしくみをよく分かっていなかった」とも書いています。インコの助け合いがどこまで本物なのかは、実験の形を変えながら確かめている最中です。

06まとめ

ヨウムは、自分では使えないエサの引きかえ用の輪を、隣の仲間に自分から渡しました。8羽中7羽が、渡す役になった1回目から渡しています。隣の鳥が輪を使えないときや、隣に鳥がいないときは、渡す数は少なくなりました。役を入れかえると、もらった鳥はお返しもしました。

一方で、同じ実験でコンゴウインコのなかまはほとんど渡しませんでした。シーソーのしくみの装置で調べた2025年の実験では、ヨウムは回を重ねるごとに、仲間にエサを届けなくなりました。インコの助け合いは、どんな場面で出てくるのかを含めて、まだ調べている途中です。

この実験の部屋はマジックミラーのつくりで、動物園の客は、ヨウムが輪を渡すようすをその場で見ることができました。

RESEARCH FILE

研究カルテ

スペイン・テネリフェ島

研究チーム
ドイツのマックス・プランク鳥類学研究所のチーム(第一著者デジレ・ブルックス)
調べた場所
スペイン・テネリフェ島の動物園「ロロ・パルケ」の中にある研究所
調べた動物
ヨウム8羽(学名 Psittacus erithacus)とコンゴウインコのなかま6羽(学名 Primolius couloni)
調べ方
自分の窓口を閉じたインコが、隣の仲間にエサの引きかえ用の輪を渡すかを、条件を変えて比べた
分かったこと
ヨウムは仲間が輪を使えるときにだけ多く渡し、もらったヨウムはお返しもした。コンゴウインコのなかまはほとんど渡さなかった
まだ分からないこと
仲間を思って渡すのか、お返しを期待して渡すのか。ほかの形の実験でも同じことをするのか
論文
Current Biology(2020年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

Gray Parrots Help a Friend Get Food

Gray parrots are smart birds from Africa. In a lab in Spain, eight parrots learned to give metal rings to a person. For each ring, they got a piece of walnut.

Then the scientists closed one bird's window. This bird had ten rings, but it could not use them. The bird next to it had an open window but no rings. Seven of the eight parrots passed rings through a hole to their neighbor.

When the neighbor could not use the rings, the parrots gave fewer rings. They also gave more rings to good friends. A macaw from South America almost never shared.

But the story is not finished. In a later test with a seesaw machine, the gray parrots shared food less and less. Scientists are still asking when parrots help each other.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. What did the parrots get for each ring?ヨウムは輪1つで何をもらえましたか。

Q2. How many of the eight parrots passed rings to their neighbor?8羽のうち何羽が、隣の鳥に輪を渡しましたか。

Q3. What happened in the later test with a seesaw machine?あとで行われたシーソー形の装置の実験では、どうなりましたか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Brucks, D. & von Bayern, A. M. P. (2020) Parrots Voluntarily Help Each Other to Obtain Food Rewards. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2019.11.030
  2. 2Max-Planck-Gesellschaft(2020)Prosocial and tolerant parrots help others to obtain food(プレスリリース)mpg.de/14328111/prosocial-and-tolerant-parrots-help-others-t
  3. 3Krasheninnikova, A. et al. (2019) Assessing African grey parrots' prosocial tendencies in a token choice paradigm. Royal Society Open Science 論文確認済みdoi:10.1098/rsos.190696
  4. 4Brucks, D. et al. (2025) Exploring the drivers of inter- and intraspecific differences in prosociality in four parrot species. Scientific Reports 論文確認済みdoi:10.1038/s41598-025-04115-z
  5. 5Horn, L. et al. (2021) Carrion Crows and Azure-Winged Magpies Show No Prosocial Tendencies When Tested in a Token Transfer Paradigm. Animals 論文確認済みdoi:10.3390/ani11061526

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい