タコと魚がチームを組んで狩りをしていた。行き先は魚が探し、動くかどうかはタコが決める

タコと魚の狩りを立体的に記録すると、魚が獲物のありそうな場所を探し、タコが動くかどうかを決めていた。タコは、待つだけの魚によくパンチした。

No.009 8分で読めるえっ度 論文 2024年
明るいサンゴ礁の海底で、茶色のまだらもようのタコが8本の腕を広げて岩をおおっている。すぐそばを、あごに2本のひげがある細長いヒメジの仲間と、赤っぽいハタの仲間が泳いでいる。

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  1. タコと何種類もの魚が、一緒に獲物を探して動いていた
  2. 魚が行き先を探し、タコが動くかどうかを決めていた
  3. タコは、じっと待つだけの魚を腕でパンチして追い払った

人に話すなら

タコって一匹で暮らすイメージだけど、魚とチームで狩りをするんだって。魚があちこち探して、タコが行くかどうかを決めるらしい。じっと待ってるだけの魚には、タコが腕でパンチすることもあるんだよ。

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タコと魚の狩りチームで、行き先の候補を見つけて先に動くのは主に魚だ

タコは、ふつう1匹で暮らす生き物だと考えられています。同じ種の仲間と群れをつくることも、ふだんはありません。ところが紅海などのサンゴ礁では、タコのまわりに何種類もの魚が集まり、一緒に獲物を探して動き回ります。

ドイツなどの研究チームが、この「タコと魚の狩りチーム」を撮影しました。2台のカメラを使い、動きを立体的に再現したのです。13の群れの動きを細かく数えると、チームには役割分担がありました。魚が獲物のありそうな場所を探して先に動き、タコがついていくかどうかを決めていたのです。

これまで、タコと魚の群れは「タコが中心で、魚はおこぼれをもらうためについていく」と考えられてきました。けれども数字で調べると、魚もタコを動かし、タコも魚を動かしていました。背骨のあるなしまで違う動物どうしが、行き先を決め合っていたのです。

011匹で暮らすタコのまわりに、魚が集まって狩りをする

研究の主役は、ワモンダコです。英語では「昼のタコ」と呼ばれる、サンゴ礁にすむタコです。腕で岩のすき間を探ったり、岩やサンゴを腕と膜ですっぽりおおったりして、かくれた獲物をとらえます。

このタコが狩りをしていると、魚がついてくることがあります。海底を探るヒメジの仲間や、待ちぶせ型のハタの仲間(アカハタ)などです。魚たちも、タコと同じように小さなエビやカニ、貝、魚などを食べます。タコが岩のすき間から追い出した獲物を、魚がねらうこともできます。

タコと魚の祖先が分かれたのは、約5億5000万年前です。これほど遠い動物どうしの群れを、だれが率いているのでしょうか。タコが魚についていく場面も報告されていましたが、数字で確かめた研究はありませんでした。

022台のカメラで、狩りを立体的に再現した

研究したのは、ドイツのマックス・プランク動物行動研究所などのチームです。第一著者は、ポルトガルのリスボン大学にも所属するエドゥアルド・サンパイオ(Eduardo Sampaio)さんです。

撮影の舞台は、紅海の北のはしにあるイスラエルのエイラートです。2018年10月の1か月、チームは水深5〜15mの海に、合わせて約120時間もぐりました。狩りをするタコと魚を見つけると、5m以上離れてあとを追い、撮影しました。

使ったのは、1.2m離して金属のわくに取りつけた2台のカメラです。2台の映像を組み合わせると、海底の岩の形と、動物の位置を立体的に計算できます。チームは映像の中の動物の位置を、1秒に3回ずつ手作業で記録しました。印をつけた数は、およそ50万か所になりました。

こうして再現できたのは、13の狩りの群れ、合わせて3.5時間分です。群れには必ずタコが1匹いて、魚をふくめた数は2〜10匹でした。

03先に動くのは魚、ついていくかどうかを決めるのはタコ

チームは、2匹ずつの組み合わせで動きを比べました。ある個体が離れていったとき、相手がついていけば「引っぱった」と数えます。相手がついてこず、離れた個体が戻ってきたら、相手が「引きとめた」と数えます。

その結果、先に動き出して仲間を引っぱる回数が多かったのは、ヒメジの仲間でした。特に、青い色のヒメジがよく引っぱっていました。タコが先に動き出す回数は、ヒメジより少なかったのです。

一方、仲間を引きとめた回数が一番多かったのはタコでした。タコがついていかないと、魚は止まって引き返します。タコが動けば、魚は追い出される獲物をねらってついていきます。引っぱる回数と引きとめる回数を合わせると、ほかの個体の動きを一番多く左右していたのはタコでした。

魚が「どこへ行くか」の候補を出し、タコが「行くか、いつ行くか」を決めていたのです。 チームは、群れのリーダーを1匹に決める見方では、この関係を説明しきれないと書いています。

サンゴ礁の上で、1匹のタコが1本の腕をすばやくのばし、すぐ横にいたずんぐりしたハタの仲間を押しのけている。ほかの魚は少し離れたところを泳いでいる。

04じっと待つだけの魚には、タコのパンチが飛んだ

群れの中では、ときどき相手を追い払う場面も見られました。魚どうしは、相手に向かって突進して追い払います。タコは、1本の腕をすばやくのばして、特定の魚を突き飛ばします。チームはこれを「パンチ」と呼んでいます。

パンチを一番多く受けたのは、待ちぶせ型のハタの仲間でした。このハタは、自分から動き出すことがあまりありません。群れを引っぱる青いヒメジがいないときでも、動き出す回数を増やしませんでした。チームは、このハタを、主にほかの魚やタコの動きに便乗する魚だと見ています。

このハタが群れにいると、タコのパンチは大きく増えました。逆に、よく動いて群れを引っぱる青いヒメジがいると、パンチは減りました。群れがあまり移動していないときほど、パンチが起きやすいことも分かりました。

05青いヒメジと組むと、タコの狩りはむだが減った

タコにとって、魚と組む得はあるのでしょうか。チームは、タコが腕と膜で岩などをおおう動きに注目しました。タコは体のつくりのせいで、何匹食べたかを外から数えられません。そこで、この動きを、獲物をとろうとした回数の目安にしました。

この目安が正しいかを、オーストラリアのリザード島で確かめました。えさのエビを入れたT字形のパイプと、空のパイプを、タコの約50cm先に置いたのです。タコは、えさ入りと空のパイプを同じくらいの割合でおおいました。ただし、おおったパイプの約95%は、先に魚がつついていたパイプでした。そして、えさ入りのパイプをおおう時間は、空のパイプより長くなりました。

1匹で狩りをするタコは、100秒に平均7.6回、1回4.6秒ほど、あちこちをおおいました。青いヒメジと組んだタコは、100秒に平均2.4回しかおおいませんでした。そのかわり、1回は13.8秒ほどと、3倍ほど長くなりました。むだにおおう回数が減り、獲物のいる場所をじっくり調べられるようになったと考えられます。

一方、アカハタと組んだタコは、1匹のときとあまり変わらず、あちこちを何度もおおっていました。論文は、アカハタと組んでもタコの得はほとんどないとみています。

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なぜそうなったのか。研究の歴史と、まだ決着していない議論まで。

パンチは「罰」なのか

タコのパンチは、同じサンパイオさんたちが2021年の論文で報告していました。イスラエルとエジプトの紅海で、パンチの場面を8回記録しました。パンチされた魚は、ハタの仲間やヒメジの仲間など、いろいろな種でした。

論文は、パンチの理由としていくつかの見方を並べています。1つめは、同じ獲物をねらうライバルを追い払うためです。2つめは、獲物に先にたどり着くためです。実際、パンチのすぐあとにタコが岩をおおった場面もありました。

3つめは、すぐの得がない場面のパンチです。この場合、ずるをした相手に損をさせる行動や、次からちゃんと協力させるための「罰」の可能性があります。ただし、人以外の動物で、罰によって相手の行動が変わったと確かめられた例はとても少ないのです。パンチの前後で魚がどう動いたかを、くわしく調べる研究が必要だと論文は書いています。

ほかの「種をこえたチーム」と比べると

種の違う動物が組んで狩りをする例は、ほかにもあります。よく調べられているのは、紅海のハタとウツボのペアです。ハタは水中を、ウツボは岩のすき間を担当し、どちらも狩りの成功が増えます。陸では、北アメリカのアメリカアナグマとコヨーテの例も知られています。

けれども論文によると、これらの組み合わせでは、相手を直接こらしめる行動は見られないようです。また、種の違う相手と複雑につき合う動物の多くは、もともと同じ種の仲間と群れで暮らしています。ふだん1匹で暮らすタコが、仲間との暮らしなしに魚とのつき合いをこなしている点は、背骨のない動物では他に知られていないとチームは書いています。

チームは、ヒヒのよく似た例も挙げています。1960年代の野外観察では、マントヒヒの群れで若いオスがいくつかの行き先を示し、年上のオスがどれにするかを決めると考えられました。ただし、この見方は数字ではまだ確かめられていません。

研究方法の工夫と限界

この研究の工夫は、海の中の群れの動きを、立体的に、しかも1匹ずつ記録したことです。2台のカメラの位置から距離を割り出したので、カメラを持って泳ぎながらでも位置を正しく計算できました。

一方で、再現できた群れは13と多くありません。また、青いヒメジはハタより速く泳ぐので、群れの動きの違いが「種の違い」によるのか「速さの違い」によるのかは、分けきれなかったと論文は書いています。

さらに、タコが何匹の獲物を食べたかは、直接は数えていません。腕と膜でおおう動きを目安にしたのは、野外実験でその目安が使えると確かめたうえでの工夫です。

06まとめ

紅海のサンゴ礁で、ワモンダコと何種類もの魚が一緒に狩りをする様子を、2台のカメラで立体的に再現しました。先に動いて行き先の候補を出したのはヒメジの仲間で、ついていくかどうかを決めたのはタコでした。

タコは、待ちぶせ型のハタの仲間によくパンチしました。そして青いヒメジと組んだときは、むだに岩をおおう回数が減りました。パンチが「罰」なのかは、まだ分かっていません。

ふだん1匹で暮らすタコが、種の違う魚のあいだでは、群れの動きを一番左右する存在でした。水族館でタコを見かけたら、腕の先がどこを探っているかを、しばらく目で追ってみてください。

RESEARCH FILE

研究カルテ

イスラエル・エイラート

研究チーム
ドイツのマックス・プランク動物行動研究所などのチーム(第一著者エドゥアルド・サンパイオ)
調べた場所
イスラエル・エイラートの紅海のサンゴ礁(野外実験はオーストラリアのリザード島)
調べた動物
ワモンダコ(学名 Octopus cyanea)と、ヒメジやハタの仲間など
調べ方
2台のカメラで狩りを撮影し、13の狩りの群れの動きを立体的に再現して、だれがだれを動かしたかを数えた
分かったこと
ヒメジの仲間が行き先を探し、タコが動くかどうかを決めていた。タコは待つだけの魚によくパンチした
まだ分からないこと
パンチは魚の次の行動を変える「罰」なのか。調べた群れは13と少ない
論文
Nature Ecology & Evolution(2024年)
ENGLISH BITE

英語で読んでみよう

この記事の内容を、やさしい英語(中学〜高1レベル)で。文をタップすると日本語が出ます。

An Octopus and Fish Hunt as a Team

Octopuses usually live alone. But in the Red Sea, some octopuses hunt with many kinds of fish. The octopus looks for food in holes in the rocks. The fish swim around the octopus and look for food too.

Scientists filmed these hunting teams with two cameras. They swam in the sea for about 120 hours. They made 3D models of 13 teams. Then they counted who moved first and who followed.

Goatfish often moved first and showed new places to search. If the octopus did not follow, the fish came back. So the fish chose where the team might go, and the octopus decided if and when to go.

Some fish just waited and did not search much. The octopus often hit these fish with one arm. The scientists call this a punch. With blue goatfish, the octopus wasted less work when it hunted.

覚えたい単語

英語でクイズ

Q1. How many hunting teams did the scientists make 3D models of?研究者たちは、いくつの狩りのチームを立体的に再現しましたか。

Q2. Who often moved first in the team?チームの中で、よく先に動いたのはだれですか。

Q3. Which fish did the octopus often punch?タコがよくパンチしたのは、どんな魚ですか。

出典(ウラ取りに使った資料)

  1. 1Sampaio, E. et al. (2024) Multidimensional social influence drives leadership and composition-dependent success in octopus–fish hunting groups. Nature Ecology & Evolution 論文確認済みdoi:10.1038/s41559-024-02525-2
  2. 2PMC:上の論文の全文pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11541198/
  3. 3Sampaio, E., Seco, M. C., Rosa, R. & Gingins, S. (2021) Octopuses punch fishes during collaborative interspecific hunting events. Ecology 論文確認済みdoi:10.1002/ecy.3266
  4. 4コンスタンツ大学リポジトリ:上の2021年の論文の全文nbn-resolving.de/urn:nbn:de:bsz:352-2-bdidu7q2n46w1

論文は Crossref(論文の公式データベース)で、実在すること・題名・発表年を確認しています。内容は論文や研究機関の発表で確かめています。ウラ取りの方法

こっちも、こっそりすごい