シジュウカラは、自分では開けられないエサ台にも相方について行った。夫婦17組の実験
夫婦が別々のエサ台しか使えないようにすると、シジュウカラは自分では開けられない台にも相方について行った。そして相方が開けたふたにすべりこんだ。

30秒で読む
- 夫婦で使えるエサ台を分けると、鳥は相方のエサ台について行った
- 食べられない台で過ごす割合が、同じ台を使える夫婦の鳥より高かった
- 相方が開けたふたにロックがかかる前に、すべりこむ技を覚えた
人に話すなら
シジュウカラの夫婦に、別々のエサ台しか使えないようにする実験があるんだって。そうしたら、自分は食べられない台に相方について行って、相方が開けたふたに再びロックがかかるまでの2秒ですべりこむようになったらしいよ。
読む前に予想しよう
夫婦で別々のエサ台しか使えないようにすると、シジュウカラはすぐ相方と別行動になる
食べられない相方側のエサ台で過ごす割合が、同じ台を使える夫婦の鳥の平均3.8倍だった。
冬の森は、小鳥にとって食べ物の少ない季節です。寒い冬を生きのびるには、毎日しっかり食べる必要があります。そんなときに、いつも行くエサ台が夫婦で別々になってしまったら、鳥はどうするでしょうか。
イギリスのオックスフォード大学のチームが、この状況を野生のシジュウカラで作りました。夫婦の鳥に、それぞれ違うエサ台しか開かないようにしたのです。すると鳥は、自分は食べられない相方側のエサ台で、多くの時間を過ごしました。使えるエサ台が同じ夫婦の鳥に比べて、その割合は平均3.8倍でした。
動物は、たくさん食べられる場所を選ぶものだと考えられてきました。でもシジュウカラは、エサよりも相方とのつながりを優先したように見えます。そればかりか、相方の台で食べるための新しい技まで身につけました。
01足のタグで鳥を見分け、決まった鳥にだけ開くエサ台を作った
研究したのは、オックスフォード大学のジョシュ・ファース(Josh Firth)さんたちです。舞台は、オックスフォードの近くにあるワイタムの森です。この森では、シジュウカラが長い間くわしく調べられてきました。
この森のシジュウカラは、ほとんどが足に小さな電子タグを付けています。タグの番号を読み取れば、どの鳥がいつエサ台に来たかが分かります。2007年から、つかまえた鳥にはすべてタグが付けられ、シジュウカラの9割以上がタグを持っていると見積もられています。
チームは、このタグを使って「選ぶエサ台」を作りました。エサの穴は、すき通ったふたでふさがれています。決められた番号のタグを持つ鳥が来たときだけ、ふたのロックがはずれます。
実験は2013年11月に始まりました。最初の40日間は、どの鳥もすべてのエサ台を使えました。そのあと90日間、ルールを変えます。もとのエサ台を6か所とも、2台のエサ台に置きかえたのです。2台は、もとの場所から反対の方向に約50mずつ離して置きました。片方は番号が奇数の鳥だけ、もう片方は偶数の鳥だけに開きます。
02夫婦の一部は、別々のエサ台しか使えなくなった
タグの番号は、付けるときにでたらめに決まっています。そのため、夫婦の番号が両方奇数、または両方偶数なら、2羽は同じエサ台を使えます。片方が奇数で、片方が偶数なら、2羽は別々のエサ台しか使えません。
チームは、冬の間ずっと一緒に行動し、次の春にこの森で子育てをした夫婦を探しました。見つかったのは17組34羽です。このうち10組は同じエサ台を使える夫婦、7組は別々のエサ台しか使えない夫婦でした。90日の間に、この34羽がエサ台で記録された回数は、6万6184回にのぼりました。

03鳥は、食べられない相方側のエサ台で多くの時間を過ごした
全体として見ると、シジュウカラはちゃんと「自分が使えるエサ台」を選ぶようになりました。食べられない台に通っても、得はないからです。
ところが、別々のエサ台しか使えない夫婦の鳥は違いました。森の鳥が自分の食べられない台に来た記録のうち、60%がこの夫婦の鳥のものでした。食べられない台に来た鳥のうち、この夫婦の鳥は12%しかいなかったのにです。1羽ずつ、エサ台に来た記録のうち食べられない台の分の割合を出しました。すると、同じ台を使える夫婦の鳥の平均3.8倍でした。エサ台に来る回数そのものは、どちらの夫婦の鳥も変わりませんでした。
研究チームは、鳥が自分のエサを減らしてでも、相方とのつながりを保とうとしたと考えています。相方について行けば、自分は食べられない場所にいることになるからです。
相方について行くと、一緒にいる仲間も変わりました。同じ台を使える夫婦の鳥は、相方以外の仲間とのつき合いの72%が、自分と同じ台を使える鳥とでした。別々の台しか使えない夫婦の鳥では、その割合が49%に下がりました。相方の側の鳥たちとも、よく一緒にいるようになったのです。
04相方が開けたふたにロックがかかるまでの2秒で、すべりこんだ
では、相方側の台で、鳥は何も食べられなかったのでしょうか。実はエサ台には、すき間がありました。使える鳥のタグを読み取ってから、ふたが再びロックされるまでに2秒かかるのです。その2秒の間に別の鳥が飛びこめば、食べることができます。
別々の台しか使えない夫婦の鳥は、この技を使いました。相方側の台に来たとき、ほかの鳥が去ってから2秒以内に飛びこんだ割合は64.4%でした。ほかの鳥は54.1%です。しかも、その相手には相方がよく選ばれていました。この夫婦の鳥がすべりこんだうちの19.8%は、相方の後でした。相方の後なら、81.2%が2秒以内にすべりこめました。ほかの鳥の後では65.1%です。
この技を使う割合は、日がたつにつれて増えました。別々の台しか使えない夫婦の鳥は、同じ台を使える夫婦の鳥より速くこの技を身につけました。研究チームは、相方がすべりこみを助ける、協力のようなものかもしれないと書いています。ただし、それを直接確かめたわけではありません。
一方で、話には続きがあります。別々の台しか使えない夫婦の鳥も、時間がたつと、自分が使える台に行くことが少しずつ増えました。研究チームは、エネルギーを取る必要が大きくなってきたためかもしれないと考えています。相方を優先するといっても、限度はあるようです。
もっと深く
なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。
なぜ冬の間も、相方のそばにいるのか
シジュウカラの夫婦は、冬の間もつながりを保っていることが、これまでの研究で分かっています。オックスフォード大学のチームは2016年、冬によく一緒にいた鳥どうしが、春に近くでなわばりを持つことを報告しました。冬のつき合いが、春の子育ての場所にまで続いていくのです。
同じオックスフォード大学の研究グループは2015年、冬の群れでのつき合い方と、1年後の「離婚」の関係を調べました。つき合う相手にメスが少なかったオスや、つき合うメスの中で相方とのつながりが比較的弱かったオスは、子育ての後に離婚しやすい傾向がありました。冬にだれと過ごすかは、次の年の夫婦関係にまでかかわっているのかもしれません。
つき合う相手が変わると、情報の流れも変わる
この「選ぶエサ台」は、群れの形を人の手で変えられる道具です。チームは2016年、同じしかけで群れを分けたあと、だれでも使える新しいエサ場を置きました。すると、新しいエサ場の発見は、エサ台で一緒に食べられる鳥どうしの間で広がりました。だれと一緒にいるかが、どの情報が手に入るかを左右していたのです。相方について行く鳥は、知り合う仲間だけでなく、手に入る情報も変わるのかもしれません。
カラスのなかまでも、長いつき合いは守られた
イギリスのエクセター大学などのチームは2023年、野生のコクマルガラスで似た実験をしました。2羽で同時に来たとき、組み合わせによってごちそうが出たり、エサ台が2分間止まったりするしかけです。鳥は、ごちそうが出る相手とよく一緒にいるようになりました。ただし、夫婦や親子のように前から続いている大事な関係は保たれました。鳥がつき合う相手を選ぶとき、長いつき合いの相手は特別あつかいされるようです。
この実験の限界
別々の台しか使えない夫婦は7組14羽だけで、数は多くありません。また、相方について行ったことで、鳥がどれだけエサを減らしたのか、春の子育てにどんな影響が出たのかは、この研究では調べていません。研究チームが示したのは、鳥がどこで過ごしたかと、どうやって食べたかです。
05まとめ
夫婦で別々のエサ台しか使えなくなると、シジュウカラは自分が食べられない相方側の台にも、多くの時間を通いました。そして、相方が開けたふたにロックがかかるまでの2秒ですべりこむ技を、日に日にうまくしていきました。
動物は、食べ物の多い場所を選ぶものだと考えられがちです。でも、だれと一緒にいるかが、どこで食べるかを決めることもあるのです。冬に庭や公園でシジュウカラを見かけたら、近くにもう1羽いないか探してみてください。
研究カルテ
イギリス・ワイタムの森
- 研究チーム
- イギリスのオックスフォード大学のチーム(第一著者ジョシュ・ファース)
- 調べた場所
- イギリス・オックスフォード近くのワイタムの森
- 調べた動物
- 野生のシジュウカラ(学名 Parus major。日本のシジュウカラにごく近い仲間)。主に夫婦17組34羽を分析
- 調べ方
- 足の電子タグで鳥を見分け、決まった鳥だけにふたが開くエサ台を作った。夫婦の一部は別々の台しか使えないようにした
- 分かったこと
- 使える台が違う夫婦の鳥は、食べられない相方側の台で多くの時間を過ごし、相方が開けたふたにすべりこむ技を身につけた
- まだ分からないこと
- 相方について行って、どれだけ食べる量が減ったのか。春の子育てに影響したのか。この研究では調べていない
- 論文
- Current Biology(2015年)
英語で読んでみよう
この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。
Great tits are small birds that live in forests. In a forest in England, most of these birds have a small tag on one leg. Scientists made special feeders that open only for some tags.
Some couples could use the same feeders. Other couples had to use different feeders. What did the birds do?
Birds in these couples often followed their partners to feeders that did not open for them. They could not open these feeders, but they stayed near their partners. The scientists think the birds chose their partners over food.
The birds also learned a trick. After a bird with the right tag came, the door stayed unlocked for two seconds. So the birds quickly jumped in after their partners and ate. Next winter, look for great tits in pairs!
覚えたい単語
英語でクイズ
Q1. What did the scientists make?研究者は何を作りましたか。
足のタグを読み取り、決まった鳥にだけふたが開くエサ台を作りました。
Q2. Where did the birds in these couples often go?別々のエサ台を使う夫婦の鳥は、どこへよく行きましたか。
自分には開かない、相方側のエサ台について行きました。
Q3. How long did the door stay unlocked?ふたのロックは、どのくらいの間はずれたままでしたか。
ロックが再びかかるまで2秒あり、その間にすべりこめました。
出典(ウラ取りに使った資料)
- 1Firth, J. A. et al. (2015) Experimental Evidence that Social Relationships Determine Individual Foraging Behavior. Current Biology 論文確認済みdoi:10.1016/j.cub.2015.09.075
- 2Firth, J. A. & Sheldon, B. C. (2016) Social carry-over effects underpin trans-seasonally linked structure in a wild bird population. Ecology Letters 論文確認済みdoi:10.1111/ele.12669
- 3Firth, J. A., Sheldon, B. C. & Farine, D. R. (2016) Pathways of information transmission among wild songbirds follow experimentally imposed changes in social foraging structure. Biology Letters 論文確認済みdoi:10.1098/rsbl.2016.0144
- 4Culina, A., Hinde, C. A. & Sheldon, B. C. (2015) Carry-over effects of the social environment on future divorce probability in a wild bird population. Proceedings of the Royal Society B 論文確認済みdoi:10.1098/rspb.2015.0920
- 5Kings, M. et al. (2023) Wild jackdaws can selectively adjust their social associations while preserving valuable long-term relationships. Nature Communications 論文確認済みdoi:10.1038/s41467-023-40808-7
論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法





